やみなべ☆

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左:そら。右:じゅんや。          2人の腐女子による自己満足のためのブログ。ジャンルはDBメインの底なし沼。文章はじゅんや、主に管理のそら。不思議なのはCPが正反対なのに大親友なこの2人。

下に行くほど新しいものになります。

地獄死者シリーズばかりなので簡単に設定説明。

時期はDBGTの地獄から地球に死者が帰ってきたあのころ。

バーダック、ターレス、ラディッツがやってきて、そのままいついてしまったというものです。
バーダック、ターレスは孫家にいますが、ラディッツだけは悟飯が小さい頃のトラウマからぶち殺したい衝動に駆られるためカプセルコーポに住んでいます。

住民票を悟飯が改ざんしたため、悟空は戸籍上悟飯の息子ということになり、パンの弟として小学校に通っております。
詳しくは「地獄よりの死者」「地獄死者-小学校へ」のあたりをご覧くだされば、あとの内容はたいてい分かると思います。
地獄死者シリーズには「地獄死者」と前に表記してますよ☆
(ちなみに漢字で表記はじゅんや作、ひらがなはそら作です)


基本はファザコン悟飯が悟空を猫かわいがりするというだけですが、かわいがり方が異常なため周りが被害を受けてます。
たぶん、うちの悟飯だったら本気で海に向かって父さん愛してると叫べます。
悟空のためだったらなんでもします。
障害物は魔王になって排除します。


更新は、じゅんやの気分しだい。最近はちょいとじゅんやが忙しいので亀更新になりました。

時々「おらに元気をわけてくれ!」モードになったそらが「次!」とじゅんやをせっつき、忙しい合間にじゅんやが書いてくれるのでぼちぼち更新になります。

とりあえず、魔王な悟飯とかわいらしい悟空がいっぱいです。



地獄よりの死者
地獄よりの死者2
地獄よりの死者3
笑顔の反対側
地獄よりの死者4 ~過去ヘ道ヅレ~
地獄よりの死者5 ~過去ヘ道ヅレ~
地獄よりの死者6 ~過去ヘ道ヅレ~
小ネタ
地獄死者~小学校へ~
地獄死者~小学校へ2 ~
地獄死者~小学校へ最終~
地獄死者~過去でDV ~前編
地獄死者~過去でDV ~後編
地獄死者~おつかい~
らくがき
素敵なポーズ( 写真)
地獄死者~家庭訪問~
地獄死者~日曜日の来訪者~
地獄死者~特売の卵~
届かない場所
地獄死者~願いごと二つ~
地獄死者~仕事見学~前編
地獄死者~仕事見学~後編
地獄死者~過去ヘ再ビ~1
地獄死者~過去ヘ再ビ~2
地獄死者~過去ヘ再ビ~3
地獄死者~過去ヘ再ビ~最終
地獄死者~時間の旅~1
地獄死者~時間の旅~2
地獄死者~時間の旅~3
地獄死者~時間の旅~最終
小ネタ(DB× BSR2)
地獄死者~予防注射の日~
地獄死者~初カラオケと悟天の不幸~
地獄死者~いらんことしいGJ ~
地獄死者~運動会と勲章~前編
地獄死者~運動会と勲章~後編
地獄死者~ぬいぐるみ変化~
地獄死者~白熱の学芸会~前編
地獄死者~白熱の学芸会~後編
地獄死者~町内会のお知らせ~
地獄死者~逃げろ四つ子チャン~前
地獄死者~逃げろ四つ子チャン~後
地獄死者~酔っ払いの奇行~
地獄死者~お土産のきぐるみ~
地獄死者~頑張れゴボウ~
地獄死者~お礼の言葉~
地獄死者~臨時の代役~
地獄死者~演技の天才~前編
地獄死者~演技の天才~後編
地獄死者~ハロウィンの悲劇~
君の名は前編( 戦ムソ・DB ・ガンムソ)
君の名は後編( 戦ムソ・DB ・ガンムソ)
地獄死者~ニューヒーロー登場~
地獄死者~ストレス解消法~前編
地獄死者~ストレス解消法~後編
地獄死者~忙しい日曜日~前編
地獄死者~忙しい日曜日~後編
地獄死者~拾った子猫~
地獄死者~電話の応対~
地獄死者~時空の狭間~1
地獄死者~時空の狭間~2
地獄死者~時空の狭間~3
地獄死者~時空の狭間~4
地獄死者~時空の狭間~最終
余計なマスコット参入~地獄死者~1
余計なマスコット参入~地獄死者~2
余計なマスコット参入~地獄死者~3
余計なマスコット参入~最終
地獄死者~おバカは誰だ~
地獄死者~クリスマスパーティ~
地獄死者~薬の効果~
希望
小ネタ(DB/ バサラ2/ムソ2)
地獄死者~お留守番~
地獄死者~兄の来校~
地獄死者~最悪のテスト~
地獄死者~遊んでもらう方法~
地獄死者~歯医者さんへ行こう~
地獄死者~ドライブと動物園~
地獄死者~鍋の材料~
地獄死者~不幸の元凶~
地獄死者~二人の策士~
地獄死者~探せ三つ子チャン~1
地獄死者~探せ三つ子チャン~2
地獄死者~探せ三つ子チャン~最終
地獄死者~彼女偽装~
地獄死者~実験と事故~1
地獄死者~実験と事故~2
地獄死者~実験と事故~最終
地獄死者~デパートヘお買物~
地獄死者~破壊神~前編
地獄死者~破壊神~後編
地獄死者~暇つぶしの恐怖~
地獄死者~未来からの誘い~1
地獄死者~未来からの誘い~2
地獄死者~未来からの誘い~最終
地獄死者~部屋への侵入者~
じごくししゃ~父親参観日1~
じごくししゃ~父親参観日2~
地獄死者~バイトの光景~
そらのDB☆Cooking
地獄死者〜とばっちり〜
地獄死者〜残暑の猛威〜
地獄死者〜好奇心は○○を殺す〜
じごくししゃ~ブルマの微笑み~
地獄死者〜初めての注射〜
地獄死者〜エロ本とみかん〜
(・∞□)(写真)
地獄死者〜魔王と弱虫〜
地獄死者〜テストの行方〜
地獄死者〜忍耐力トレーニング〜
地獄死者〜誕生日~








# by oyakatasamah | 2010-12-31 23:59 | DB/他 | Trackback | Comments(1)
「父さん、誕生日おめでとう」

 いきなり言われて、悟空は瞬きした。リビングで雑誌を読んでいた悟天が、顔を上げてもう一度言った。

「誕生日おめでとう」

 正確には誕生日はわからない。孫悟飯が悟空を拾った日も不明確で、実の父に至っては、そもそも何才だお前、のレベルである。悟空は首を傾げた。

「今日はオラの誕生日か?」

「知らないよ。でも、誕生日ないと不便だから、兄ちゃんが勝手に決めたんだよ」

 今日、と付け足して、悟天は言った。

「誕生日おめでとう。でも何にもあげないよ」

「ん、まぁ、いらねえけど」

 おめでとうを言っただけで、悟天は再び雑誌に目を落とした。

「カカロット!」

 浮かれたターレスの声がし、悟空は声のしたほうを向いた。

「誕生日だってな」

 ワインを買ってきていたらしく、こいこい、と手招きしてグラスを渡す。

「まー呑めよ。また一つ年を取ったオッサンに乾杯」

 ターレスの脇に座り、ワインを飲み干す。悟天が顔をあげ、めずらしい、と声を上げた。

「ターレスさん、父さんのこと嫌いじゃなかったっけ」

「嫌いじゃねえよ」

 えっ、と悟空はシッポを立ててターレスを見上げた。ターレスはやさしくほほ笑みながら、悟空のほおをなでた。

 それから思い切り両方からほっぺたをつまみ、「殺したいくらいに憎んでるに決まってんだろが、嫌いどころじゃねぇよ」と目を吊り上げた。単に、レベルの問題だったらしい。

「じ、じゃあなんでお祝いしてくれる訳」

 いひゃいいひゃいと悲鳴を上げる悟空を眺めながら、悟天が尋ねる。ターレスは悟空のほっぺたをつまみながら、悟天を見た。

「何となく」

 今だにターレスの行動基準がわからない。人に対しての執着はほぼゼロで、生前は仲間が死んでも頓着していなかったが、バーダックにはやさしいし、気を配っている。気がする。
 非常に気分屋で飽きっぽく、思い付きで行動するが、たまに自分の行動の理由すら説明できないことがあるようだった。

