2010年04月17日

今の葬式のあり方について 島田裕巳さん

お金の問題を始め、様々なトラブルが起きている「お葬式」。
今夜は、いまの葬式のあり方に異議を唱え、ベストセラー『葬式は、要らない (幻冬舎新書)
』の著者である、宗教学者の島田裕巳さんをお迎えしてお話を伺いました。




島田裕巳さん:



葬祭業の業者から抗議が来ましたよ。弁護士から。ちゃんと読んでくれていないなと思った。決め付けているという結論があってと。葬式無用論じゃなくてみなさんの叫びなんだと思います。こんなにお金がかかってこんなに面倒くさくて、それなら葬式なんていらないと感じている人が多いんじゃないか。

葬式代、日本は平均231万円。海外と比べると圧倒的に高い。アメリカだと50万から70万円。ヨーロッパは教会、ミサ、葬儀でお金がかからない。

葬式を高くしている要因は?

いろんな要因が絡んでいる思いますが、葬儀社に払うお金、お寺に払うお金、香典返し、来た人に飲食を提供する諸々かかる。



葬式をあげる人がどこか贅沢に傾いてしまう。お金をかけないと故人を弔ったことに鳴らないんじゃないかという見栄や世間体が働く。葬儀は働きやすい。


戒名は。

何で必要なのかというイメージで。ほかの国の仏教では戒名みたいなものがないんですよね。お坊さんが出家して僧侶になった時に名前をもらうのはありますが、一般の人が亡くなってからもらうのはほかの仏教国にはありません。歴史的経緯がありますが、お寺の檀家さんになるときの供養してもらう対象になるということでそのための対価として戒名料を払う仕組みになっています。戒名料でいただいたほうがお寺としてももらいやすいという事情が僕は凄く大きいと思いますね。今、お寺に行くことはお寺にお墓があったとしても墓参り以外に行かないじゃないですか。最近、三回忌などの年忌法要がありますが、あんまりやらなくなっているんですよね。法事は昔は重要で必ずやっていましたが最近はやらなくなっています。そういう気持ちが薄れてきた、家意識が段々弱くなっているんですよ。お葬式でも初七日、四十九日を繰り上げで葬式の時にやっちゃう。百か日で納骨するとか、一周忌、三回忌と続くけど、それだけ集るのに大変で、もっとお金がかかるようになるし。

戒名の料金は残っているわけですよね。

院号・居士とかというとかなり大きい額を支払っていることがあると思いますよ。院善居士がありますね、将軍にいただいた、芸能人で大活躍した人でもらっている例、黒沢明さんとか。そのレベルは500万円とか。お布施として。2000万円も聞いた事があります。お金さえ出せばということじゃなくて、お寺に経済的な貢献として院号居士を授けるとか。

お寺に墓地がなかったら戒名料を払う必要はないです。檀家として供養してもらうからと。毎朝お経を読んで檀家さんを供養するというサービスを受ける対価としてどっかで払うのは当然なんです。檀家はスポンサーだから、そういう関係がなくて民間の墓地、公営墓地、多摩霊園とか青山とかそういうところなら檀家関係がないので戒名を支払う必要がない。よくわかっていなくて、檀家は何なのとわからなくなっている。

基本は戒名要らないでしょうね。

統一料金とかないです。お寺さんが戒名を付け方を教えているわけでもないし、宗派が僧侶を養成しますが指導をするわけでもない。基本的な部分はほとんど一緒。妙じゃないですか。仏教の教えとは関係ないということで慣習としてあるということです。仏教界は仏の弟子になった証とか言うから話がややこしくなる、もっとストレートに檀家になるからと経済的貢献をして下さいと説明すればいいんだけどそうするとうまく説明できないから。

日本は冠婚葬祭の国なんです。人間関係を強化して社会を作り上げてきた。村の社会は冠婚葬祭命ですから。地域で関わってきて葬式なら葬式組があって回り近所がやってくれる。それによって親戚関係が関わってきてコミュニティを作る。結婚式だって世界で1位じゃないですか。名古屋近辺とか。

社葬なんて世界でないですよ。会社という考え方が違う。組織は自分たちの生活の場なんです。創業者は自分のうちの先祖みたいだから社葬をやるんです。車窓なんかやることで仕切る能力があるかどうかで社会的な信用に結びつきます。葬儀をちゃんとあげられるかどうかで評価が変わってくるんです。そういう文化なんです。


みんなに身近なのは葬儀だと思う。疑問を持ちつつやってきていると。何で戒名は高いのとか、葬儀に満足できないとか。わかってないですよね。葬儀を理解するための教育もない。学校も教えてくれないし。昔は親戚が教えてくれたけど、そういう親戚付き合いもない。何だか分からないうちに葬儀になってしまって。葬儀社の言いなりになったようなフォーマットが決まったような何となくやってしまう。

フォーマットがないと遺体の搬送から、火葬場が混んでいて、火葬場の数が少なくて亡くなる方が増えていて季節にもよりますが、火葬するまでに期間がかかってしまう。冷凍施設があるところに安置してもらわないとと。

昔は都会でも自宅で葬儀している家が多かったんですよ。最近全くないです。葬祭場でやるのが少数だった。業者に委託するようになるとお金が全てで、そういう傾向が強くなりすぎてしまっているのが一番の問題じゃないですか。

葬式組がある時は遺族の人は何もしなくていいんです。逆に今のほうが遺族が葬儀を決めたりやったりしなくてはいけなくなっている。負担なんです。負担のところにお金のことも絡んでくるので葬式はいらないというふうに言いたくなるんです。

考える機会がないからどうしたらいいかわからないんですよね。葬式になれていない。業者にはフォーマットがあるけど、我々の側にない。なくなってしまっている。それゆえにトラブル、不満が起こったりするわけでフォーマットをこちら側に取り戻していかないとこれからも厄介ですよね。

贅沢をしてはいけないということではなくて、葬式は贅沢だから基本やりたくなければやらなくたっていいんです。お金があってやりたければどうぞどうぞと。今は直葬が、通夜も告別式もやらない、参列者がいない高齢者の場合はそれで済んでしまうんですね。

二極化していくと思います。高齢者の場合は来てくれる方もほとんどいない場合は直葬でいいわけです。現役で亡くなったとしたらいろんな人間関係があって家族だけではすまないので死んだのを確認したいから葬儀は続いていく。合理化は進んでいくと思います。231万円にはお墓の代金は入っていませんからね。だ問題だと思うんですよね。自宅には置けないし、お墓は高いし。散骨も費用が掛かりますし、散骨も高熱で焼いていてセラミック化しているという話もあって自然に変えるかどうかわかりませんし。

ゼロベースで原点に返ってみる、本当に葬式はいるのかどうか。生きている間に、家族の間で葬式のことを考えないじゃないですか。高齢者の方に本を買っていただいているので。死んだ後にも問題はほかにもいろいろあるんですよ。決して悪いことじゃなくて家族は何かと考えるきっかけにもなる。何でも前向きに考えてどっかにみんな来るんだから、心配しているんだから話し合うことが大切ですよね。

(2010年04月15日J-WAVE JAM The World「15minutes」から)




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