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[19763] 汽笛が鳴る頃に (ひぐらしのなく頃に×仮面ライダー電王)
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:94eaebd0
Date: 2010/06/30 00:37
どうもみなさんこんにちは、三振王と申します。
この作品は竜騎士07さんの「ひぐらしのなく頃に」と平成ライダーシリーズ第八弾「仮面ライダー電王」、そして+αのクロスオーバー作品となっております。

※時系列的にはひぐらしは賽殺し編終了、電王はさらば仮面ライダー電王が終結し、ディケイドが電王の世界に来る前、まだ良太郎が大人の姿をしていた頃の話になります。

※一応ひぐらしを知っている人でも知らない人でも楽しんで頂けるような作品を目指して行きます。

※物語の構成としては3章仕立ての予定です。

※作者はレナ×圭一派です。なので魅音×圭一派は辛い内容になるかも……。

※オリキャラも少々出てきますが主役はあくまで良太郎とひぐらしのあるヒロインです。

※原作と比べて下手クソな文章ですが楽しんでいただければ嬉しいです。

※ここでの投下は初めてなのでミスも多いかもしれません。

それでも大丈夫という方はどうぞご覧ください。




[19763] プロローグ「TIPS:カケラの世界」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:94eaebd0
Date: 2010/06/23 20:11
ふふふ、こんにちは……アナタとはどこかで会ったっけ?それともこれが初めての出会いだったかしら?まあそんな事はいいわ……。


この無限に広がりながらも同時に閉ざされた世界にようこそ、私はかつてこの世界で何度も繰り広げられたとある少女達の喜劇の物語を傍観していた者とだけ言っておくわ。

その物語は終わりを迎え、私は次のゲームで遊んでいたんだけど……ちょっとややこしい事態になって戻ってきたの。

かつてゲームの中心にいた少女が体験した物語……私は“カケラ”って呼んでいるんだけど、どうやらそのカケラが何者かによって破壊され、別の物語のカケラを混ぜられたみたいなの。

折角彼女は百年にも及ぶ地獄から開放されたのに……その何者かによって再び囚われてしまった。こんなの私にも想定外、恐らく私と同等、もしくはそれ以上の力を持った何者かの仕業ね……。

とにかく私はカケラに混じったその異物を取り除きたい、52枚のトランプの中に別の箱のトランプのカードを一枚混ぜるようなものだから、これじゃゲームが成立しないわ。

…………そうだ、その別の箱からもう一枚対になるカードを、私も持ってくればいいのだわ。

ああすごい、新たに一枚トランプを混ぜたことでまた新しいカケラ達が生まれてきた。ここのカケラと別の世界のカケラを組み合わせるとこんなにも遊びの幅が広がるのね。

アナタもこの世界のカケラや別の世界のカケラ同士を組み合わせて遊んでみたら?すっごく楽しいわよ、くすくすくすくす……。








はいプロローグ投下終了、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
次回はデンライナーが昭和58年の雛見沢にやって来る話です。
因みに第一章は三話投下する予定なのでそのつもりで、では第一話投下します。



[19763] 第1章 第1話「出会い。」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:94eaebd0
Date: 2010/06/23 20:12
青年はとても暗い森の中を歩いていた。ここがどこか解らないのに、まるでどこかに引き寄せられるように歩を進める。

そして青年はある神社の前に辿り着いた、途端に彼の視界にノイズが走る。
それでも青年は賽銭箱がある所まで歩き続ける、すると……青年は賽銭箱の周辺にカラスが飛び回っている事に気付いた。そして……地面には血痕らしき液体がジワリと広がっている。

青年は……賽銭箱の影に何かがあると直感していた、青年はそれを確認することに言い知れぬ恐怖を感じていたが、意を決して歩を進め、賽銭箱の影に何があるのか確かめようとした。


そしてそこには血まみれの……。


「起きろ良太郎~!!!!」
「うわ~!!!?」
うたた寝をしていた青年……野上良太郎は、時を渡るイマジンと呼ばれる怪人で一番の仲間であるモモタロスにたたき起された。
「び、びっくりした……あれ?ここってデンライナー?」
「ああん?何言ってんだお前?寝ぼけてんのか?」
良太郎は辺りを見回す、そこは時を渡る列車デンライナーの車内だった。
「そうか、さっきのは夢だったんだ……すごく怖い夢を見たような気がする……。」
「ほーう?そりゃ災難だったな……ついでに今俺達が置かれている状況も出来れば気にかけてくれ。」
「へっ……?」
良太郎は窓の外の景色を見る、そこにはモ二ュメント・バレーを思わせる荒野が一面に広がっていた。
「あそっか……デンライナーが停まっちゃったんだっけ。」
すると良太郎達のいる車両に、彼の仲間のイマジンが入って来た。
「おう良太郎!目え覚めたんか?」
「おっはよー良太郎―♪」
「大分疲れているみたいだね……まあ幽霊列車の事件の後にこれだからね、眠くなるのも仕方ないさ。」
「ウラタロス、キンタロス、リュウタロス……。」
すると彼等の後ろからデンライナーの乗務員のナオミと、乗客であるコハナが入って来た。
「みなさーん!コーヒーができましたよー。」
「おう!すまんのう!」
「わーい!」
「ハナさん……デンライナーの様子はどうでした?」
良太郎は明らかに自分より年下の姿をしたコハナに敬語で問いかけた。
「うん……オーナーが駅長と連絡をとろうとしているんだけど……成果は著しくないみたい。」
「ほんとなんで止まっちゃったんだろうねデンライナー?これも最近起こっているっていう世界の消滅と関係しているのかねえ?」
そう言って横で話を聞いていたウラタロスはナオミが出したコーヒーをすする。
最近、良太郎の住む世界では原因不明の消滅が進んでいた。そこで良太郎はデンライナーの面々と共にその原因を探る為、幾つもの時を渡り歩いていた。しかしある日、運行中のデンライナーが突如停まってしまい、デンライナーの面々は今現在その原因を探っていた。

「お待たせしました皆さん~。」
すると良太郎達のいる車両に、このデンライナーのオーナーである中年の紳士が入って来た。
「あ、オーナーどうでした?駅長と連絡は取れました?」
「残念ながらそれは……しかしデンライナーが止まった原因は解ったかもしれません~。」
「どういうことや?」
「こう言う事です~。」
そう言ってオーナーはデンライナーを動かすライナーパスを皆に見せる、そこには「1983 06 04」と表示されていた。
「1983年?ライナーパスがその年号を表示しているってことは……。」
「デンライナーもここで止まっているっつう訳か、なんでまた……?」
「解りません~、しかしこの時代に何かがあるのは確かです~。」
「う~ん、こりゃ一度降りて調べた方がいいかもねえ?」
「へへへ!また大暴れしてやるぜ!」
「ちょっとモモ、まだイマジンの仕業と決まった訳じゃないんだから……。」
「とにかく皆さんはこの時代に降りて調査をお願いします~、私とナオミ君とイマジン達はここで待っているので~。」
「行ってらっしゃ~い♪」


数分後、良太郎とコハナはじゃんけんで勝ったゾウのキグルミを着たキンタロスと共に、薄暗く蒸し暑い森の中を歩いていた。
「オーナーに聞いた話じゃこの近くに人が住む集落があるって聞いたけど……。」
「こんなことなら地図でも持ってくればよかったわね。」
「それにしても暇じゃのう!腕が鈍るで!」
そう言って暇を持て余したキンタロスは歩きながらつっぱりの練習を始めた。
「もうキンタロス、ちょっとは大人しく……。」

プツン

「ん?」
その時良太郎は、足で何か糸のようなものを切った事に気付く。次の瞬間……。
「良太郎危ない!!」
良太郎はキンタロスによって突き飛ばされる、すると良太郎が居た場所に巨大な丸太が振り子の如く襲い掛かって来た。
「ドスコイ!!」
キンタロスはそれを突っ張りの一撃で粉々に破壊する。
「な、何今の!?良太郎大丈夫!?」
「う、うん……ありがとうキンタロス。」
「きいつけや良太郎……どうやらこの森、トラップまみれや。」
良太郎に注意を呼びかけながらキンタロスは周辺を見回す、キンタロスの視線の先には何本にも貼りめぐらせた糸や落とし穴を隠した枯れ葉の山などのトラップが幾つも配置されていた。
「な、なんなのココ!?戦争でもしようとしているの!?」
「何にせよ気をつけんとな、二人ともワシの背中について歩きい。」

それから数分後、2人と一匹は山道が見える場所まで進んでいた。
「はああ……やっとここまで来れた……。」
「ホント、落とし穴やら網やら丸太やら……この村、どこかと戦争しているのかしら?」
「とにかくもう少しで山道や、二人とも気張りい。」
そして2人と一匹は山道と目と鼻の先まで近付く。すると彼等の目の前に4メートル程の大きな傾斜が立ちふさがった。
「後はここを登れば山道に着くね……。」
そう言って良太郎が傾斜を登ろうとした時、彼の頭上で何かガサゴソと音が鳴った。
「ん?何?」
「この辺に住む野生動物かしら?」
すると次の瞬間、良太郎の目の前に10歳ぐらいの蒼い長髪で緑色のワンピースを着た女の子が傾斜を転がってきた。
「みぃ~!!?」
「うわぁ~!!?」
良太郎はその女の子と衝突してしまい、一緒に下の方に転がって行った。
「良太郎!!?」
「あかん!大丈夫か!」
キンタロスとコハナは慌てて女の子と共に木に引っ掛かってのびている良太郎の元に駆けつける。
「いたたた……僕はなんとか……君、大丈夫かい?」
そう言って良太郎は自分の胸で目を回している少女に声を掛ける、少女は良太郎がとっさに庇った事により無傷のようだった。
「なんだろうこの子?この辺の子かな?」
すると山道の方から何人かの若者達の声が聞こえてきた。
「梨花ちゃん!大丈夫かー!?」
「無事だったら返事してくださいましー!」
「あれ!?誰かいる!おーいそこの人―!そっちに女の子が転がって……。」
そして良太郎の目の前に、白いベレー帽を被った16歳ぐらいの少女、半ズボンに紅いシャツを着た16歳ぐらいの男の子、緑色の髪をポニーテールにしてまとめた16歳ぐらいの少女、そして金髪にカチューシャを付けた10歳ぐらいの少女が現われた。
「梨花ちゃん!大丈夫!?」
「安心せえ、気を失っているだけや、外傷はどこにもない。」
「そうですか!ありがとうございます!」
そう言ってカチューシャを付けた少女は良太郎の腕の中で気を失っている少女の元に駆け寄った。
「とにかく大事を取ってお医者さんに見せたほうがいいかも……この近くに病院ってありませんか?」
「それなら入江診療所がいいだろう、梨花ちゃんを運ぶのを手伝ってくれ。」


それから一時間後、良太郎達はその少年達に連れられて入江診療所と呼ばれる小さな病院にやって来た。
「本当にありがとうございます。梨花を助けてくださって……。」
「いやあ、多分それって良太郎の不運体質がたまたま働いただけで……。」
「はう~☆この狼のキグルミかあいいよ~☆おもちかえりぃ!」
「ぬわっ!ちょ!これは勘弁してくれや嬢ちゃん!」
「ところで……なんでアンタ達あんな所にいたんだ?あの森は沙都子のトラップが張り巡らされて危ないのに。」
「え、ええっと……。」
「わ、私達実は旅行をしていて……でも道に迷った上に車が壊れちゃって人を探していたんです。」
口篭る良太郎の代わりにコハナが質問してきたポニーテールの少女に答える。
「へえ、そりゃ大変だったね……よかったら何人か呼んで車もってこさせようか?」
「い、いえ大丈夫です!修理屋さんで道具を頂ければ……私達の使っている車って外車だから特殊な整備が必要で……。」
(すごいなハナさん……よくあんなウラタロスみたいなウソをベラベラと……。)


