三菱重工業長崎造船所(長崎市)は宇宙探査機向け姿勢制御装置の開発・販売を本格化する。エンジン部品に世界で初めてセラミックを採用した装置を新開発。第1号機は、5月に打ち上げられた金星探査機「あかつき」に採用された。耐熱や耐久性に優れ、製造コストや納期が従来型に比べ半分以下にできるという。今後は推力の異なる機種の開発を進め、国内外の衛星メーカーなどからの受注を目指す。
新型の姿勢制御装置は、長崎造船所の特殊機械部が開発した。推進力は500N(ニュートン)級で、燃料を噴射する「スラスター」と呼ばれるノズル部分をセラミック製にした。原料には粘度が高い国産の窒化ケイ素セラミックを使った。
従来、スラスターには特殊な金属であるニオブ合金を使っていたが、原料を海外から調達、加工作業の一部を米国企業に委託する必要があり手間とコストがかかった。
新型装置では、原料調達、部品加工、組み立てまでのすべての工程が国内で完結する。このため、探査機の大きさや使用目的にもよるが、製造コストは半分以下、納期も6割程度短縮できるという。
材料の調達、加工作業は京セラと連携した。独自技術で成型、宇宙ごみなどの衝突にも耐えることができる。
耐熱温度もセ氏1500度と、ニオブ合金製に比べてセ氏200度引き上げたことで、燃料効率が向上。人工衛星や探査機の大半を占める燃料タンクの小型化にもつながるため、調査や実験機器などをより多く積載することが可能だ。
人工衛星や宇宙探査機に使う軌道・姿勢制御装置など宇宙機器では、欧米企業が先行する。三菱重工は来年にも推進力が20N級の軌道制御装置を投入。品ぞろえを拡充して、海外を含めて顧客ニーズの取り込みを狙う。
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