主体性から始まった社会人基礎力養成講座も、ついに最後、12番目のストレスコントロール力まできました。従来ストレスというと、ストレスに耐える力が重視される傾向にありましたが、今回紹介するのはストレスをコントロールする力です。この違いが大切です。次の問題に挑戦しながら、耐える力とコントロールする力の違いを理解してください。
■問題 アルバイト先で、先輩に挨拶の仕方から仕事の進め方まで事細かに注意された。自分よりもできないアルバイトもいると思うのだが。あなたの行動に近いと思うのはどれですか? 1.先輩の怒りが収まるのを黙って待つ 2.きっと自分に落ち度があるはずだから、何がダメだったのか原因を探す 3.先輩の指摘を素直に受け止め、明日からの仕事に生かす 4.納得がいかないので辞める |
●正解は…
先輩の機嫌が悪かったのか、本当に自分に落ち度があったのかは分かりませんが、このような状況でどう対応するのがいいのでしょうか。ストレスをコントロールするといった意味では、先輩の指摘を受けるようなマイナスの局面でも、仕事に生かすというようにプラスに考えている、3番が最適解となります。1番のようにひたすら耐えたり、2番のように全面的に自分に非があると考えたり、4番のように逃げたりしては、ストレスをコントロールしているとはいえませんね。1番や2番はストレスを自分の中に溜め込むだけです。
社会人基礎力では規律性の意味と行動例を以下のように示しています。
ストレスコントロール力=ストレス発生源に対応する力
行動例=ストレスを感じることがあっても、成長の機会だとポジティブに捉えて肩の力を抜いて対応する
個人的には、ストレスコントロール力は働く人にとっての重要度はとても高いと思っています。理由は、仕事でのストレスが原因で精神的に病んでしまう人や離職してしまう人が非常に多いからです。独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2006年に35歳未満の若年者(企業の在職者とハローワークに来所した求職者)を対象に実施した調査によると、前職の離職理由を聞いたところ(複数回答)、「仕事上のストレスが大きい」が43.0%で最も多い結果となりました。入社3年以内に離職した第二新卒者に限っても最も多いのは「仕事上のストレスが大きい」(26.3%)でした。
せっかく一生懸命に就職活動をして企業に入っても、ストレスが原因で企業を辞めてしまうことになっては、就職活動にかけた時間が無駄になってしまいます。基本的にストレスのない仕事なんてありませんから、ストレスといかにうまく付き合いながら仕事をするかが大事なのです。うまくストレスを避けたり、低減させたりして仕事を続けられれば、ストレスも気にならなくなるでしょう。
●ストレスコントロール力の鍛え方
では、ストレスコントロール力を鍛えるためには、どうすればいいのでしょうか。基本的にはできるだけ軽いストレスのかかる状況に自分の身を置き、どうやってストレスを回避するのかを経験することです。それは、人間関係でもいいですし、責任を持つというストレスでもいいでしょう。例えば、人間関係なら自分と性格が合わないと思える人と付き合っみて、ストレスを減らすにはどうすればいいかを考え、経験してみることです。責任という点においては、サークルでもゼミでも、自分一人で責任を持って取り組むことに挑戦してみることです。失敗を恐れず、勇気を持って取り組んだ経験は、たとえ失敗しても必ず後で役に立ちます。ストレスのかかる状況を多く経験することは、ストレスをコントロールする力を確実に育てます。大きなストレスではなくていいので、小さなストレスから徐々にレベルを上げるのがいいでしょう。
もう一つ、気持ちの持ち方も大事です。困難なことがあったような時には、辛い、大変だ、などというマイナスの気持ちをできるだけ持たず、いずれは自分のためになる、これを乗り越えれば次は楽になる、というような前向きな気持ちを持つこと。また、先生や先輩に叱られ時には、反省をして2度と同じことのないように対処法を決めたら、それ以降は叱れたことは気にしないようにすることも大切です。クヨクヨ考えないことです。
注意したいのは、決してストレスに耐えようとしてはいけません。ストレスに耐える力のある人ほど、ストレスに耐えようとします。しかし、耐えられる限界を超えてしまうと、精神や体にダメージを受けてしまうことになってしまいます。ストレスを受け止め過ぎず、柳の枝のように柔軟にかわす力が求められます。
以上がストレスコントロール力の鍛え方です。気にしない、気にしない、そんな気持ちを心のどかに持ち続ければ、うまくストレスに対処できるのではないかと思います。
[2010/06/30/日経就職ナビ編集部 渡辺茂晃]
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