「へっくしょん!」
「わあ!亀ちゃん汚い!」
「ごめんごめん、どうやら女の子達が僕の噂をしているみたいだねぇ。」
「へっ!そんな訳あるか!」


「そう言えばまだ名前を言ってなかったですね、私は園崎魅音、そこのベレー帽の子が……。」
「竜宮レナです!あの……このキグルミお持ちかえりしていいですか!?」
「わたくしは北条沙都子!そこでグースカ眠っている梨花の同居人でございます!」
「俺は前原圭一です、アンタ達の名前は?」
「えっと、僕達は……。」

数分後、自己紹介を終えた良太郎達は今後の事について話していた。
「じゃあ良太郎さん達はしばらくこの雛見沢に滞在するんですか?」
「うん、できれば泊まれるところがあればいいんだけど……。」
「なら雛見沢の近くの輿宮にホテルがあるからそこを利用すればいいですよ。」
「よかったらレナのおうちに来ます!?そのキグルミナデナデしたいよ!はう~☆」
「落ちついてくださいましレナさん!良太郎さん呆気にとられていますわよ!」
「ところで梨花ちゃん起きないなぁ?打ちどころが悪かったのか?」
「ちょっと様子を見に行ってみよっか。」

そして皆は良太郎が偶然助けた少女……沙都子が言うには梨花という名前の少女が眠っている病室に入って行った。
「もう梨花ったらまだ寝ていますわ。」
「このまま永遠の眠りに……。」
「もう圭一君!冗談でもそんな事言っちゃ駄目かな!?かな!?」

そんな圭一達を尻目に、良太郎はベッドですうすうと眠っている梨花の顔を窺う。
(……?なんだろうこの子……さっきも思ったけど何だか……。)
ふと、良太郎は眠っている梨花のおでこの辺りを右手で触る。


次の瞬間、良太郎の脳裏にある光景が浮かんだ。


圭一がレナと魅音をバットで殴り殺している。

魅音とよく似た少女が、夜空に浮かぶ月に手を伸ばしながらマンションから落下していく。

吊り橋の上で、沙都子が圭一を突き落とそうとしている。

ゴミ山らしき場所で、レナがナタで派手な格好をした女の頭を叩き割っている。


そんな恐ろしい光景が良太郎の脳裏に次々と浮かび上がっていた。

(こ、これは一体!?)
「どうしたんや良太郎?汗びっしょりやないか?」
その時、良太郎の様子に気付いたキンタロスが彼に話しかける。
「な、なんでもない……。」
良太郎はキンタロスを安心させようと振り向く、すると彼の視界に先程の恐ろしい幻想に出てきた圭一達の姿が入り、彼は思わず後ずさりしてしまう。すると……。
「う……ううん……?」
「あ!梨花が目を覚ましましたわ!」
良太郎の背後で梨花が目を擦りながら身を起こしたのだ。
「あ……起きたんだね、えっと……梨花ちゃんだっけ?」
「ううん……?え!?アナタは誰ですか!?」
梨花は良太郎の姿を見るや否や、目を見開いて驚いた。
「梨花ちゃ~ん?命の恩人にそんな態度をとっちゃ駄目だよ、この良太郎さんとハナさん、それにキンタロスさんは梨花ちゃんが山道で足を滑らせたところを体張って助けてくれたんだから。」
「良太郎……!?」
梨花は今だに良太郎達を信じられない物を見るような目で見ていた。すると梨花達のいる病室に、この入江診療所の院長である入江が入って来た。
「おや?梨花ちゃん目が覚めたようですね。もう体の具合は大丈夫なのですか?」
「だ、大丈夫なのです、にぱ~☆」
(変わった返事をする子だなー……ん?)
その時良太郎は、圭一達の見えない位置でコハナに服を引っ張られている事に気付き、彼女に小声で話しかける。
(どうしたのハナさん?怯えているの?)
(う、うん……なんだか寒気がするというか、気持ち悪い視線を感じると言うか……。)
その時、コハナの様子に気付いた沙都子が隣に居た入江のわき腹を肘で小突く。
「ちょっと監督!ハナさんが怯えているではありませんか!」
「は!私とした事が沙都子さんと梨花さんに匹敵する素材を前に我を見失っていました!」
「まーた監督の病気が発症した……ごめんねハナちゃん、この人筋金入りの変態でさー、幼女を見るとメイド服を着せたくなっちゃうんだよー。」
「なにそれ怖い!?」
コハナはあまりの恐怖にキンタロスの背中に隠れてしまう。それに対して入江は激しく反論する。
「怯えなくていいのですハナさんとやら!メイド服は人類の至宝!袖を通すのにためらうことは無いのです!そしてそれを愛でるのは私のしm
「レナー。」
「うん、監督さんちょっと寝ててね。」
「はふん!」
暴走しかける入江を見かねた魅音は、レナに指示して当て身で入江を眠らせた。
「あ、あははは……面白い人だね……それじゃ僕達そろそろ行くよ。」
「すみません良太郎さん……もしよかったら明日、村を案内しますよ……梨花ちゃんを助けてくれたし……。」
「ありがとう圭一君、それじゃ。」
そう言って良太郎達は病室から出ようとしたその時、
「ま……待って!」
ベッドの上にいた梨花に呼び止められた。
「ん?どうしたの梨花ちゃん?」
「え、ええっと……その……。」
梨花は何か言いたそうに口をもごもごさせる、そして数秒黙った後に、にっこり笑って口を開いた。
「た、助けてくれてありがとうなのです、にぱー☆」
「うん、どういたしまして。」
そう言って良太郎も微笑み返し、圭一達に一礼した後に病室から出て行った。


数時間後、デンライナーに戻ってきた良太郎達はオーナー達に雛見沢で起こった事を報告した。
「成程~、そんな事があったのですか~。」
「なにそれスッゴイ面白そう!明日は僕も行く!」
「何言ってんだ!?次はこの俺様だ!」
「ちょっと喧嘩はやめなよ、どうせなら今度は全員で行こうじゃないか、僕もその美しい少女達に会ってみたいしさー。」
「ぐごー。」
それぞれが良太郎の話に様々な反応をする中、当の本人は何か考え事をしながらナオミが出したコーヒーをすすっていた。そしてその様子に気付いたコハナが彼に話しかける。
「どうしたの良太郎?何か考え事?」
「うん……実は……。」
良太郎は先程梨花の頭を触った時、圭一やレナ達の恐ろしい行為が自分の頭の中に流れてきた事を皆に話す。
「なんだそりゃ?穏やかじゃねえな……イマジンだってそこまでしねえぞ。」
「良太郎、変な映画の見すぎなんじゃないの?そんなんじゃ女の子に嫌われるよ?」
「ぐがががー。」
「その幻想の中に梨花って子は出てこなかったの?」
「うん……。」
そして良太郎の話を聞いていたオーナーは、テーブルの上に置かれたチャーハンを口に運びながらあれこれ思案する。
「古手梨花……ですか、少々気になりますねえ……良太郎君、明日はイマジンを全員連れて雛見沢に向かってくれませんか?何か……嫌な予感がしますねえ~。」
「もしかしたら……その子がイマジンと契約しているかもしれないからですか?」
「へっへっへ!なら俺の鼻の出番だな!」
「先輩の鼻って犬みたいに効くからねー。」
「おいこらカメ、そりゃどういう意味だ?」
「ぐごー。」
「わーいやれやれー。」
そしてモモタロス達は毎度おなじみの喧嘩を始め、それを良太郎は一声注意する。
「もうみんなー、喧嘩しちゃ駄目だよー。」
「ったくあいつら……!」
そしてコハナは腕をまくってズンズンとモモタロス達に近付き、パンチ一発でKOしていった。
「ごが!?」
「ぐげ!!」
「喧嘩すんなって言ってんでしょ!なんでアンタ達はいつもそうなの!?」

「ふふふ……。」
良太郎はその光景を見て、何気ない幸せを感じて思わず笑みをこぼした……。


次の日、良太郎とコハナはイマジン全員を連れて待ち合わせ場所の入江診療所の前にやって来ていた。そこに……。
「おーい良太郎さん!コハナちゃーん!」
昨日の学生服とは打って変わって普段着に身を包んだ圭一達がやって来た。
「あ、みんな……梨花ちゃんももう大丈夫なのかい?」
「みい、昨日は本当にありがとうなのです。おかげで最短記録を更新するところだったのです、にぱ~☆」
「最短……?」
その時モモタロスは梨花の周りをクンクンと嗅ぎまわっていた。
「な、なんですかこの狼さんは?」
「何してんのモモタロス……?」
「いやあ、なんかこいつ匂うと思って……(デュクシ!!)ごへぶっ!!」
次の瞬間、モモタロスはコハナに鳩尾一発喰らって地面に転がった。
「初対面の子になんて失礼な事言うのアンタは!?」
「みぃ~!ひどいのです~!」
「先輩ってばデリカシーないんだから……。」
そして良太郎は地面でのたうちまわっているモモタロスを起こしながら彼に問いかける。
(モモタロス、匂うって事はあの子イマジンに……?)
(いや、なんつうか……変な匂いなんだよ、イマジンのようなそうじゃないような……。)
(やっぱりあの子、何かあるのかな……。)
ふと、良太郎は梨花の方を見る、すると彼女は驚いたように両肩をビクッと上げる。
「あれどうしたの梨花ちゃん?」
「みい……なんだか寒気がするのです、きっと風邪なのです。」
「はうはう!ならレナが看病してあげるかな!?かな!」
「このキグルミ来てる人達って……もしかして昨日良太郎さんが言っていた人か?」
「うん、モモタロスにウラタロス、それにリュウタロスだよ。」
「よろしく、いやあ君達かわいいよね?今度お茶でも……。」
「早速口説こうとするな!(ベキッ!)」

それから一時間後、良太郎達は圭一達に雛見沢を案内されていた。
「あ、犬さんだかわいー♪」
「まあ、リュウタロスさんは動物がお好きなのですわねー。」
そう言って沙都子は龍のキグルミを着たリュウタロスの犬と戯れる姿を見て思わず口元を綻ばせる、一方レナと魅音は良太郎やコハナを質問攻めしていた。
「へえ!じゃあ良太郎さんの実家って喫茶店なんですかー。」
「うん、姉さんと2人で経営しているんだ。あの人の淹れるコーヒーはおいしいんだ。」
「はう~!今度行ってみたいよ~!」
「いやあ……それは無理というか……。」
そんな楽しそうに話している良太郎達の後ろで、梨花はなにやら複雑そうな表情で考え込みながら歩いていた、そしてその様子に気付いたペンギンのキグルミを着たウラタロスが声を掛ける。
「どうしたの梨花ちゃん?そんな顔してたら折角の美人さんが台無しだよ~?」
「み、みい……。」
「梨花ったら昨日からこんな様子なのですわ、一体どうしたのでしょう?」
「梨花ちゃ~ん?まさか良太郎さんに惚れたとか?そういうのに多感な年ごろだもんね~。」
「はうはう!?梨花ちゃんに春到来かな!?かな!?」
「残念ながら良太郎は僕のタイプじゃないのです、僕はもっと頼もしくてしっかりした人がいいのです。」
「ああ、じゃあ良太郎は無理だな。」
「そうねー。」
「ひ、ひどいよモモタロス!ハナさん~!」