「ま、今日は俺様、機嫌がいいんだ。呑めよ」

 悟空の頭を撫で撫でし、ターレスは目を細めた。

「何か、良いことあったんか?」

「悪いことが一個もないのは、いい日だと思わねえか?」

 たまに目に見えて落ち込んでいるときもあるが、機嫌のいい日は悟空にもやさしい。悟空は「そうだな!」と頷いて、グラスを傾けた。

※※※※※※


「ただいま」

 兄が帰ってきた。悟天はリビングの惨状を眺め、背筋を凍らせた。

「ターレスさん! やばい帰ってきた!」

「んー…」

 ターレスが目を擦り、しかし再び寝息を立てはじめる。くたりとソファに横になっているターレスの胸に悟空が寝そべり、「ちゅー」とほっぺたや口元に口付けていた。

「父さん、ターレスさんが殺されちゃう!」

 悟空を引き剥がそうとしてもなかなか引き剥がせない。そうこうしているうちに足音が近づき、リビングの扉が開いた。

「ただいま。……へぇ」

 最悪なことに、悟空がターレスにちゅー、と口付けた瞬間に、悟飯がリビングに入ってきた。

「あ、ごはんだあ。ごはん、ちゅーして、ちゅー」

 真っ赤な顔で悟空が手を伸ばす。兄は一瞬でれっとした顔になったが、すぐに厳しい顔になった。

「誰がお酒を飲ませたの?」

「たーれしゅ」

 ろれつが回っていない。完全に泥酔状態まで呑んでいたが、ターレスは完全にのみすぎたらしく、口を開けて眠っていた。

「まったく、ターレスさんと来たら。余計なことしかしませんね」

 ほんっとに、と悟飯は目をつりあげたまま、ターレスを見た。いつもの皮肉じみた表情は一切消え、幸せそうに眠っている。寝ているときだけは、まさに悟空と瓜二つだった。

 ほわ、と悟飯の顔がゆるんでいく。

「兄ちゃん。それターレスさんだからね」

 はっとしたように悟飯が肩を震わせ、チッと舌打ちした。

「本当に、紛らわしいな。こんな……父さんみたいな顔して」

「おれ、その内兄ちゃんが、父さんの代わりにターレスさんを毒牙にかけるんじゃないかって心配してるんだ」

 悟天が淡々とつぶやき、悟飯は、少し声が擦れていた笑い声をあげ、真顔になって手で顔を覆った。

「……もしそうなったら、僕を殺してくれないか」

「…否定しないんだね」

 放っておかれた悟空が、ぷくうっとほっぺたを膨らませる。

「ごはん、ちゅーしろよぅ!」

「はいはい、誕生日おめでとうございます、お父さん」

 悟飯がキスをして、悟空は上機嫌な顔になった。

「たんじょーびなんだかんな! オラ、今日誕生日なんだかんな!」

「誕生日ですね。ほら、プレゼントですよ」

 悟飯が慈愛の笑みを浮かべて渡したものは、ちょっとしたティッシュ箱並みの分厚さをした、お食事券の束だった。

「わぁああー!!」

 幼い瞳を輝かせ、悟空が満面の笑みを浮かべて悟飯を見上げた。

「大好きだぞっ、ごはん!」

 悟飯がにこにこしながら鼻を押さえる。悟天はそっとティッシュを差し出したのだった。






 ほう、とバーダックは声を上げた。ターレスがワインをまた呑んでいる。

「あまり強くないんじゃなかったか、お前」

「そこそこは強くなった。子供扱いするなよ、おっさん」

「そうか」

 バーダックはそこで切り、ターレスを見た。

「買ったのか?」

「いや、悟飯が大量にくれた」

 まだまだあるぜぇ、と上機嫌なターレスを眺め、何となく理由を悟ったバーダックはちょっと口元を歪ませて笑ったのだった。



# by oyakatasamah | 2010-05-09 23:59 | DB/短 | Trackback | Comments(3)
 コメントをしてくださった方々、ありがとうございます。いつも以上に更新が亀で、申し訳ありません。
 更新が遅くても、書くのを止めるわけではないので、今後も読んでくださると幸いです。

☆☆☆☆☆☆☆☆





「基本的に、忍耐力がありませんよね」

 朝、急に悟飯が呟いた。心当たりのある悟天はギョッとしたが、敬語である辺り、自分のことではないと感付いた。
 視線は落としているが、頭はターレスの方に向いている。なにかやらかしたのか知らないが、悟飯はターレスの忍耐力がないのは問題である、と考えているようだった。

「と、いうわけで」

 やれ、と命じ、なぜか悟天に渡してきたものは、千ピースのパズルだった。


※※※※※※


「何で俺が?」

 はぁ、とため息を吐いて、悟天はパズルの箱を眺めた。忌々しいくらいに、ピースが多い。ターレスに忍耐力を付けたいと言っておきながら、なぜ自分がやらなければならないのだろう。

 机に新聞紙を引き、黙々と作業していた悟天の手元を、悟空が眺めに来た。シッポをくねらせながら、机に寄り掛かって、じー、と眺め、なぜかバランスを崩して新聞紙ごと引っ繰り返る。

 きれいにピースが空を舞い、悟天はとりあえず悟空のお尻を叩いてから、新聞紙を引き直し、ピースを拾った。

 悟空は机に寄り掛かるのはやめ、しばらく悟天にじゃれついていたが、足で蹴りやられ、ちぇっ、とうなだれながら出ていった。

 入れ替わるように入ってきたのは、ターレスだった。何も言わず、黙々と手を動かしている悟天をしばらく眺めてから、悟天の横に座る。

 それから箱を奪い、ピースをはめはじめた。意外と、好きな作業であるらしい。人がやっているのを横取りするのが好きなだけかもしれないが。

 バーダックも入ってきて、当たり前のように座り込んで手伝いはじめた。会話は最小限で、他の二人の手元を見、ピースを渡したり、勝手にとったりする。

 肩も痛くなりはじめた頃、再び悟空が来て、バーダックのそばに座り寄り掛かった。その膝の上に、バーダックが箱を置く。

「おっさん、これ多分そっち」

「おう」

 すぐに飽きてどこかへ行くかと思いきや、ターレスは粘りがあった。ずっと集中して続け、バーダックが飽きてどこかへ行ってしまっても、黙々と続けている。

「ターレスさん、パズル好きなの?」

「別に好きなわけじゃねぇ」

 好きなわけではないらしい。何なんだ、と不思議に思いつつも続けていると、夕方になって完成した。

「やったね…! やっとできたよ!」

 完成した喜びに満ち、軽く感動してパズルを眺める。ターレスは頷き、ニヤニヤしながら、悟天の顔を覗き込んだ。

「ようやくできたな」

 ターレスの指が、パズルの下に入っていくのが見えた。

 満面の笑みを浮かべ、ターレスが手を引き上げる。パズルが一瞬にして壊れていくのを、悟天は夢であってほしいと思いながら眺めていた。

「ひゃははは!!!」

 ターレスは耳まで笑いながら覗き込み、今どんな気持ちだ? 悲しいか? などとウザ絡みしてきた。

「ま、まさか……ターレスさんが手伝ってくれた理由って」

「早く完成したら、おまえの今のその顔、早く見れるだろ」

 なんて人だ。嫌がらせのためには、労力を惜しまない。この人、忍耐力はあるほうだったようです、お兄様。

「鬼ー!」

「バーカバーカ」

 腹のたつ笑い方をして、ターレスが悟天の頭をシッポではたいた。

「何の騒ぎ?」

 ご機嫌なターレスの声を聞き付け、悟飯が顔を出す。悟天がことの顛末を告げると、兄は「そう」と言って続けた。

「早く完成させろよ」

 頭を抱えて絶叫したい。今ならフュージョンしなくても3になれる気がする。悟天はがっくりとうなだれ、しょんぼりとピースを集めて再び最初からはじめた。




 一回目と比べて、比較的覚えている。夜までかかってなんとかもうすぐおわる辺りまでこぎつけ、パズルを眺めていると、悟飯がやってきた。

「あ、兄ちゃん。もうすぐでき…」

 悟飯は何も言わず、パズルの下に敷いてある新聞紙をつかんで振り上げた。ピースが再び、宙を舞う。

「ちゃんと完成させろよ」

 完成しかけていたものをばらばらにしたくせに、悟飯は言い捨てて去っていった。

「ううー……」

 やる気も起きない。しかしやらないのも、兄の説教を食らいそうで怖い。悟天はしゃくり上げながらパズルを拾い、再びやり始めた。


 見つかるとまた引っ繰り返される。ならば、夜のうちに完成させ糊付けまでしないといけない。

 必死にピースを探し、まだやってんのかとちょっかいをだしに来る悟空に気弾をぶつけて近づかないようにしながら、悟天は必死に作業した。

「おっ、またやってんのか」

 ニヤニヤしながら絡んでくるターレスのシッポを傍に置いてあったシュシュでくくり、作業を続ける。力を無くし、くたっと床に倒れたターレスが、必死にシッポからシュシュを取ろうとするのを無視して、悟天は今までにないくらいの集中力でもって続けた。

「はん、いい格好じゃねえか」

 床にはいつくばったターレスの頭をバーダックが踏んでいる。

「取ってくださいバーダック様と泣いて頼んだら取ってやるぜ」

「殺す、バーダック絶対殺す…」

「ああ望むところだ、俺はいつ地獄に帰っても良い」

 ふははは、と若干ターレスに似た笑い声をあげながら、バーダックがターレスをフミフミしている光景を背後に、悟天は頑張った。

「ふん、これくらい、自分で取る……」

 ターレスが意地を張って自分で手を伸ばし、なんとか取ろうとしているが、ついにかくっと力なく床に横たわった。

「うぅー……」

 カラフルな模様のシュシュが茶色のシッポに映えている。普通のゴムに比べて、圧倒的に取りやすいはずだが、力が入らず、ついに力尽きたようだった。

「…この俺様が、なんてザマだ……」

 バーダックに笑いながら足蹴にされ、屈辱に震える。ターレスは床につめをたてて歯を食い縛り、ぽろぽろと涙をこぼしたが、悟天は一切気付かず没頭していた。

「おわったら取ったげるから、そこでおとなしくしててよー」

 どんな状況になっているかも気付かず、振り向かずに声をかける。バーダックがさすがに同情の顔をしたが、しただけで踏むのは止めなかった。

「うぅ…一生恨んでやる…戦闘服にシリアルのカスぶちまけてやるからな、覚えてろ……」

 ターレスがぐすぐすと鼻をならす。

「バカが、シッポ切ればいいだろ」

 バーダックが呆れた声を出し、完全に力を無くしたターレスのシッポを摘みあげた。

「おいっ、ふざけんなよ…切るなよ、俺様の誇りだぞ……何があっても、俺はシッポとともに生きる…」

「また生えてくるだろ」

「生えてこねえよ!! 生えてくるのは子供の時だけだぞバカ野郎!」

「弱点がなくなって良いじゃねえか。大猿の姿は嫌いなんだろ」

「あんな理性のねえ下品な化け物、俺さまじゃねえ……おいなんだそのハサミ、まさか、やめろ、やめろって言ってんだろ!」

 冷たい刄が、シッポにあてがわれる。ターレスは悲鳴を上げたが、バーダックはカウントをはじめた。

「5…4…3」

「やめろバーダック! やだやだやだあっ!」

「2…1…。ふむ、孫二号、かなり集中してるな」

 ちゃきん、とハサミを鳴らしたが、悲鳴を上げたのはターレスだけで、悟天は振り向きもしなかった。

「つまらん。おいターレス、気が済んだら来いよ」

 悟飯が酒を買ってきた、とターレスの頭を軽く叩き、バーダックは部屋から出ていってしまった。
 床にはいつくばったまま、ターレスは悟天を何回か見たが、振り向く気配もなかった。

