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[20193] Muv-luv Alternative ~The Fate Avenger~ (武&オリキャラループ3週目入り)
Name: 火乱◆7695e15b ID:6976bec5
Date: 2010/07/14 15:48
●挨拶
こんにちは、こんばんは、はじめまして、火乱と言います。ここでssを読んでいたらあまり
のも素晴らしい物が多かったので堪え切れずまず序章からって言うことで作ってみました。まずこれ
を読みにあたっての注意です。
・武ちゃんは現実的な範囲で無双する。
・絶望的に救いのない変態がいる
・現実は厳しい、常に思い通りにはならない
・3週目の世界
・ご都合主義
・夕呼の科学は世界一ぃぃぃぃぃぃぃ!!!
・とんでも性能な機体
・内容が他所と似る場所があるかも
・オリジナル人物
・新しいイベント
・トータルエクリプスっぽい何かが出る
・誤字とか許容できる心がある
・なんか注意点が多い。
これらが許容できる懐の広い勇者たちはおすすみください。続きはきっと作りますがそんな早くは
更新速度はないと思う。たぶん。あと色々勉強中なのであしからず。あと今回は第三者
視点っぽいものからナレーションやってますがソレはあくまで序章のみです。あと説明とか
状況説明が色々抜けてるのは今回序章だからです。決して、手抜きじゃないぞ?!
次回からはちゃんと武ちゃんの視点でやりますよぅ?
では、前置きが長くなってしまいましたが、存分にご堪能ください・・・。








白銀武のもたらした情報と戦果は人類とBETAの戦いにおいて大変貴重なものであった。
香月夕呼の言葉通り、その情報のお蔭で人類は10年戦えた。

そして何より白銀は帰らなかった。

否、帰れなかったと言うのが正しいだろう。

白銀と社霞は桜花作戦の生き残りである。しかしこの結果が最善であり十全たる結果であろうか?

白銀武からすれば一番守りたい人まで失い、これは最悪の未来であった。

そう、白銀武が苦悩し、掴み取った未来は人類にとって最善であっても彼にとっては苦痛であった。

だから、白銀は帰らなかった。

白銀は残って戦うことを決めた。一人の衛士として、死んでいった者の為にも、

白銀は帰らないことを決意した。

衛士一人で戦場は変わらない。それは戦の常である。しかし彼の存在は違った。

白銀武は桜花作戦の中枢であり、そして生存者である。極秘とは言え、その腕前と過去は広まり、
兵士の士気を高めるものであった。

そして時は進む。

無くした物を置いて行き、

希望を追い、

過去を忘れず、

未来を憂い、

――――人類はBETAに勝利した。

奇しくも、それは桜花作戦の決行日と同日であった。

人はその大地をBETAから取り戻すことが出来た。

BETAがまたこの大地を降り立つ可能性は否定できない、

だが今の人類軍であれば、この星だけであれば守れるであろう。

だから白銀武は決めた。自分はあのときの後悔を否定しないと。

今の自分は違う。

英雄と呼ばれ、

香月博士を動かす力もあれば、

発言力もある。

何より、泣くことだけしかできなかったあの頃とは違う!

否、今の自分は泣きはしない!確固たる意思の元、あの時の自分が為し得なかったことを、

今こそ、行うべきだと!

「――――――で、あたしを頼ってきたわけね?」

そこは夕呼の研究室、横浜基地の時と比べさらに広く大きく、そしてごちゃごちゃとしていた。
どんなに時が経ち、待遇が変わろうとも、根本的なものは変わらなかった。

「まぁ、こういうことは先生にしか頼めないしな。」
そうやって未だに彼女を先生と呼び、慕うのは今では英雄と呼ばれる男、白銀武。
体はさらに鍛えられ、背は伸び、威厳を示すためにも髭も生えたもはや中年の男である。
しかし、その腕前は劣ることを知らない。

「ったく相変わらず私に頼るの止めてくれない?」
そう言う彼女は嫌そうな顔をしていた。

「そんな、嫌そうな顔をしないでくださいよ。どうせ、もう完成しているんでしょう?」

「あら?やっぱり分かる?」
そう言って香月夕呼は笑った。

「先生は変わらないね。全く変わらないね。あの頃から。」
武は昔のことを考えながら小さく笑った、昔を懐かしむように。

「アンタはかなり変わったけどね。国連軍の英雄、白銀武って言ったら皆の憧れじゃない。」

「それは俺一人のお蔭じゃないですよ。先生が考えて、作って、仲間の身を犠牲にして
 作った未来です。」

「・・・やっぱりアンタはまだ諦め切れてないのね。」

「昔は知恵もなく、力もなく、ただ闇雲に道を探してただけだ。」

「今のアンタなら違うと?」

「今の俺には力がある。何より未来の情報がある。」
そう言う武の眼光は強いものであった。その眼から強い意志を感じることができ、
そしてその意思が強固であることも感じれた。

「そう。私が止めても勝手に行きそうね。」

「なら、」

「条件をつけてあげる。」

「条件ですか?」

もとより香月夕呼はこの男を止められるとは思っていないし、止めようとも思ってなかった。
逆に実験に利用さえできると考えてた。だから実際夕呼自身は逆に手伝おうと、自分の教え子がそう望むのであれば叶えようと、思っていた。

「そう。条件。アンタは自分の身一つで私に過去へ飛ばしてもらうつもりだったの?」

「今までのループは必ず寝巻き姿で登場でしたけど?」

「はっはーん私を世紀の天才だって忘れてるわね?」

「ってことは・・・」

「そう、アンタ以外にも人間を一人、戦術機を二機ほど持ち込めるわよ。」

「マジっすか?!」

「マジよマジ。これで使い方はあってるんだっけ。」

「そうですよ。」

「ってまあ、そういうこと。分かった?」

「でもこんな個人的な事に付き合ってくれるやつなんて・・・」

「あら、アンタにはいるじゃない。‘兄弟’が。」

「でもアイツを頼るのは・・・。」

「避けたいってか?オイオイ英雄サマが情けなぇじゃねぇか。」
突如男の声がした。

「なっ?!」

研究室の中央の大きな機械、その横、影の中をよく目を凝らしてみると、
そこには確かに人影があった。

「そういう訳よ。仲間はずれは嫌らしいわよ?」

「そういうこった兄弟。諦めて連れて行きな?」
そう言って男は陰から出てきた。長身ではあるがどこか細身の男。服装は国連軍兵士の服装の上から
黒いロングコートを着るという奇抜な着こなしをする男であった。

「なんでお前がここにいるんだ・・・ジン。」

「あん?んなこと聞くか普通?兄弟いる所に我ありってやつだ。」

「私の提示する条件って言うのは彼を連れて行くことよ。」

「先生!」

「正直アンタ一人じゃ歴史は動かせないわよ?いいわね、聞きなさい。
   アンタももうすでに一人の将校よ。アンタは知ってるはず、
   戦況を変えるのは個人の戦闘能力ではなくて軍としての
   能力だって。」

「それは俺だって嫌ってほど知ってるよ先生。そのために階級上げて、戦場で嫌って言うほどの死を
 見て、衛士を育て、そして軍を変えようとしたんだ。」

「そう。ぶっちゃけるとね、白銀。今のこの未来だって奇跡なのよ?
 そう、私たちはBETAに勝利した。アンタの登場で途方もない
 絶望的だったシナリオに終止符を打てたのよ。
 アンタが今しようとしてるのは自分で掴み取った最善の未来を
 投げ捨てる事なのよ?あの子達が命を使って勝ち取った未来よ。
 それをアンタは‘気に入らない’って理由で捨てるのよ?
 その意味を分かって言ってるのよね?」

「先生。これは人類がBETAに勝利してからずっと考えてたこと
 なんだ。俺は、俺はあの時
 の後悔を忘れない。あの時流した涙の味を忘れない。あの時皆で
 笑ったときの笑顔を忘れない。
 先生、俺の時間は動いちゃいなかったんだ。あの時、皆が死んで、
 俺と霞だけが生き残って、
 俺の時間は止まったんだ。だから俺は取り戻すんだ。
 あの時の後悔を、
 あの時置いて行った俺の時間の全てを。」

「そう。覚悟は硬いようね。うんじゃ準備しましょうか。」

「へ?」

「やらないの?」

「え、いや、やりますけど・・・。」

「男ならぐずぐずしない!」

「言われてんなぁ兄弟。」

「いや、兄弟とか言ってないでなんでお前来るんだよ?!」

「いや、だって白銀武の相棒だぜ?俺は。いつでもどこでも
 テメェの味方だよ。」

「たったそれだけの理由で?」

「おいおい、俺を馬鹿にすんなよ?
 お前が泣いてるなら手を差し出そう。
 お前が血を流したらその傷をふさごう。
 お前が助けを求めたら助けよう。
 お前が人類を裏切りBETAについたら
 お前を一発殴って正気に戻そう。
  ――だってよ、俺はお前の家族だぜ?」

「家族ってのはお前が勝手に言ってることだろ?」

「だけど否定しないだろ?」

「本気か?俺は元因果導体って言うもんだから行けたが、
 お前の場合保障できないぞ?」

「ジンちゃんは不可能を可能にしちゃうマジカルボーイなんだよ。」

「んな年になってマジカルボーイかよ?」

「ハートはいつでも少年さ。悪くないだろ?」

「・・・ああ、悪くないな。」

「だろ?だから諦めな。地獄まで付いて行ってやるぜ?あ、
 さすがに本当に地獄には行かねぇけど。」

「はぁ・・・。」
ここで武は諦めたようなため息を吐いた。目の前にいるこの男の名前は如月刃。今では数少ない
トップクラスの衛士であり、その中でもさらに希少な白銀武の動きに付いて行け、匹敵する
クラスの衛士である。

