「県有」方針から迷走

(2010年7月16日付)

 民間種雄牛をめぐる問題は、国の方針を受けて殺処分を勧告していた東国原知事が態度を一転、「県有」として救済する方針を打ち出したことで、その後、国を巻き込んで大きく迷走した。

 政府が川南町を中心とした発生農場から半径10キロ圏内で、すべての牛・豚へのワクチン接種・殺処分方針を示したのが5月19日。県内の民間で唯一、種雄牛も所有する高鍋町の農場経営者・薦田長久さん(72)は牛約400頭の殺処分は行ったものの、種雄牛6頭に限っては拒否。知事は6月29日、薦田さんに殺処分を勧告した。

 勧告の期限を過ぎた7月7日、薦田さんは「畜産の再建に役立てたい」と殺処分をあらためて拒否。ここで知事は「できれば助ける方向で考えたい」と救済へ方針を転換した。8日には自ら薦田さんを訪問。種雄牛を無償で県有とし、救済する方針で合意した。これに対し山田正彦農相は「例外というわけには絶対にいかない」と不快感をあらわにした。

 国と県との溝が深まる中、知事は13日に山田農相とトップ会談。種雄牛の県有化を認めるよう要請したが、山田農相は拒否し、会談は平行線のまま終わった。

 山田農相は同日、知事が殺処分の指示に従わない場合、国が早期に代執行する方針を表明。これを受けて農林水産省は、県に対し殺処分を求める是正指示を出す方向で関係省庁と本格調整に入ったが、知事が再び方針を一転させ、薦田さんへ殺処分を要請した。