異常牛、国へ報告せず 県「問題ない」と殺処分

(2010年7月16日付)

 口蹄疫問題で、県が6月下旬に異常牛1頭を確認した際、国へ報告していなかったことが15日、分かった。

 県は口蹄疫特有の症状ではなかったことなどを理由に、感染疑いを確認するための検査を行わずに殺処分。「判断は適切だった」としている。しかし、感染が疑われる異常だった場合、疑似患畜の国への通報を義務付ける家畜伝染病予防法に触れるため、農林水産省は調査に着手している。

 農水省によると、異常のある牛が見つかったのは5月下旬にワクチンを接種した新富町の農場。6月25日の殺処分中に獣医師が口の中に異常を見つけ、現場責任者だった県家畜保健衛生所の獣医師に相談した。その後、責任者は県の現地対策本部と協議した上で「問題ない」と判断し、同日中に殺処分を完了した。

 農水省は今月に入り、現場にいた獣医師数人から事情を聴取。獣医師らは「発疹(ほっしん)のある牛がいたが、特徴的な病変ではなかった」と話しているという。

 問題を受け、県は15日に会見し(1)前日の健康検査で異常はなかった(2)歯茎に帯状の赤い発疹があったが口蹄疫特有の症状ではない(3)ほかの牛に異常が見られない―などの理由で「現地の判断は適切だった」と説明。同様の内容を1日までに農水省へ報告したという。

 感染疑いを判断するための症状の写真撮影や検体採取は行っていない。

 農水省は「疑わしい事例であれば国に通報するなど、よりよい判断があっても良かったのではないか」としている。