衛士と言えでも、この男は正規の国連軍兵士ではない。元は傭兵であった。

地球がBETAに襲われようがまだ傭兵はいた。ただ獲物は銃から戦術機へ変わっただけである。
戦場から戦場へ移り、金で雇われ、時にはBETAを、時には人間を相手に戦うものではある。その
ポリシーの無さから多くの軍人からは嫌われていた。

だが、この過酷な環境の中、戦い続ける傭兵はまさに超一流と呼べる腕前を持つ者がいた。
その一人がこの男、如月刃である。
本名は本人にも不明なため偽名、体術、銃器の技術、操作技術。どれを取っても優秀な男、
唯一弱点をつけるとすれば・・・

「ああ、世界は今日も興味に尽きない!兄弟と一緒にタイムワープが
 出来る日が来るとはな!はははは!まだ見ぬ妹を目指して!」

絶望的に変態だったことである。

「いやさ、お前そのすぐに家族にするとか、どうにかならないのか?」

「なんだよ兄弟人類皆兄弟ってよく言うだろ?」
絶対そういう意味ではないと武は確信していた。

「男の密談は終わった?色々言いたいことがあるのよ。」

「あ、悪い先生言ってくれ。」

「まずね、持っていけるものはさっき言ったとおりごく僅か。
 戦術機二機とアンタたち二人だけ。」

「ぶっちゃけ少なくないか?」
と刃が顔をいぶしかめて言う。

「俺が毎回起きるときは寝巻き姿で後は制服しか持ってなかったぞ。」

「そりゃあまたすごいことで。」

「あと注意点はもう一つ、アンタたちは過去へ行くんじゃなくて、
 過去に混ざるのよ。まあ、感覚が違うだけでやってること
 は前回と一緒よ。」

「そうか・・。」

「そしてジンアンタの場合過去に存在する人間なんだから過去に
 飛んだ瞬間昔のアンタが死ぬわ。」

「それで俺に問題は?」

「特にないわよ。最悪アンタの存在が消し飛ぶだけよ。」

「そっか。」

「軽いな!」

「え、ここショックを受ける部分?しまったなぁ・・・。」
と頭を抱え込み悩む刃。コイツ馬鹿だろ。

「違うだろ。いいのか本当に?死ぬかもしれないんだぞ?!」

「同じことを何回も言わすなよ。」
まるで何てこともないように言い放った。

「俺は元々死んでるんだ。この命兄弟とともにあり、ってな。」

「・・・悪いな。」

「んじゃ決定したらぱっぱと始めちゃおうか。」
と夕呼が手を叩きこっちの注意を促す。

「用意できてたんですか?!」
武は驚いた、まさかもうすでに準備が出来ていたのか、と。

「なにを驚いてるのよ?教え子の考えなんか看破してるわよ。
 よゆーよ。よゆー。」
とおちゃらけて言うが、実際武は夕呼に対して頭が上がらない。

なぜなら武、刃の機体は共に夕呼自身が指揮し、仕上げたものであり、国連軍の旗機であると同時にトップシークレットである。

「それを気づかせずにやってくれるから夕呼先生はすごいよな。」

「あら、もっと褒めていいのよ?」

「うん。調子に乗るからやめておく。」

「ふぅ・・・これで最後よ。本当にやるのね?」

「覚悟は足りてるよ先生。」

「そう。んじゃジン、アンタはしっかり白銀が馬鹿しないように見てなさい。」

「言われずとも。」

そして会話は終わった。後に残るのは行動のみ。

この日を境に英雄と呼ばれた男、白銀武大佐、そして元傭兵上がりの衛士、如月刃少佐は
その機体と共に消えた。痕跡も何も残さず消えた。当初は香月夕呼博士が大いに疑われた、
なぜなら彼女は両人と一番交流のあった者であるからだ。しかし、どんなに追求しようとも
彼女は飄々とした態度で全てかわしてしまい、次第に英雄の活躍も忘れられていった。英雄も
戦争が終わればただの危険物である。

そして今、過去を諦め切れなかった者による、運命への復讐が始まる・・・!

「なぁ、兄弟。」

「なんだ?」

「かわいい子いるかなぁ。」

「・・・。」

・・・・・・・・始まる・・・・!



[20193] Muv-luv Alternative ~The Fate Avenger~ 第1話
Name: 火乱◆ef932b00 ID:6976bec5
Date: 2010/07/12 19:04
こんちわっス。フトーノス改め火乱です。こっそり名前を変えました。え?なぜ変えたかって?
自分かなりチキンな人間なので罵倒されると心臓発作起こします。・・・・・なんだそのめぇは?
っと冗談はここまでにして第1話です。色々ありますが、本ssをよろしくお願いいたします。
ちなみに名前変えた本当の理由はツイッターの名前にあわせただけです。

PS誤字脱字は仕様です。指摘したらこっそり直すかも。







眩しい。

一番最初に脳に来たのはそれだけだった。

脳に覚醒を促すためにまずは手を動かす。手は問題なく動く。手を顔上に置き、少しずつ目を開けていく。

手が作り出す影にさえぎられながらも、最初に目に入ったのは
白い天井。

「ああ・・・・。」

自分で出すも、一瞬誰の声かと考えた。そして思い出す。
―――ああ、俺ってこんな声をしてたな。そういえば。
そう思い、ここでやっと体を上げた。

「は、ははは!やっぱ夕呼先生はすげぇや・・・!」

そういい、武は自分の身をベッドから離して、部屋の中を覗いてみた。机に椅子、学園の制服にゲームガイにポスター。
そして部屋の隅で倒れている物体。
この部屋はまさに白銀武がそのループを始める上で必ずいる部屋だ。
服装ももちろん寝巻きだ。

「ん・・・?部屋の隅にあんな物体、前はないぞ・・・。」

そういって武は部屋の隅へとその視線を移した。

部屋の隅を見れば男が一人倒れている。
しかしやはりその服装はどこか奇抜としかいい様の無い物である。
目に入るのはぼろぼろのジーンズ、
そしてその上にはワイシャツを着ている。
そこまでならまだ許容範囲であろう、
だがこの男はそこからさらにコンバットブーツを履き、
マフラーを着用し、手にはハーフグローブ。
極め付けにはロングコートを着ている。

「うわぁ・・・・昔はさらにひどかったんだなぁ・・・。」

と思わず武も呟かざるを得ない有様であった。そして、
武は躊躇せずに、

「おい。室内だ。靴脱げよ。」

と寝転がっている男の横腹を蹴った。

「いってぇぇぇぇよ!なにしてくれんだよ兄弟?!せっかく
 いい夢見てたのによ・・・。」

男、如月刃の声は若かった。若かったのは声だけではなくその容姿も
若返っていた。
髪は肩までしか無かった髪ものがだらしなく伸び、
ソレを根元でポニーテール風に束ねてあった。
顔も全体的に険が抜けており、
もっとやわらかい印象を受けれるものになっていた。

「んで、ココは開始地点でいいのか?」
刃はそう問うてきた。武にとってはコレは初めてではなく三度目の
経験ではあるが、刃にとっては1回目のループである。
っというよりは、
――――普通の人間ならループなんてしないんだろなぁ。
と武は考えていた。

「ああ、ココが開始地点だ。ここから始まるんだ。ココから皆を
 救うんだ・・・!」

そう言い、武は思い出していた。今、横浜基地にいる面々を。
幼馴染の純夏、しっかり者の冥夜、こちらの世界じゃなぜか女の美琴、委員長である委員長、自分に自信が持てないたま、
物静かな彩峰、自分のせいで、
いや自分が殺してしまったまりもちゃん。
そして一緒に戦い、守れなかったヴァルキリーズや他部隊の面々。

「変えるんだ。今度こそ変えてみせるんだ。1回目は地球を
 守れなかった。2回目は地球を守って皆が死んだ。
 今回こそどっちも救ってみせる。たとえそれが俺のエゴでもな。」

「ま、いいさ。お前が望む限り俺もついて行くだけさ・・・。」

その言葉と共に刃は立ち上がった。背丈は武とどうやら変わりは
無いようだ。

「んじゃ、俺はまず着替えるか。」

「OH・・・寝巻き姿とは新しい・・・!」

「お、俺のそっちのケはないぞ?!」

「冗談だ。」
冗談に聞こえさせないから怖い思った。
そして武は刃をドアの向こうへと追い出し、制服へとその袖を通した。

「この服装はまだ国連に雇われる前のもんだなぁ・・・。」
っとそんな声がドアの向こうから聞こえてくる。

「そうなのか?」
と武は問うてみる。

「ああ、この服装を、この頃はまだ傭兵として各地を
 転々としてたなぁ。おそらくデータベースに
 俺の存在は無いんじゃね?」

「ないの?!」

「ああ、まともな生まれじゃないし。」

「ああ、そっか。」

刃の生まれというのは元々戦場である。刃の親も傭兵であり、
戦場で生まれ、戦場で育ち、
そして本人としては戦場で死ぬつもりだったろう。
ただその前にBETAに勝利してしまったことを抜けば。

「・・・うし。ばっちし。」

着替え終わった武は机の上からゲームガイをとった。
―――これのあるなしじゃ説得力が違うんだよな。
このゲームガイはこの世界には存在しない娯楽用の機械。
この世界には娯楽用の機械、つまりゲームは存在しない。
その上、これほど複雑な精密機器を個人で所有することもないので、
前は冥夜の説得などに使わせてもらった。

やっぱりここでも込み上げてくる物は懐かしさと悔しさであった。
―――ああ、やっぱり懐かしい。
考えても、思い出しても、想像しても、妄想しても、幻想しても、
空想しても、
やはり、今ここに立つのとでは大きな違いである。