「おや?梨花ちゃん達じゃないか、奇遇だね。」
「なんだか知らない顔までいるわ……。」
すると彼等の目の前にカメラを持った黒いタンクトップに眼鏡を掛けたガタイのいい男と、ハンドバックを肩にかけた金髪の女性がやって来た。
「あれ?あなた達は……。」
「この人達は富竹さんに鷹野さんだよ、鷹野さんは診療所で働いているんだー。」
「そこの人達、可愛いキグルミ着てるね、富竹フラッシュ!」
そう言って富竹と呼ばれた男は持っていたカメラでキグルミを着たモモタロス達を写真で撮影していった。
「おいこら!何撮ってんだよ!?」
「とかいいつつポーズとっとるやないか。」
「わーい、僕も写して~。」
「そこの麗しいお嬢さん、今度僕とバードウオッチングでも……。」
「だーかーら!なんでアンタはすぐにナンパするの!」
「ほほほ……面白い人ね。それじゃ私達はこれで……。」
そう言って鷹野と富竹は良太郎達にぺこりとお辞儀して去って行った。
「……。」
「?ウラタロスどうしたの?」
その時、コハナはウラタロスの様子が変なことに気付き、彼に話しかける。
(……さっきの鷹野って人、僕と同じ匂いがしたねえ……。)
(は?何言ってんのアンタ?)
「よーっし!お腹も空いてきたし次はエンジェルモートに行くよ!確か今は詩音が働いている時間だったね。」
「魅ぃちゃん、詩ぃちゃんに頼んで割り引いてもらおうよ!」
「おい、エンジェルモートってなんだ?」
「そりゃな……。」


ふと、良太郎は皆と一歩下がった位置で歩いている梨花の元に行く。
「ほら梨花ちゃん、早くしないと置いて行かれるよ。」
「……。」
そう言って良太郎は手を差し伸べるが、梨花はその手を取る事を何故か躊躇っていた。
「?どうしたの梨花ちゃん?」
「……良太郎……あの……。」

「おい良太郎!はやく行くぞ!エンジェルモートのデザートが俺を待っているぜ!」
「はう~!モモタロスさんって甘いものスキなんだねー!」
「あ、うん。」
そして良太郎は梨花の手を取り、先を歩いていたモモタロス達の元に梨花と共に早歩きで向かって行った。
「あ……。」
「早く行こう、梨花ちゃん。」
「みい……良太郎は意外と強引なのです。」


これが良太郎達デンライナーの面々と、梨花達部活メンバーの最初の出会いとなった、そして両者はこの出会いが互いの運命を大きく変える事になろうとは、この時はまだ解らないでいた……。











その1週間後、鹿骨市にある玉子川、そこに警察の関係者らしき男達が集まって、その川から上がった女性の死体について調べていた。
「あちゃー……こりゃひどい、鼻と両耳が削がれてやがる、おまけに腹も裂かれて……。」
「こりゃ十中八九園崎の仕業っすね、こんな酷い事するのは奴等しかいないっすよ!」
「ぬっふっふ!熊ちゃん!とりあえず裏付け捜査のほうをお願いします!あとガイシャの身元を……。」
その時、死体の近くで後輩らしき警官と話をしていた中年の太った刑事の元に、スーツを着た男がやって来る。
「大石さん!ガイシャの身元が割れました!」
「おお!早いね小宮山君!それでこのガイシャは何者なんですか?」
「ガイシャは間宮律子、園崎系列の店の従業員で源氏名はリナというそうです、やっこさんどうやらあの北条鉄平と同居していたらしく……。」




惨劇の幕は上がる、別の物語すらも巻き添えにして。












はい、という訳で第1話は終了です。基本的に良太郎はしばらく変身しません、なにがあるか解らない世界なのでモモタロス達も憑依を極力抑えています。
ひぐらしを知っている人ならこれからどうなるか知っているでしょう、はたして良太郎達はその出来事にどう対応するのでしょうか?

次回は綿流しのお祭りまでをやる予定です、それではまた次回。



[19763] 第1章 第2話「警告」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:94eaebd0
Date: 2010/06/26 21:45
デンライナー一行が雛見沢に来て一週間、良太郎達が調査の為雛見沢を探索していた頃、オーナーは車内に残ってテーブルの上に乗せられたお子様ランチの旗が突き刺さったチャーハンを、旗が倒れないように少しずつスプーンで削っていた。
するとそこにナオミがコーヒーを乗せたトレイを持って、オーナーのいる車両に入って来た。
「コーヒーお持ちしました……ってあれ?良太郎ちゃん達もう行っちゃったんですか?」
「ええ、ついさっき……。」
「あーあ、折角コーヒー淹れたのに……。」
するとオーナー達がいる車両に、今度はドレスの下からネコの尻尾のような物を覗かせた髪の長き幼い少女が入って来た。
「オーナー、デンライナーはいつ動くの?」
「申し訳ございません~、ここはお客様が入れる場所ではないのですよ、こちらも手を尽くしているのでもう少々お待ちください~。」
「まったく、退屈なのは嫌い……あら?」
ふと、少女の目にオーナーが食していたチャーハンが入る。
「何しているのアナタ……チャーハンで棒倒し?」
「ええ、面白いですよ~?貴女もやってみます?」
そう言ってオーナーはスーツの中にしまっていた新しいスプーンを少女に渡した。
「いいわ……暇つぶしに相手になってあげるわ。」
少女は不敵に笑うと渡されたスプーンをペン回しの要領で指でくるくると回した。


一方良太郎達はデンライナーが停止した原因を探る為雛見沢の道路沿いの森の中を探索していた。
「だあっちい~!6月なのになんでこんなに暑いんだよ!」
「先輩わめかないでよ~!暑苦しい……。」
そう言ってモモタロス達は被っていたキグルミを脱いで木陰で休んでいた。
「人が来たらすぐに着てよね、アンタ達がそのまま人前に出たら村の人達がびっくりしちゃうからね!」
「わあってるわあってる……。」
「あーん!イライラする!プールとかないのココ!?」
「我儘言わないのリュウタロス……それにしても村中を歩きまわって見たけど、イマジンに取り付かれた様子の人はいなかったね……。」
「そうね……探索範囲を興宮ってところまで広げた方がいいのかな?……ん?」
その時コハナは遠くから車が来る音を聞き、モモタロス達にキグルミを着るように促す。
「車が来たわよ!早くキグルミ着て!」
「ええ~!?やだぜ俺!もう熱すぎるんだよ!」
「しょうがない……ってキンちゃんソレ僕のペンギンの頭!」
「ああん?もうどうだってええやろ。」
「早くしなよー……ってあれ?あの車ここに停まりそう……。」

そして車は良太郎達の前で停まり、その中から60代近い白髪の入り混じった頭をした男が出てきた。
「おんやあ?こんなところで何をしていらしているのですかぁ?」
「あはは……ちょっと観光を……。」
「このクソ熱い中を?キグルミを着て?何だか怪しいですね~?」
するとその男のねちっこい態度にいらっと来たモモタロスが、被り物を通して男を睨みつけた。
「おいオッサン!一体何モンだあ~?俺達がここで何をしてようと関係ねえじゃねえか!」
「いえいえ、実はそう言う訳にもいかないのですよ、私の職業コレなんで。」
そう言って男はズボンのポケットから警察手帳を取り出し、それを良太郎達に見せた。
「ありゃま、おじさん警察の方?」
「ええ、興宮署の大石と申します、実はアナタ達に少し聞きたい事がありまして……ここは熱いので車の中でお話しません?クーラー効いていますよ?」
「「「「クーラー!!?」」」」
その言葉を聞きつけたモモタロス達イマジンは我先にと大石の車に乗り込もうとした。
「どけ!俺が先に乗るんだ!」
「僕カメだからねー!このままじゃ干上がっちゃうんだよ!」
「こら!リュウタ押すな!」
「わーん!僕が涼むー!」
「あわわわ……みんな落ちついて……。」
「あ、アグレッシブな方々ですねぇ……。」
「すみません!今止めますんで!」
「ああいいですいいです、このまま聞き込みしますんで。」
イマジン達を止めようとしたコハナを手で制した大石は、手帳からある女性が映っている写真を良太郎とコハナに見せる。
「……?誰ですかこの人?」
「この女性は間宮リナ、風俗店の店員なんですが……昨日玉子川で死体で発見されたんですよ。」
「し……死体!?」
その大石の発言に、2人は思わず目を丸くして驚く。
「酷い殺され方ですよ、生きたまま腹裂かれてドブ川に捨てられていたんですから、私は園崎家が関係していると睨んでいるんですがね……おや?」
その時大石は、良太郎が立ったまま気絶している事に気付く。
「わあああ!良太郎しっかりして!ごめんなさいこの人怖いものが苦手なんです!」
「お、おやおや……こりゃ悪い事しましたね……まあ何か解ったら興宮署までご連絡ください、それでは……。」
「はっ!ちょっと待ってください!」
ふと、良太郎は目を覚ますと車に乗り込もうとしていた大石を呼びとめる。
「……?どうかしました?」
「大石さんって警官なんですよね?なら最近その殺人事件以外で何か変わった事は起きませんでした?」
(成程、この人からイマジンの手がかりをつかもうとしているのね。)
すると大石は眼光を鋭くし、ポケットから煙草を取り出しそれに火を付けた。
「アンタもしかして雛見沢は初めて?なら教えておきましょう、この村は毎年この綿流しのお祭りの時期に人が一人死んで一人が行方不明になっているのです、雛見沢の人達は“オヤシロ様祟り”とか“鬼隠し”と呼んでいます。」

