シュン、シュン、パタパタパタパタ--
卓上の機械にセットされた投票用紙のサンプルの束は、軽快な音を立てながら瞬く間に候補者別の引き出しに振り分けられた。この「読み取り分類機」は6月から販売開始となった最新型。開発した選挙機材メーカー大手「ムサシ」(東京都)の五島真一・仙台支店長は「初年度の販売台数は500台を超えると思う」と胸を張った。
手書きの投票用紙を候補者、政党別に仕分ける作業の機械化が進んでいる。ムサシの最新型では1分間に最高660票を分類する処理速度を誇る。01年に初めて売り出した1号機に比べ処理速度は1・4倍に向上。紙の向きや表裏がバラバラでも分類しながら同じ方向にそろえる優れ物で、文字の認識率は96%。
名前や50音順などあらゆる方法の分類が可能で、参院選比例代表の開票作業ではとりわけ威力を発揮するという。01年参院選から非拘束名簿式が導入され、政党名でも候補者名でも投票できるようになり、票の仕分け作業が煩雑になったからだ。
開票作業の迅速化や人件費の削減を目指し、分類機を導入する自治体は増えている。ムサシ製は1号機も含めこれまでに東北6県で40自治体が導入。仙台市の各区や石巻市は07年参院選で分類機を導入したことで、いずれも1分当たりの開票数が県内最速レベルになった。仙台市青葉区では1分当たりの開票数は710票に達した。
問題は高額な価格。ムサシ製の最新型だと5種類に分類できる本体のみの価格が270万円。オプションで最大29種類まで分類項目を増やすと570万円になる。
経費削減の圧力が強まる中、各選挙管理委員会によって、分類機購入で「正確かつ迅速、さらに経済的な開票作業」を達成するのか、従来の方法で作業をこなそうとするのか分かれている。いずれにしても「迅速で正確な開票」を実現できるかが各選管の腕の見せどころだ。
登米市は今回の参院選で分類機を3台使う予定。担当者は「高額だが開票作業が早く終わればスタッフに払う手当も少なくて済む」と語る。09年4月の市議選から1台を導入し、衆院選や知事選で使った実績を基に「割に合う」と判断した。
一方、07年参院選で1分間の開票数が22票と県内で最も遅かった七ケ宿町は、今回も25人程度の人手のみで開票する予定。投票者数がそもそも少ないため、07年参院選の開票(午後8時開始)にかかった時間は県内で最も短く、終了時刻(同9時46分)も県内で最も早かったからだ。担当者は「早く終わらせるための工夫は特にない」と開票のさらなるスピードアップには関心がなさそう。
岩沼市も07年参院選に引き続き分類機の導入を見送った。価格の問題に加え、「機械化によって職員の混乱を招くこともある」というのが理由だ。
代わりに今回は開票台に会議室の机より高い卓球台を使い、職員の腰に負担をかけないようにして作業効率を上げる“アナログ作戦”に打って出る。ただ、大友壮市郎選管事務局長は隣の名取市が07年から分類機を使っていることが気になる様子だ。「機械化の流れには追いつかないといかんなあ」
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◆県内トップ10 1分当たり開票数
(1)仙台市青葉区 710票
(2)仙台市太白区 620票
(3)仙台市泉区 441票
(4)仙台市宮城野区 411票
(5)石巻市 352票
(6)仙台市若林区 298票
(7)登米市 286票
(8)栗原市 283票
(9)多賀城市 259票
(10)大崎市 254票
◆県内ワースト10
(1)七ケ宿町 22票
(2)大郷町 31票
(3)大衡村 36票
(4)本吉町 47票
(5)蔵王町 49票
(6)川崎町 54票
(7)色麻町 55票
(8)村田町 57票
(9)美里町 66票
(9)七ケ浜町 66票
※県選管の資料を基に作成
毎日新聞 2010年7月8日 地方版