「おい、終わったか?外へ装備や愛機が来てるか早く確認していんだが。」

そう声がドアの向こうから聞こえる。
別に先に一人で行ってもいいのに、しっかり武を待つあたり
律儀な男である。

「ああ、わりぃ。準備万端だ。」

「お、早速言動が若者ぶってきたな?俺も注意しねぇと中身
 おっさんになっちまうからなぁ。」

そんな心配は全く必要ないと武は思ったが口には出さなかった。
この男はおそらくはわざとおちゃらけていると思った。
―――心配させちまってるのかな。
そう心で考えていた。

「んじゃドア開けよろしくテメーの家だろ。」

「それもそうだな。」

武はドアの前に立った。昔は嫌というほど見てきたシンプルな作りの
ドアだ。
鍵を開け、
チェーンを外し、
そして外へでた。

やはり目前に広がるのは荒廃した大地であった。

「俺は・・・俺は・・・・帰ってきたんだ・・・・!」
武はそういい、今にも泣きそうな顔をしていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――ああ、やっぱり泣きそうな顔しやがって。
ドアを抜けて刃は武の顔を横から眺めていた。
涙を一線でこらえるような顔を。
―――だけで見ていていいもんじゃねぇな。
そう思い、背後を見てみればさっきまであった家は
すでにぼろぼろであり、

「なるほど、夕呼ちゃんや兄弟が言っていたのはこういうことか。」

実際ここへ転送される前に、刃は一通り武の経験と夕呼の論を
聞いていた。
馬鹿で軽薄そうに見えるこの男、実はただの馬鹿ではなく、周りから付き合いやすいように表の顔を作り、人と接している。
―――とはいえ兄弟にはばれちまったがな。

「さて、装備の確認をしようか。」

「おうよ。」

どうやら武の感動タイムは終了したらしい。

「んーと夕呼ちゃんが言うには俺たちの近くに来るはずらしい
 からっと家の裏側かね?っとうおおお、撃震!?」

そう言い驚く。廃墟と化した家のすぐ横には大破した撃震が
捨ててあり、それが音を立てて崩れた。

「はははは。俺も最初見たときはビビったな。」

「なら教えろよこの性悪。」

そんなやり取りをしながら家の裏へ行ってみれば・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

家の裏にそびえ立つのは2機の戦術機であった。
だがどちらも異様な風貌を模していた。

「白夜も白狼も来てんな。さっすが夕呼ちゃん。」

白夜、そして天狼全長20メートルもする戦術機。片方は白く、
もう片方の機体は真っ黒に染まっていた。
この2機は武と刃の専用搭乗機であり、
何より彼らを生かして終戦まで守ってくれた愛機でもある。

「本当に来るとはなぁ。」
武は感心していた。
―――夕呼先生は相変わらずすごい。
今までは自分の身一つででのループであった。
幸い自分の鍛えた体、操作技術、そして
なによりも未来のに関する記憶のお蔭で助かった。だが今回は違う。
今までのように死んで
こっちへ渡ったわけではなく、最大限の準備、覚悟、
知識を集め、来ているのだ。

自分の横を見ればこんな途方もない絶望的な時代へ共に来てくれる
相棒が、家族なんていない自分を兄弟と呼んでくれる者がいる。
目の前には自分を何回も窮地から救ってくれた愛機がある。

―――最低でも、今回の俺は独りじゃない・・・!

武は一人、心の中で協力者に感謝していた。
ソレを見透かしていたように、

「おいおい、なにラリってんの?まだ始まったばっかだろ?」

「う、うるせぇ!」

そして刃は自分の機体―白狼の元へ赴き機体へ向けて喋った。

「コード00303D-D107。アリスちゃん起きてるかい?」

機体から軽い電子音、そして、

『おはようございますお兄様。データリンクの許可を
 お願いしたします。以上です。』

そういう若い女性の声が聞こえた。

「ううん、挨拶は大事なことだね。隠密行動中だからバレない様に
 データリンクして情報をあつめてね。」

自分を兄と呼んだ機械へそう答えた。

「お前趣味悪いよな。」

「うっせぇ。」

『データリンク終了しました。旧横浜市街地、横浜基地のすぐ近くと
 判断いたします。
 現在時刻8時43分22秒。
 日付を10月22日と思われます。以上です。』

「はい、ご苦労様。」

アリス、正式はアルファベットでの A.L.I.C.E、これは白夜と白狼専用学習AIである。夕呼いわく『有能性は00ユニットなみよ?
ただ生まれたての子供のようなものだからどんな風にそだつかは
アンタたちしだいよ。』とのこと。
刃はそれを利用して見事初めてお兄様と呼ばれたことに歓喜していた。

―――やっぱり変態だ・・・!

そう思う武であった。

「さて、どうする?」

「そうだなぁ・・・・。」

道は二つある。一つはこのまま横浜基地へ行くこと。
このまま横浜基地へ行って夕呼の前に餌を吊るせば簡単に
横浜基地所属に出来る。

「それともやっぱアレか?ウェイクアップコールしてやるか?」

もう一つの方法がそれであった。
直接横浜基地を戦術機にて強襲、そして平和ボケした横浜基地に
戦争の現実を実際に経験させることであった。

「ジン、お前ならどっちをとる?」
武は答えを確信しながらも問うてみた。そして―――

「―――決まってんじゃねぇか伊隅ヴァルキリーズとは一度
 やってみたいと思ってたんだよ。
 本当にお前が言うほどのもんか確かめたくてな・・・。」

そういう刃の声はしっかりしていたものである。きっと前々から
勝負してみたいと思っていたのであろう。
その目は期待で輝いていた。

「やっぱりそうだよな。軍人って言うよりは狂戦士(バーサーカー)
 だもんなお前は。」

「おいおい、・・・・・・ほめんじゃねぇよ。」

「褒めてないぞ?!」

『伊隅ヴァルキリーズ・・・相手として申し分ないと判断いたします
 武様。なにより私が旧式に負けるはずがありません。
 以上です。』

「おい、アリスちゃんが拗ねちまうぞ?」

「分かった、分かった!」
そう言いつつも武は最初っから抵抗などしようとは考えていなかった。なにせ彼も、

―――そうだな。俺も本気で戦ってみたいな。

などと考えていたからである。

「アリスちゃん装備はどうだい?」

『反応良好。白夜白狼共にオールクリア問題はありません。
 スペア装備、スペアパーツも十二分
 あります。以上です。』

「そっか、そっか、そっか・・・・んじゃ強化装備に着替えたら
 いっちょ派手に・・・」

「・・・・やりますか!」

第2話へ続く・・・!

余談。
「なぁ、何で俺着替えたんだ?どうせ強化装備着るのに。」

「アレだよアレ。ノリだよ。」

「・・・マジか?」

「ああ、マジだ。」

・・・・第2話へ続く・・・!



[20193] Muv-luv Alternative ~The Fate Avenger~ 第2話
Name: 火乱◆7695e15b ID:6976bec5
Date: 2010/07/14 18:55
気づけばそこにあった。そうとしか説明の出来ない現象であった。

横浜基地、その入り口すぐにある第1滑走路。それは現れた。

2機の戦術機であった。

しかしそのどちらも横浜基地にいるスタッフにでも始めてみたと
いわざるを得ないような姿をしたものであった。

見たところ全長20メートル、他の戦術機と変わったことは
ないだろう。
だがここからが問題であった。

1機目、この機体を表現するのであれば白い。真っ白。
そう表現するだろう。
姿からして武御雷がベースであろう、だが跳躍ユニット、
噴射口ともに、
常軌を逸脱するチューンが目に見えており、
背中には大刀が2本収納されている。
さらには腕には可動式ブレードをも装備していた。
しかし、そのいでだちは貫禄をかもしだすも・・・・

―――まともじゃない・・・!

と一般の兵士にすら分かるものであった。

対する、その横に聳え立つ漆黒の機体も同じことが言えた。
ただし、こちらは白い方と違い、突撃砲の類は一切見えない代わりに、
機体中そこらに大量の短刀やナイフ、
そして人目に異常ともいえる強大な大刀が備わっている。
背中を見てみれば翼らしきものまで装備されていた。
唯一銃に見えるのは両側の腰から下げている細長いものであり、
とてもだが突撃砲のように連射の聞くようなものには思えない。

ここで、兵士が意を決して、ゆっくりと悠然とと聳える
戦術機に向かい、
言葉を放った。

「こちらは国連所属横浜基地だ。名乗りを上げ・・・・」

しかし兵士はその言葉を最後まで言うことをできなかった。

白いほうの機体が腰に装備されている突撃砲を抜き、上空へと向け、
発砲した。

そこで兵士はやっと気づいた。

「走れぇぇぇぇぇ!!!!敵襲!!!!指令に支持を仰げぇぇぇぇぇ!」

横浜基地は初の人的襲撃を受けた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ラダビノッド指令!これはどういうことよ?」
香月夕呼は警報を聞き、司令室へと赴いていた。

「襲撃です博士。」
ラダビノッドは困惑した声で答えていた。

「襲撃ですって?!一体どこの馬鹿よ!ここの重要性
 が分かってないの?!それとも・・・・」

このとき夕呼は相手がオルタネイティブ5の支援者か
それに連なるものの可能性を考えていた。

「いえ、それが正体不明です。」

「正体不明?」

この言葉で夕呼はさらに混乱した。

「どういうこと?機体を見れば所属が分からないんじゃないかしら?」

「それが出来たらやってますよ。」

「っというと?」

「所属も不明、出所も不明、使用されている技術も不明。
 そんな機体です。」

それを聞いて夕呼は絶句した。

―――何もかも不明の機体ですって?冗談じゃない!
っと。
夕呼はオルタネイティブ4の推進派でありこの横浜基地はその最前線
であり、彼女の実験場である。
今、現在この横浜基地は最前線とはいえない。そのせいで兵士たちも、
衛士たちも完全に緩みきっている。
それは紛れもない事実であった。

―――逆にコレは使えるかもしれないわね。

と夕呼は思った。

「指令、指示は?」

ラダビノッドはすぐに答えた。
「一般の兵士と訓練生はすでに退避済みだよ。あの機体に関しては
 今いろんな方向で調べているが情報は全くない。
 すでに迎撃命令は出してある。」

「指令、捕獲よ。」

「・・・今なんと?」

「捕獲しなさい!あんなレア物捕獲しないわけないでしょ?!」

「・・・善処させよう。」

そう答えるラダビノッドは珍しく焦っているような姿であった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――さぁて。どんなやつが来るかね?

