リンのDSを導入してから約1年半ほど経つが、その間の基本的なシステム構成はほとんど変わっていない。
ネットワークにパソコンとNASをつなぎ、リッピング時のみパソコンを起動、音楽を聴くときはパソコンを終了してNASのデータをDSで読み出すという方法だ。
だが、ある機器と出会ったことをきっかけに、その基本システムの一部を変更することにした。
リッピングとストレージ(NAS)の機能を一台に集約し、パソコンを使わなくて済むスタイルに変えるというのが、その変更の内容だが、パソコンをシステムから除外することが狙いではない。本来の目的は高音質で使い勝手のいいNASを導入することにある。
CDドライブとSSDを内蔵し、優れたリッピングソフトをインストールした一体型のNASが発売されたので、それをシステムに組み込むことにしたのだ。
この新しいNASは、hushというドイツのブランドのアルミ製静音パソコンをベースに、NASの機能に特化してOSやパーツを選択し、リッピングソフトやメディアサーバーソフトをインストールしたカスタムメイドの製品で、東京・秋葉原のオリオスペックが設計とアッセンブルを行っている。静音パソコンの豊富な開発経験を持つ専門店だ(
http://www.oliospec.com/)。
OSはWindows Home Server Power Pack 3だが、各種設定などをDS向けにカスタマイズしているので、CPU(Atom 330 1.6GHz)への負荷はきわめて小さいという。ストレージは標準で80GBのSSD(MLC)を2基搭載するが、注文に応じて大容量タイプへの変更が可能だ。光学ドライブはスロットインタイプのディスクドライブを搭載する(パイオニア DVR-TS08)。
インストール済みのリッピングソフトはリンジャパン推奨の「dbpoweramp」で、導入時のファイル形式はFLACに設定されている。なお、80GBのSSDを2基積む標準仕様の税込価格は¥273,000。オーディオ仕様の仕上げやSSDを搭載していることを考えるとリーズナブルな価格で、SSDの容量を変更してもRipNASより、かなり割安感がある(SSDの価格は変動が大きいので、容量を変更した場合の価格はオリオスペックに問い合わせていただきたい)。
肉厚のヒートシンクが目を引くオールアルミ製のシャーシを採用し、外見上はパソコンやNASというよりもハイエンドオーディオのコンポーネントに近い。DSシリーズとほぼ同じサイズで、ていねいなヘアライン仕上げが施されているため、KLIMAX DSの横に並べてセッティングしても違和感がないほどだ。
このアルミ製の筐体全体とヒートシンクが強力な放熱効果を実現しており、電源もACアダプターを使用するため、放熱ファンは一つも搭載していない。CPUなど熱を発する部品にはいかにも放熱効果の高そうな冷却器を組み合わせ、パイプによって熱をヒートシンクに逃がしている。高速なCPUやGPUを積むパソコンでは真似のできない仕掛けだが、NASに特化すればこの仕様でも動作の安定性に問題はない。電源関連などの内部配線やシールド処理などに、オーディオ機器に匹敵するこだわりをうかがうことができる。
今回導入した新しい一体型NASは、従来のNASに比べて次のようなメリットがある。
1.パソコンを起動せず、CDを手軽にリッピング可能
2.接続と機器構成がシンプルになり、省スペースを実現
3.ファンレス設計の無音動作
4.駆動部のないSSDを搭載し、リッピング時以外はメカレス動作を実現
5. オーディオ機器と並べて設置できる秀逸なデザイン
ほかにもいくつかのメリットがあるが、最大の利点は、その音の良さにある。HDDタイプの既存のNASと比較した音の違いは、次回あらためて紹介する。