刹那、良太郎達の周りに冷たい空気が流れ、彼等は真剣な表情で大石の話に耳を傾けた。
「この村はね……五年前にダム建設計画が持ち上がって廃村の危機に陥っていたんだ、けど村の中心である園崎家は村人と一致団結して国と戦っていたんだ、私も当時は暴れ回る村人の鎮圧に駆り出されたもんですよ、ぬっふっふ!」
(園崎って……確か魅音さんの名字よね、そう言えば次期頭首だって自慢していたっけ?)
2人は大石の話を聞き逃さないよう、重要そうな単語を必死に暗記した。
「そう言えば当時大臣の孫が誘拐される事件が起こりましてね……犯人グループは確かこの辺に潜伏していたんですよ、私も東京から来た公安の赤坂さんという人と逮捕に乗り出したのですが……犯人グループは取り逃がし、赤坂さんは犯人グループと交戦した際に殉職、まったく……お子さんが生まれたばかりだというのに悔んでも悔やみきれません……。」
(赤坂さん……。)
「そして4年前の6月……当時のダム建設の現場監督……私の恩人でした、その人が部下6名と口論になった末に殺され、その死体はバラバラにされました……私達も必死に捜査したんですけどね、主犯格の男とそいつの持っていた死体の右腕だけは最後まで見つかりませんでした。」
「それが……オヤシロ様の祟りですか?」
「いえいえ、話はまだ続いていましてね……当時ダム建設に賛成していた北条夫妻という方々が居たのですが……3年前の6月に旅行先で崖から転落して夫は死亡、妻の遺体は見つかりませんでした、2年前の6月……今度はダム建設反対運動に積極的に参加しなかった古手神社の神主が急病死、妻は“オヤシロ様の怒りをこの命で鎮めます”と遺書に書き残して鬼ヶ淵沼に入水自殺、遺体は見つかりませんでした……。」
(北条に古手……沙都子ちゃんと梨花ちゃんの名字だ……!)
「そして去年、二年目の祟りで死んだ夫婦の息子が行方不明、彼を引き取った父親の弟の妻が祟りに便乗した麻薬中毒者に殴り殺されてしまいました、まあ私は違和感を抱いているのですがね……。」
「ふうん、まるでオヤシロ様が村に仇成すものに天誅を加えているみたいだねえ。」
するといつの間にかモモタロス達の輪から離れ大石の話を聞いていたウラタロスが、彼に自分の意見を言う。
「ええ、村人達は園崎家が暗躍していると考えているようです、私もそう確証しているのですがねぇ。」
「…………。」
そして大石は一通り話し終えた後、自分の車に乗り込もうとした。
「私の話せる事はこれぐらいです、良太郎さんにハナさんでしたっけ?アナタ達も気を付けた方がいい……下手に園崎家の人間を怒らせたらアナタ達が五年目の被害者になりかねませんからね。この村はよそ者を嫌う習性もあるのです……失礼、入ってもよろしいでしょうか?」
「あ、どうもすみません。」
大石は車の中に入ろうとしたモモタロス達をどかすと運転席に乗り込み車のエンジンを掛ける。その時……。
「ちょっとまった。」
今度はウラタロスが大石を呼びとめた。
「……?なんでしょう?私に何か……?」
「実は僕……そのリナって女性が殺された現場を見たんですよ。」
「「「!!!?」」」
思いがけないウラタロスの発言に、話を聞いておらず首を傾げていたモモタロス達以外の者達は一斉に彼に視線を集めた。
「見たって……ウラタロスは……。」
「その玉子川だっけ?この間の夜12時にそこを通ったら黒ずくめの男たちが何かしていたなあ、そう言えば魅音ちゃんの姿もあったよ。僕は怖くて逃げ出しちゃったけどね。」
「そ、それは本当ですか!?」
大石は思わず車から降りウラタロスに詰め寄った、その時の彼の目はまるで水を得た魚のようにきらきら輝いていた。その時……。

ベキッ!!

「いだっ!!?」
ウラタロスは尻にコハナの渾身のミドルキックを受け、そのまま地面に倒れ込んだ。
「おおう……!腕上がったねハナさん……!」
「なんでそんなウソついたの!?アンタそもそも玉子川がどこにあるかも知らないじゃない!」
「それに目撃したっていうこの間の夜九時って僕らと一緒にいたよね?」
「なんですって……!?」
大石はウラタロスが自分にウソの情報を伝えぬか喜びさせられた事に怒り、思わず彼を睨みつける。だがウラタロスはそれに臆することなくのたうちまわりながら話を続けた。
「ふふふ……やっぱり簡単に引っ掛かった、少なくともアナタはこの道のベテランでこういうウソを見抜く力があるのに……僕の薄っぺらいウソを簡単に信じた、“魅音”ちゃんの名前を出したことでね。もしかして君“犯人を捕まえたい”んじゃなくて“魅音ちゃん達園崎家を犯人にしたい”と思っているんじゃないかい?」
「なっ……!?」
ウラタロスの指摘に、大石は顔を真っ赤にして狼狽する。

「……なあハナタレ小僧、アイツ等なんの話してんだ?」
「うーん、僕にはさっぱり!」
「ぐごー。」

「ふふふ……いい事を教えてあげよう、世の中には騙しやすい人間が三種類いる、まずは良太郎みたいに人を疑う事を知らないお人好し。」
「…………。」
「先輩みたいに単純な奴。」
「何だと!!?」
「そして君みたいに思い込みが激しくてなんでも自分勝手に決め付ける奴、僕にとってこの三種類はもっとも騙しやすいカモなんだよ。」
「…………!」
大石は言い返す言葉もなく、顔を真っ赤にしたまま車に乗り込みそのまま良太郎達の元を去って行った。

「ウラタロス……なんであんな事を……?」
「だってさー、僕のかわいい魅音ちゃんが言われも無い疑いを掛けられるなんて許せないじゃない?あいつ絶対自分の信じている事を他人にも信じ込ませるタイプだよ、警官という立場も作用しているから尚更タチが悪い、もしかしてこの村の人間全員思い込みが激しいんじゃないの?僕はどうもその祟りっていうのに胡散臭さを感じるんだよねー。」

一方車に乗って雛見沢に向かっていた大石は、内に秘めていた憤りをハンドルを殴ることで晴らしていた。
「思い込みが激しいだと!?クソッ!若造が偉そうに……!」
しかし大石には心に何か引っ掛かる物を感じ、署に帰った後のプランを練っていた。
「……とにかく別の線で洗ってみるか……そう言えば大臣の孫を誘拐した奴等って何者だったんだ?まだ捜査は終わっていなかったな……。」


その頃良太郎達は先程大石が言っていたオヤシロ様が祭られている古手神社に向かっていた。
「鬼ヶ淵村のオヤシロ様……確かにイマジンっぽいかもしれないね。」
「そのイマジンがオヤシロ様に扮して沙都子ちゃん達の家族を襲ったのかもしれない、とにかく梨花ちゃんに話を聞いてみよう、今なら下校時間だから家に居る筈。」
「沙都子ちゃんも確か一緒に暮らしているって言っていたねー。」
その時、隣でシャボン玉を出すおもちゃで遊んでいたリュウタロスが良太郎にある疑問をぶつける。
「ねえ良太郎?なんで梨花ちゃん達は祟りの事を教えてくれなかったんだろうね?まさか刑事さんの言うとおり……?」
「……多分僕達を不安にさせたくなかったんだよ、僕が圭一君達だったら友達の命を救ってくれた人を怖がらせて不快な思いをさせたくないし……きっと優しい子達なんだよ。」
「ふーん、確かにそうかもねー。」
「おめえは人を疑わなさすぎだぜ!まあ俺もそう思うけどよ!……ん?」
その時モモタロスは道端に誰かの免許証が落ちているのに気付き、それを拾い上げた。
「なんだこれ?誰かの落し物か?」
「ちょっと見せて。」
良太郎はモモタロスからその免許証を受け取り、それに記載されている名前を見る、そこには“高畑ジェニファー”と記載されていた。
「え、エクスキューズミー。」
その時、良太郎達は田んぼ道ですれ違った派手な装飾のサングラスを掛けたアメリカ人っぽい女性に声を掛けられた。
「あ?はいなんでしょう?」
「コ……コノヘンニ、メ……メンキョショウハオチテイマセンデシタカ?」
「あ、もしかしてコレですか?さっきそこで拾ったんですけど……。」
「オウサンクス!」
女性は喜んで良太郎から免許証を受け取りお礼を言ってバス停に向かって行った。
「珍しいな、こんな田舎に観光か?」
「ここって野鳥もいるからそれを見に来たとか……それともお祭りを見に来たのかも。」


それから数分後、良太郎達は古手神社の前までやって来た。
「ここが古手神社……。」
「なんだかカビくさ~い!」
「梨花ちゃんいるかな……?」
すると良太郎達は賽銭箱の近くでチョコンと座っている梨花を見付ける。
「梨花ちゃん……?あんな所で何しているんだろ?」
「なんか一人で喋っているわね……。」
良太郎達はとっさに身を隠して梨花の様子を窺う。


「…入、どういう事なのあの人達は?あんな人達今まで現れた事無かったじゃない。」

「解らないじゃないわよ、このままじゃ無関係の人を巻き添えにするかもしれないし……早急に帰ってもらうしかないわね、」

「この世界に赤坂はいないし……さっさと次の……。」


「誰かと話しているみたい……まさかイマジン?」
「先輩、匂いは?」
「駄目だ全然しねえ、あのガキンチョ何モンだ?」
「とにかくこれ以上盗み聞きはよくないよ。」
そう言って良太郎は梨花の元に向かった。
「あ、良太郎……それにモモタロス達なのです。」
「どうしたんだい梨花ちゃん?そういえば沙都子ちゃんの姿が見えないけど?」
「……。」
すると梨花はひどく落ち込んだように黙って俯いてしまう、その様子を見て良太郎は心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
「……なにかあったの?よかったら僕達に話してくれないかい?」
「みい……。」
梨花は悩んでいるのか、すぐに答えようとはしなかった、しかし良太郎がジッと見てくるので観念したようにぽつりぽつりと語り始めた。
「実は……沙都子が意地悪な叔父に連れてかれてしまったのです。」
「叔父さん?誰なんだいソレ?」
「北条鉄平……沙都子の叔父でとんでもない悪党なのです、かつて両親のいない沙都子を引き取った際、彼女に酷い暴力をふるって……一年前に妻が祟りに巻き込まれてそれを恐れて興宮で暮らしていたそうなのですが、先日一緒に暮らしていた恋人が殺されたらしく雛見沢に戻ってきたのです。」
「殺された……?もしかしてそれ、間宮リナって人じゃないの?」
ウラタロスの意見に、梨花は目を丸くして彼の方を向く。
「そ、その通りなのです、よく知っていますね……。」
「ついさっき大石さんっていう警察官から聞いたの、それで沙都子ちゃんは今どこに?」
「沙都子が前に住んでいた北条の家にいるのです、叔父とその仲間達と一緒に……。」
「なんやそいつ!今まで沙都子の事ほったらかしにしとった癖に今更帰ってきたんかいな!」
「ねえまずいんじゃない?そんな虐待していた奴がまた戻ってきたら沙都子ちゃんの身が危ないんじゃ……。」
「児童相談所とかに相談しなかったの?」
「さっき皆で行ってみたのですが証拠がなくて話を聞いてくれませんでした、お陰で圭一達は怒りで殺気だっているのです、村の大人達も助けてくれないし何より沙都子がある理由で自分から助けを求めないし、このままじゃまた……。」
「そうだったんだ、うーん……。」
そう言って良太郎は梨花と共に腕を組んで考え込む、するとモモタロスが良太郎の肩を叩いて自信満々に答えた。
「簡単じゃねえか、俺達がその鉄平って奴をブッ飛ばしてやるよ!」
「だよねー!そんな奴等僕に掛かればチョチョイのチョイだ!」
「だ、駄目だよ!イマジン相手ならとにかく君達が普通の人間を傷つけたりしたら……!」
「最悪オーナーに乗車拒否されてまうかもな。」
「まったく、単細胞なんだから……。」
「んだとう!?」
カチンと来たモモタロスはそのままウラタロスといつものような取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。
「やめなさいよアンタ達!……でもどうしよう、このままじゃ沙都子ちゃんが大変な事に……。」
「みい……ハナ達は関わらない方がいいのです、だから早くこの村から……。」
「あ!そーだ!」
その時、良太郎は何か思い付いたのか手をポンと叩いた。
「良太郎……?何か思い付いたの?」
「うん!梨花ちゃん……沙都子ちゃんの家を教えてくれる?僕達が彼女を助けてあげるよ!」

その日の夜、北条家の居間では沙都子の叔父である鉄平が数人の仲間達と共に居間で麻雀に興じていた。
「いやーてっちゃん、災難だったね、まさかリナちゃんが園崎の金に手を出したなんてさー。」
「まったくあのアバズレが……あの女のお陰でワシは住む所を無くしてしまったわい!」
「まあそうカリカリすんなよ、しばらくはここで生活できるんだからさー。」
するとそこに沢山のビールが入った買い物袋を持った沙都子がやって来た。
「あの叔父様……ビール買ってきましたわ。」
「ああん!このウスノロ!買い物に何分かかっとんのじゃ!!」
鉄平はイライラした様子で沙都子に向かって吸殻が入ったままの灰皿を投げ付けた。
「ヒッ!ごめんなさいごめんなさい!!!」
「ははははは!てっちゃんひでえな~!」
鉄平の仲間達は止める様子もなく、吸殻まみれの沙都子に下衆で不快な笑いを向けていた。
「ったく!とっととソレ片付けんかい!」
「は、はいっ……!」
沙都子は酷く怯えた様子で吸殻を片付ける為に箒を手に取った、その時……彼女の頭上に黄色くて小さな光の玉が現われる。
『沙都子、ちょっと体借りるで!』

バシュン!

