きょうのコラム「時鐘」 2010年7月18日

 幼い子どもが祖母や母親から昔話を聞きながらスヤスヤと眠っていく。「幸せとは何か」と問われたら、こんな場面を思い浮かべたらいい

話を聞きながら眠った子は、やがて絵本の読み聞かせをねだるようになり、そのうち、自分で本を選んで手に取る。毎年、絵本ワールドに集まる親子の姿に「読み聞かせ」の大事さを思うのである。聞くという体験は自分の力で伸びるための種まきかもしれない

昔々、大衆がまだ文字を読めなかった時代、街角に立てられた役所の御触書の前に人々が群がって高札を読む場面が時代劇にでてくる。あれは虚構だそうだ。実際は役人が民衆に読んで聞かせたのだという

「読み聞かせ」とは「読んで聞かせる」ことでもあり、読み手と聞き手の間に信頼や絆がなければ成り立たない。文字文化の誕生以前からの伝統が、今も絵本の世界に生きている。難しい話になってしまった。ふーん、それからどうしたの?と、子どもたちから聞かれそうだ

自分で調べてみようと答えようか。本もある、新聞もある。声を出しながら家族に新聞を読んで聞かせたおじいさんもいた。