【ソウル=牧野愛博】韓国哨戒艦沈没事件を巡り、中国が米国に対し、韓国に軍事宣伝放送や軍事演習の自制を求めるよう非公式に働きかけていた。韓国政府関係者らが明らかにした。米中による封じ込めで報復措置の大幅な変更を余儀なくされたとも言える結果に、韓国政府内からは「外交的に敗北した」との声が出ている。
韓国政府関係者らによれば、中国政府は、韓国が事件を「北朝鮮製魚雷による沈没」と結論づけた5月末から外交チャンネルなどを通じて米国に「北朝鮮による新たな軍事挑発の発生を懸念している」と表明。「韓国に挑発的な行動の自制と冷静な態度を求めてほしい」と訴えた。
そのうえで、中国は、韓国が目指した軍事境界線近くの対北朝鮮軍事放送の再開や、米原子力空母が参加して事件の現場海域に近い黄海で米韓合同軍事演習を実施することに強い難色を示したという。
在韓米軍は当初、韓国軍との間で6月初めに空母も参加した軍事演習を黄海で実施する方向で調整したが、米政府の許可が下りず、実施時期を今月中旬に変更。最終的に今月末に日本海で行う演習に空母を参加させることで決着した。
また、韓国政府は軍事放送再開のために拡声機を11カ所に設置したが、米中両国が難色を示したことから方針を変更。北朝鮮から新たな挑発がない限り、当面再開を保留する方針を固めた。
外交筋によれば、事件を巡る国連安保理の協議でも、米国のライス国連大使が他の理事国に「中国に拒否権を行使させるわけにはいかない」と語る一方、北朝鮮に対する非難決議を求めた韓国の姿勢に困惑する反応を示した。
最終的に、北朝鮮の名指し非難を回避する議長声明で落ち着いたが、米国は中国との調整を済ませた後、他の理事国や韓国に最終案を提示したという。