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選管の美学:’10参院選/上 経費削減への挑戦 /宮城

 ◇事業仕分けで圧力

 「950万円削減できると踏んだが、800万円台になるかも」

 仙台市選挙管理委員会事務局の生出(おいで)敏明係長は参院選の公示後に悔しがった。選挙ポスター掲示板の製作費用は従来より安い素材を使うことで、07年参院選よりも950万円程度抑えられるとみていたが、削減幅が縮小したからだ。

 原因は4月に相次いだ新党結成。県選管は4月22日、最大10人の立候補に対応できるよう掲示板にポスター10枚が張れる区画を設けることを決めて各市町村の選管に通知した。

 しかし、同23日には新党改革が結成された。さらに「たちあがれ日本」や「日本創新党」などの新党も改選数2以上の選挙区に積極的に候補擁立を目指す動きを見せていた。県選管にとって「ポスターを張る場所がない」との事態は起きてはならない。このため、候補者が10人を超える可能性を想定し、5月末に市町村の選管に12区画に変更するよう再度通知した。

 既に10区画用の掲示板の製作を業者に発注していた仙台市選管は、12区画用に作り直さなければならず経費が増えた。だが、結果的に宮城選挙区の候補者数は8人。生出係長は「(区画が)足りないのはまずいから仕方ない」と県選管の判断に理解を示す。選挙の公平さと経費削減の二つを追い求める選管が、政局に左右される現実に直面した。

 今回の参院選で、仙台市選管は経費を5400万円減らす計画を掲げる。経費総額は2億5200万円を見込んでおり、07年参院選より17・6%削減する計画だ。

 最も大幅にカットしたのが人件費。投開票の事務作業を行うスタッフの数を07年参院選より311人減らし2514人にする。一方、アルバイトの割合を07年比19・4ポイント増の60・7%に増やした。超過勤務扱いとなる職員の平均時給は2000円を超えるが、アルバイトだと1050円程度に抑えられる。市内168カ所の投票所に1人ずつ配置する投票管理者の手当も1日3万4100円から1万2600円に減額する。市選管事務局の石川潤一課長は「人件費を削っても開票作業には影響がない」と自信を見せる。

 さらに削減努力を徹底。投票率アップは至上命令だが、市営バスの窓に張って投票を呼びかける啓発用ステッカーの掲示も廃止(削減額300万円)した。有権者一人一人に郵送する投票所の入場券も世帯ごとに一括する方法で郵送費を抑えた(同900万円)。石川課長は「これ以上の削減は難しい」と打ち明ける。

 選管が経費削減を進めるのは、国が交付金で負担する国政選挙の費用が、09年11月の政府・行政刷新会議による事業仕分けで縮減されることになったため。今回の参院選の経費は10~20%の縮減が求められている。

 「なぜ今まで削減しなかったのか」との疑問に対し、市選管幹部は「今回は事業仕分けで減らせと言われたからやる。企業だってリストラする時は必要に迫られてでしょう」と答えた。これまで自治体の選挙経費は注目されてこなかっただけに、「いかに安く抑えるか」を追求する意識はまだ弱々しい。

  ◇  ◇

 選挙の主役が有権者と候補者なら、裏方として投開票作業などを支えているのが選挙管理委員会だ。ただ、政権交代によって、選挙に多額の予算を投入し、啓発活動や開票作業を行う選管の活動は、曲がり角に差し掛かっている。経費削減の圧力がにわかに強まる中、各選管のスタッフは、いかに早くかつ正確な開票作業を実現させていくのか。選管が追い求める“美学”を描く。

毎日新聞 2010年7月7日 地方版

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