刃は外の緊張とは対照的くつろいでいた。

―――確か今現在は腑抜け集団だったっけな。

だが被害を出すわけにも行かない、なにせあとで自分が所属する基地
でもあるから、その中には自分の将来家族となりうる者もいるかも
しれないとも。

『こちら国連軍所属衛士、応答せよ。応答のない場合は発砲許可も
 得ている。我々人類はこんなくだらない争いをしている
 場合ではない。繰り返す・・・」

―――おいでなすったな。

だけど刃は動かない、なぜなら

―――俺がじゃんけんで勝ったからつゆ払いは兄弟の番だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――じゃんけんで負けた・・・。

そのお蔭で武はヴァルキリーズとは戦えず、刃のつゆ払いを
するハメとなった。

―――運がないな。

そうとも思う。だけど、

―――コレは必要なことだ。

そう、横浜基地は腑抜け切っている。前回ではこの横浜基地の状態を
改善するために新潟のBETA強襲時に捕獲したBETAを意図的に夕呼が
演習場内にはなち、その緩みきった考えを改めさせた。

―――だけどそのせいで多くの衛士が死んだ。そしてまりもちゃんも。

だからこの襲撃は第一歩。まず前進するための一歩である。

武は目の前に戦術機が集まりつつあることを確認した。

「アリス、プログラムナンバー05だ。」

『了解しました。プログラムナンバー05を待機状態へ移行させ
 ました。以上です。』

「鬼ごっこを始めるぞ。」

『了解。プログラムナンバー05の発動条件をこちらから相手
 の戦術機への接触時に設定します。以上です。』

「よし。始めるか。」

眼前に展開しているのは撃震が4機、そして吹雪が2機。
フォーメーションを組み、こちらへと少しずつ接近していた。

―――お手並み拝見!

そう思い、武は一気に踏み込んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――消えた・・・・!

そう思わざるを得ない速度であった。

「ック!各機散開!包囲しつつ突撃砲で相手の進路をふさげ!」

『了解ッ!』

だが無駄であった。

各機が包囲を作ろうと散開した瞬間、白い戦術機はまさに閃光
の様な速さで一番近くにいた撃震2機へと肉薄した。

『野郎!!!!』

部下のそんな声が聞こえるが、白い機体は部下の撃つ突撃砲を
まるでなんでもないかのようにブーストで回避する。

―――なんだあのマニューバは?!
   速度性能も異常としか思えん・・・!

気づいたときには白い戦術機は撃震両機の間に立ち、

『これで君たちはアウトだ。』

そんな声が聞こえ、そして白い不明機は軽く両機の横を押した。
それだけである。しかし、撃震は両機とも倒れ、ピクリとも
動かなくなった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夕呼はその光景を司令室から見ていた。

「ラビダノッド指令A-01部隊を展開させます。問題はないでしょう?」

「問題はないがいいのかね?」

「ぶっちゃけ普通の衛士にはムリそうなのでA-01でも無理だったら
 横浜基地の終わりです。」

「・・・・あの衛士は死んだのかね?」

それに夕呼は即答した。

「いいえ、生体反応があります。ただ戦術機のシステムが完全に
 シャットされています。一度戻してプログラムをやり直さないと
 動かないでしょう。」

「どういうことだね?博士。」

ラビダノッドはその事をいまいちよく分からなかった。
彼の分野は戦争であり、メカニックではないからだ。

「ラダビノッド指令、あのアンノウンは接触の際に作れる接触回線を
 利用して戦術機のシステムをハッキングして無力化したのですよ。
 とはいってもそんなことが出来る戦術機って聞いたことがないで
 すけどね・・・・。」

そういって夕呼は心中悔しがっていた。

―――戦術機を見る限り存在しないような技術の塊・・・!
   どれもコレも先に作られていると思うと嫌になるわね。

「博士。アンノウン02の方も同型の装備が為されていると思って
 よろしいのですか?」

夕呼は返答する前に少し考え、口を開いた。

「そうね、そう思ったほうがいいかもしれないわね。あの戦術機、見る
 限り同系統、同タイプのものね。
 ただ主眼とする戦闘スタイルによって兵装が違うわね・・・。
 おそらくアンノウン01の方が銃などを利用した
 バランス型に対してアンノウン02が近接戦闘を主眼とした
 機体なのでしょう。」

「それにしたってほとんど短刀やナイフのみといった装備は
見たことないと言わざるを得んな・・・。」

「まぁ、そうですけど興味の対象には変わりません。」

―――あの機体もすごいけどアレだけの物を動かせる人間も
   どうかしてる。

そう思いつつ、夕呼はA-01部隊を手配していた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「コレで最後だ。」

そう言って、武は指揮官機を背後から軽く押した。

ドン、っと戦術機の倒れる音共に戦場は静かになった。

―――コレで餌は十分なはずだ。

武はこう見えても夕呼のとの個人的な付き合いは長い。
だから大体は分かるのである、彼女の動きを。

―――A-01部隊を出さないと話にならないぞ?

っと武が思っていたとき、それは来た。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「A-01部隊展開!」

その号令と共に、不知火が突撃砲を手に展開した。

「よく聞け貴様ら!あのアンノウン01はふざけた事にも我々を
 殺す気もなくただ鬼ごっこで遊んでいるつもりだ!我々は何だ!
 言ってみろ速瀬中尉!」

『は!我らは国連軍所属、A-01部隊です!』

「そうだ!我々は計画のためにもしくじることは許されん!さぁ、
 あの生意気なツラに一発入れるぞ!」

『『了解!!!』』

伊隅みちる大尉とA-01部隊の到着である。

伊隅さっきの戦闘、を見ていた。そして、

―――完全に遊ばれていた。

そう判断していた。機体スペックは完全に不知火を追い抜いていた。
しかしあのアンノウン01はどうやら本気で戦ってないと
取って見れた。

だからこそ、

―――勝機は相手が本気になる前、短期決戦で決めること。

そう伊隅は思っていたが、

『?!』

隊の同様が伊隅に伝わった。なにせ、アンノウン01は後退し、
さっきまで後方で動いていなかったアンノウン02が
前進してきたことである。

―――博士によれば完全近接戦闘装備、遠距離、中距離からの射撃が
   効果的ね。

一人、そう隊の指示を考えていると、アンノウン01と02は
通り過ぎざまに、

「は、ハイタッチ・・・・?」

をして通り過ぎた。

―――戦術機にあんな機能がついていたとわ・・・!

もはや方向性が若干おかしくなっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うふ。うふふふふふふ・・・・・。」

刃は笑っていた。すごい嬉しそうに笑っていた。

『お兄様。プログラムナンバー05をどうします?』

「兄弟と同じ設定でいい。ただしG機関を使用できるようにしてくれ。
 出力は5%でいい。」

『了解しました。プログラムナンバー05を起動、待機状態へ移行
 しました。G機関いつでも使用可能です。以上です。』

「さすがアリスちゃん。かわいいねぇ。」

『その言葉は現在の状況と関係がないと判断できます。異常です。』

「関係はあるさ。俺のモチベーションが違う。」

刃は笑顔だった。きっとちっとやそっとのことでは彼のモチベーション
を変えることはできないだろう、なにせ

―――あのA-01部隊と戦える・・・・!

刃自身、何回も伊隅ヴァルキリーズの武勇伝は聞いており、一度は
戦ってみたいと焦がれていたのである。

―――ああ、いい。実に最高だ!

武が説明した様に刃は戦士で言えばバーサーカーの部類に入る。
だからこそ、

強敵との邂逅は喜びであり、強敵との相対は彼の人生でもある。

「さぁ、来い。全力で来い。決死で来い。必死で来い。でないと、
 その魂まで食っちまうぜ?」

第3話へ続く!

本日の余談

「「じゃんけんぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!」」

「かったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「まけたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

『さっさと行かないのですか?以上です。』



[20193] Muv-luv Alternative ~The Fate Avenger~ 第3話
Name: 火乱◆7695e15b ID:6976bec5
Date: 2010/07/16 14:12
―――さて、どう来る?

目の前にはA-01部隊が展開していた。

―おそらく最初に来るのは突撃前衛だろうな。性格的に考えて。

彼らの性格を刃は事前に武から聞いていた。

―――人数が全部で11人、この時点で生存か。

刃はここで自分に真っ向勝負を仕掛けようとしているA-01部隊の面々を褒めていた、なぜなら

―――そういう馬鹿はいなかったからなぁもう。

と悲しげに考えていた。

そして刃は再び目前に整列している不知火を見た。

「さて、そろそろこないなら俺から行っちゃうよ?」
と刃が言ったら、

『その必要はなさそうです。前方不知火に変化あり。以上です。』










「突撃前衛速瀬水月中尉以下4名、行きます・・・!」

そういい、速瀬は前へ出た。4人という数字も決して敵を侮っているわけではなく、相手に
それだけの価値があると判断した結果である。

「行くよ!ストーム・バンガードの意地をあのよそ者に教えてやるよ!」

『了解!』

自分と比べればまだまだ未熟であるが、

―――ここの一般的な衛士と比べればダンチの練度よ・・・!