「う!?」
そのまま光の玉は沙都子の体の中に入ってしまい、彼女の体から大量の砂がこぼれおちた。
「ああん!?沙都子ぉ!何余計に散らかしとるんじゃ!?」
沙都子の様子に気付いて激昂した鉄平は、暴行を加えようとズカズカと彼女に近付き拳を振り上げた。

ガシィン!!

「な……!?」
そして鉄平は信じられない光景を目の当たりにする、小さくてか弱い少女の筈の沙都子が、喧嘩で鍛えてある自分の拳を掌で受け止めていたのだ。
『ふん!!』
「ぬおおおお!!!?」
鉄平はそのまま沙都子に片腕で放り投げられてしまい、仲間達が囲っているテーブルに頭から突っ込んでしまった。
「な、何すんじゃ貴様!」
激昂する鉄平の仲間達、しかし沙都子は臆することなく右手で顎をもち首の骨をゴキンと鳴らした。
『俺の強さは……泣けるで!』
沙都子の声はティファ・アディール等でお馴染みの可愛らしいかないみかボイスから、映画の吹き替えでお馴染みのてらそままさきボイスに変更されていた。
「な……何が泣けるだこのクソガキャアああ!!!」
そう言って仲間の一人が沙都子に襲いかかる、しかし沙都子はその男を張り手一発でのた打ち回っている鉄平の元まで吹き飛ばしてしまった。
『涙はこれでふいとき!』
沙都子は目を黄色く輝かせながら白いティッシュを宙に放り投げた。
『ふぅっふっふっふ……!』
すると部屋の中から何者かの声が響き渡り、鉄平達は警戒して一か所に集まる。
「な、何もんじゃい!?姿を見せんかい!」
すると部屋の至る所から下半身を地面に埋もれさせ、その地面に埋もれている筈の下半身を頭上の異空間から突き出してパタパタさせてる砂でできた怪人が三体現れた。
『へっへっへ……!こいつぁいい!生贄が4体いるぜ!』
『こいつらを鬼ヶ淵ってところに引き摺りこめばいいの~?』
『リュウタ!ちゃんと演技して!』
「な、なんじゃこいつら!?人間じゃない……!?」
「ま、まさかオヤッ!オヤッ!オヤシロ様!?」
謎の怪人の出現に度肝を抜かした鉄平の仲間達は、あろうことか鉄平を怪人達の前に押し出した。
「お、俺達は関係ねえ!祟るならこいつを祟れ!」
「お、おどれらぁ!!?」
「うるせえ!祟られるならお前だけ祟られろこのクズ!」
その様子を見て、二本角を生やした怪人が声高らかに笑った。
『安心しろ……お前ら四人一緒に祟ってやる!さあて、どこから食べてやろうか……。』
『どうせ食べるなら若い女の子がいいなー。』
その時鉄平は去年オヤシロ様の祟りで殺された自分の妻の事を思い出した、彼女は愉快犯によって念入りに顔面を原型を留めないほどに破壊されており、鉄平は彼女と同じ死に方をするのではないかと恐怖に駆られ、下から悪臭のする液体を垂れ流した。
「ひ、ひいいいいい!!!」
そして鉄平と仲間達はわれ先にと家から逃げ出してしまった。
『おーい、忘れ物だよー。』
ふと、カメのような顔をした怪人が、逃げ出した一人の男のポケットに白い粉が入った袋を詰め込んだ。
『カメちゃん、今の何?』
『さっきこいつらの私物を漁っていたら見付けたんだ、さあ面白くなるよー。』
『へっへっへ!ブレーメンの音楽隊作戦(立案は良太郎)は大成功ってとこだな!』


「うう……ん……?」
数分後、沙都子は鉄平達が居なくなった居間で目を覚ました。
「おう!目え覚めたみたいやな!」
「え!?」
すると沙都子は自分の横に見た事のない黄色い怪人が居る事に驚き、思わず飛び起きる。
「ななななな!?何なんですのアナタは!?まさかオヤシロ……!?」
「なにいうとんねん!ほれ!この声に聞き覚えは無いんかい?」
「声……?」
そして沙都子は隣にいる怪人が先日出会ったゾウのキグルミを着ていたキンタロスだと言う事に気付いた。
「も、もしかしてキンタロスさんですの!?その姿は一体……!?」
「それは……僕達が説明するよ。」
するとそこに救急箱を持った良太郎とコハナが現われた、因みに彼等の背後では砂の怪人……モモタロス達が荒れてしまった居間の掃除を行っていた。
「おいハナタレ小僧、ちりとり持ってくれ。」
「おっけー。」
「沙都子ちゃん、コレってどこに置けばいいの?」
「その声……リュウタロスさん!?これは一体全体どうなっていますの!?」
「あのね……。」

そして沙都子は叔父から受けた暴力でできた怪我をコハナに治療してもらいながら、良太郎の説明を聞いていた、デンライナーの事、イマジン達の事、良太郎自身の事、そして梨花と仲間達の事を……。
「で、ではアナタ達は20年以上の未来から来たとおっしゃいますの!?」
「すぐには信じられないかもしれないけれど……本当の事だよ、僕達はデンライナーで未来から事故でここに来ちゃったんだ、皆には内緒だけどね……。」
「は、はあ……。」
沙都子は半信半疑ながらも辺りにいるイマジン達を見る、そして観念したかのように深く溜息をついた。
「これはもう信じるしかありませんわ、初めて会った時から変な方々だとは思っていましたけど……まさか体を乗っ取られるとは。」
「だってさ、言われてるよ先輩。」
「なんで俺だけなんだよ!?」
「ふふふ……。」
ふと、沙都子はモモタロスとウラタロスのやり取りを見て笑みをこぼした。
「あ!沙都子ちゃん笑ったー!」
「だっはっは!やっぱり沙都子は辛気臭い顔しとるより笑っとる顔が一番や!」
「沙都子ちゃん!もしあのクソ親父が来たら私達に言ってね!二度と近寄らないように叩きのめしてあげるから!」
「辛かったら我慢しちゃ駄目だよ、君に何かあったら梨花ちゃん達も悲しむからね。」
「皆さん……ありがとうございます。」


その後、沙都子は良太郎達に連れられて梨花の家に戻って行った。
沙都子の姿を見た梨花は信じられないといった様子で驚いていたが、すぐに嬉しそうに彼女の無事を喜び彼女に抱きついた。

次の日、沙都子は学校に赴き圭一達に元気な自分の姿を見せた、後に彼女は圭一達が鉄平を襲撃する計画を立てていた事を知り、彼等に3時間程説教を喰らわせたそうな。
その後良太郎達は圭一やレナ、魅音に何度もお礼を言われた。

ちなみに鉄平達はあの後警察署に駆け込み自分達の保護を訴えたそうだが、その場に居合わせた警官の一人が鉄平の仲間のズボンにコカインの入った袋(ウラタロスがねじ込んだ彼等の私物)がねじ込まれているのを見付け、鉄平達は麻薬の不法所持で逮捕されてしまった。ちなみに鉄平達が見たオヤシロ様に扮したモモタロス達は麻薬を服用した事による幻覚だと判断された、後に梨花達が大石に聞いたそうなのだが、鉄平達は今まで行ってきた暴行罪などの余罪も含めて懲役10年以上の刑が下される見込みだそうだ。


そして数日後の6月19日……良太郎達は部活メンバーに雛見沢で行われている綿流しの祭りに招待されていた。
「うおおおおおおお!負けてたまるかこのやろおおおお!!!」
「あっはっは!モモちゃんやるねえ!でも私も負けないよー!」
「うああああ!頭がいたい~!」
キグルミを着たモモタロス達イマジンは部活メンバーと混じって五凶爆闘……モモタロス達も混じっているので九凶爆闘(簡単に言えば出店にあるもので早食い競争等のゲームをする事)に身を投じていた。
「全く、ガキなんだから……。」
「そういうハナさんも混じりたそうだよね。」
「そ、そんな訳ないじゃない!」
そう言って浴衣姿のコハナは良太郎の隣で綿あめを食べていた、そこに……。
「お、野上君にハナちゃんじゃないか、久しぶりだねぇ。」
「クスクス……こんばんは。」
「あ、富竹さんに鷹野さん……こんばんは。」
祭りの見学に来た富竹と鷹野に遭遇した。
「お二人ともいつも2人一緒ですよね?もしかして恋人同士ですか?」
「恋人同士!?なははは!照れるなあ!」
「うふふ……ハナちゃん、大人をからかっちゃだめよ?」
「お二人も祭りの見学に来たんですか?」
良太郎の質問に、鷹野は首を横に振って否定する。
「それもあるんだけど……私達、ちょっと祭具殿へ行ってみようと思っているの。」
「祭具殿?なんですかそれ?」
良太郎の質問に、鷹野は目を輝かせて答える。
「ねえ良太郎君……なんでこの祭りが綿流しって呼ばれているか知っている?」
「えっと……たしか布団の中の綿を流して一年分の穢れを落とすって梨花ちゃんが言っていたような……。」
「ねえ良太郎君……内臓とかも“腸”って言うわよね?」
「え……!?」
次の瞬間、良太郎達の周りに冷たい空気が流れる。
「かつてこの村にはね……オヤシロ様の指定した人間を“鬼隠し”し、鬼ヶ淵村民の前で拷問を加え腹を裂き、鑑賞してその肉を食したという伝承が残っているのよ、その時余った腸をそこの川に流すことから腸流しのお祭りと呼ばれたそうなの、そしてその時の拷問に使われていた器具が……。」
「祭具殿にあるっていうんですか?」
「それを確かめに私とジロウさんは行くの、梨花ちゃんに許可は貰っているわ、良太郎君達も一緒にどう……ってあら?」
鷹野達はその時初めて良太郎が立ったまま気絶している事に気付く。」
「きゃー!?良太郎!すみませんこの人怖いものが大の苦手で……!それはまた次の機会に!」
「そ、そう?それじゃ折角だしコレをあげるわ。」
「じゃあね二人とも、行こうか鷹野さん。」
そう言って鷹野はスクラップ帳をコハナに渡すと、富竹と共に祭具殿の方に向かっていった。すると入れ違いで今度は出店で買った水鉄砲を装備したリュウタロスがやって来た。
「あれ?また良太郎気絶したの?しょうがないなー……それ!」

ピョロピョロ~

「うわっぷ!」
リュウタロスはその水鉄砲を使って良太郎の目を覚まさせた。
「あ、ありがとうリュウタロス……。」
「もうそろそろ梨花ちゃんの奉納演舞の時間だよー、二人とも早くいこー。」


それから数分後、良太郎達は人が賑わう古手神社に設置された特設会場にやって来た。
「ここか、梨花がパラパラ踊るっつう会場は。」
「先輩、パラパラじゃなくて奉納演舞……ていうかこの時代にパラパラは無いでしょ?」
「なんの話していますの?ああ、未来の話ですか。」
「沙都子ちゃんも自重して!」
(富竹さんと鷹野さんいないな……今頃祭具殿の中かな?)
すると会場に巫女服に鈴の付いた鍬のような物を持った梨花が現われ、太鼓の音と共に演舞を始めた。
「へえ、中々やるね彼女。」
「おう!俺も始めてだけど梨花ちゃんがここまでやるなんてなー。」
「はう~☆梨花ちゃん綺麗だよ~!」
「お持ち帰りは駄目だよレナ。」
「ほえー……。」
良太郎は真剣な表情で皆に舞を披露する梨花を見て、思わず目を奪われていた。
(すごいな梨花ちゃん……まるで何年も前から練習していたみたい。)

そして演舞終了後、良太郎達は近くの川に赴き布団の中の綿を流す綿流しに参加した。
「ほう、布団の中の綿を流すんかいな、ここの祭りは変わっとるのう!」
「こんな事ならオーナーやナオミも連れてくればよかったね。」
「しょうがないよ、本人達がいいって言っていたんだし……。」
「わーい!なんだかおもしろーい!もっと近くで見る!モモタロスどいてー!」
「ちょっ!ハナタレ小僧!押したら落ち……うわあああ!!!」

ドッポ―ン!!

