東條英機に逆らった大審院判事、吉田さんの「気骨の判決」
相変わらず、新聞テレビで小沢一郎幹事長の問題で、ゼネコンからいかにも裏献金を受けていたかのような報道が続いた。
誰が考えても、検察からのリークとしか考えられない。これは、検察官、公務員のまさに守秘義務違反になるのではないだろうか。
あれだけ騒がれて小沢一郎が党の代表を辞任せざるを得なかった、大久保秘書の西松建設の迂回献金事件にしても、裁判での証人調べでも西松の政治団体の事務所があり、事務員もいて実態があったことが明らかになってきた。
前回の起訴だけでは無罪になる公算が大きい。
事実、今回小沢一郎幹事長は不起訴になった。
土地購入の資金にしても、小沢一郎は、個人のお金だと述べて個人の預金口座も、妻の個人口座も明らかにしている。
小沢一郎の父が所有していた湯島の土地の売却代金を本人らの口座に入れていたものと聞いている。
そうであれば、石川衆議員ら3人が逮捕されて起訴されたのは、単なる政治資金の届出の記載のミス、政治資金規正法違反の虚偽記載に過ぎない。
私もそうだが、政治家は政治資金の申告の書類にまで目を通すことはない。間違っていて修正申告したが、誰でも1、2度は経験しているはずだ。
形式犯なので修正申告で終わるべきところを逮捕され、しかも起訴されて民主党を離党せざるを得なくなった。
それでいて新聞、テレビの世論調査では、82%の国民が小沢一郎は説明責任を果たしていない、さらに70%の国民が幹事長を辞任すべきだと考えているという。
国民の世論はどうしてこうなったのだろうか。
私はマスコミの報道の姿勢に問題があると思う。
大手新聞社のかつての編集長が私に語ったことがある。
「検察の批判記事を書くと、その社は翌日から1月間は記者会見から外されるのです。それでは報道の公正が担保されないと、抗議しようということになったら、現場のデスクからの猛反対で、結局できなかった。
うちだけ特種を落としたらどうなりますか」といわれてしまった。
検察が正義としてマスコミが報道して、国民世論をリードする。
残念である。
私の農水省の副大臣室に、精糖業界の久野修慈会長が尋ねてきた。サトウキビの話だったが、その2,3日後、清永聡さん著の「気骨の判決」の新書と一本の映画ビデを届けてくれた。
私は早速ビデオ映画を見せていただいて、とめどもなく涙が溢れてきた。
昭和17年、私が生まれた年である。
大審院の判事(今で言うところの最高裁判所の裁判官)吉田久さんは、その年に行われた衆議院の選挙が無効である判決を下したのである。
当時は太平洋戦争の真っ只中、新聞、ラジオを始めほとんどの国民が「鬼畜米英」のもとに、高揚していた。
その年、東條英機元帥が首相として、大政翼賛会による総選挙がなされた。
選挙は、大政翼賛会の推薦候補だけを、知事も教育委員会、警察も一緒になっての組織ぐるみで行う、今では考えられない選挙が繰り広げられたのだ。
吉田大審院判事は、警視総監、司法大臣などから筆舌に尽くしがたい脅迫を受けながら命がけで、法に従い、選挙が無効である旨の正しい判決を下したのである。
体制の流れに、屈することなく法の正義のために命をかけての気骨の判決だった。
かつて吉田さんの秘書をしていた久野氏が、吉田さんに聞かれたそうだ。
「正義とは何ですか」
久野さんの期待に反して
「正義とは、正義とは倒れているおばあさんがいれば、背負って病院に連れて行ってあげることだ」と応えたそうだ。