口蹄疫:半径10キロ以内を全頭処分へ 政府検討

2010年5月19日 11時37分 更新:5月19日 15時1分

口蹄疫の処分対象地域
口蹄疫の処分対象地域

 宮崎県で猛威をふるう家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)について、政府は19日、都農町や川南町、高鍋町、新富町の4町の発生農家から半径10キロ以内の全家畜にワクチンを打ったうえで殺処分し、半径10~20キロの範囲の家畜については出荷を促進して「緩衝地帯」とする方向で検討を始めた。地元自治体に提示し、調整を進めている。4町では感染の拡大が続き、殺処分の時間を稼ぐために感染拡大のスピードを抑える必要があると判断した。

 ◇10~20キロ圏の出荷促進

 農林水産省によると、口蹄疫の感染・感染疑い例として殺処分対象となったのは約11万8000頭(19日朝現在)だが、処分が終わったのは約6万頭にとどまっている。殺処分までの間も家畜からはウイルスが排出され続けるうえ、今回の口蹄疫は感染力が強い。

 このため、拡大の続く4町については、発生農家から10キロ以内の家畜にワクチンを接種して感染拡大のスピードを抑え、最終的にはすべて殺処分して拡大を防ぐ必要があると判断した。一方で、えびの市を中心とする発生地については、4町ほどの拡大がみられないことから、ワクチン使用の対象とはしない方向で検討している。

 流行しているO型ウイルスのワクチンは現在、70万頭分の備蓄がある。4町から10キロ以内の全家畜に接種が決まれば、新たに10万頭程度が対象になる見込みという。口蹄疫対策でワクチンが使われるのは国内初となる。

 一方、10~20キロの範囲の家畜については、感染などはないため、衛生上は問題はない。しかし、このまま放置すると、感染の拡大につながる恐れもある。そのため、この範囲の家畜の出荷を促進して家畜をゼロにすることで、感染拡大に対する「緩衝地帯」とする方策も浮上。出荷を促進するために農家に対する何らかの補助を検討している。

 ワクチン使用で感染を完全に防げるわけではないが、感染した場合でも家畜からのウイルス排出量を抑制できるメリットがある。感染拡大のスピードが遅くなるため、同時に殺処分の必要な頭数が減り、殺処分の時間を稼ぐことができる。【佐藤浩、神足俊輔、樋岡徹也】

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