「あ、センパイが落ちた。」
「助けてくれー!ゴポゴポ!俺泳げ……ゴボゴボゴボ!」
「はう~!溺れているモモちゃんかあいいよ~!」
「わーい!モモタロス流し~!」
「おいおい……助けなくていいのかよ?」
「まああの方なら大丈夫でございましょう。」

「良太郎……。」
すると彼等の元にワンピースに着替えた梨花がやって来た。
「あれ?どうしたの梨花ちゃん?」
「……少しお時間を頂けますか?ちょっとお話があるのです。」
「……?わかった、ハナさん達は先に戻ってて。」
「わかった、ほらアンタ達―!もう帰るわよー!」
「「「はーい。」」」
「おい!俺を助けて……!ブクブクブク……。」

「おんやあ~?梨花ちゃんまさか良太郎さんに!!?」
「女の子が男の人を呼び出す理由なんて一つしかありませんわ!」
「はうはうはう!良太郎さんって俳優みたいにかっこいいもんね!」
「いいな良太郎さんモテモテで……俺も女の子にモテてみたいぜ。」
「「「……………。」」」
「うおっ!?なんだお前ら目が怖いぞ!!?俺なんか怒らせるような事言ったか!!?」

そして数分後、良太郎は梨花に連れられて夜の雛見沢の景色が一望できる神社の近く高台にやって来た。
「それで?用って何……梨花ちゃん?」
「……。」
梨花は良太郎の問いに答えることなく高台から雛見沢を見降ろしていた。
「いい景色なのです、僕はここから見る景色が大好きなのです。」
「そうなの?どれどれ……ああ本当だ、家の光がまるで蛍の光みたい。」
「あの一つ一つの光に……違う命が宿っているのです、それはとても儚くて尊いもの……。」
そして梨花は隣にいた良太郎の瞳をジッと見つめる。
「良太郎……アナタは何者なの?」
「梨花……ちゃん?」
良太郎は梨花が年相応の幼い少女から、何か達観した大人のように変貌して思わず息をのんだ。
「アナタは……アナタ達は私達が何度挑んでも打ち破る事ができなかった鉄平の帰還をいともたやすく跳ねのけた、こんなの初めて……一体アナタ達は何者なの?」
「梨花ちゃん……一体何を言っているんだい?“何度も挑んだ”って……。」
「……。」
梨花は何か言いたそうにしているのだが何故か躊躇いを見せていた。
「駄目……やはりこんな事にアナタ達を巻き込むのは……でもコレはチャンス……。」
「梨花ちゃん……君が何を言いたいのか解らない、でも僕はどんな不思議な話でも信じるよ、だから……。」
「……僕は……私は……。」
梨花は良太郎の話を聞いていままで俯いていた顔を良太郎に向ける、そして……意を決したように口を開いた。」
「良太郎、私は……!」
「オウ!エクスキューズミー!」
その時、2人の元に良太郎が先日出会ったアメリカ人風の女性がやって来た。
「あ、アナタはこの前免許証を落とした……。」
「オウ!アナタハセンジツノシンセツナヒト!チョウドヨカッタデス!コノチカクニビョウインハナイデショウカ?ツレガヨイツブレテシマイマシテ!」
「病院?それなら……。」
「良太郎は先に帰っているのです、ここは僕に任せるのですよ、にぱ~☆」
「え……?」
良太郎は思わず梨花の顔を見る、彼女はいつもの可愛らしい古手梨花に戻っていた。
「で、でも女の子を一人にする訳には……。」
「もーまんたいなのです、このお姉さんとお連れさんと一緒ですし……。」
「モシカシテワタシオジャマムシ?デモロリコンハハンザイ!」
「えええ!?そう言う訳じゃ……。」
「みい、ボクは子供扱いなのです、しくしく……。」
そして梨花はその女性を連れて入江診療所がある方角に向かって行った。
「それじゃ良太郎、お休みなのです。」
「うん、お休み梨花ちゃん……。」

その時梨花は良太郎から視線をずらす際、とて小さな声で何かつぶやいた。

「――――」
「え?」
良太郎はそれが何か聞きとれず梨花を呼びとめようとしたが、彼女は女性を連れてさっさと行ってしまった。
「梨花ちゃんは何が言いたかったんだろう……?ちょっと皆に相談してみよ。」
良太郎は首を傾げながらも、デンライナーのパスの時刻を確認しながら近くにある電話ボックスに向かって行った……。



後に良太郎は、この時梨花の話を聞かなかった事をすごく後悔することとなる。





次の日、興宮署では大石が部下からある報告を受けていた。
「じゃあガイシャは……喉を掻き毟って死んだって訳ですか。」
『ええ!今入江院長も向かって貰っています!大石さんも早く来てください!』
「ええ解っていますよ、それじゃ……。」
そう言って大石は電話を切ると、先程違う部下から送られてきた報告書に目を通した。
「やっぱり今年も起こったか……“オヤシロ様の祟り”が。」
大石の持つ二枚の報告書にはこう記されていた。


“被害者:富竹ジロウ(本名不明)、喉を掻き毟り自殺。”


“被害者:鷹野三四、絞殺後遺体は岐阜山中にてドラム缶で焼かれる。”





惨劇の幕は上がる、それはもう誰にも抗う事ができない運命なのだ。








はい、という訳で第一章の第二話終了です、良太郎ならこうするだろうなと思って○○○○を阻止させました、多分彼はリナが生きていてレナが暴走する罪滅ぼしの世界でも同じ手口で回避させると思います。でも彼等だけじゃそれが限度、彼は次回の話で挫折してヒーローとして一皮むけてもらいます。
因みに作中に出てきたジェニファー高畑という女性、実はオリジナルキャラではございません、いや、半分オリジナルと言った方がいいでしょうか?彼女の正体はこの作品の謎を解く重要なカギとなっています、多分“色んな”仮面ライダーを見たマニアックな人ならピンとくるのではないでしょうか?

次回は第一章の最終話を投下します、ではまた。



[19763] 第1章 最終話「後悔」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:94eaebd0
Date: 2010/06/29 23:15
綿流しの祭りの次の日の昼頃、良太郎達は村で買い物中の沙都子に出くわし、彼女との会話で富竹と鷹野が殺された事を知った。
「そんな……!昨日会った時はあんなに元気だったのに……!」
「わたくしも魅音さんから又聞きしただけですので詳しい事は解らないのですけど……。」
「ふうん……。」
「なんだカメ?意味深な溜め息つきやがって、何か解ったのか?」
「うん、これもオヤシロ様の祟りなのかなーって思ってさ、でもそれだと片方の死体が見つかるのはおかしいよねえ?」
「そう言えばそうやなあ。まさかイマジンが……?」
「喉掻き毟って死ぬなんて普通あり得ないじゃん、悪いイマジンか何かが変な催眠でも掛けたんじゃないの?」
「それは十分あり得るかもね……沙都子ちゃん、もしもの時の為にコレを渡しておくね。」
そう言ってコハナはオーナーに渡されていた予備のデンライナーのパスチケットを沙都子に渡した。
「なんですのコレは?」
「もし何かあったら時間が揃った時……十時十分十秒とかにそのチケットを持って近くの扉を開いて、そうすれば安全な所まで移動できるから。」
「そんな面倒な条件がありますの?もっと自由に入れるようにすればよろしいのに……。」
「あはは……ごめんね、ところで梨花ちゃんはドコ行ったの?一緒に学校に行っていたんじゃ……?」
「実は梨花は風邪をひいて学校を休みましたの……今は入江診療所にいますわ、多分もうそろそろ帰って来ると思いますけど……。」
「わかった、もし何かおかしいと感じたら僕達に言ってね、それじゃ。」

そして良太郎は何か言い知れぬ不安を感じ、入江診療所に歩みを進めた。
「あん?どうしたんだ良太郎?顔が怖いぞ?」
「うん……なんだか嫌な予感がするんだ、昨日の梨花ちゃんの言葉……。」

――――ない。

(なんだろう……すごく嫌な予感がする、急がないと……。)
「ちょ、ちょっと待ってよ良太郎!」


そして良太郎達は速足で入江診療所に向かう途中、偶然聞き込み調査を行っていた大石に声を掛けられた。
「やあ野上さん!奇遇ですね!」
「おや、この前の思いこみの激しい刑事さん?もしかして鷹野さんと富竹さんの死について調べているの?」
「ぬっふっふ!思いこみが激しいは余計ですがまあそんな所です、野上さん……昨晩そのお二人に会ったりはしませんでしたか?」
「その二人には会ったわよね?確かこのスクラップ帳をくれたんです。」
そう言ってコハナは鷹野から貰ったスクラップ帳を大石に渡した。
「ふむ……やはりアナタ達もその時間に目撃しているのですか……。」
「?何かあったんですか?」
「いや、実は鷹野さんなんですがね……岐阜山中で焼死体が見つかったのは知っていますね?それで司法解剖の結果……死亡推定時刻が昨日の昼ごろになっていたんですよね。」
「昼……!?」
「それっておかしいよねえ?昼ごろに死んだ筈の人がその日の夜に行われた祭りに出るなんて……まるで死体か幽霊が動いたみたいだ。」
「でしょう?だから今調査をしているのですよ、もし何か解ったら署に連絡をくださいね、それでは……。」
そう言って大石は同僚らしき若い男と共にパトカーに乗ってその場を去って行った。
「死亡推定時刻の合わない死体か……まるで時間を操作したみたいだ。」
「あの鷹野って人なんだか怪しいわね、まさかイマジンと契約しているのかも……!?」
「でもよー、俺の鼻には何も反応なかったぜ?」
「鼻づまりなんじゃないのー?僕が治してあげるよ!」
そう言ってリュウタロスはモモタロスの鼻の辺りにこよりをあてた。
「や、やめろハナタレ小僧……フェックシ!!!」
「ああんもうこっち向いてしないでよ先輩!」
「コントしとる場合やないで、早く診療所に行こうや。」

数十分後、良太郎達は入江診療所に辿り着いた。
「ごめんくださーい、梨花ちゃんいますー?……ってあれ?」
だが診療所から人の気配は感じられず、良太郎達は梨花が居るであろう病室に向かうことにした。
「おかしいわね……?まだ営業時間の筈よね?」
「うん……。」
「おい良太郎……何か様子が変じゃねえか?」
「先輩もそう思う?僕も嫌な予感がするんだよね……。」
そして良太郎達は梨花がいるであろう病室に辿り着くが、そこには机に突っ伏した状態の白衣の男がいるだけだった。
「梨花ちゃんいないね……まさか入れ違いになったのかな?」
「おいそこのオッサン!営業時間中に昼寝とはいい御身分じゃねえか。」
モモタロスはそう言って机で寝ている男を起こそうと彼の肩を叩く、すると……。

ドサッ!

