インストール(麗子さん50%)
前回アップした未完小説「インストール」が、生殺しにも程があるので、せめて途中まで書いていた「麗子50%シーン」もアップしたい……と思いまして、うろ覚えで書き上げました。ああ、データ消すんじゃなかった……。
これでも生殺し感はあると思いますが、どうぞー!!
「ははっ、これがあのクリアハートの製造過程で生まれたもう一つのクリアハート、『MA24』ですか。心の病を救う奇跡の催眠剤から副産物として生まれたのが、まさか究極の洗脳薬だったとは。先生もさぞ驚きでしたでしょうなぁ」
男が照明にかざす薬瓶の中には、光を受けて輝く、薄青色の液体が湛えられていた。
ヤマイメディカルの社長室。脅迫者である男と、躍進を遂げた社長の二人が、それぞれの想いを胸に向きあっていた。
喜びを隠そうともしない男に比べ、山居の心中は決して穏やかでは無かった。ソファに腰を沈め、首をうなだれる彼の心は、後悔の念に捕らわれている。
自分が封印してきた悪魔の薬剤。それを、自らの手で脅迫者の手に渡してしまったのだから。
「む、娘は、返してくれるのだろう、約束だ、はやく娘に会わせてくれ」
自責の念に耐えながら、山居は何とか口にした。
「あ、約束?」
「約束だろう。娘に、麗子に会わせてくれっ」
薬瓶を指で叩きながら、男は山居をねっとりと観察した。鼠を狙う、蛇を想わせる視線が、罪に震える山居をねめつける。
「ああ、そうだった。約束でしたな」
わざとらしく言って、男はポケットから携帯を取り出した。そして、じれったくなるほどゆっくりと、携帯を操作する。
「慌てちゃだめですよ先生。すぐ、会わせてやるからよ」
口元に邪笑を浮かべ、男は携帯を耳に宛てた。
「……俺だ。面白いぐらいに進んでいるぜ。……ああ、頼むよ、え?……だからさ、大丈夫だって、ほら、さっきも言っただろ……そう。全く問題は無いよ」
男の耳ざわりな声は山居の神経を逆撫でする。苛立ちのあまり貧乏ゆすりをしそうになるのを、山居は何とか自制した。
やがて、男は通話を終え、山居に目を向けた。
「お嬢さん、もうすぐ上がってくるってよ。ちょっと待ってな」
社長室のドアがノックされたのはそれから十分が経過したころだった。軽い音に、山居の身体はびくりと反応する。
「麗子か!」
娘の名を叫ぶなり、山居は立ちあがり、足早にドアに向かった。
「麗子!」
開かれたドアの向こうにいたのは、パンツスーツ姿の麗子だった。きりりと引き締まった表情、直立の姿勢で前に立っている。
「心配したんだ、良かった、良かったよ」
奇跡の薬を生みだしたヤマイメディカルの辣腕社長は、娘の姿を目に入れた瞬間、一人の父となって、娘を強く抱きしめた。その目には安堵の涙が流れ、頬をつたっていった。
「ああ、これぞ感動の再会ってやつですな」
男は頭を掻きながら、親が子を抱く光景を眺めていた。その眼差しが、嘲りの色を浮かべているのを、彼に背を向けている山居は気付きもしない。
「そうか、嬉しくて声も出ないか、父さんだ、父さんだぞ、麗子」
半ば盲目的に娘に声をかける山居は、ある事柄から目を背けていた。娘の顔を見た瞬間に引っかかった違和感。娘を抱き締めて顕在化する恐れ。
「全く。お嬢さんももう少し喜んでくれればいいのですがねぇ」
山居の身が固まる。男の一言が、山居の心を掻き乱し、混乱させていく。
「れい、麗子」
父が娘に抱いた違和感。
山居が麗子から後ずさる。父に抱きしめられても何も反応を示さない娘の姿を、山居は口をせわしなく開け閉めしながら眺めた。
麗子は人形のようにそこに立ち尽くしていた。目は何も映しておらず、口はきつく結ばれている。そこにあるのは父との再会を喜ぶ娘の表情では無かった。