速瀬はそれを示すように突撃砲を取り出し、撃ちだした。後ろの3機もそれに倣うように
突撃砲を出し、撃ちだす。

香月博士によれば相手は超近接型装備で中。遠距離戦闘用には作られていないと、そういう
話を伊隅大尉から聞いた。

だからここで速瀬の選んだ選択肢は中距離からの突撃砲による戦闘であった。正直言えば
速瀬の興味はアンノウン02との長刀による接近戦であろう。しかしアンノウン01を見る
限り、そのマニューバも動きも人道から外れている所があり、

―――大尉に止められてるのよね。

っというのが現状である。

だからこそ速瀬は突撃砲で漆黒の機体を牽制すると同時に期待していた。

痺れを切らして長刀の間合いへ飛んでくることを。

そして速瀬は見た、前方のアンノウン02が・・・・

『中尉!あのアンノウン、無手で戦うつもりですよ?!』

何も手に持たずに前進したところを。それでどころか、こっちへ来いと、
あからさまな挑発行動にさえでていた。

「私たちも舐められた物ね・・・・!」

そういい、速瀬は今まで牽制用にしか使用していなかった突撃砲を、

「よけなきゃ当たるわよ!!!!」

そう叫びつつ、4機の不知火はアンノウン02へと襲い掛かった。











―――やれば出来るじゃないか。

と前進していた刃は一人思った。

だから、精一杯本気で相手をさせてあげよう。なにせ、











その言葉はオープンチャンネルから流れた。
速瀬は聞いた、多少改ざんされていよう、その漆黒のアンノウンを駆る衛士の声を。

『俺は全人類の平等に厳しいぜ?ただし身内はダダ甘だけどな。さぁ、来い、見せてみろ
 横浜基地の意地を、その力を、意地を、技術を、魂を、血肉の一片までを、俺に
 示して見せろ、場合によっちゃ合格を出してやるぜガールズ?』

―――やってやろうじゃないか・・・!

『速瀬中尉!あまり熱くなるなよ!』

『分かってますよ大尉。ただ、舐められたままではね!』

そう言いつつも、速瀬の手は動いていた。

―――絶対逃がさない!

しかし、漆黒のアンノウンには当たらない。まるでこちらの動きが分かるかのように、
全てを紙一重でかわしている。

「ちょこまかとぉ!!!!」

しかし、どんなに突撃砲を相手に向けようが弾丸は1発も当たらない。速瀬は胸中、
驚愕していたが絶対表に見せなかった、なぜなら驚きや衝撃を見せることは部下の、引いては
隊全体の士気を影響しうるからである。
しかし、どんなに頑張ろうが依然と突撃砲は当たる気配がない。そして漆黒のアンノウンは
よける度に加速していき、接近していた。

その動きは異様と言っていい物だった。

ブーストジャンプをしたかと思えばすぐ横へブーストをかけ射線がずれる。横へ移動するとき
もブーストを1回出すわけではなく、何回も連続でブーストを吹かせる姿はどの衛士も
戦術機もとらない動きだ。

しかしその異様さはそこでは終わらない。

戦術機にはプログラムが組まれており、回避する際はプログラムがオートで回避運動を取るが、
機体の動きを見る限り、そのオート回避プログラムも受身もちゃんと発動してない。
発動してないどころか明らかに紙一重を狙った動きとしか言いようのない行動を普通に
やってくる。

―――こんな動き現状の戦術機じゃ不可能よ?!なにアレ?!

と、舌を巻くしかなかった。

そして・・・

『悪いがお嬢さん、俺はアイツほど優しくない。吹き飛びな。』

そう言われ、速瀬はナイフを抜きつつ距離を取ろうとした、
しかし気づいたときはストーム・バンガード4機中3機はその一言の後、
アンノウンが放った拳撃により、吹き飛んだ。











「はぁ?!なにアレ?!ちょっと重力とかいろんな法則無視しないでくれる?!」
それが司令部に響き渡った声であった。











『G機関5%出力で機動確認。以上です。』

「ああ、やっぱりお前は最高だ。」

G機関。それは武と刃の機体に設置されている特殊機関である。名前の通り、G元素による
半永久機関であり、何より重力に指向性を持たせることの出来る動力。ただし使用に当たっては
アリスのような超高性能AIが必要であることが弱点であるが、

この機関の開発のお蔭で白夜と白狼は半永久的に稼動可能となった。

1機だけとなった突撃前衛は合流しようと下がろうとするが、

「逃がしやしないぜ?」

との一言でまた拳撃を打ち込み、吹き飛ばす。














「くぅ・・・・だけど見た目ほどダメージはない・・・?なら動けるか・・?」
しかし不知火は答えなかった拳を打ち込む際にアリスにしっかり仕事をさせていたから
である。だからここで速瀬は

「すみません大尉、動きません。」

『お前はよくやった。ゆっくり休め。』

「は!」

そういわれたが速瀬を襲うのは悔しさであった。

―――結局舐められた上、装備を使用されずに、一撃も当てれず、さらに一撃で倒された・・・。

このうえない敗北であった。

そしてコックピットから眺めると、漆黒のアンノウンはブラストガードやガンスイーパー
などに目もくれず、

「・・・・大尉を見てる・・・!」










―――やつめ、私を指揮官だと分かったのか?

伊隅はそこで自分が落ちれば横浜基地の敗北であることを悟った。そして負けることは
許されないと再認識した。

「ヴァルキリーズ!総員突撃砲をとれぇ!ミサイルで弾幕を張れ!ヤツを仕留めるぞ!」

『『了解!』』

すでに速瀬とストームバンガードの敗北を見ているせいか、ヴァルキリーズは圧倒的
人数差での攻撃を卑怯とも思わなかった。
そしてヴァルキリーズの攻撃が始まった。

各機が各々の役割に基く行動に移り始めた。

ミサイルを撃ち、

突撃砲で弾幕を張り、

そして長刀を手に前進する者、

そして伊隅自身も突撃砲を取り、前進した。

しかし。

漆黒のアンノウンは止まらなかった。

―――さあ、どう来る?!飛べばミサイルの餌食に、避ければ突撃砲の餌食、接近
   しても長刀の餌食だ!

・・・・そしてやはりだろうか、漆黒のアンノウンは

―――やはりまっすぐ来るか・・・・!















―――ここで前進しなければ男じゃないよなぁ・・・!

そう思い、刃は白狼を前進させた。

刃はまず腰のハードポイントから投擲用ナイフを1本抜き、迫るミサイル群へ投擲した。
その着弾を確認せずに、刃は機体をほぼ水平に、地面を這う様な形にまで機体を下げ、
ホライゾナルブーストを吹かす。

上空、爆破音、そしてそれに連鎖するようにまた爆破音。

『なっ?!』

向こう側、相対する者の驚きの声が聞こえる。それもそうだろ、何せナイフ1本で
ミサイルを退けたように見えるのだろう、だが実際はアリスが計算し、速度、
威力、角度共にミサイル群を一番効率的に掃討できるように放ったものであった。

それを見てもなお、

―――まだ撃つよなそりゃ。

撃ってきた。落とされた分のミサイルをはなち、そしてこれ以上を接近させないように
突撃砲で牽制する。

しかしこのとき、

白狼はすでに後数歩で伊隅機へ届く距離にいた。

手を伸ばせば・・・

『大尉をやらせはしない!』

そういい、一機の不知火が長刀を抜き、目前に出て来た。















―――ここで仕留める・・・!

涼宮茜はそう心で思った。

確かに相手は超のつくほどの高性能で、人間離れした機動を見せている、だがしかし
茜はこう思った。

―――その速度から急停止は出来ないはず・・・!

そう思い、涼宮は長刀を振りぬいた、

だがしかしこのとき涼宮茜は失念していた。

この機体の衛士の尋常ではない操作技術を。










一番近くにいた伊隅みちるは見た、眼前で起きる光景を。

その光景とは、ヴァルキリー8、涼宮茜がその長刀を突き刺すように振るうと
同時に漆黒のアンノウンはさらに加速した。
普通であればこのまま衝突するであろうが、2機は衝突しなかった。その代わりに、
漆黒のアンノウンはジャンプユニットで短く飛び、

―――長刀に乗った?!