「うわっ!?」
男は糸の切れた人形のように地面に転がった。
「この男、確か入江っちゅう変態医師やったな……。」
「ちょ、ちょっと大丈夫ですか!?」
そう言ってコハナは入江に駆け寄るが、ある事に気付き腰を抜かしてしまう。
「こ……この人死んでいる!!?」
「えっ!?」
良太郎はふと、机の上に散乱している空になった睡眠薬の箱を目にした。
「どどどどどどどどどうなってるのコレ!?どうなってるのコレ!?」
「落ちつけ良太郎!なんでコイツ死んでいるんだよ!?」
「なんかここに遺書みたいのが置いてあったよ、読むね……“雛見沢症候群の撲滅は私の悲願でした、それが叶わなくなった今、私に生きる意味はありません。”だってさ。」
「雛見沢症候群……?なんなのソレ?」
「そ、それよりも大石さんを呼ぼう!」
そう言ってコハナは近くに置いてあった電話を手に取って警察に電話する、が……。
「で、電話線が切られている……!!?」
「そこの入江って人が切ったの?何の為に?」
「おかしい……この村は何かおかしい……!」


――たくない。


「み、皆!梨花ちゃんを探そう……何か嫌な予感がする!」
「お、おう……。」
「珍しいね、良太郎が声を荒げるなんてさ……。」
そして良太郎はモモタロスとリュウタロス、コハナはウラタロスとキンタロスと二手に分かれて梨花の探索に出発した。


~コハナサイド~

空もすっかり暗くなった頃、コハナ達は梨花を探すため車道沿いを歩いていた。
「もしかしたら梨花ちゃんは誘拐されたのかも、もしそうなら犯人の乗った車が見つかるかもしれない、運がよければ大石さんに会えるかもしれないし……。」
「さすがハナさん、冴えているね~!」
すると彼女等は大石達が乗っていたパトカーと白いワゴン車が道端に停まっているのを見付けた。
「あ!ちょうどよかった!」
「駐車違反でも取り締まっているのかな?」
「……!二人ともちょいまち。」
キンタロスはふと、パトカーに駆け寄ろうとしたコハナとウラタロスを手で制止した。すると三人はワゴン車の影から現れた目つきの悪い後頭部で髪を結んでいる男と目が合った。
「ああん?なんじゃお前ら……村のもんじゃなかとね?」
「僕は君の事知ってるよ~?確か造園の人だよね、まあもっとも……。」
ウラタロスはふと、男の足もとに広がっている血痕を見て不敵にふふんと笑う。
「君達園芸より血なまぐさい事が好きみたいだけどねえ。」
「え……?きゃー!大石さん!」
その時コハナはパトカーの下で大石とその同僚が脳天を銃弾で撃ち抜かれて絶命していることに気付いた。
「ちっ!」
「!!アカン伏せろ!」
次の瞬間、男は隠し持っていた拳銃の銃口をコハナに向ける、だがキンタロスのとっさの判断でコハナは森の方に突き飛ばされ、放たれた銃弾はアスファルトに突き刺さった。
「二人とも森の中に逃げるよ!」
「ああ!捕まりいハナ!」
「なんなのよコレ……!一体何なのよ!」

「鳳1より各隊へ、口封じの場面を旅行者に見られた、ターゲットは森の中へ逃走した模様、見付け次第処理せよ。」
『了解。』
「ったく……もうすぐ作戦決行だってのに次から次へと!姫様の機嫌を損ねたら大変だ……。」


~沙都子サイド~

同じ頃沙都子は梨花の帰りが遅いのを不審に思い、圭一、レナ、魅音、そしてたまたま遊びに来ていた魅音の双子の妹の詩音と共に雛見沢中を探し回っていた。
「駄目だ、興宮にもいなかった。」
「ばっちゃや葛西さん達にも頼んで探して貰っているんだけど見付からないみたい……!どこに行ったんだろう?」
「まさか誘拐とか……。」
「とにかく一度学校に戻ってみましょう、もしかしたら梨花ちゃまが戻って来ているかも……。」
(梨花……一体どこに行ったんですの?)

数分後、沙都子達は辺りがすっかり暗くなった頃、雛見沢分校にやって来た。
「あら?明かりが点いておりますわ。」
「ホントだ……知恵先生達かな?」
「もしかしたら先生達が何か知っているかも、行ってみよう。」

そして校舎の中に入った圭一達は、そこで違和感を抱いていた。
「圭一君……なんだろうこの匂い、鉄棒のような……。」
「……圭ちゃん、レナ、沙都子、ちょっと下がって、こりゃあヤバイかもね……!」
その時、圭一達の目の前に作業服を着た男が現れた。
「う……ああああ……!」
「うおっ!?なんだこいつ!?」
「この人達……確か造園業者の……。」
すると男は呻くように、そして縋る様に圭一達に語りかけた。
「た、助けて……!鏡の中に化け物が……!もう殺したりなんかしないから……!」
「な、何を言っているのかな?とにかく具合が悪いなら病院に……。」

グサッグサッ!!

「がっ!」
その時、男は何かに刺されたように顔を強張らせ、そのまま地面に倒れ込んでしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
レナはその倒れ込んだ男に駆け寄るが、すぐに違和感に気付いた。
「な、何この人……!?体が半透明だよ……!?」
「はあ?何言っているんだレ……!?」
そして圭一達はその時初めて倒れ込んだ男が体をガラス瓶のように透明に変化させて絶命している事に気付く。
「な……なんだよコレ……普通の死に方じゃないぞ!!?」
「や、ヤバイよみんな!早くここからでよう!」
「え、ええ、そうした方がいいみたい……。」

「あら、前原さん達じゃないですか。」
するとそこに圭一達のクラスの担任教師、知恵留美子が現われた。
「ち、知恵先生ちょうどよかった!この人が……!」
そう言って魅音は知恵に死体の状態を見せようと彼女の手を取った、だがその瞬間……知恵の腕は砂となって崩れてしまった。
「きゃあああああああ!!!?」
「知恵先生!!?」
そして知恵はそのまま砂となって崩れて落ちてしまった。
「そ、そんな!知恵先生が!!」
(砂……!?まさかキンタロスさん達が言っていたイマジンの仕業ですの!!?)
ふと、レナは何かを感じ取ったのか皆に静かにするよう促した。
「皆静かに……何かいる……!」
「はあ?レナ、こんな時に何を……。」


グルルルル……。
ケケケケケ……。


「圭ちゃん……どうやらレナの勘、当たっているみたいだよ。」
「囲まれていますね、暗闇で全然見えないですけど……!」
そう言って魅音は装備していた改造モデルガンを、詩音は常備していたスタンガンを構える。
「な、なにがどうなってやがるんだコレは……!」
「レナにも解んないよ、とにかく武器になるような物を……!」
一同が状況を把握できていない中、沙都子はある事を思い出し先程コハナから貰ったデンライナーのパスチケットを取りだす。
「圭一さん!今何時か解りますか!?」
「な、なんだよこんな時に……今は19時18分だぜ。」
それを聞いた沙都子は辺りを見回し、近くに職員室の扉がある事を確認する。
「圭一さん……!19時19分19秒までのカウントをお願いしますわ!皆さんはその時間になったら職員室に駆けこんでくださいまし!」
「もしかしてトラップか何か用意しているの!?圭ちゃん言うとおりにして!」
「わ、わかった!後30、29、28……。」
圭一達は存在する何かを警戒しながらじりじりと職員室に近付く、そしてカウントが10を切った頃、圭一達は職員室に辿り着き沙都子は職員室の扉の戸に手を掛けた。
「9……8……7……6……。」
「沙都子ちゃん、本当に大丈夫なの……!?」
「それはコハナさんに言ってくださいまし……!」
「4……!3……!2……!1……!」
そして19時19分19秒になった瞬間、沙都子は右手にパスを握りしめながら左手で職員室の扉を開け放った。
「皆さん早く入って!」
沙都子の合図と共に皆は職員室に入る、それを確認した沙都子も皆に続き扉を閉めた。

ドンッ!

次の瞬間、何かが扉に体当たりする衝撃が鳴り響いた。
「あ、危なかった……もうちょっと遅かったら俺達……。」
「知恵先生……!」
ふと、レナは緊張の糸が切れたのか知恵が死んでしまった事を思い出し、その場にへたりこんで泣き崩れた。
「クソッ!誰が一体あんなひどい事を……!」
「ね、ねえ圭ちゃん、ここって……。」
その時魅音はここが職員室ではなく、映画でよく見るような砂漠の荒野にいる事に気付いた。
「あ、あれ?私達職員室にいた筈じゃ……。」
すると彼等の目の前に電車のレールが高速で敷かれ、そこをデンライナーが通り彼等の目の前で停止した。
「ななななな!?なんだこりゃ!!?」
「し、新幹線……!!?」
するとデンライナーの入り口の扉が開かれ、そこからナオミが満面の笑みで出てきた。
「はーい!五名様デンライナーにごあんなーい♪」
「「「「「はあ?」」」」」



~良太郎サイド~

一方その頃、良太郎はモモタロスとリュウタロスと共に梨花を探して村中を駆けまわっていた。
「おーい!梨花ちゃーん!」
「ドコ行った腹黒―!」
「猫じゃらしあるよー、一緒に遊ぼー。」
「なんでネコじゃらしなんだよ……。」
「だってあの子みーみー言っているし。」
「おかしいな……これだけ叫んでいるのに村の人達の反応まで無いなんて……。」

ドォーン!!!

その時古手神社の方から轟音が鳴り響き、良太郎達は一斉にそちらを向いた。
「な、何今の音……!?」
「まさかイマジンとか……?」
「行ってみようぜ!」
そう言って三人は古手神社に向かって駆けだした、その道中での事……。

パァン!パァン!
タタタタタタ!!!!

「なんだぁ!?銃声まで聞こえてきたぞ!?」
「一体何が起こっているの!?僕もう訳が解んないよ!」
(何だろう……!さっきから心臓がバクバクいってる……!)
良太郎はふと、以前見た神社の夢を思い出していた。
(神社……まさか……!)