完全な無が、麗子の顔に張り付いている。
「麗子」
唇を震わせる山居の耳に、脅迫者の耳ざわりな声が響いた。
「ははははっ!馬鹿ですよあんたは!こりゃあただの誘拐じゃないんだぜ!」
馬鹿笑いを響かせる男。山居は己の立場を忘れて、怒りのまま男に掴みかかった。
「おのれっ、貴様、麗子に何をしたっ!」
山居に肩を掴まれ、強く揺さぶられながらも、男は余裕を失わなかった。それどころか、一層の悪意を口元に浮かべだした。
「だから早くこれを渡すべきだったんですよ。あんた、俺の計画した誘拐を、ただの誘拐だと思っていたのか?映像もお見せしたのに、全く、あなたは馬鹿にも程がある。それで良く社長の座についたものだよ。いいか、目の前で娘が洗脳されているんだぜ?時間が経てば経つほど、俺に有利にことが運ぶのは猿にだってわかるだろうが」
男が山居を突き飛ばした。呆気なく山居は床に倒れ、背を強打した。呼吸が詰まる。
「れ、れい」
床に転がる山居を尻目に、男は麗子に近寄り、頬に手を当てた。
「洗脳率でいうと、50%ってところですよ。ちゃんと、あなたが薬を渡す決心を固めてくれた時点で装置を止めたんだ。今の麗子は、いわば、先生のオーダーメイド、ってところだな」
なあ、麗子と、男が麗子の耳元で囁くと、
「は……い……」
消え入りそうな声で、麗子は従順な言葉を口にした。
「目を、さますんだ、お前は」
娘の足にすがりつく社長の姿を見下ろして、男は笑った。笑いながら、麗子の頬を優しく撫でる。
「麗子はあんたのことは覚えていないよ。俺の言うことしか聞かねえように、洗脳プログラムを脳にインストールしてやったからね。いくら呼びかけても無駄だぜ。でもな」
麗子の豊満な胸に、男の手の平がかぶさった。そのまま、ゆっくりと揉みしだく。弾力のある胸が、されるがままに形を変形させた。
「あ……は……」
麗子の半開きの口から、微かながらも甘い、桃色の吐息が溢れだした。自らの体をむさぼる手の感触に応えるように。
「散々よがらせたからな。身体もほら、こんなに敏感になっちまってるんだ。なあ、お父さん。麗子の身体は正直だ、赤の他人の『お父さん』の手で、元娘を気持ち良くしてやったらどうだい?ええ?」
さも嬉々として悪意の爪を突き立てる男、絶望の喘ぎを漏らす娘。二人の間で、父の心は早くも限界を迎えた。
「れいこ、かえってきておくれ、れいこ」
麗子を引きもどそうと足を掴む父の手は、男の足によって地面に縫いつけられた。
「ったく、見苦しいぜあんた」
手を踏みにじられても、山居は痛みを感じてはいなかった。ただ、娘の名を口にするだけ。
暗い笑みを浮かべながら、男は鞄からディスクケースを取り出した。妖しく光る、五枚のディスクが、山居の背にばらばらと降りかかる。
「先生。これは私からの心ばかしのお礼ですよ。私が開発した洗脳プログラムディスクです。ピュアハートを投与しながら、これをお嬢さんに聞かせて、気を狂わせる程の性的快感を休むことなく与えてください。それだけで、先生好みの、ダッチワイフな娘さんが作れるってわけだ。あと50%分、娘さんの成長を楽しみなよ。でも、かつての人格を作ろうとするのはあきらめた方がいい。素人には無理だからね。ああ、もしかしたら俺にだったら出来るかもしれないなあ。でも、報酬はこんなもんじゃ足りないってことを覚えておいてください。ま、どうするかは娘さんの心身をいじりながら、じっくり考えてみてよ」
けたたましい笑い声をあげて、男は社長室を後にした。悲しみに我を失った父と、精神を蹂躙された娘を残して。
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これでも生殺し感はあると思いますが、どうぞー!!