 くそ、とはがみして、ターレスはふて寝しはじめたのだった。


※※※※※※


 窓から光が差し込みはじめた頃、悟天は感動にうち震えた。邪魔が入らず、最後のピースまではめ終わった。あとは、糊付けするだけだ。

「ついに…やった…!」

 やりぬいた達成感。成果が目に見えるというのは、思った以上に気持ちが良いものだった。

「ふーん」

 冷めた声が、背後から聞こえる。振り向くと、カラフルなシュシュをシッポに付けたターレスが、力なく横たわっていた。不貞腐れているのか、目も開けていない。

「俺はいつ助けてもらえるんだ?」

「えっと…まって、まだ糊付け終わってないから」

「OK、ならせめて態勢を変えさせてくれ。あちこちが痛い。寝返りうてるほどの力が残ってねぇんだ」

 誰かさんのせいで、とはき捨てるようにいわれ、バーダックとの一件に気付いていなかった悟天が眉を下げた。

「ごめんね」

「気にすんなよ。俺は根に持ってるけど」

 かなり深く、と付け加える。ますます悟天は困った顔になった。

「だってひっくり返すでしょ?」

「粉々になるまで粉砕してやる」

「じゃあちょっとねー」

 悟天が腕組みしたそのとき、ぱたぱたと音を立てて悟空が走ってきた。

 悟天が、素早く気弾を打ち込む。

「ふぎゃ!」

 額に被弾した悟空が尻餅をついて、ほおを膨らませ額を撫でた。

「何だよお、ちっとも効果ねえじゃねえか」

「…効果?」

 ああ、と悟空が頷いて立ち上がった。また気弾を打ち込み、尻餅をつかせる。

「悟天、いっつも本気で何かをしねえから、どうしたら良いかって、悟飯に聞いたんだ」

「……へー……」

「そしたら、悟飯も、悟天には忍耐力がないって」

 悟天は納得して頭を抱えた。敬語だったのは、相手が悟空だったから。忍耐力がないのは悟天なので、悟天にパズルを渡した訳である。ターレスはまったく関係なかった。

「じゃ、僕のこの苦労は……」

 何回かマジ泣きした、あのつらい思いは。

 見下ろすと、悟空が立ち上がり、えへ、とごまかし笑いをしたところだった。

「頑張ったな、悟天ッ」

どこかで、ブチ、と音がしたような気がした。





「珍しいな」

 バーダックは、窓から外を覗いた。早朝から、悟天と悟空が手合せしている。珍しく悟天の動きのキレが良く、悟空をボコボコにしている。バーダックは目を細め、ほほえましいものを見た、と、窓を閉めたのだった。



「助けてください美しいパンお嬢様」

「ターレスさん、大丈夫?」




# by oyakatasamah | 2010-05-02 18:57 | DB/短 | Trackback | Comments(0)
感想ありがとうございます!

悟天はキレてもあまり怖くないorトランクスが危害を加えられたら、キレるのどちらかではないかと言う結論が出ました。


キレる悟天の話ではないのでごめんなさい。バレンタインネタです。






 テスト。学生にとって、胃の痛い難関である。それが、卒業にかかっている単位の授業ならば、なおさらだ。

 悟天は、死んだ魚の目をして、黒板の前にいる教師を見下ろした。

 見慣れた、兄の姿を。

 ここ、出すからねー、と当たり前のように言っているが、本来悟飯は臨時である。それがなぜこんな羽目になったかというと、わかりやすい、という生徒の評判と、もうめんどいからそのままやってくれ、という教授の意向を学校が汲んだ結果だった。

「はい、授業は以上で終わり。何か質問ある?」

 にこやかな笑顔で悟飯が教室を見渡し、数ヶ所から手があがった。

「テストは、難しいですか?」

 本末転倒ではあるが、不真面目な学生が望むテストは、当たり障り無く、無事に受かるテストだ。受かりさえすれば、単位が取れる。

「簡単だよ」

 悟飯がほほえみ、教室が安堵の空気になったが、一人悟天だけ、青ざめて手で顔を覆っていた。

 あの兄が、簡単、というのは、自分からすれば、の話なのである。学生のレベルからではない。兄はそんなもの考慮にすら入れていない。
 学生で、少なくとも悟天で太刀打ちできるような問題レベルは、兄の表現だと「非常に簡単」か、「小学生並みに簡単」くらいなのだった。

 意地悪で難しい問題にしているわけではないのが厄介だ。
 悟飯の弟である悟天が深いため息を吐いているのを見て、不安になったのか、友人が手を挙げた。

「先生。救済制度、ありますか?」

 本来ならば授業を受け持っていた教授は、あまり生徒を落とすのが好きではなかったらしく、救済制度、と称してレポートを出していた。提出すれば、点数にプラスされる。

「うーん…特に考えてなかったなぁ」

 悟飯は困ったように考えてから、手を叩いた。

「じゃあ、腕相撲で僕に勝ったら、優をあげよう」

 完全拒否宣言である。

 悟天は、うう、とうめいて頭を抱えたが、悟飯は一見、細身のひ弱な学者である。腕に自信のある学生たちが、目を輝かせた。

「じゃあ、今勝てば、単位くれるんですか?」

「今やりたいのかい? いいよ、僕に勝ったら、単位をあげる」

 よっしゃああ、とクラス全体が歓声で震えた。鍛えぬかれた肉体の学生が、勝ちを確信したように立ち上がり、勝負を挑む。

 教卓に肘を突き、GO、と合図がおわった瞬間、学生の腕は教卓に押しつけられていた。

 騒めいていた教室は、しん、と静まり返った。

「残念だったね。他に、試合したい人いる?」

 手加減はしていた。めりこまなかっただけ、手は抜いていたようだ。その辺は気を遣っている。
 だが、一見ひ弱な学者先生が、筋肉隆々の男に圧勝した事実は、学生たちの浮かれた気分を叩き壊した。

「ええーと。言い忘れてましたが、テスト範囲は、全部、だからね」

 悟飯は、辞書並みに分厚い教科書を振った。ざわ、とざわめきが大きくなる。

「ちゃんと全部読んできて。まあ、このくらい、30分もあったら読めるよね」

 ざわめきが大きくなる。友人が、悟天の肘をつついた。

「お前の兄貴、頭おかしいぞ」

 なんとかしろよ、絶対ヤバい、と後ろに座った友人も悟天をつつく。

 やばい、やばいよ、と焦る悟天のケータイが震えた。トランクスだ。

『なあ、悟天。今暇か?』

「助けてトランクス。ヤバいんだよ、兄ちゃんのテスト、範囲全部だって」

『あー暇そうだな。じゃあそっちに』

 トランクスの声は、最後まで聞き取れなかった。悟飯が、悟天を睨み付けている。

「授業中に、ケータイかあ」

 優しげな声が、恐ろしい。

「今はさ、僕を一番怒らせちゃいけないときだ、ってことぐらい、わかるよね?」

 トランクスのバカ。
 取ったのは自分自身だが、そう思わないとやってられない。

「じゃあさ。腕相撲で悟天が勝ったら、テストを合格にしてあげる。負けたら、救済措置なし。再試も認めない……全員ね」

 教室中がどよめいた。兄は、本気でキレたようだ。負けてやる気はないと、目が告げている。

「早くおいで。棄権したら、負けにするよ」

 頼む、勝てよ、と友人たちがプレッシャーをかける。悟天は、深いため息を吐いて立ち上がり、教卓の前に立った。

 天下一武道会でも、こんなに緊張しなかった。マジでヤバい。悟天は緊張のあまり目の前がちかちかした。
 世界を救う、だとか、自分がなんとかしなければ後がない、といった局面に出くわしたことがない。いつもトランクスと一緒で、いつも兄が守ってくれた。悟天は、がちがちになって兄を見た。

「ほ、ほんとにやるの…?」

「当たり前だ。早く腕を出せ」

 負ける。もうこれ、絶対に勝てる気がしない。悟天は腕を出し、教卓に肘をつけた。

 GO、と学生の一人が叫び、悟天はやけくそになって力をこめた。

 ちょうど、五分と五分。

 瞬殺ではなかったことで、教室内はヒートアップした。負けるな、絶対勝て、と教室中が歓声を上げる。

「ぐぐ…」

 ああ、やっぱり強い。負ける。
 次第に力負けしていく。
 悟天が負けを悟った瞬間、すぐ近くで幼い声がした。

「なあ」

 いつのまに入ってきたのか、ランドセルを背負った悟空が、小さい長靴を履いて、二人を見上げていた。

「はい、あげる」

 しっぽを揺らしながら、ラッピングされたチョコを突き出され、悟飯の力がほんの少しゆるんだ。

「ぱぱ」

 少し恥ずかしそうに悟空がはにかむ。この機を逃す手はなかった。悟天は全力をこめて、悟飯の腕を教卓に叩きつけた。

 教室が静まり返り、それから熱狂的な歓声が爆音となって教室に響いた。



※※※※※※



「ってことがあったんだよー」

 悟天は上機嫌で悟空を膝にのせ、シッポの毛を逆立てていた。
 テストはやはり難しく、おわった後、悟天は友達から胴上げされた。テストを受ければ合格にしてくれると約束したから、どんな悲惨な点数でも構わない。