涼宮茜もその曲芸に驚いたのであろう、一瞬だけ、不知火の動きが止まった。

しかし、それはアンノウンにとっては長すぎるようであった。

漆黒のアンノウンは長刀に乗るも、止まらず、涼宮機へ向かい直進し、そのまま攻撃する
用に見えて、不知火の頭頂部で倒立し、そして背中を蹴る様に思いっきり前へとんだ。

『ふざけんじゃないわよ?!なにあの曲芸?!』

とそんな部下の声が聞こえる。

『だから重力とか物理法則とか無視しないでよね?!』

なんだか副指令の声まで聞こえてきた気がする。

しかし伊隅にそれを聞く余裕はない。何せ、

―――掴まれた・・・・

そう、伊隅みちるは漆黒のアンノウンにコックピットを掴まれていたのだ。














―――さて、楽しかったな。

そう、思った。

―――長い間いろんな馬鹿とやりあったけど、ここまで無謀と分かっていても立ち向かってくる
   ヤツは中々いなかった。だから、こいつらは―――

『どうだジン?』

「まだまだだな。俺たちの時代のヴァルキリーズのほうが全然上だ。だけど、文句なしの
 合格だ。」

『だろ?』

武の声は誇らしげだった。

「んじゃこのらんきち騒ぎを終わらそうかねぇ。」

『そうだな。』

「アリス、オープンチャンネル開いてくれ。もちろんボイスチェンジャー付けて
 ね。」

『了解しました。チャンネル、オープンです。以上です。』

「えっほん、てすてすてす・・あーあーあー・・・あいうえお!」

『さっさと始めろよ!!』

武が怒鳴っていた。

「さて、弱いね。君たちは。弱すぎる。それで本気でBETAとやりあうつもりか?」

そう、刃は放送を始めた。

「テメェらのその腑抜けきった態度で本当に勝てるとでも思ってるのか?」

横浜基地は静かであった。

「横浜基地が最前線にないからって安心しきってないか?お前らの心の中にここは
 後方だから安全だとか考えてないか?」

異論を挟むものは一人もいなかった

「なら軍人辞めちゃえよ。唯一マシなのは最後に出た不知火の部隊だけだな。他は全く
 駄目だな。来世からやり直した方がまだマシかもな。」

そこで一人の軍人が叫んでいた。

『ふざけるなあああ!俺たちだって本気だ!遊んでるわけじゃない!!!』

その声につられるように怒声を上げるものは増えていった。

―――やれば出来るじゃねぇか。

本日なんでもだろうかそう考えた。人間誰しも可能性はあると。だから、つづけて
刃はこういった。

「なら見せてみろ!お前らの覚悟を、本気を、熱意を、心を、魂を!!!それを見せれないなら
 今度こそ滅びても文句言うなよ。」















夕呼はそれを司令室から聞いていた。

―――結局被害をほとんど出さずに基地の奮起だけを促し、現実を見せた。

それだけ見るならかなり優秀な結果であった。しかし、問題はあった。第一に、あの
戦術機はどこの所属であるか、第二にその技術の出所など、それをあげていけばキリがない
とも思っていた。しかしその思考は中断された。

『そんじゃあばよ。』

その一言と共に白いアンノウンと黒いアンノウンは溶けるように消えた。

―――あれは・・・・・・

「光学迷彩・・・・?!」

戦術機に光学迷彩が搭載されているのだ聞いたこともない。それどころか可能ですら
分からない。

「進入はアレで入ってきたのね。すぐにどこへ言ったか見なさい!」

「駄目です!レーダーに写りません!」

「はぁ?!嘘でしょ?!」

「基地から出てすぐにレーダーから反応が消えました!」

「なんなのよいったあああああい!」

再び夕呼の絶叫がこだましたのであった。












「白夜も白狼もここらでいいか」

武と刃は基地から少し離れた窪地にいた。光学迷彩をかけ、2機は静かにたたずんでいた。

「で、次はどうすんのよ兄弟。」

刃が武に聞いた。

「簡単なことさ。ミッション2だ。」

武が余裕を持って答えた。

「ミッション2ってあれか。」

「そう、アレだよ。」

「んじゃやろうか兄弟。」

「そうだな。」

「「ミッション2!夕呼先生を説得して見せろ!」」

そういう二人の声が響いた。

『暑苦しいです。以上です。』

それを聞いて二人はちょっとシュンとした。



本日の 余☆談☆!

『『ハイタッチ!』』

バシッ

『損傷軽微。以上です。』

『『・・・・・・。』』


よだんってかおまけ!その2ぃ!
もう一つの曲芸!


―――長刀に乗った?!

涼宮茜もその曲芸に驚いたのであろう、一瞬だけ、不知火の動きが止まった。

しかし、それはアンノウンにとっては長すぎるようであった。

漆黒のアンノウンは長刀に乗るも、止まらず、涼宮機へ向かい直進し、そのまま攻撃する
用に見えて、不知火の頭頂部で倒立し、そして

『極死・七夜!』

そんな声と共に不知火の頭をもぎ取った。

「なにがしたいんだアレは?!」


ちゃん☆ちゃん
いつでも感想募集中だよ!




[20193] Muv-luv Alternative ~The Fate Avenger~ 第4話
Name: 火乱◆7695e15b ID:6976bec5
Date: 2010/07/16 14:32
どうも火乱です!あいかわらず誤字だらけだと思いますが見てくれて本当にありがとうございます!
ニコニコのほうでも動画をやってるので興味があったら見てください。リンクはぜってぇはんねぇけど。
ともあれ、誤字を指摘してくださった方々ありがとうございます。修正してます。原作をトモダチに貸してて細かなチェックできねぇ・・・急いで返却してもらってます。
あとラダビノッドと夕呼ちゃんの会話に関してですが、夕呼ちゃんには不可能がなさそうと、そして
あきらかなお宝に興奮してたと思ってください。感想はいつでも募集ですよ!!!!
それでは本編をドウゾ。






武と刃は二人で横浜基地へ向かって歩いていた。

「あーだる。」

「いうんじゃねぇよ・・・。」

体力的には問題は全くない。ただ、

「歩くのクッソだりぃ・・・・!」

っというだけであった

「だから言うなよ。」

「俺たちの移動つったらほとんど輸送機か戦術機だったからなぁ。」
と刃は懐かしんでいた。

「なんだ。もう後悔してんのか?」

「いんや、逆にまた戦えて嬉しいぐらいだぜ。」

そう言いつつ、二人は横浜基地前の坂を上りきった。




「な、お前ら一体どこにいたんだ?!こんな時に・・・!」

門番は武と刃を見、そう言った。

―――それもそうだよな。戦術機で強襲されたばかりだしな。

「一体どうしたんだ?」

確信しつつも、武は平成を装って近づいた。

「そっちには何も見えなかったのか?」

「その口ぶりだとなんか来てたみたいだな。」

「実は見たこともない戦術機が急に襲ってきたんだよ!」
と門番が言った。

「へぇ、そりゃあすごいねぇ。国連の基地をか?」
と武がわざとらしく驚く。

「そうなんだよっと、世間話はここまでにしとこうか。」
そう言って、門番は姿勢を正す。

「許可証と認識表、あと隊の腕章を提示してくれ。中じゃ偉い
 騒ぎになってるぜ?」
門番の口はせかすようなものであった。

「あ、悪いないわ。」
と武はあっけからんに言う。

門番はまさかの答えに少し戸惑い、

「どういうことだ。手を上げて目的を言え。」
すぐさま銃を突きつけた。

「ああ、言い方が悪かったな。俺は香月博士の直接の部下でね、
 極秘任務についてたから存在を公にされてないんだ。
 そこにいる相棒と一緒にね。」

そういって武は刃をさした。

「はろー。」
と刃は手を振って挨拶をした。

「・・・今一信じられないな。」

「だったら香月博士に連絡すれば、ああ、暗号忘れないでね。」

「暗号だって?」
門番は頭をかしげた。

「そう暗号。暗号は、4番目、因果導体、理論の誤り、そして脳髄。

「・・・・・・。」

疑うような門番に対し、

「疑うのなら銃を突き詰めたままでいいですよ。
 何もやましい事はないので。」

「・・・分かった。少し待ってろ。」

そういい、門番が一人中へと消えた。



・・・数分後、焦るように門番が帰ってきた。

「すまないことをした。香月博士から通せといわれている。
 中に入っていいぞ。」

「どうも。」

「らぶ&ぴーす。」

そんなことを言いつつも、二人は基地内へと通された。

そして・・・・

「あ、中に入ってから4時間ほど検査受けるんだった。」

「てめぇ先にそれを言えよ兄弟。」

言うも遅く、

「すまないが香月博士の命令によって先に身体検査とかをして
 もらうから。・・・・一体どうした嫌そうな顔をして。」

「なんでもねぇ・・・。」

そういい、二人は4時間の検査へと身を投げ出した・・・・。



















4時間と少し後。

「クソメンドかった・・・・。」

二人は香月夕呼の部屋の前にいた。

「んじゃ入るぞ。」

そういって武はドアをノックした。

「検査を終えました。入室許可を。」

ピピっと、電子音のした後、

「入っていいわよ。」

という声が聞こえたので二人は入室した。

その部屋は武と刃がこっちへ来る前と全く変わらないものであった。
奥にある机、
錯乱している書類、紙、紙、紙、紙、紙。
何もかも前の横浜基地と変わらなかった。

「4時間も検査された割には元気ね?」

夕呼は自分の座る椅子から入り口に立つ二人めがけて言葉を放った。

「ほら、そんな所に立ってないでもっと近くへ寄りなさい。
 アンタたちには興味があるんだから。」

「で、アンタたち何者?」
そう夕呼は問いかけてきた。

「ぶっちゃけ色々疑ってるけどどことも関係なさそう、
 それも私しか知らないようなことまで知ってるし。それにコレ。」

そういって夕呼が手に取ったのはゲームガイである。

「こんな複雑な機械個人で所有する人なんていないわよ?
 それにこんな技術もないし。」

武の持っていたゲームガイは検査を受ける際夕呼先生へ渡すように言ったものだ、それが極秘任務の成果だといって。
もちろんそれは嘘ではあるが武にはこのゲームガイのこの世界での
異常性にすぐ気づくであろうと思って渡したのである。

「そうですね夕呼先生、俺たちは夕呼先生から見れば救世主ですよ。」

「救世主ぅ?それに私は教え子を―」

「持ったことはないですよね?」

武はそう言いニヤリと笑った。

「そう、ただ者じゃないって訳ね。」

夕呼はテーブルの下に手を伸ばしてるようだった。

「あ、銃を出してもこの距離じゃあたりませんよ?」

「な?!」

夕呼は驚愕していた。一度ならず二度までも自分の思考を読まれたことを。実際夕呼は周りが言うように自分のことを天才だと思っている。
しかし慢心も油断もしない。
そのため彼女を知るものは彼女を忌み嫌い、
横浜の牝狐と言う者さえいた。

