名古屋グランパスの日本代表DF田中マルクス闘莉王(29)が15日、チームの全体練習に合流した。父・パウロ隆二さんの病気のため、ブラジルに帰省し、合流が遅れていたが、その父からの激励の言葉を胸に、再び、J1の戦いへと気持ちを奮い立たせた。
闘莉王が2カ月ぶりに練習場に戻ってきた。「帰国が遅れて寂しい日々が続いた。元気な仲間を見て元気をもらった」。チームメートが、ストイコビッチ監督が出発前と変わらない明るさで迎えてくれた。硬かった表情にも、ボールを追ううちに笑顔が戻ってきた。
初出場のW杯を、「逆風の中、チームが一丸となった。日本人としてピッチで思い切ってプレーできたことを誇りに思う」と振り返った。父の病気という不安を抱えていた。1次リーグのデンマーク戦後、ブラジルの母から父の入院を知らされた。「すぐにでも駆けつけたかったが、父は最後までやり通せと言うはずだ」と思いとどまった。
W杯後、チームを離れてブラジルに帰郷した。「病気で苦しんでいる父を見て、サッカーをやめて見守りたいと思った。自分の中で1番大切なのは家族。あんなに弱っている父を見たのは初めてでショックだった」。しかし、失いかけたサッカーへの情熱を呼び起こしてくれたのも父だった。「中途半端な気持ちで終わらせるな」という父の言葉に後押しされて、「もう1回頑張ってみよう」と、帰国を決意した。
実は、決勝トーナメントのパラグアイ戦前、唯一、GK楢崎には父のことを打ち明けていた。「ナラさんは経験があるだけ、話をしても、聞いても説得力があった。相当心配してくれた」と、試合に出られないジレンマを抱えながら、不安を共有してくれた楢崎に感謝した。14日の帰国直後にも、気遣って、電話をかけてきてくれた。
「1戦1戦ベストを尽くすやり方は変えたことがない。仲間、サポーター、スタッフ、愛する人たちに対して失礼なプレーはできない」。父の看病をする中でも、コンディションを気にかけ、体を動かしていた。「僕は名古屋の選手。闘莉王が来て良かったと思える試合を見せたい」と、最後は力強く言い切った。
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