「久々に感謝したよ、父さん。たまにはいいことするんだね」

 たまには、とターレスが笑い、悟空はむくれた。

「たまには、って何だよぉ」

「ま、トランクスに言われたんだろうけどね。父さん、その辺機転は利かないもんね」

 お礼を言われているはずなのに、何だかバカにされている。悟空は悟天を振り返った。

「オラのこと、嫌いか?」

「正直、うん、ちょっと」

 悟天が右手で少しだけ、とジェスチャーし、ターレスが顔もあげずに吐き捨てた。

「黙れ放蕩親父」

 ふぎゃあ、と悟空が悲鳴を上げながら部屋から飛びだした。

 あーあ、泣いた、と言いながらも、ターレスも悟天も、謝る気もおいかける気もなかった。

「なあ、悟天」

 ぽん、と肩に手が置かれ、悟天は喉を締めあげられたような悲鳴を上げた。

「おおおおにいさま…」

「点数…いらないみたいだな?」

 アルティメのような殺気あふれる気が、悟天にまとわりつく。悟飯の姿を見た瞬間にターレスは逃走していて、助けにもならなかった。

「いや、まさか、そんな、勘弁してください…」

「お前、本当にバカだ」

 あれだけかさまししてやるといったのに、と悟飯は怒りで大気をふるわせながら、写真を見せた。

 テストの上半分が写っている。学年、学籍番号…そこまではよかったが、肝心の、名前がない。

「か、書き忘れた」

 はー、と悟飯はため息を吐き、「点数やらないからな」と言ってから、声音をかえた。

「お前、さっき何してたっけ」





 ぼろぼろになって倒れている悟天を発見し、ターレスは真っ青になった。危なかった。
 逃げてよかった、とホッとしたのも束の間、ぽん、と肩に手を置かれた。

「ターレスさん、お話が」




 ぎゃあああ、と上がる悲鳴をききながら、バーダックは悟空を腹にのせ、へぷしゅ、とくしゃみをしてから、昼寝を続けたのだった。



# by oyakatasamah | 2010-02-14 16:01 | DB/短 | Trackback | Comments(1)
感想ありがとうございます! ちゃんとDBも書き続けますのでご安心ください。

今回もラディッツは不幸です







 いつものように朝ご飯を食べ終わり、ラディッツが片付けをはじめてから、ブルマがリビングを出ようとして振り返った。

「ああ、そうだ。今日、孫君たちと一緒に夕食だから、買い出しに行ってきてよ」

 まだ食べている途中のトランクスは、何となくラディッツの顔を伺い、表情がおもしろいくらい青ざめていくのを目撃した。

「……カ、カカロット達と…?」

「そうよ。たまには家族と一緒が良いと思って」

 ラディッツは、孫一族、正確には悟飯と仲が悪い。いや、そんな軽いものではない。命を狙われている。
 自らがかつて行った行為による完璧な自業自得ではあるが、運が悪いのは、悟飯が一族きっての天才であることだった。
 いったん離れたところに預け、一方で確実に仕留めるために虎視眈々と狙う。矛盾するようで、一貫している……ひとときの安楽の場を得ながら、恐怖を与えられる、生き地獄を味あわせるという意味で。

「い、いや、あの、俺は……あんまり……」

 ラディッツは弱虫である。裏を返せば、力が上の者には反発しない、従順な男である。王子の妻であるブルマは、ラディッツにとって逆らうことは許されない絶対者だった。ラディッツは、気分を害さない程度に、視線をさまよわせ、すぐに「Yes」と言わないことでさり気ない拒否をしめしたが、ブルマがそれに気付くはずも無かった。

「久しぶりに会うでしょ。楽しみよね」

 ラディッツは、助けを求めるようにトランクスを見た。完全に命乞いの眼差しで見つめられ、トランクスは言葉を探したが、孫一族の一員である悟天と親友のトランクスには、残念ながらラディッツを助ける言葉が見つからなかった。

 最後の頼みの綱は、馴れ合いを嫌うベジータだけだった。
 しかし、ベジータはラディッツが悟飯に嫌われているらしいと気付くだけの人間観察力は持ち合わせていなかったし、かりに持っていたとしても、たかが弱虫野郎のために王子である自分がなんとかしてやろうという考えは、これっぽっちも浮かばない。そして、そんな男であることを知るラディッツは最初からベジータを除外している。
 だから、ラディッツの中では、トランクスが気まずそうな表情で目を反らした時点で、すべてが終わっていた。

「あ、ああ……そうですね…」

 大げさなリアクションは、絶対者であるブルマに対する明確な拒否を意味する。ラディッツは視線を震わせ、唇を震わせて、静かに死を受け入れた。

 トランクスは、気まずそうに目を反らした後、ラディッツを盗み見た。表情や動きをまったく変えず、瞳だけが絶望の色に染まっていく。死刑を宣告されたら、こんな目になるのか、とトランクスは鳥肌が立った。

「ラディッツ」

 ベジータが顔を上げ、トランクスはラディッツの絶望に光が入るのを見た。期待していなかった者からの助け船。だからこそ、下手なことは言わないでくれ、とトランクスは祈った。

「はい」

 ベジータは、ラディッツを見上げた。

「グミ買ってこい」

 トランクスは、真の絶望の瞳を目撃した。


※※※※※※


「嫌なことは、嫌って言って良いよ。声に出して助けは求めないと」

 トランクスは、買い出しを手伝いながら、ラディッツを見た。ラディッツは、はあ、と言って頭を掻いた。

「……多分、そう言うことが言えたら、俺は死んでないと思うんです」

 どういう最期だったのか、トランクスは知らない。知るのはピッコロと悟空だけだそうだが、悟飯が垣間見せる明確な殺意を考えると、悟飯も知っていそうな気がした。

「一人だけ、参加しない、とかさ」

「一人のところを狙われて殺られます」

「できるだけ悟飯さんに近づかないとか」

「奴は気配を消せますが俺は無理です」

 まさに八方塞がりである。向こうも、いたぶる好機と見ているだろうし、隙あらば地獄に送り返そうと狙っているのは明らかだった。

 二人してため息を吐いた、その時だった。

「あら、トランクスくんじゃない」

 元気? と声をかけてきたのは、ビーデルだった。振り返り、「お久しぶりです」と挨拶してから、ビーデルの背後に悟飯を見つけた。

 何でここに、と言わんばかりの目付きで、後ろからラディッツを睨んでいる。ラディッツが真っ青になって、一歩後ずさった。悟空の気配はない。死んだ、とトランクスはラディッツと悟飯を見比べた。

「まぁ、ラディッツさん。お久しぶりです」

 ビーデルがほのぼのと挨拶してくる。おや、とトランクスは気付いた。不意打ちの悟飯との遭遇に完全に怯え、声も出ないほどに怯えているラディッツは気付いていないが、悟飯はあからさまに悔しそうな顔でラディッツを睨んでいる。

 何で攻撃してこないんだ。

場所か。

時間か。

今いる人数か。

 あらゆる可能性を考え、トランクスがはじき出したのは、「ビーデルの傍にいるから」という、単純かつ明確な答えだった。

 ラディッツがビーデルから離れることは、すなわち彼の死を意味する。まだそのことに気付いていないラディッツは、自ら命のともしびを消そうとしていた。完全に、逃げ腰なのである。

「ビーデルさんたちは、今日は買い出しですか?」

 会話を途切れさせると、悟飯に有利な方向に持っていかれる。戦争…ラディッツにとっては命を守るための、トランクスにとっては余計な血を見ないための、情報戦が発生していた。

「そうなの。みんな、よく食べるでしょう? たくさん買っていかなきゃ」

 ねー、あなた、とビーデルが悟飯を振り返り、直前まで視線だけで殺せそうな顔でラディッツを睨んでいた悟飯は、一転してさわやかな笑顔をビーデルに向けた。

「そうだね」

 ここで、ようやく冷静になってきたラディッツが、誰がストッパーになっているか把握したようだった。

「い、一緒にごはんですから、買い出しも一緒に行きませんか」

 下手に離れると危険、と悟ったゆえの発言だったが、ビーデルは困ったように口元に手を当てた。

「それが、もう大体決めてしまって。トランクス君を見つけて、レジの方から来たのよ」

 ごめんね、と謝るビーデルの後ろで、悪魔が満面の黒い笑みを浮かべた。

「そうだ、ビーデル。先に会計を済ませてきたら?」

 あら、そうね、とビーデルが手元のカゴを見た。
 まずい。
 トランクスは、とっさに「待って」とビーデルを止めてから、考え考え言葉をひねり出した。

「最近寒いですから、その、パンちゃんとか、ええと、風邪引かないように……」

 苦しい、苦しすぎる。トランクスが視線をさ迷わせると、ラディッツがはっとしたように天井を指した。

「二階の、子供服売場で、安売りしてますよ。一緒に行きませんか」

「うーん…安売りかぁ…でも服を買うのはちょっとねー…」

 うまいことトランクスの台詞を助けてくれた形になったのだが、肝心のビーデルが渋ってしまった。もう打つ手が無い。
 青ざめるトランクスとラディッツだったが、意外にも悟飯が場を離れた。

「あら? あなた、どうしたの?」

「子供服見てくるよ」

 さわやかな笑顔で上を指す。もう、パンには甘いんだから、とビーデルがぷりぷり怒るが、トランクスとラディッツは、何となく、誰に買うのか悟っていた。

「まったく……。じゃあ、ごはんの時に会いましょうね」

 ビーデルが手を振ってレジの方へ去っていく。トランクスとラディッツは深く安堵のため息を吐き、一時の勝利を噛み締めたのだった。


※※※※※※


 地獄へのカウントダウンが始まっている。会食の準備をしながら、ラディッツがため息を吐いていた。店では退けられたものの、会食では危うい。トランクスは、心配になってラディッツを眺めていた。

