本県に是正指示へ 農水省、民間種雄牛処分

(2010年7月15日付)

 本県の口蹄疫問題で農林水産省は14日、県が特例救済を求めている民間種雄牛6頭について、県に対し殺処分を求める是正指示を出す方向で関係省庁と本格調整に入った。

 15日にも出す見通し。殺処分は国が自治体に委託する「法定受託事務」にあたる。総務省によると、同事務で地方自治法に基づき都道府県に是正指示を出すのは初めてになるという。

 山田正彦農相は14日、仙谷由人官房長官と会談し、異例の事態になることへの了承を得た。同省は是正指示を出しても県が応じない場合、国による殺処分の代執行を検討する。

 東国原知事は、県庁で記者団に「地方自治法上の(是正)指示は重く、悩ましい」と述べた上で、従うかどうかは「指示があってからの話だ」と明言を避けた。

 代執行までの流れは、今回の是正指示とは別の地方自治法の規定に基づいて殺処分を知事に勧告。それで従わない場合は指示を出し、さらに応じない際は高裁に知事への命令を請求する。

 高裁は国の訴えが妥当と判断すれば、知事に命令を出し、それに従わない場合に、国が都道府県に代わって執行する。

 農水省は14日、是正指示に向けて法務省などと協議したが、初の是正指示になるため、慎重を期し、是正指示を出すのは、15日以降となった。

 問題の6頭は、口蹄疫対策特別措置法に基づき、すべての家畜をワクチン接種した上で殺処分することが決まった地域内で農場経営者・薦田長久さん(72)が飼育。薦田さんが殺処分を拒否したため、県は当初、薦田さんに殺処分を勧告したが、その後の薦田さんとの話し合いから「種牛には公共性が認められる」として、国に救済を求める姿勢に転換した。

 一方、同省は、殺処分に応じたほかの農家との公平性の観点などから救済を認めない姿勢を崩しておらず、県との対立が続いている。

 仙谷官房長官は14日午前の記者会見で、民間種雄牛問題について「つらいことがあるだろうが、まん延防止の観点から殺処分していただかなければならない」と述べた。