「・・・アンタたち、さっき戦術機で強襲したでしょ?」

夕呼はそう切り替えした。

「・・・ええ。俺たちです。」

「――!・・・そうなのねやっぱり。どっちがどっち?」

夕呼は少し驚いているようだった。それもそうだろう。
―――横浜基地に現実を教えた戦術機の衛士が二人ともここにいる・・・!
もし、自分の手札として使えるようであればコレはかなりの
ワイルドカードとなるであろう。

「白い方の機体、白夜が俺で。」

と武は言い、

「黒い方の白狼は俺だよ夕呼ちゃん。」

と刃は答えた

「いや、私アンタにちゃん付けされるほど若くないわよ。」

眉を寄せながら夕呼はそう答えたがしかし、


「夕呼ちゃん、俺たちはね終戦後の未来からきてるんよ。」


その言葉で夕呼は固まった。


―――終戦ですって?って言うことは・・・


「そう、俺たちは、人類はBETAに勝利した。主に俺たちの活躍で。」


なんか自己中心的な発言だったがそれは無視しよう。

それより夕呼にとっての衝撃は人類はBETAに勝利し、

「ならアンタたちはなにもの?未来からきたとでも言うの?」

それを夕呼は口の端をゆがめながら言った

「エグザクトリ!まさにそうだ!俺たちは未来から来た!
 夕呼ちゃん、君の力を借りてだ。」

「いや、だから年下にちゃん付けで・・・。」

夕呼は半分あきれつつも、言おうとしたが、

「夕呼ちゃん年下趣味だもんね?俺たちこんなガキくせぇ体してるけど
 実際は見た目より十数年年取ってるよ。
 あれだ、兄弟風に言えば俺たちは主観時間で言えば貴女より
 年上です!なんてな。」

それを聞いて夕呼は押し黙っていた。内心夕呼はすごい動揺していた、だがそれを悟られれば、
それは自分にとって不利になる。
だから夕呼は質問を続けた。

「・・・アンタたちの目的はなに?一体アンタたちはなんなの?!」

「・・・・それを理解するにはまず、俺の経験したオルタネイティブ
 計画の全てを話す必要があります。」

「アンタの全て?」

そういぶかしむ様に夕呼は言った。

「そんじゃ、コレは突拍子のない話です。信じるも信じないのも全て先生しだい、
 ただし俺は絶対に嘘を言いません。それだけは誓います。」

そしてその言と共に武は話し始めた。自分の全てを。


自分が元はBETAのいない世界の出身であったと。

ある日起きたらこの理不尽な世界にいたと。

夕呼先生に拾ってもらったと。

最初は全くの足手まといだったと。

努力したと。

オルタネイティブ4が失敗し、オルタネイティブ5が発動したと。

「まって、オルタネイティブ5は発動したのね?」

「ええ、クリスマスにね。」

「クリスマス・・・・・・。」

「しかしそれはまだ始まりです。」

「始まりですって?」

「そう話を続けます。」


そして武は語った。

地球に残って戦って死んだことを。

死んだと思い、目を覚ませばまた10月22日の横浜にいたことを。

再びA207Bの面々と会えたことを。

オルタネイティブ4に参加したことを。

オルタネイティブ4を完遂させたことを。

そしてヴァルキリーズ壊滅と引き換えにオリジナルハイブの陥落を。


「先生、俺はね、許せないんだ。何も出来なかった自分が。」

「それはアンタのエゴよ。確かに存在した未来をなげうってきたわけ
 でしょ?それで本当に良かったの?」

それを聞いて武は安心した。ああ、彼女は夕呼先生なんだと。
だから武は言った。

「先生。俺と刃は先生の救済措置です。」

「救済措置ぃ?」

「そう。俺たちは00ユニットの完成論を持っている。戦術機の性能を飛躍的に上げる新型OSを持っている。
何より俺と刃はここから起きる数々の事件とその犯人と証拠が
なんであるか知っている。
俗に言えば、この世界のマニュアル本ですよ。」

「・・・・まさか因果導体をこの目で拝める日が来るとは
 ねぇ・・・・。」

そういい夕呼は自分のPCに向かい、何かを打ち出していた。

「今、私の目の前にはアンタたちの身体検査が来てるのよ。
 見る限り・・・
 あら、そっちの刃だっけ?珍しい体してるわね。
 まぁ、問題はないわね。」

そして夕呼はこっちを向いた。

「じゃ、最後に聞くわよ。アンタたちの目的は?」
夕呼はこっちをまっすぐ真剣な目で見ていた。

「BETAに勝つ事。そして絶対に仲間を死なせないこと。」

そして場は無言になった。

静寂は夕呼の言葉によって妨げられた。

「で、アンタたちどうすんの?なにかしたいことでもあんの?」

と夕呼はパソコンに視線を戻し言った

「俺たちのことを信じてくれました?」
そういう武に対し、

「とりあえずアンタたちが嘘ついてないのは分かったわ。
 じゃなければ頭の病気よ。」

っと軽い口調で夕呼が返した。

「一応00ユニットの完成論とかのものは全て機体のほうに
 置いてあるんで輸送車かなんかで戦術機を回収させていただくと
 ありがたいです。」

「そう。確かにそれを確認しないには本当にアンタたちが嘘ついてる
 かどうかもわからないわね。
 分かったわ輸送車の手配をしてあげる。
 ハンガーは・・・たしか90番ハンガーの事知ってたわよね?
 ならそこを使いましょ。口堅い連中だし。」

「んじゃ、俺は輸送車についてくぜ。俺がいないとアリスちゃんが
 姿を出さないだろうし。」

「アリスちゃん?もう一人きてるの?」

夕呼はこっちが出してないカードに対して警戒していた。

「ああ、アリスって言うのはAIのことですよ先生。」

「AI?それももしかして・・・。」

「先生の作ったものです。というよりぶっちゃけ俺たちが使ってる
 ものの9割が先生による発明ですよ?」

それぐらい夕呼の発明は万能で偉大であった。この夕呼に対してもきっと頭が上がることはないだろう。

「ふーん。じゃ、手配しといたわ。さて、最後にアンタたちの扱いだけど。どうする?
 アンタたちの実力を見る限り少佐以上になっててもおかしくはないわね。ただまだ前歴もない
 アンタたちにはそこまでは無理でしょうけど。まぁ、現実的に言って大尉ぐらいかね。」

「んじゃ大尉でよろしく頼むわ。」

軽そうに刃は言った。衛士になれば少尉に昇進可能ではあるが、大尉はさらにその上で本来なら武勲をたて、そして時間をかけてあがるものである。

「そっちの白銀はどうするの?」

「俺は・・・A207B小隊の教官をしたいです。」

これが武の今回でのループで決めたことであった。前回のループでは自分はまだ未熟であり、
まだ訓練する意味もあったろう、だが今回武は本気で彼女らの訓練を考えていた。
たしかにまりもちゃんはこの横浜基地で探せる最高クラスの教官ではあろう。

だがしかし、今現在、彼女たちの本当のポテンシャルを理解し、感じているのは誰よりも
白銀武本人であり、自分になら総合演習を繰り上げることも、それだけの実力を付けさせる
ことが出来るとも信じていた。なによりも、

―――まりもちゃんが手伝ってくれるなら不可能はない。

とそうさえも考えていた。なによりも今回は相棒までいてくれる。彼も手伝ってくれれば最高クラス
の衛士二人と訓練できるということである。だから武はあえて隊に入ることより、外側から彼女らを
見つめることにした。