 トランクス自身はストッパーにならない。どれだけガン見していようが、悟飯はラディッツを八つ裂きにするだろう。
 ただ、痛め付けて、後悔させながら、なぶり殺しにするつもりらしいから、一瞬目を放したらラディッツが死んでいた、ということはなさそうだ。
 可能性としては、茂みに引きずり込み、口を塞いでじわじわと時間をかけつつ首を絞めて殺す手口が考えられる。
 腕を引きちぎり、失血死していくのをニヤニヤしながら眺める可能性もある。
 どちらにせよ、長時間、ラディッツの姿が見えなかったら、危険ということだ。

 ウチが殺人現場にならなきゃいいけど、とため息を吐いてから、トランクスは親友の気配を察して出入口に目をやった。

「ひっさしぶりー」

 ノーテンキな声にイラッとする。悟天自身は何の落ち度も関係もないが、トランクスを不安にさせている男の弟である。トランクスは、とりあえず悟天のほおをつねっておいた。

「ア痛ッ! 何すんだよぉ」

「うるさい、うちが殺人現場になったら、お前のせいだからな!」

 むー、と悟天はむくれた。

「そんなの、兄ちゃんに言ってよ」

 少なくとも、トランクスが何について悩んでいるかについては、よく理解しているようだ。

「言えたら苦労しないよ」

 トランクスが腕組みし、すぐ脇にいたラディッツが振り返った。

「良いんですよ、殿下」

 ふ、とラディッツが笑う。すべてを諦めた男の顔だった。

「一度死んだ身です。また地獄に帰るだけ…地獄ならば奴も追ってはきません」

「おお、悟った。じゃ、楽にしてあげようか?」

 悟天がかめはめ波の構えをとった。苦しんで死ぬより、一瞬で楽にしてやろうという配慮からきた行動だったが、ラディッツは心底怯えた顔になって後退り、尻餅をついた。死の恐怖は、簡単に克服できるものではないようだ。

「…嘘だよ。おじさん、冗談抜きで弱虫だよね」

 普段バーダックから腰抜け扱いされている悟天からもダメ出しを食らい、ラディッツは尻餅をついたまま頭を抱え、はぁ、と深いため息を吐いた。

「あら、ダメよいじめちゃ」

 座り込んでいるラディッツを囲むように立っている悟天とトランクスを見とがめ、ブルマがやってきた。

「いえ…俺が弱虫なのが悪いんで」

 手で顔を覆い、深くため息を吐くラディッツに、ブルマは「ふーん」と言って腰に手を置いた。

「確かに弱虫よね。孫君と血がつながってるとは思えないくらい」

 容赦ないブルマの口撃。ラディッツは手で顔を覆って表情を見せなかったが、すんすん、と啜り上げる音が聞こえた。

「ベジータにも見習ってほしいわ。ベジータも孫君も、一体何回死んだかしら」

「ん? 誉めてるの?」

 トランクスが怪訝な顔になり、ブルマは何をいまさら、と言いたげな顔をしてトランクスを見た。

「あったりまえじゃない。弱虫はね、危ないところには近づかないし、プライドさえも投げ出して我が身を守るのよ」

 弱虫は、ぜったいに、生き残るんだから、とブルマは語気を強めてから、去っていった。

「確かに」

「一理あるね」

 トランクスと悟天は顔を見合わせ、納得した。すぐに喧嘩を売るターレスに比べ、ラディッツは全力で被害を避けようとする。
 ただ、問題が一つ。全力で避けても、歩く大災害が襲ってくるので、結局死にかける目にあうのだ。

「じゃあ放っておこうか」

 悟天が明るくばっさりと切り捨てる。その清々しすぎるほどの明るさから、思わず頷いてしまったが、すぐに首を横に振った。

「冗談じゃない、うちが殺人現場なんてゴメンだ」

「おじちゃんが心配って訳じゃない辺りが、トランクスってベジータさんの子供だよね」

 悟天があははと手を振って笑い、それから手を叩いてトランクスを見た。

「そうそう、あのね、今日兄ちゃん、学会で来ないから」





 うお、とターレスは悟空のほっぺをぷにぷにしながら、すさまじい殺気に気付いて顔を上げた。痛いよー、止めてよー、と悟天の情けない声がする。ラディッツが腰を抜かし、ガタガタ震えながら修羅と化したトランクスを見上げていた。

「若トラも怒るのか……怖ぇなあ、さすが王族の気迫」

「トランクスは強ぇんだぞぉ。あんなに怒ってるのはオラも初めて見たけど……悟天、何言ったんだぁ?」

 何を言ったんだろ、と同じ顔をを寄せ合って首を傾げる。一人、バーダックだけは、口をへの字に曲げ、必死に笑いを堪えていたのだった。



# by oyakatasamah | 2010-01-12 21:04 | DB/短 | Trackback | Comments(2)
あけましておめでとうございます。

更新が亀のように遅い当サイトを御覧いただきありがとうございます。

今年は更新頑張っていきます!!


 さてこのたび戦ムソ3を買いました。ので、戦国ネタもまた増えるかと思います。



 2と猛将伝に比べ、圧倒的に人数が多いことにまずびっくり。


 以下ネタばれです、ご注意を。


 三成のもこもこがイチゴ大福に見えて仕方ありません。すねたらあのもこもこに頭を埋めそうです、殿ならきっとできる!

 ツンデレもいかんなく発揮。てか正則の昭和具合、気付くまでに時間がかかりました。
 ああ、態度だけじゃなくて髪型も…なんだ。あ、ちゃんとちょんまげなんだ。

 三成の章のエンディングでは、感動シーンなのに、ギャ○漫画日和の、猪八戒が一番最初に天竺へのゴールを切る話を思い出してしまいました。

 清正かっこいいです。あと使いやすいです。官兵衛つかったあとだと、なおさらそう思います。
 でも格好よく見えるたびに、熊本城に行ったことを思い出します……あの辺の地名が、花畑だったという衝撃。なんて読むのかは、忘れました。漢字が花畑。


 年賀状書くたびに、三成が妙な顔しそうです。


 熊本城の城主一族は何回か変わっているんですが、確か熊本城の横に清正神社があったはず。だから住所は花畑でいいと思います。

 違ったら申し訳ありません。



 くのいちの性格が変わりすぎて、洗脳でもされたのかと不安になりました。けなげすぎる…! 武田軍唯一のツッコミが、一番の天然に恋する乙女では不安になります。

 武田軍のツッコミの存在が危惧されるなか、永遠のツッコミ不在と目されていた上杉軍に新キャラが現われました。プレイヤーキャラではありませんが、きっと謙信と兼続にツッコミを入れてくれるはず!

…あれ?

「姉上、お下がりください、姉上!」(by 謙信)

……あれ??

 ムービーにて兼続の手をヒールでふみふみ。

………これはまさかの…

女王さま…?(ゴクリ)


サー、イエッサー!
お姉様の言うことは、絶ッ対!
闘争したくてもお姉様が下がれといえば下がります、イエッサー!

「かわいい謙信…」

「そこに愛がなくては!」

 上杉軍にツッコミなど不要! すすめ愛を振りまくために!

 白魔法を使いそうな格好のお姉様に、FF九のネズミ竜騎士みたいな格好のわんこ二号。一号はかわいい弟です。

 ちなみに、上杉が北条に攻め込んだ原因の一つが、

『雪掻き要員集め』

だという話。越後の雪なめんなってことですか。そう思うと、上杉軍がやたら必死に見えてきます。


 寒いのか、四国の元親ももっこもこです。主に首元。何かに似てるなと思ったら、DBGTの、蜂の格好したパンちゃん。主に首元のもこもこがそっくり。



 今んとこプレイした中で、一番受け子っぽいなと思ったのは、

官兵衛。

 年下受けですよ! 普段からマイナー好きですが、これは王道でしょう!

…探しても見つからないのは、どういうこと…?

 きっと探し方が悪いんですね! もっと気合い入れて探します!

 愛の伝導師・上杉軍のお姉様が『愛のある闘争』を持って官兵衛をせんの…導けば良いと思います。
 そして『愛のある闘争』がすべての武将をせん…導いて、天下が統一されればなお良いと思いますハァハァ!

 …失礼しました。

今年も当サイトで楽しんでいただければ幸いです。

# by oyakatasamah | 2010-01-01 21:14 | Trackback | Comments(0)

最近購入した子供用コスプレ服が、クマのぬいぐるみにぴったり。

調子に乗って色々付けてみました。
悟空の胴着なのにスカウターなのはご愛敬。

ちなみにクマの名前はクマトロ。遠い目に見えるのは、角度だけのせいではないかも知れません。
ネタがわかった人はそらとお友達になれると思います。
# by oyakatasamah | 2009-12-26 03:20 | DB/画 | Trackback | Comments(0)
 こたつに肩まで入っている自堕落なサイヤ人を眺め、悟天はあきれ顔になった。ターレスがリビングに敷かれたこたつから顔だけ出して、本を眺めている。
 めずらしく、その横に悟空がいた。同じく、顔だけ出して、その本を指差している。何か、教えているようだ。

「『ダメよ、と、マーガレットは言いました。ままが帰ってくるわ。しかしボブは強引に…』」

「ッだーーー!!」

 悟天は内容を察知し、素早く本を奪い取った。

「あー、とったー!」

 悟空がべそをかき、手を伸ばすが、こたつから出る気配はない。

「まさか俺のじゃないよねっ!?」

「それ、オラの!」

 マジかよ、と悟天は口の中でつぶやいた。エロ本の一つや二つ、持っていてもおかしくないが、何でそれをターレスに読み聞かせていたのかが謎である。

「なんだよ、話の途中だろ!」

 ターレスもターレスでなぜか興味津々だ。だが、やはり寒いのか、こたつから出る気配はなかった。

「これは、一人で見るもんです。リビングで音読みするもんじゃないの!」

「それ、オラの教科書なのに」

「夜の教科書ってこと?」

 違うもん、と悟空はぷくぅっとむくれた。

「それ、亀仙人のじっちゃんとこで勉強してたときの、国語の教科書だもん!」

 軽くめくってから、悟天は呆れてため息を吐いた。

「仲良しになったのはいいけど、こういうのを読みあう仲ってのも、ちょっとね」

「仲良しじゃねぇ」

 ターレスが顔までこたつにいれた。悟空もこたつの中にもぞもぞと潜り込んでいく。ターレスはもごもごと答えた。

「地球の字を教えるっつぅから見てただけだ」

「あのね。これは……」

 エロ本だよ、と言ったところで、知ってる、と返ってきそうだ。ターレスだっていい年なのだし、なんといってもエロオーラ全開なのだから、そういうことぐらいは……あれ?