「ははっ、これがあのクリアハートの製造過程で生まれたもう一つのクリアハート、『MA24』ですか。心の病を救う奇跡の催眠剤から副産物として生まれたのが、まさか究極の洗脳薬だったとは。先生もさぞ驚きでしたでしょうなぁ」
男が照明にかざす薬瓶の中には、光を受けて輝く、薄青色の液体が湛えられていた。
ヤマイメディカルの社長室。脅迫者である男と、躍進を遂げた社長の二人が、それぞれの想いを胸に向きあっていた。
喜びを隠そうともしない男に比べ、山居の心中は決して穏やかでは無かった。ソファに腰を沈め、首をうなだれる彼の心は、後悔の念に捕らわれている。
自分が封印してきた悪魔の薬剤。それを、自らの手で脅迫者の手に渡してしまったのだから。
「む、娘は、返してくれるのだろう、約束だ、はやく娘に会わせてくれ」
自責の念に耐えながら、山居は何とか口にした。
「あ、約束?」
「約束だろう。娘に、麗子に会わせてくれっ」
薬瓶を指で叩きながら、男は山居をねっとりと観察した。鼠を狙う、蛇を想わせる視線が、罪に震える山居をねめつける。
「ああ、そうだった。約束でしたな」
わざとらしく言って、男はポケットから携帯を取り出した。そして、じれったくなるほどゆっくりと、携帯を操作する。
「慌てちゃだめですよ先生。すぐ、会わせてやるからよ」
口元に邪笑を浮かべ、男は携帯を耳に宛てた。
「……俺だ。面白いぐらいに進んでいるぜ。……ああ、頼むよ、え?……だからさ、大丈夫だって、ほら、さっきも言っただろ……そう。全く問題は無いよ」
男の耳ざわりな声は山居の神経を逆撫でする。苛立ちのあまり貧乏ゆすりをしそうになるのを、山居は何とか自制した。
やがて、男は通話を終え、山居に目を向けた。
「お嬢さん、もうすぐ上がってくるってよ。ちょっと待ってな」
社長室のドアがノックされたのはそれから十分が経過したころだった。軽い音に、山居の身体はびくりと反応する。
「麗子か!」
娘の名を叫ぶなり、山居は立ちあがり、足早にドアに向かった。
「麗子!」
開かれたドアの向こうにいたのは、パンツスーツ姿の麗子だった。きりりと引き締まった表情、直立の姿勢で前に立っている。
「心配したんだ、良かった、良かったよ」
奇跡の薬を生みだしたヤマイメディカルの辣腕社長は、娘の姿を目に入れた瞬間、一人の父となって、娘を強く抱きしめた。その目には安堵の涙が流れ、頬をつたっていった。
「ああ、これぞ感動の再会ってやつですな」
男は頭を掻きながら、親が子を抱く光景を眺めていた。その眼差しが、嘲りの色を浮かべているのを、彼に背を向けている山居は気付きもしない。
「そうか、嬉しくて声も出ないか、父さんだ、父さんだぞ、麗子」
半ば盲目的に娘に声をかける山居は、ある事柄から目を背けていた。娘の顔を見た瞬間に引っかかった違和感。娘を抱き締めて顕在化する恐れ。
「全く。お嬢さんももう少し喜んでくれればいいのですがねぇ」
山居の身が固まる。男の一言が、山居の心を掻き乱し、混乱させていく。
「れい、麗子」
父が娘に抱いた違和感。
山居が麗子から後ずさる。父に抱きしめられても何も反応を示さない娘の姿を、山居は口をせわしなく開け閉めしながら眺めた。
麗子は人形のようにそこに立ち尽くしていた。目は何も映しておらず、口はきつく結ばれている。そこにあるのは父との再会を喜ぶ娘の表情では無かった。
完全な無が、麗子の顔に張り付いている。
「麗子」