なによりも、武は彼女らと同じ姿をしていても、主観時間ではすでにかなりの年を取っている。
だから武は今更彼女らの輪に入れるとは思わずいた。

「・・・たしか将来A-01部隊に入れるほどの腕前を持つようになる
 子達だっけ。それでいいの?」

それをきき、夕呼はしばし思案したあと口を開けた。

「そう。ならそうしましょ。すでに教官がいるけど一緒にやれるわよね?」

「まりもちゃんですよね?知ってますよ。」

と、苦笑するように言った。しかし夕呼はまりもを知っていたことに驚いていたようだ。

「アンタまりものことも知ってるの?」

「もちろんですよ。俺をここまで鍛えてくれたのがまりもちゃんですからね。」

「そう。そうなの。まりももやるわね。・・・・まぁ、それでも一応
 アンタも大尉しとくわね。ごり押しすればなんとかなるでしょ。」

夕呼の声はどこか嬉しそうな色を帯びていた。

「んじゃ、いったん話はここで切ろうか。なにせ白狼も白夜もまだだしな。
 続きは両方ともこっちへ来てからにしよーぜ。」

と、刃が言ってきた。その言葉を境に、部屋に充満していた緊張はすこし薄れたような
気がした。

「んじゃ俺はアリスちゃんを迎えに行くけど兄弟はどうする?」

「そうだな、俺も一応ついてくか。」

「じゃ、私はここにいるから運び込まれたら呼んで頂戴。」

「あ、その前に先生、隣の部屋に入りたいんですけど・・・。」

「・・・・ロックは外しておいたわ。」






武が入ったのは暗くて狭い部屋。

部屋の中央には青く光るシリンダーそしてその傍らには銀髪の少女。

「よう、霞。ってああ、俺とは初めてだったよな・・・。そうだ、仕切りなおそう!
 こんにちわ。俺の名前は白銀武。君の名前は?」

「・・・・。」

ててててててててっと、社霞はシリンダーの裏に隠れた。

武はただ何も言わずそこに立って、霞を見ていた。

―――相変わらずちっこくて無口だな。元気でよかった。

そう思った。だから武は何も言わずに待った。知っているから、今霞は全勇気を振り絞って、

―――純夏の記憶にいた俺に話せるから。

そう思ったとき、霞は少し驚いたような顔を見せ、ゆっくりと前に出た。

「・・・・社・・・・・・霞です。」

「久しぶりだな霞!ってああ、霞って呼んでいいよな?」

そういうと霞はゆっくりと頭を頷いた。

「霞は知らないけど俺はずっと前からしってるんだぜ?って言っても分からないことだらけだけど・・・そうだ!
 純夏に挨拶をしようか。」

そういい、武は脳の入ったシリンダーの方に顔を向けた。










「アンタは挨拶しないの?」

夕呼はそう問うてきた。

「アレは兄弟の役目だ。俺は兄弟の盾兼剣。
 運命を変えたり喜んだり泣いたりするのは兄弟の役目だ。」

「ならなによ、アンタあいつを助けるためだけに来たわけ?」

「そーゆーこと。」

「アンタばっかじゃないの?」

夕呼はほとほとあきれていた。

この二人の男は明らかに狂っている。夕呼はそう思っていた。発言の信憑性は薄い、だがこの二人の技術、能力、情報はどれをとっても今時分が持っている最新のものを凌駕している。しかしBETAのいなくなった安全な時代に安寧を得ることを良しとせず、完全な形で自分の未来を得ようとする理想主義者である。だがその困ったことは。

―――それを実現しようと完全に準備してあることね。

「ふぅん。」

だが、それは自分に関係ない。

自分は自分の役目を全うし人類のために最善の努力する。そのためには、まず目の前のこの
二人を完全に使えるようにならなくてはならない。

そう考えていた所、横のドアが開いた。武が霞と出て来た。

「あら、もういいのかしら?」

「ええ、十分純夏とは話させて貰いましたよ。」

そういう武の顔はどこか少しスッキリしていた。

「じゃ、いってらっしゃい。」

それを合図に、二人は夕呼と別れ手配された輸送車に乗り、こっそりと2機の戦術機を
回収に向かった。











訳1時間半後

「はぁ、すごいわねぇ・・・・・。やっぱりモニター越しに見るのと直接見るのでは全く違うわね。」

時と場所は移り90番ハンガー内。

コレが基地を強襲した戦術機ね、と夕呼は機体を見ていた。

そして周りの整備班の目が輝いているのは目の錯覚ではないのだろう。

「ね、かっこいいでしょ?」

「そうね。で、データ類は?」

夕呼は急かした、彼女も音からの前であまりじっとしていられなかった様だ。

「ちょいお待ち。アリスちゃーん朝だよー!」

そう見当違いな発言を戦術機へと投げかけていた。

―――コイツ本当に頭大丈夫かしら。

そう思っていたら、

『お兄様、現在PM17:00だと判断します。どう見ても朝ではありません。
 そろそろ脳外科か精神科へ行くことをおすすめします。以上です。』

そんな毒舌を撒き散らす女性の電子音が聞こえた。

「はぁ?これがAI?」

「そう、俺の自慢の妹だ。」

整備班の目がさらに輝いた。一体なにを今の会話に見たのだろう。

「2機で一つのAIを共有してるのね?別々のを使用したほうがいいんじゃないかしら?」

夕呼はAIの存在を聞いて密かに抱いていた疑問を聞いた。それほど高性能なAIであるなら、
むしろ1機ごとに別々に用意した方が運搬も何もかもらくだろうに、と。

「あー開発に成功したのがアリスちゃんだけなんだ。」

「って言うと?」

「アリスちゃんは00ユニットの後続型でね。いかにAIを人間らしく、いかに合理的な判断のみに縛られず自由な感性与えられるかって問題に挑戦したものなんだよ。
 ついでにG機関を統括するシステムも入れて、開発費はゴニョゴニョ・・・・。」

「なっ?!そんな予算使ってるの?!」

軽く横浜基地をつぶすことの出来うる予算だった。

「戦争が終わって平気の開発部門が縮小化されたからね、
 その分の予算が使えたんだよ。」

「そういえばAIのコピーをしたら二つになるんじゃない?」

「ああ、ムリムリコピーとかしたらロジックエラーで崩壊するよ。」

「・・・・ああ、なるほどね。」

それだけで夕呼は問題に気がついた。

「アリスちゃんは唯一無二の個性を持つように作られたんだ。コピーなんかしたら同じ存在が2個あるとして矛盾ででなんか色々なんだよ。」

「最後まできちっと説明しなさいよ・・・・。」

夕呼はため息を一息ついたそして言葉を続けた。

「それで、G機関ってなに?まさかと思うけど名前どおりG元素つかってんの?」

「そこからは俺が答えますよ先生。」

と、機体に向かってなにやらブツブツ話しはじめた刃の変わりに武が出て来た。

「G機関って言うのはG元素を利用した半永久機関ですよ。もちろん先生の発明です。」

「半永久機関ねぇ。仕組みは?」

「詳しいことはあまりよく分かりませんけど、重力って言うのは自然に存在する力でG元素はその力を利用できるから、
 G弾の爆発で生まれるエネルギーを動力として開発した結果とか言ってましたね。
 あとアリスがいるとき限定で重力に指向性を持たせて運用することが出来ます。」

「あーなるほど。あの変態が速瀬を吹き飛ばしたのはそういう仕組みだったのね。
 ・・・・倒立できたり長刀の上にのったのもそうやって重力を弄ってたのね・・・。」

そして夕呼は考えていた。きっと今の会話で仕組みが色々と見えてきたのだろうが、

「先生コレ。」

と、武が携帯端末を渡してきた。

考えから戻された夕呼は端末を受け取り、見つめ、電源を入れた。

「これだデータ?」

「そうです。一項目目が最新型OS、二項目目が00ユニットの最終完成論です。」

「ふ、ふふふふふふふ。」

それを見つつ夕呼は笑っていた。そして後ろの刃を見てみれば整備士たちに囲まれなにやら一緒に
うふふと笑っているようであった。

―――理解者がいたのか・・・・。

武は整備士たちの顔を覚え付き合い方を考えていた所、夕呼の言葉に現実に戻された。

「アンタら最高よ!ああ、もうキスさせて!」

夕呼は振り返るといきなり武に抱きつこうとした。

―――だがその行動は予測済みだ!そして経験済みだ!

経験則を頼りに、見事に武は避けた。

「あ、あぶなかった、また先生にファーストキスを奪われる所だった・・・。」

前回のループでも武は思いっきり夕呼に襲われていた。

そう油断した瞬間。

ッチュ。チュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!

っと、命を吸い取るが如くキスをされてしまった。

そして失意の中武は言った。

「運命には逆らえなかった。」

「あ、ごめん。年下趣味じゃないのにやっちゃった。」

「だから年上ですって!」

夕呼は舌を出しながらゴメンねと答えた。

―――かわいいつもりなのかな先生・・・・

「ちょっと、今なんか疑問に思わなかった?」

夕呼は勘が鋭かった。

「いえ、何でもありません。」

「だけど、本当にすごいわねぇ・・・・この新型OSってのもざっと見ただけでもかなり違うわね。
 コレをダシに他の国から物がつれそうなほどにね。」

夕呼はにんまりした笑顔を付けながらそう言った。

「俺としてはなるべく早い段階でそれが普及してくれれば多くの衛士が助かるんですけどねぇ。
 特にソビエトと中華は最前線ですからあちらに早めにまわせればいいんですけど・・・。
 まあ、でもその前にこいつの性能を認めさせないと。」

「そうね。あ、そうだ。何かほしいものはあるかしら?ゆすれるだけゆすってみるわよ。」

そう夕呼が言うと、奥にいた刃が戻ってきた。

「ほしいものならあんぜ。」

「なによ?妹とか言わないでよ?」

「それも捨てがたい。だが別だ。衛士だ。」

「衛士?」

夕呼は聞いた。

「そう、衛士だ。俺たちの時代だとほとんどのエース級は戦闘より事故とかで
 死んでな、そうなる前に手元において保護したい衛士が二人ほどいるんだよ。」

「言ってみなさい。善処してみるから。」

今の夕呼はデータが入ったことでなによりも心が広かった。

「紅の 姉妹 ( スカーレット・ツイン ) を知ってるか?」


第5話へ続く!





おまけ


「ふ、ふふふふふふふ。」

それを見つつ夕呼は笑っていた。そして後ろの刃を見てみれば整備士たちに囲まれなにやら一緒に
うふふと笑っているようであった。

―――理解者がいたのか・・・・。

武は整備士たちの顔を覚え付き合い方を考えていた所、夕呼の言葉に現実に戻された。

「アンタら最高よ!ああ、もうキスさせて!」

夕呼は振り返るといきなり武に抱きつこうとした。

―――だがその行動は予測済みだ!そして経験済みだ!

経験則を頼りに、見事に武は避けた。

「あ、あぶなかった、また先生にファーストキスを奪われる所だった・・・。」

前回のループでも武は思いっきり夕呼に襲われていた。

そう油断した瞬間、

「なぁ、兄弟・・・・」

と前に出て来た刃と・・・

ッチュ☆

「「うえええええええええええええ」」

悪夢だった。



おまけ2!

整備士と刃の会話

「やっぱ妹だよな。」

「だよな!お兄さんといわれたときのあの感動が・・・!」

「お前・・・分かるな・・・・?」

「同士も中々だな!」

『どうして有能な人間ってこうも一癖あるのでしょう。以上です。』


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