 いやな予感がし、悟天は頭だけ出ているターレスをつついた。

「……ターレスさん、子供は」

「いるわけねえだろ、バーカ」

 顔も出さず、吐き捨てるような返事が返ってくる。

「じゃあ、赤ちゃんがどうやって生まれるとか、知らない…ってこと?」

 馬鹿にすんな、知ってる、とターレスはこたつから顔を出した。

「保育器のなかに入ってんだ」

 やばい、発想がコウノトリレベルだ。サイヤ人は保育器に子供を入れっぱなしらしいから、現実体験からくる発想なのだろうが、じゃあ、その中に入ってる子はどこから来たのと聞けば、キャベツ畑とか抜かすに違いない。ドSのくせに。

 悟空やベジータにも子供はいるし、サイヤ人にまったく性欲が無いわけではないだろう。

ただし。

(この人、酒と美味いものと破壊、を好むって言ってたよなあ…女じゃなくて)

「ターレスさん…女の子、どういう子が好み?」

 んー、とこたつのなかに顔を突っ込み、ターレスはもぞもぞと体勢をかえた。

「強い奴。シッポがあれば最高だな」

 サイヤ人の女がいい、ということだろうか。こたつからシッポの先が出た。

 なるほど。地球人は強くもないし、シッポが無いから、興味を持てないだけなのか。よかったよかった、と内心ホッとした悟天に、ターレスは顔をこたつに入れたまま言った。

「部下にすんなら、それが条件だな」

 頭がくらくらした。この人、やたらエロい表情とか行動する割に、マジで何にも知らないのか。まあ、知らなかったら知らなかったでいいが、たまに学校に行ってもらってるだけに、気掛かりだった。

 布団から出て、ぱたんぱたんと床をたたいているシッポがやたら上機嫌に見える。あれ掴んだら、ほかほかなのかな、冷ましてんのかな。悟天は握りたくてうずうずしながら、ターレスの隣に足を突っ込んだ。

 むにゅっとしたものをこたつの中で踏み、ふぎゃあ、と悲鳴が聞こえるのを無視する。がぶっと噛み付かれ、悟天はこたつの向こう側に蹴りだした。

「じゃあさあ、地球の女の子が、付き合ってーって言ったら、ターレスさんどうするの?」

 んー、とターレスは眠そうな声を出した。少し寝ていたようだ。眠そうな声で続けるが、むにゃむにゃとだけしか聞こえなかった。

「どうなのー?」

 揺り動かそうとしたが、くぅくぅと寝息が聞こえてきて止めた。起こすと、きっとすねるに違いない。
 さっきから脚にじゃれついてくるのを再び蹴りだし、悟天はため息を吐いた。

「ただいまー」

 悟飯が帰ってき、悟空が悟飯に飛び付いていった。何度か蹴りだした件を告げ口したのだろう。
 真顔で、俺そんなことしないよ、と言えば、悟飯はターレスの仕業と思ったようだった。

「また、ターレスさんときたら」

 顔を隠しているこたつ布団をめくり、悟飯が一瞬びくっとした。

「うわ」

「なに? …うわ」

 遅れて覗き込んだ悟天もうめく。
 いつもの酷薄めいた表情が消え、ターレスは心底幸せそうな表情を浮かべて寝息をたてていた。
 そういえば、寝顔を見るのは初めてだ。普段からこんな顔で寝るのだろうか。

「……叱れないじゃないですか」

 チッ、と悟飯が舌打ちした。顔が似ているだけに、悟空を連想させて叱りにくいのだろう。起きたら、何か理由を付けて、てひどい鉄槌を食らわせるにちがいない。

 そんなことを考えながら、何となく反射的に、足にじゃれ付くものを蹴とばすと、ふぎゃあ、と悟空がこたつの中から転がり出た。兄の冷たい目が、悟天に刺さる。

 何もしなければターレスに罪を着せたままだったのに、余計なことをした、と悟天は顔をしかめてから、兄を振り返った。

「兄ちゃん。これ、父さんの。あずかっといて」

 取り上げた本を悟飯に渡す。悟空が飛び上がり、だめ、だめ、返せよぅ、と悟飯の足にしがみつくが、悟飯は悟空の頭をナデナデしてから本をめくった。ぴたりと手が止まる。

「教科書だったんだって」

「……へー」

 ぺらぺらとめくってから、悟飯はふう、とため息を吐いて、悟空のほっぺを両手で挟んだ。

「お父さん。こういうのは、まだ早い…じゃなかった、パンの目にとまったら、やっかいなことになりますよ。見つからないところにしまってください」

「わかった……」

 シッポまでしょんぼりとして、悟空は本を抱えてリビングから出ていった。

「悟天も悟天だ。こたつから父さんを追い出すなんて、鬼みたいなことを」

 悟飯がこたつに足を突っ込みながら悟天を睨み、悟天は開いた雑誌に目を落としながら言った。

「兄ちゃんはさ、こたつの中に猫がいて、そんで噛み付いてきたらどうする?」

「蹴りだすに決まってるだろ」

「でしょ」

 悟飯はこたつの上のみかんに手を伸ばした。

 悟空がぱたぱたと走ってきて、悟飯の膝の上にのる。むいたみかんをまるまる悟空の口に放り込み、悟飯は悟空のシッポを撫でながら顔をしかめた。

「猫と父さんを一緒にするな」

 悟天は言い返そうとしたが、ターレスが、くちゅ、と意外に可愛らしいくしゃみをしたので気が削がれた。まだ起きる気配はない。

 ごめん、と一言謝ってから、悟天は部屋に戻った。机に立て掛けた教科書類を整理し、カバンに入れようとして手がとまる。

 教科書類の中に、悟空の「教科書」が押し込まれていた。

 俺のとこに押し込めばわからないと思ったのか。変なところ、頭の回転が速い。
 悟空はチチと共有の部屋しか持っていない。隠すわけにはいかない、と考えた末の知恵なのだろうが、息子の勉強道具のなかにエロ本を入れたこと、後悔させてやろう。
 何となく虫の居所が悪かった悟天は、悟空のランドセルにそれを入れておいたのだった。


※※※※※※


 学校に着いて、カバンの中身を引き出しにいれた。宿題を思い出し、ノートをひっぱりだしてから、悟空は「ウッ」とうめいて手を止めた。

 あの本が、入っている。

 悟天のところに突っ込んだはずなのに、いつのまにかランドセルに入っていた。早々に気付いた悟天が、仕返しに入れたのだろう。

 あわてて机のなかに押し込んだが、近くの席の男の子が覗き込んで来た。

「何隠したの?」

 まずい。非常にまずい。悟空はちいちゃな手で頭を抱え、うう、とうめいた。

「あの、あの、オラのおじちゃんが勝手に入れたの」

 これ、と出す。男の子は覗き込んでから、はっと息を呑んで口元を押さえた。

 なに、なに、とまわりの児童も集まってくる。軽い騒ぎになったところに、担任がやってきた。

「せんせー、悟空君がいけないもの持ってきてるー」

 誰かが叫び、あわてて隠したが担任が近づいてきた。

「何を持ってきたの」

 もうどうしようもない。観念して、悟空は本を渡した。

 担任が軽くめくる。最初は、苦笑気味だった表情が、徐々に真顔になっていき、最終的には困った顔になった。

「自分で持ってきたのかな?」

「おじちゃんが勝手に入れたの、オラ知らなくて」

 全力で悟天に責任を押しつける。悪いとは思ったが、小学生が持っているより大学生が持ってるほうが自然だろう。

「これは、没収です。親御さんに取りに来てもらうからね」

 担任に言われ、悟空は、はい、としょんぼりうなだれた。




「で」

 悟天はソファに座って脚を組んだ。

「僕に言うことは?」

 書斎に呼び出され、そこに立て、と命じられた悟天は首を傾げた。

「何が?」

 悟飯が無言で机の上に本を投げ、悟天はすべてを理解した。同時に、無駄とわかっているがデンデに祈る。

「おじさんが入れたらしいんだ」

 悟飯が眼鏡を押し上げた。光の反射で表情が見えないのが、やたら怖い。

「もう一度聞く」

 僕に言いたいことが、あるだろう?

