第一常識 杉崎の仕事処理の速さは異常だろ…
【存在しえないプロロー(ry
【第一話~駄弁る生徒会~】
「今なんか色々省略されなかった!?」
会長が叫びながら勢い良く椅子から立ち上がった。
「なに言ってんですか会長」
会長の奇行に、僕は溜息を吐きながら発言した。
「春なのは季節だけ、足りないのは身長と一部分の脂肪だけにしてくださいよ」
いくらお子ちゃまな会長でも、限度ってもんがある。
「ちょっと待ったぁぁ! 鈴斗、今の発言を取り消せ」
会長と向かい合う形で座っていた杉崎が、すごい形相で迫ってきた。
「鈴斗、お前は会長には言ってはいけないことを言った!」
「杉崎…」
横目で会長を見れば、急ピッチでフラグが建築されている。
「杉崎、そんなにも私のこと…」
おお、完成まであと少し。
頑張れ、会長建設!
「ロリな会長に胸なんてあったら、がっかりすぎるだろう!」
「ああ、長門乳みたいなもんか」
「少しでも杉崎に期待した私が馬鹿だったよ!」
杉崎から発生した地震で、完成間際のフラグは脆くも崩れ去った。
ついでに会長も机に崩れ落ちた。
「さあ鈴斗! 反省の意味も兼ねて、今から俺の言うことを復唱しろ」
僕が頷くのを確認すると、杉崎はいい笑顔で言った。
「ロリペッタンは、いいものだ!」
「生徒会室で性癖の暴露なんかしてんじゃねぇー!!」
杉崎の体が、怒号と共に吹き飛んだ。
「光になる!?」
「安心しろ、二割程度の力しか使ってないからな」
深夏が拳から湯気を出しながら、倒れている杉崎に言い放った。
拳から湯気って、どうやって出るんだ…? というより、深夏が全力を出すとどうなるんだ?
「毎度毎度、キー君も飽きないわねぇ」
「お姉ちゃん、いくらなんでもやり過ぎだよ…」
深夏の後ろから、紅葉先輩が微笑みながら腕を組んで、真冬ちゃんが深夏にささやかな注意をしていた。
「いや、だってよ。鍵が真冬のことを好きって大声で言ってたから、大切な妹を渡すもんかとつい…」
「ちょっとお姉ちゃん、それは真冬がロリペッタンだって言いたいの!? ロリペッタンは会長さんでしょう!」
「真冬ちゃん! 言って良い事と悪い事があるよ!?」
生徒会長と会計による、悲しい討論を確認。
「安心してくれ二人共! 俺のハーレムに二人の席はきっちりとあるから!」
黙っていればよかったのに、自ら死地に突っ込む馬鹿も確認。
「杉崎、死にたいの…?」
「杉崎先輩、死にたいんですか…?」
二人の殺気が凄すぎる。なんか室内温度が下がっているような…。
「あ、あれ~? 二人共、照れ隠しにしてはちょっといきすぎなような」
「杉崎、頼むから地雷を踏まないでくれ」
もう辺り一面が焦土と化しそうだ。
「はいはい、二人共その辺にして。こっちでお菓子でも食べましょう」
一触即発の空気が漂う中、紅葉先輩がスナック菓子片手に提案した。
「う。まあ、知弦がそう言うんなら…」
「真冬も、紅葉先輩が言うなら…」
二人とも紅葉先輩の言葉に従っているように見えるけど、目線はしっかりお菓子に注がれている。
「はい、よく出来ました」
紅葉先輩はそう言って、席に座った二人にスナック菓子をあげた。
『はむはむ、はむはむ』
一心不乱にスナック菓子を食べる、生徒会の会長と会計。
「はあ……。なんとも疲れるな…」
「ふふ、ベル君もお疲れ様」
微笑を携えながら、紅葉先輩がミネラルウォーターを渡してきた。
「いえいえ、最初に比べれば慣れたもんですよ」
苦い笑みを浮かべながら、ペットボトルを受け取る。
「お目付け役も大変ね」
小悪魔的な笑顔で、楽しそうに言う。
「目付けなんて名ばかりですよ。学園側も何を考えているんだか…」
実際に生徒会メンバーが本気で暴れたら、僕なんかじゃ手の打ちようがない。
「まあいいんじゃないかしら。貴方が来てくれたお蔭で、生徒会は一段と楽しくなったし」
「加虐的嗜好な意味でですか?」
「さあ、どうかしら?」
目を細めながら、クスクスと可笑しそうに笑う。
薄々とそうなのではと思っていたが、確信した。この人、絶対Sだ。
「まったく、杉崎も一人であの量をやることはないだろうに…」
生徒会はあの後も皆で駄弁り続け、会長の解散宣言を受けて解散した。
そして杉崎は今日も一人で、生徒会の雑務を片付けている。
会長達と長時間駄弁る為に、いつも一人残っている。
「手伝おうとしても断られるし、本当しょうがないね」
あれでハーレムなんて言わなきゃ、今ごろ彼女の一つや二つ出来てるだろうに。
「しっかし…」
夕焼けに照らされる廊下で、生徒会での時間を思い出した。
「最初はそうでもなかったけど…」
突拍子も無い会長。良くも悪くも自分に正直な杉崎。
「今の生徒会は…」
行動力抜群の深夏。意外に芯が太い真冬ちゃん。
「随分と…」
大人と子供の面を持ってる紅葉先輩。呆れながら、それでも楽しそうに見ている僕。
「居心地が、いいんだよね」
そう呟いてすぐ、今が夕暮れであることに感謝する僕だった。
【存在しえない報告】
「以上が、今回の生徒会の活動内容です」
会議室に二人の人影があった。
「ご苦労。いつもいつもすまないね」
「いえ、当然のことです」
一人は楽しそうに、一人は無感動に言った。
「では、明日も頼むよ…」
そう言うと人影は、顔に笑みを浮かべながら言った。
「開成 鈴斗くん」
それをもう一人の人影はなんの感情も見せずに、
「全ては企業の為に」
静かにそう答えた。
~あとがき~
恋姫も満足に書いてないのに、何をやっているんだ…。
ちなみにオリキャラの名前は、開成 鈴斗 (かいせい れいと)と読みます。