きょうの社説 2010年7月16日

◎検察審「不起訴不当」 小沢氏復権への道開くか
 小沢一郎民主党前幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法 違反事件で、検察審査会の判断が分かれた。東京第5検察審査会が先に04、05年分の収支報告書への虚偽記載容疑について、起訴すべきとする「起訴相当」と議決したのに対し、07年分については、東京第1検察審査会が「不起訴不当」と議決し、再捜査を求めるだけにとどまった。

 2回議決されると、いや応なく強制起訴される「起訴相当」とは異なり、「不起訴不当 」には法的拘束力がない。特捜部が再捜査で処分を変更する可能性は薄く、小沢氏にすれば、希望にそぐわぬ議決だったにせよ、本音の部分では「起訴相当」の厳しい判断を避けられたことで、ひとまずは安堵の思いではないか。今回の議決は、強制起訴の是非を判断する第5審査会の審査にも影響を及ぼすだろう。小沢氏復権に向け、わずかに霧が晴れてきた印象もある。

 「陸山会」の土地購入をめぐる04、05年分の虚偽記載容疑については、第5審査会 が「起訴相当」の議決後、特捜部が再び不起訴としたことから、現在、第2段階の審査手続きに入っている。ところが今月末にも出るとみられていた2回目の判断は8月以降に先送りされる見通しが強まり、9月の代表選前に、結論が出るかどうか微妙な情勢になってきた。

 1回目の議決で、「起訴相当」と判断した第5審査会の審査員11人のうち、4月末に 6人が交代し、残る5人は7月末に交代するとされており、2回目の判断が8月以降となると、「起訴相当」と判断した審査員は1人も残らないことになる。1回目の判断に左右されず、ゼロから審査し直すなら、違う判断が示される可能性が高まっても不思議はない。これは小沢氏側には、有利な材料だろう。

 参院の与野党逆転を受けて、小沢グループからは、小沢氏の「剛腕」に期待し、代表選 出馬を求める声が出始めている。だが、第5審査会がいかなる判断を示すにせよ、小沢氏は国民に対する説明責任を果たしていない。国会の場で、土地購入をめぐる疑惑について詳細に説明すべきだ。

◎PFI事業 民間参入促す制度改善を
 PFI方式で行われる野々市町の野々市小学校整備事業に、信金中央金庫と石川県内の 全5信用金庫が総額6億円の協調融資を行う。民間資金を活用して社会資本整備を進めるPFI事業に県内の全信金が協調融資するのは、北陸では初めてという。

 政府は成長戦略の中で、PFIの累計事業実績を2020年までに、これまでの2倍以 上の10兆円に増やす目標を掲げている。これを実現するには、さらに使い勝手の良い制度に改善し、民間企業の参入意欲を促す必要があろう。

 PFI事業は1999年に「民間資金等の活用による公共施設整備促進法」が施行され てから徐々に増加し、2009年末の累積事業件数は366件で、事業規模は約4兆7千億円に上る。北陸でも野々市町のほか、富山市の小学校建設や小松市の市営住宅建て替え事業などにPFI方式が導入されている。ただ、全国的に事業件数は伸び悩んでいる。その要因として、PFI事業の仕組みづくりに手間がかるため、自治体側が導入に腰が引け、民間企業も収益確保の問題で参入に積極的になれないことなどが指摘される。

 政府が成長戦略にPFI事業の拡大を明記した背景には、高度成長期に集中整備された 橋りょうやトンネル、水利施設など膨大な社会資本の老朽化が進み、今後、施設の更新、維持の財政負担が大きくなってくることがある。

 社会資本の効率的整備や、民間企業の事業機会創出による経済活性化の点で、PFI方 式は有効であるが、さらに普及させるには、過去の事業実績と課題を再点検し、より良い制度にしなければなるまい。例えば、政府のPFI推進委員会も指摘する通り、民間事業者の選定手続の改善や、リスク負担に見合った利益確保策、民間の創意工夫を生かすための規制緩和などを検討する必要がある。

 PFI 「プライベート・ファイナンス・イニシアチブ」の略で、国や自治体が民間事 業者に公共施設について設計・建設や維持・管理、運営を委託して整備する手法。事業を民間に任せることで、行政側には財政負担の削減と良質なサービスの提供ができるメリットがある。