 静かな声ながら、ばち、と辺りの大気を震わせ、悟飯がもう一度尋ねた。



「あれ、悟天は?」

 いつもなら帰ってくる時間帯のはずなのに、姿が見えない。ターレスが、複雑な顔をして悟空を見、バーダックも非難めいた視線で悟空を見たが、二人とも「おかえり」しか言わなかった。

 悟天はどこにいったんだろう、と首を傾げながら、悟空はこたつに潜り込み、みかんに手を伸ばしたのだった。




# by oyakatasamah | 2009-12-12 22:46 | DB/短 | Trackback | Comments(0)
「…予防注射?」

 そうです、と頷く悟飯を見て、バーダックは首を傾げ、ターレスは顔をしかめた。

「おいそのチラシ」

 チラシじゃなくてご案内ですよ、と訂正する悟飯を無視し、ターレスは指差した。

「動物病院じゃねぇか」

 犬と猫のイラストがかかれた案内を持った悟飯は、さわやかに笑った。

「そうですよ」

「そうですよじゃねぇ!!」
「畜生扱いかよ!」

 シッポを膨らませて文句をいう二人に、悟飯は困ったように首を傾げた。

「ターレスさんは予防注射しなきゃ。放し飼いなんですから」

「言ったなこの野郎!」

 ターレスがシッポを膨らませて叫ぶ。

「……俺も放し飼いか?」

 バーダックが不満げにシッポでソファを叩き、悟飯は首を横に振った。

「バーダックさんはこっち。これはターレスさん専用です」

 言いながら、今度は普通の病院のチラシを振る。

「今年は風邪が流行しやすいとかで。ターレスさんのは……」

 悟飯はそこで切って、動物病院のチラシを見た。

「狂犬病です」

「人間も打つのか?」

 場所が違うだけで、打つものは同じかと思って聞いたようだ。悟飯はさわやかに笑って首を横に振った。

「人間もかかりますが、基本的に、犬です」

 声にならないターレスの怒り声がくぐもって聞こえた。


※※※※※※


「冗談に決まってんじゃん、ターレスさん見た目は人間なんだから」

 悟天は呆れて肩をすくめた。

「あいつが言ったら冗談に聞こえねぇ」

 ターレスがうめき、バーダックも頷く。

「冗談だったと、今知ったぜ」

「予約は取ってるから。あとは行くだけだよ」

 病院の場所は、と、悟天が案内に目を落としたとき、目の端に小さなシッポが見えた。

「痛いんだぞ」

 予防注射を打ちに行く、ということを知っているらしい悟空が、体右半分だけ出して、壁ごしにこちらを見ていた。シッポが小刻みに震えている。

「メチャクチャ、痛いんだぞ」

 声が震えている。悟空は少し前に予防注射を打った。もう痛くないはずなのに、想像しただけで恐ろしいらしい。
 悟空の注射嫌いを知っている悟天は、「はいはい」と受け流し、場所を確認した。

 しかし、悟空は宇宙最強である、という頭があるサイヤ人二人は、真顔になって悟空を見下ろした。

「マジか」

「そんなに痛いのか」

 自分のシッポを握り、暗い顔になって、悟空は頷いた。

「オラ、死ぬかと思った」

 宇宙最強の男が、全力で拒否する。バーダックもターレスも、サイヤ人のなかでは強い部類といえど、悟空には負ける。未知の『チュウシャ』とやらは、よほど恐ろしいに違いない、という認識が出来上がってしまったようだった。

「場所確認できたよ」

 悟天が顔を上げると、バーダックもターレスも、青ざめて腕組みしていた。

「あのね、父さんは昔ッから注射嫌いなんだよ」

「痛いんだぞ」

 悟空がつぶやき、悟天は呆れて腕組みした。

「初めて打つ人にそんなこと言ったら…」

「俺は行かない」

 ターレスは首を横に振り、あとずさった。

「ほぅら、こういうことになる。…あのね、ターレスさん。一度死んだ人が怖がるほどの痛さじゃあないよ」

「俺は消滅系の最期だったから。あんまり痛くなかった」

 な、とターレスがバーダックを見る。バーダックは肯定とも否定ともとれるうめき声を出しただけだった。

「どっちにしろ、怖がるような痛みじゃないったら。ちょっとちくっとするだけだよ、そんなに痛くない」

「ちくっ、じゃない」

 悟空はシッポをぴんとたてて悟天を見上げた。

「じゅわーっ、てなんか入ってくるのが分かるんだぞ! しばらくさしたままなんだぞ!」

 うう、と呻いて、かに頭二人が動揺の表情を浮かべた。やったことが無いだけに、想像が膨らみすぎて、収拾がつかなくなっているようだ。

 無理矢理押さえ込んで打ってしまおうか。

 トランクスと二人で押さえ込む様を想像し、悟天はちょっとおかしくなった。押さえ込んだ腕の間から、もふもふのしっぽがぱたぱた揺れて、ぎゃんぎゃんわめくに違いない。それこそ、まるで動物病院のようだ。
 しかし、初めての注射で、押さえ込んで無理矢理というのはトラウマになるかもしれない。

「打たないと、地球のウイルスにやられて死んじゃうかもしれないよ」

 死ぬよ、という脅しは、バーダックには効かないがターレスには有効だ。二人とも注射をする気持ちがグラグラ揺れまくっているが、特にターレスが、行かない、とおじ気付いている。バーダックは恐がっている気配はあるものの、行く、とも、行かない、とも言っていない。悟天は、ターレスを重点的に攻めることにした。

「死んだら…ブロリーが…うう、だが注射は…」

 死ぬか注射を打つかで悩む大人もめずらしい。悟天が腕組みすると、バーダックは悟天に顔を向けた。

「おまえは、打ったことあるのか」

「うん、毎年打つよ。痛いけど、メチャクチャ痛くはないし」

 ああ、とバーダックはどこか安心したように頷いた。

「おまえが我慢できる程度なら、たかが知れてるな」

 はん、と鼻までならされた。

「…なんか納得いかないけど、安心してくれたならよかった」

 俺は安心してない、とターレスがシッポを膨らませる。完全に悟天を見下しているバーダックと違い、ターレスは悟天の戦闘力の高さだけは認めていた。悟天が我慢できたところで、自分はどうなのかわからない、と考えたようだ。バーダックは、説得を手伝うどころか、テーブルの上に視線をやっている。

 これでは埒が開かない。早く行かないと、病院にも迷惑だ。

 行かない、と首を横に振るターレスを眺め、悟天は困って腕組みした。

「悟天おじちゃん」

 テレビを見ていたパンが、独り言のように声を出した。

「パパ、仕事終わったからもう帰ってくるってさ」

 さっきまで行かない、と駄々をこねていたにもかかわらず、ターレスはすたすたと玄関に向かい、バーダックと悟天を振り返った。

「早く行こうぜ」

「わかりやすいなァ……」

 確か、まだあの兄は帰ってこないはずだ。パンにだけ連絡するとは思えないから、ウソをついたのだろう。あんまり好きではないが、この手は使える、と悟天は少し笑った。




 びびりまくっていたターレスは、複雑な顔で戻ってきた。呼ばれたときに、シッポが震えていたほどだ。

「どうだった?」

「全然痛くなかった」

 毎日満身創痍になるのに、たかがこれくらい、痛いはずが無い。

「だろうね」

「だましやがった」

 ターレスは、次第に怒りが湧いてきたらしかった。シッポで椅子を叩き、くそ、と呻く。

「悟飯の野郎が帰ってきてなかったら、思い切り蹴飛ばしてやるのに」

「ああ、あれパンちゃんのウソだよ。兄ちゃん、帰ってくるときは俺にも連絡するもん」

 その辺は律儀なところがある。二重にだまされたと知り、ターレスは完全に頭に来たようだった。バーダックが何か言い掛けていたが、悟天は会計を済ませて帰ることにした。


「おかえ…」

 帰ってきた悟天たちに、悟空が手を広げて駆け寄ったが、最後までいうことなく、空の彼方へ吹っ飛んでいった。

「ああ、飛んだ飛んだ」

 悟空を思い切り蹴飛ばしたターレスは、せいせいしたように息をつき、それから、玄関を見て息を飲んだ。

「ヒ…」

「あ。お帰り、兄ちゃん」

「ただいま」

 悟飯が、眼鏡を光らせて静かに言った。

「で、ターレスさん、話があります」

 反射的にターレスが悟天を掴み、悟天は飛び上がった。確かにパンの発言がウソだといったが、実際に命令したわけでもなければ蹴ったわけでもない。

「俺は関係ないからね!」

「関係あるだろ! 帰ってこねぇっつったのはてめえだろうが!」

 くい、と悟飯が指を動かした。

「二人とも、おいで」

「に、兄ちゃん、俺たち注射打ったばっかだから……あんまり激しい動きは」

 悟天があとずさり、ターレスも無言で頷く。悟飯は、ふふっ、とさわやかに笑った。

「安心して。


動くのは僕だ」



 ぎゃあああ、と上がる悲鳴を聞きながら、バーダックはソファに座り、机の上に置きっぱなしのケータイを眺めた。行く前に悟天がいじって、置いたままだ。
 行くの行かないのとターレスがぐずっているときに、音を立てて震えていた。
 結構な音だったのに悟天は反応しなかった。あえて触らなかったのかと思えば、なんだ、気付かなかっただけか。

 ケータイが鳴ったことに気付いていたと知れたら、またなんのかんのとやかましいことを言ってくる。

 何事もなかったかのように悟空が膝によじ登ってくる。バーダックは悟空を抱き上げて膝に乗せ、顔をしかめて注射したところを軽く揉んだのだった。




# by oyakatasamah | 2009-11-19 21:00 | DB/短 | Trackback | Comments(0)
「ねぇ、孫くん」

会議があるというトランクスを待って、足をプラプラさせながら大きな椅子に座って待っていると突然後ろから声がかかった。振り返ると笑顔のブルマが歩み寄ってくる。ブルマの笑顔を見てなんだか背筋が寒くなった。ブルマがこんな笑顔をするときにはろくなことがあったためしがない。

「オラ、けぇらねぇと。遅くなると怒られるんだ」

冷や汗を隠しながら家に逃げ帰ろうと画策する。トランクスが用事があると言っていたけれど、それは後で謝れば許してくれるだろう。自分の身がかわいいのは誰だってそうだ。

「帰らなくていいのよ」

「・・・?」

「チチさんに、孫くんが今日はうちに泊まるって連絡しちゃった」

悪びれる風もなく、ブルマが微笑む。

「だから、大丈夫」

「でも・・・チチは良くても悟飯が・・・」

勝手にお泊りになってしまえば、戸籍上は保護者の悟飯に心配をかけてしまう。今までは好きなように過ごしてきたが、今では居場所をきちんと伝えないと悟飯が探しに飛んで来る。もしくは悟天が真っ青な顔で『お願いだから帰ってきて』と連れ戻しに来る。いつも悟飯が笑顔で迎えに来るのだが、自分だって大人だ。迷惑をかけちゃいけないことだって分かってるつもりだ。

