〈対談・理想の最期は「無縁仏」!?〉
伊藤比呂美×
島田裕巳
それでもお葬式って、
必要ですか?
「葬式は家族だけで」「墓に入らず、自然に還りたい」など、死後の一連のセレモニーに選択肢が増えつつあるこのごろ。ベストセラー『葬式は、要らない』で、日本の葬儀が豪華すぎる真の理由を示した宗教学者の島田裕巳さんと、日米を行き来して父の介護を継続中の詩人・伊藤比呂美さんが、理想の死に方、自分らしい葬式について語り合いました。「放浪の末、無縁仏になりたい」と語る伊藤さんに対し、「葬式は自分じゃ出さないから、どうでもいい」と応じる島田さん。歴史上、最大の墓参りブームが到来している今ならではの濃厚な対談です
伊藤 ご本(『葬式は、要らない』)、ホンット面白かったです。今まで何か変だなあと思ってたことに、裏付けを与えてくだすって。
島田 伊藤さんは去年、お母さんを亡くされたんでしたね。
伊藤 去年の4月です。お葬式も祭壇もなしで、親戚と4人で火葬場に行って、っていうのをやりました。こういうの、何ていうんですか。
島田 直葬かな。
伊藤 あたしは普段アメリカに住んでて、母は熊本の病院に、手も足も動かない寝たきりの状態で5年近く入院してました。生かされて、植物が枯れるように死んでいくのが非人間的だなあ、って思ってた。亡くなって連絡が来たから、父の家に帰ったんですよ。そうしたら、父が普段寝てるベッドの上にお棺があって、父はその隣に自分用の布団敷いて。母は納棺師さんにお化粧してもらって、きれいになってた。
島田 ああ、『おくりびと』だ。
伊藤 そう、映画のまんまでした。それで、床にお花と香炉があるだけ。あたしが着くまで待っててくれて、それから、葬儀屋さんのバンに乗って焼き場に行きました。お骨あげして親戚をそのまま空港に送って行って、精進おとしも何もなしです。
島田 今、日本人が普通に葬式あげると、平均で231万円かかるんです。
伊藤 ウチはお棺も一番安いのだし、火葬代や何やで27万円くらいでした。
(『婦人公論』2010年7月22日号より一部抜粋)