唇を震わせる山居の耳に、脅迫者の耳ざわりな声が響いた。
「ははははっ!馬鹿ですよあんたは!こりゃあただの誘拐じゃないんだぜ!」
馬鹿笑いを響かせる男。山居は己の立場を忘れて、怒りのまま男に掴みかかった。
「おのれっ、貴様、麗子に何をしたっ!」
山居に肩を掴まれ、強く揺さぶられながらも、男は余裕を失わなかった。それどころか、一層の悪意を口元に浮かべだした。
「だから早くこれを渡すべきだったんですよ。あんた、俺の計画した誘拐を、ただの誘拐だと思っていたのか?映像もお見せしたのに、全く、あなたは馬鹿にも程がある。それで良く社長の座についたものだよ。いいか、目の前で娘が洗脳されているんだぜ?時間が経てば経つほど、俺に有利にことが運ぶのは猿にだってわかるだろうが」
男が山居を突き飛ばした。呆気なく山居は床に倒れ、背を強打した。呼吸が詰まる。
「れ、れい」
床に転がる山居を尻目に、男は麗子に近寄り、頬に手を当てた。
「洗脳率でいうと、50%ってところですよ。ちゃんと、あなたが薬を渡す決心を固めてくれた時点で装置を止めたんだ。今の麗子は、いわば、先生のオーダーメイド、ってところだな」
なあ、麗子と、男が麗子の耳元で囁くと、
「は……い……」
消え入りそうな声で、麗子は従順な言葉を口にした。
「目を、さますんだ、お前は」
娘の足にすがりつく社長の姿を見下ろして、男は笑った。笑いながら、麗子の頬を優しく撫でる。
「麗子はあんたのことは覚えていないよ。俺の言うことしか聞かねえように、洗脳プログラムを脳にインストールしてやったからね。いくら呼びかけても無駄だぜ。でもな」
麗子の豊満な胸に、男の手の平がかぶさった。そのまま、ゆっくりと揉みしだく。弾力のある胸が、されるがままに形を変形させた。
「あ……は……」
麗子の半開きの口から、微かながらも甘い、桃色の吐息が溢れだした。自らの体をむさぼる手の感触に応えるように。
「散々よがらせたからな。身体もほら、こんなに敏感になっちまってるんだ。なあ、お父さん。麗子の身体は正直だ、赤の他人の『お父さん』の手で、元娘を気持ち良くしてやったらどうだい?ええ?」
さも嬉々として悪意の爪を突き立てる男、絶望の喘ぎを漏らす娘。二人の間で、父の心は早くも限界を迎えた。
「れいこ、かえってきておくれ、れいこ」
麗子を引きもどそうと足を掴む父の手は、男の足によって地面に縫いつけられた。
「ったく、見苦しいぜあんた」
手を踏みにじられても、山居は痛みを感じてはいなかった。ただ、娘の名を口にするだけ。
暗い笑みを浮かべながら、男は鞄からディスクケースを取り出した。妖しく光る、五枚のディスクが、山居の背にばらばらと降りかかる。
「先生。これは私からの心ばかしのお礼ですよ。私が開発した洗脳プログラムディスクです。ピュアハートを投与しながら、これをお嬢さんに聞かせて、気を狂わせる程の性的快感を休むことなく与えてください。それだけで、先生好みの、ダッチワイフな娘さんが作れるってわけだ。あと50%分、娘さんの成長を楽しみなよ。でも、かつての人格を作ろうとするのはあきらめた方がいい。素人には無理だからね。ああ、もしかしたら俺にだったら出来るかもしれないなあ。でも、報酬はこんなもんじゃ足りないってことを覚えておいてください。ま、どうするかは娘さんの心身をいじりながら、じっくり考えてみてよ」
けたたましい笑い声をあげて、男は社長室を後にした。悲しみに我を失った父と、精神を蹂躙された娘を残して。