「大丈夫。悟飯くんもうちに泊まるから」

ブルマの唇が緩やかな弧を描く。もう、逃げられないのだろうか。

「それにね。今日は孫くんのためにごちそうをいっぱい準備したのよ」


ごちそう。


そのフレーズを聞いた途端にお腹が寂しそうに鳴いた。

「ほんとか!?」

「えぇ。私の仕事を少し手伝ってくれるなら、孫くんのお腹が満たされるくらいのごちそうが待ってるの」

「オラ、手伝う!!」

そうして、あのときの自分はブルマのお願いに最初に感じた嫌な予感を跳ね飛ばしてしまったのだった。






ブルマに促されるがままある部屋に入ると、小さなペンダントを渡された。

「オラ、この格好嫌だ」

小さな声で文句を言うが、ブルマの耳には入らないようだった。目をキラキラ輝かせて自分を見つめてくる。

「今度は女の子の夢!!メイクアップ機能を搭載したのよ!!」

「めーく?」

「お化粧のことよ。だってキャロリアちゃんだってかわいい方がいでしょ?」

「・・・・・・オラ、かわいくなんてなくてもいい」

あの恥ずかしくって嫌な格好がさらにバージョンアップしようとしているのだろうか。

「ごちそう、いらないの?」

「う」

ブルマのひとことに逃げようとした足が止まる。

「スティックはかわいいけど大きいから、普段から身に着けられるようなものにしてみたの。リボンとか、指輪とかいろいろ考えたんだけどね。孫くんが使うことを考えてペンダントにしたの」

ブルマがペンダントを指差しながら続ける。ごちそうの誘惑に負けて、着替えるだけだと自分の心を押さえつけた。

「このまんなかの部分を押すと変身できるからね」

「・・・・・・」

「もちろん、プリティチェンジって言うのよ」

「・・・・・・」

渡されたペンダントを見つめる。まるでドラゴンボールみたいなオレンジ色のペンダントだ。小さな星がついており、真ん中の星を押すと変身できるらしい。

「ほら、早くしなさい」

ペンダントを見つめたまま、自分の理性と闘っているとブルマから催促がきた。

キャロリアになるのは嫌だが、正直、お腹が減っている。

「・・・ぷりてぃ・・・ちぇんじ」

小さな声だったが、呪いのような呪文を唱えるとキラキラとした光が身体を包み、気がついたらフリルやリボンがついているスタイルになっていた。女の子なら喜ぶだろう。でも、オラは孫もいる男だ。ぜんぜんうれしくなんかない。

「うーん。黒髪だと変ね。スーパーサイヤ人になって。金髪の方が似合うから」

「・・・・・・」

闘うわけでもないのに、なんでスーパーにならなければいけないのだろう。しかし、ブルマを怒らせると怖いので何も言わずに超化した。

「これでいいんか?」

「なんかいまいちなのよねぇ・・・・」

メイクがあってないのかしら。それとも服かしら・・・などブルマが頬に手を置いたまま考え込んでいる。

足元がスースーする。早く戻ってしまいたい。

「じっとしててね」

ブルマの手を見ると、いつのまにかブラシやメイク道具が握られていた。

「オラ、嫌だ・・・」

「ほら、じっとする!!」

髪の毛を引っ張られ、痛みで顔をしかめると満面の笑みのブルマと目が合う。顔になんだか知らない粉をはたかれ、唇にはピンク色のものを塗られる。その上甘い香りのする液体を吹きかけられた。

「ほら、かわいくなったでしょ?」

手鏡を渡され、鏡の中の自分を見つめると金髪碧眼のリボンをつけた女の子にしか見えない自分がいた。

「・・・・・・」

お腹が切ない音を立てる。ごちそうに釣られたとはいえ、今の自分は何をやっているんだろう。こんな姿を悟飯や悟天が見たら幻滅されてしまう気がする。

「さすが、私は天才ね」

ブルマが得意げにしているが、精神的ダメージが強すぎるためかもう何も言い返す気力もない。その上ブルマは誰もいないであろう方を見ながら恐ろしい一言を言った。

「かわいいと思わない?悟飯くん」

「えぇ。素敵ですよ、父さん」

なぜかカメラを持った悟飯がいつのまにかいる。

「・・・・ご・・・悟飯!!いつのまに!!」

恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしながら言うが、悟飯は笑顔のままカメラのシャッターを押している。

「だって、悟飯くんにキャロリアちゃんのメイクアップとかのシステムを組むのを手伝ってもらったんだもの」

「・・・・・・・うそ」

「えぇ。本当です。ほら父さん、かぁいいんだからこっち向いてください」

そう言って悟飯はまたシャッターを切った。




見られた。しかも見られたくない家族に。




「・・・・・・もう、やだ」

「なに?孫くん?」

うつむいたまま、身体を小さく震わせている悟空にブルマが声をかけた。しかし、悟空は思わず出てきた涙をこらえながら部屋を飛び出した。






どこへ行けばいいのか分からないまま走る。

こんな姿じゃ家へは帰れない。

誰とも顔を合わせられないと、うつむいたまま走り続ける。服を脱ぎ捨てようにもうまく脱げないし、ヒールのせいか走りにくい。

その上走るたび乾いた靴音が鳴り響く。そして後ろから追いかけてくるブルマと悟飯の声がする。

早く誰もいないところへ逃げ込みたい。しかし、どこにいけばいいんだろう。

「へぷ」

誰かに思いっきり体当たりして、体当たりしてしまった人物と共に地面に転がる。

「待ちなさい!!」

ブルマの声がする。つかまったらいけないと、体当たりしてしまった人物に目をやるとこれまた会いたくない人物だった。

今日の自分はなんて運が悪いんだろう。思わずデンデをうらんでしまいたくなるほど運が悪すぎる。相手に自分と知られる前に逃げないと。また走りだろうとすると、力強く腕をつかまれた。

「おい、カカロット」

呆れ顔のベジータと目が合う。今の姿ならだませるかもしれない。

「違うもん」

「貴様にそんな趣味があったとはな」

「違うったら!!離して!!」

つかまれた腕を振りほどこうともがくが、体格のせいかベジータの腕から逃れられない。

「どこが違うんだ」

「やぁだ~」

腕だけでなく、羽交い絞めにされて逃げられなくなる。

「はなして~」

やがて悟飯とブルマが追いつき、目が合った。そしてブルマがひとこと。

「ベジータ。あんた女の子にいたずらする犯罪者だわ」

「なぁにぃぃぃぃぃぃ!!」

ベジータが烈火のごとく怒り、今のうちに逃げだそうともがくが、羽交い絞めにした腕は緩めないらしい。
ブルマは大笑いしながら続ける。

「だって、泣いてるし、服は乱れてるし、嫌がってるし。もう犯罪者にしか見えないわ」

大爆笑するブルマの後ろで悟飯が固まる。

「俺にはこんな趣味はない!!」

「でも、そう見えるんだもの。どうみても犯罪者よ。子供たちが見たら悲しむわ」

「そうですね・・・父さんに手を出すなんて」

悟飯の気がたかぶる。すごい気を発している悟飯と手合わせしてみたい気持ちもあるが、こんな格好を見られたくない人に散々見られた悟空はすべてのやる気を失っていた。

なにもかもから逃げ出したかった。

しかし、悟飯がなぐりかかってこようがベジータの腕は緩まない。

それでもここではないどこかへと逃げたかった。

「はなして~~!!」

ベジータ腕から逃れようと必死でもがいていると、「黙れ」と低い声が聞えたとたんに首の後ろに衝撃が走り、意識が遠のいていった。






「あんたたち、うちを壊滅させる気なの!?」

目を覚ますと、身体は思うように動かない。そして、ブルマに怒られている悟飯とベジータの姿が目に入る。

「んぁ?」

「あれ、孫くん。起きたの?」

ブルマの微笑みが目に入る。

「身体が動かないようにしびれ薬を盛っておいたからね。これで逃げられないわ」

「・・・・・・・」

「今日は思う存分、私の好きなようにさせてもらうわ」

助けを求めるように悟飯の方を見るが、悟飯の方もどうしようもないようだった。



その日は思う存分、ブルマの好きなように化粧をさせられたり、着替えさせられたり。

それでも最後にはお腹いっぱいご飯を食べさせてもらったからいいことにした。




後日。

「なぁ、悟飯」

「なんですか、父さん」

「オラが女装してたのに、なんでおめーはあきれたりしないんだ」

「だって、僕にとって父さんはどんな姿でも愛してますから」

「・・・・・・」

黙り込んでいると、テレビを見ていた悟天がおそるおそる話しだした。

「ねぇ、兄ちゃん。父さんと、ビーデルさんが助けを求めていました。兄ちゃんはどちらかしか助けられません。どちらを助けますか?」

「父さん」

間髪いれずに悟飯は答えた。

「なんでさ!!普通は奥さんじゃないの!?」

「だって、父さんが危険ってことは世界の危機だろう?ビーデルさんはお前たちに任せられるけど、父さんのかわりはいないからね」

「兄ちゃん・・・」

「僕は、僕の持てる力すべてで父さんを守るさ」

「うん。がんばって」

悟天はもう兄に何も言えなかった。












***

ベジータが犯罪者みたいということを書きたかっただけでした。

たまーに更新のブログですが、いつも感想などありがとうございます☆

じゅんやともども、みなさまの応援に応えられるように更新に励みたいと思います。
# by oyakatasamah | 2009-09-27 12:46 | DB/❀ | Trackback | Comments(0)
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