参院選の不在者投票で候補者の氏名を勝手に代書したとして、県警捜査2課と南甲府署は13日深夜、中央市極楽寺の特別養護老人ホーム「らくえん」次長、深沢佳房(50)=韮崎市龍岡町▽同施設介護長、内藤直美(59)=甲府市高室町--の2容疑者を、公職選挙法違反(投票偽造)容疑で逮捕した。
容疑は、共謀して意思疎通のできない複数の入所者の投票用紙に特定の候補者の氏名を書き、不在者投票をしたとしている。共に容疑を認めている。県警によると2容疑者は、6日に投票用紙に書き込み、8日に中央市選管に持参した。
捜査関係者によると、選挙区については民主党の輿石東氏の名を書いたという。
14日朝には県警の捜査員約20人が施設を家宅捜索、段ボール数箱分の資料を押収した。
不在者投票とは、入院や施設入所などで投票所に行けない有権者が病院や施設を通じて投票できる制度。都道府県選管が指定した施設の代表者などが務める「不在者投票管理者」が選管から投票用紙をまとめて受け取り、有権者に書いてもらったり、代筆したりした後、再びまとめて選管に送る。2容疑者は投票を補助する「代理投票補助者」だった。補助者は代筆と立ち会いが役割で、同施設によると深沢容疑者が代筆者、内藤容疑者が立会人だった。
施設を運営する社会福祉法人「寿真会」理事長で「らくえん」施設長の相馬健治氏(33)によると、施設は05年10月に開所し、現在60人が入所している。数年前から選挙の度に希望者を募って不在者投票をしており、今回の参院選では十数人が希望したという。
相馬氏は投票偽造について「全く知らなかった」と話し「施設の管理責任者として、大変申し訳なく思っています」と陳謝した。
相馬氏によると、6日は2容疑者が個室を回って投票先を聞き取ったが、相馬氏も同行した。その際の2容疑者と入所者のやり取りについては相馬氏は明確な説明を避けた。
また、投票を希望した人と意思の疎通ができたかどうかについて相馬氏は「状態に波があり、一概に意思の疎通ができないとはいえない」と説明している。
公選法に基づいて県選管が指定する不在者投票可能な病院や福祉施設は、県内に167ある。【水脇友輔、春増翔太】=一部地域既報
毎日新聞 2010年7月15日 地方版