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2010.07.18

 射程1500キロ 韓国が新巡航ミサイル 北の主要拠点カバー 

カテゴリ韓国出典 読売新聞 7月18日 朝刊 
記事の概要
聯合ニュースは17日、韓国軍と傘下の国防科学研究所が、射程1500キロの地対地巡航ミサイル「玄武3C」の開発に成功し、年内に実戦配備する予定と報じた。

「2008年から開発を始め、量産に成功した」(軍関係者)

純国産ミサイルで、核施設を含む北朝鮮の主要軍事拠点を射程に収めるとしている。

韓国の国防省関係者によると、韓国軍は現在、射程500キロと1000キロの巡航ミサイルを実戦配備している模様だ。

安全保障問題の専門家は「玄武3C」配備の効果について、「北朝鮮の攻撃を受けやすい前線地域を避け、韓国南部にミサイルを配置しても北朝鮮全域を収めるのに十分な射程を確保できる」と指摘している。

韓国は米国と締結した「米韓ミサイル指針」により、弾道ミサイルの開発や保有については、射程300キロ以下に制限されている。

しかし巡航ミサイルは弾頭重量が500キロを超えなければ、射程に制限はない。

このため韓国は北朝鮮のミサイル開発に対抗し、巡航ミサイル開発に力を注いできた、とされる。
コメント
08年から長射程1500キロの巡航ミサイル「玄武3C」の開発を始めたということは、この巡航ミサイルは対北朝鮮用の弾道ミサイル(ノドン、スカッド)基地攻撃のために開発されたわけではない。

それなら、すでに韓国が開発して、実戦配備している射程500キロと1000キロの巡航ミサイルで攻撃が可能だからだ。

ならば韓国が射程1500キロの巡航ミサイルを開発する意図は何か。

それは北朝鮮が崩壊し、南北が統一されて朝鮮半島に新国家が生まれた時、陸続きになる隣国の中国に対抗するためである。

両国が対抗するといっても、中国と朝鮮新国家が戦争を行うからではない。地域の不安定化を招く軍事バランスを崩さないための措置なのである。

中国が朝鮮半島全域をカバーする中距離弾道ミサイルや巡航ミサイルを保有している以上、韓国が北京を攻撃できる巡航ミサイルを配備し、地域の軍事バランスをとる必要があるからだ。

この件に関して、中国もそのあたりの事情を理解し、韓国に対して北京を攻撃できる射程1500キロの巡航ミサイルの配備に抗議しない。

また、日本も空自が空中給油機や早期警戒管制機を配備することで、朝鮮半島への空爆能力を得て、韓国との軍事バランスをとっている。

先日も書いたが、ここ10年以上の韓国の軍事力整備は、北朝鮮の軍事脅威を口実に、南北統一後の地域の軍事バランスのために行われている。

北朝鮮には韓国と戦争する能力などないことは明白の事実なのだ。
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