―にたくない

「――――!!!」
良太郎はふと昨晩の梨花の顔を思い出し、走るスピードを上げモモタロス達を追い抜いた。
「お、おい良太郎!待てよ!」
「どうしちゃったのさ良太郎!?」

そして三人は古手神社に辿り着き、そこで信じられない物を目にする。
「な、なんだよこりゃ……!!!?」
「神社が滅茶苦茶に破壊されている!」
そこにはまるで巨大な怪獣に踏み潰されたみたいに破壊された古手神社の変わり果てた姿があった。
「な、何があったの……うわっ!」
その時良太郎は何かで足を引っ掛けて盛大に転んでしまう。
「こんな時まで何やっているんだよお前は!?」
「だ、だって暗くてよく見えなくて……。」
そう言って良太郎は自分の足に引っ掛かった物体が何かを確認する、そこにあったのは……。
「しっ!し!死体!!?うわあああああ!!!!!!」
そこには作業服を着た男が何かに胸を深く切り裂かれて死んでいる死体があったのだ。
「りょ、良太郎落ちつけ!」
「よく見たら周りにも沢山倒れている……!?」
モモタロスが動揺している良太郎を落ち着かせている間、リュウタロスは辺りを見回して状況を確認する、そして辺りに十数人程の死体が転がっている事に気が付いた。
「ひどい……イマジンだってここまでしないよ……!」
「一体全体どうなってやがる……ん!?」
その時モモタロスは十数体の死体の中に、自分の顔見知りが居る事に気付いた。
「お、おい……あそこに転がっているの……鷹野って姉ちゃんじゃねえか!?」
「えっ!?」
モモタロスの視線の先には、黒い軍服のような物に身を包んだ死んだ筈の鷹野の死体が転がっていた。
「ひどい、お腹から下が無くなっている……っていうかあの人、昨日殺されたとか言ってなかった?」
「俺に聞くなよ!」
「……!」
その時良太郎は、賽銭箱の方に異様にカラスが群がっている事に気付いた。
「まさか……!」
そして良太郎は立ち上がり、賽銭箱の方に駆け寄って行った。
「お、おい良太郎!?」

良太郎の目の前には、雛見沢に来る前に見た夢と同じ光景が広がっていた。
賽銭箱とそれに群がるカラス、そして血痕……まるで良太郎はあの時の夢の続きを見ているような感覚に襲われていた。
「まさか……そんな……!」
そして良太郎は賽銭箱の裏を見る、そこには……。


「り、梨花……ちゃん……?」
腹を裂かれ内臓を散乱させたまま絶命している梨花の姿があった。


「う……うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

良太郎はまるで見る事を強要されているように気絶することができずに、心が壊れてしまいそうなくらいに悲鳴と叫びが混じった声を上げた。
「どうした良太郎……うっ!?」
「そ、そんな……!梨花ちゃんが……!」
彼の後を追ったモモタロスとリュウタロスもその惨状を目の当たりにし、思わず目を逸らした。
「あ……!あああああああああ!!!!うわあああああああああああ!!!!」
「良太郎……!怒りはもっともだがちょっと落ちつけ!俺だってムカついているんだよ……!」
モモタロスとリュウタロスは梨花を殺した犯人に対し強い怒りを感じ、すぐにでも怒り狂いたかった、だがそれ以上に取り乱している良太郎を見て冷静さを保っていた。
「違うんだモモタロス!僕は……僕は梨花ちゃんを見殺しにしたんだ!」
「な、何を言っているの良太郎……!?」

良太郎の脳裏には、昨晩の梨花とのやり取りが浮かんでいた


―――それじゃ良太郎、お休みなのです。―――

―――うん、お休み梨花ちゃん……。―――

―――…………良太郎。―――

―――良太郎、ボクは……。―――

―――ボクは……私は……。―――

「彼女は……僕に助けを求めていたんだ!」




―――死にたくない―――




「それなのにボクは……!畜生!畜生……!」
そう言って良太郎は梨花の遺体の傍で何度も何度も石畳を拳で叩きつけた。
「やめろ良太郎!怪我するぞ!」
「ねえちょっと二人とも……!」
その時リュウタロスは何かに気付いたのか、キグルミを脱ぎ捨てて銃を手に取った。

グルルルル……!
キュルルルル……!
ケケケケケ……!

「何か僕達……得体のしれないものに取り囲まれているみたい……!」
「そうみたいだな……!あれが鬼ヶ淵の鬼って奴か?良太郎……戦えるか?」
モモタロスは確認を取りながらキグルミを脱ぎ捨てた。
「うん……!」
良太郎は涙を拭いながら立ち上がり腰にベルトを巻き付けた、だがその時……彼等の目の前にデンライナーが現われ、入口からコハナが顔を覗かせていた。
「良太郎!モモ!リュウ!デンライナーが勝手に動き出したの!早く乗らないと……!」
「なんだとぉ!?」
「このままじゃこの時代に置いてけぼりじゃん僕達!」
「くそっ……!」
良太郎は梨花の死体を一瞥した後、モモタロス達と共にデンライナーに乗り込んだ……。












※雛見沢村大量殺人事件

~概要~

昭和58年6月21日未明、興宮署の職員が前日に起こった富竹氏と鷹野氏の殺人事件の調査に出て行方不明になった大石警部と熊谷刑事の捜索の為に雛見沢に赴いた際、大量の村民の遺体を村の中で発見した。
その後の警察の調査で死亡が確認されている村民の数は約200人、行方不明になった数は約1800人に及んだ。

不可解なのが遺体の見つかった村民達は、皆体をガラスのように半透明に変質させ、現地の調査員が触ろうとした瞬間跡形もなく砕け散ってしまったのだ、さらに村の各所ではこの周辺の地質と合致しない砂が大量に発見されており、行方不明者との関連を調べている。


また、入江診療所では院長の入江京介氏の死体が遺書と共に発見され、警察は事件との関連性を調査している。

行方不明になった大石警部と熊谷刑事は後に鬼ヶ淵沼で射殺死体となって発見され、近くには遺体の運搬に使用されたと思われる白いワゴン車が発見されたが、犯人の物と思われる手がかりは残っていなかった。


さらに前日岐阜山中で死体となって発見された入江診療所の職員、鷹野三四医師が古手神社で下半身を欠損した状態で発見された。彼女の周辺には古手神社の住人、古手梨花の遺体が内臓を引きずり出された状態で発見され、さらに営林所の職員十数名の死体が、拳銃や機関銃を握りしめた状態で発見された。
古手梨花以外の遺体は総て獣のような爪または牙による裂傷、欠損が確認され、欠損した部分は現在も発見されていない。
司法解剖の結果、古手神社で発見された遺体は鷹野三四本人と断定され、先日司法解剖を行った岐阜県警の司法解剖が改竄された物だという可能性が浮上し、警察で調査を進めている。






犠牲者概要

富竹ジロウ:喉を掻き毟り自殺?調査は継続中
鷹野三四:絞殺後遺体は岐阜山中で焼かれる……が、後に古手神社で下半身を欠損した状態で発見され、岐阜県警鑑識班を取り調べ中。

大石蔵人:銃殺後、遺体は鬼ヶ淵沼に捨てられる。調査は継続中
熊谷勝也:銃殺後、遺体は鬼ヶ淵沼に捨てられる。調査は継続中

入江京介:入江診療所で睡眠薬を飲み自殺?事件との関連性を調査中。

古手梨花:薬で眠らされた後腹を裂かれ死亡。

北条沙都子:行方不明
園崎魅音:行方不明
園崎詩音:行方不明
竜宮礼奈:行方不明
前原圭一:行方不明

園崎お魎:行方不明
前原伊知郎:行方不明
前原藍子:行方不明
富田大樹:行方不明
岡村傑:行方不明
公由喜一郎:行方不明
知恵留美子:行方不明
小此木鉄郎:行方不明
天草十三:川沿いで発見、病院で治療中
葛西辰由:雛見沢村でガラスの遺体となって発見されるが、直後に崩壊。
亀田幸一:事件当時興宮にいた為生存。
園崎茜:事件当時興宮にいた為生存。
その他住民:行方不明、またはガラスの遺体となって発見される。



























デンライナーに戻ってきた良太郎達はそこで別行動をしていたコハナ達と合流し、彼らに何があったのか問い詰めた。
「カメ、熊、どうしたんだ?随分とボロボロじゃねえか。」
「実はさ……道路沿いを調査していたら刑事さんが変な奴に殺された場面に遭遇しちゃって……森の中に逃げ込んで身を隠していたんだ。」
「そうだったの!?よく無事だったね!」
「森の中に沙都子のトラップが大量に設置されていてな、それのお陰でデンライナーに乗り込む時間が稼げたんや。」
「ほう、そんでよ……。」
モモタロスはコーヒーを飲みながら視線を移す、そこには……。

「はーい、コーヒーお持ちしましたよ~♪」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「あ、あれ?どうしたんですか皆さん……お砂糖も持ってきます?」
圭一、レナ、魅音、詩音、そして沙都子がテーブルを囲みながら下を向いて落ち込んでいた。

「なんで圭一達がこのデンライナーにいるんだよ?」
「私の渡したパスで来たみたいなんだけど……随分と怖い思いをしたみたい、さっきから一言もしゃべらないの。」
「一言もしゃべらないと言えばさ……。」
そう言ってウラタロスは車両の片隅で落ち込んでいる良太郎を見る。
「僕のせいだ……僕の……。」
「その、なんて言ったらいいか僕にも解らないんだけど……。」
「梨花ちゃんがそんな酷い殺され方をしたなんて……どうしてこんな……!」
「どないするん?犯人をこのままにしておくわけにはいかんやろ。」
「でもデンライナーが勝手に動き出したらもうあの時代には行けないんじゃ……。」

「おい、勝手に話を進めるなよ。」
その時、圭一が席から立ち上がりモモタロス達に詰め寄った。
「圭一君……。」
「アンタ達一体何者なんだよ?イマジンだとかこの新幹線とか沙都子の持っていたパスとか……まさか梨花ちゃんがあんな事になったのってアンタ達が原因じゃ……。」
「やめてくださいまし圭一さん!」
すると沙都子はモモタロス達に突っかかる圭一を必死に止める。
「沙都子……。」
「キンタロスさん達は悪くないんです!この方たちには言いたくても言えない事情がありましたの!だから……!」
「でもこれ以上隠すのは無しかな?かな?」
「ですよねー、洗いざらい話してもらいますよ。」
「私達にも知る権利があるよね。」
するとモモタロス達がいる車両に、オーナーが杖をくるくる回して入って来た。
「では、私がご説明いたしましょう~!」
「うわ!?誰だこの人!?」
「このデンライナーのオーナーよ。」
「お、オーナーさん……?」、

そして圭一達はオーナーからデンライナーや電王、良太郎やイマジン達に関する話を聞き、口をぽかんと開けていた。
「じゃ、じゃあ良太郎さんやモモちゃん達は20年以上も未来からやって来たって言うんですか!?」
「簡単には信じられねえと思うけどよ……。」
「まあいきなり怪人だとか特異点だとか言われて信じろと言うほうが無理ですけど……実物を目の前にしたらそんな事言っていられないですよね。」
そう言って詩音はデンライナーの窓の外の景色とモモタロス達イマジンの姿を交互に見ながら苦笑する。
「でもさー、なんでデンライナーが私達の時代……しかも雛見沢にピンポイントで止まっちゃったわけ?」
「その理由は……彼女から聞いたほうがいいでしょう、入って来てください~。」
そう言ってオーナーは指をパチンと鳴らす、すると皆が居る車両にある人物が入って来た。

「「「「「「「「「「「!!!!!!!!!?」」」」」」」」」」」

その人物の姿を見て圭一やモモタロス達はあんぐりと口を開ける、その人物は格好は違うとはいえ梨花と瓜二つの顔をしていたのだ。
「り……梨花!?生きていましたの!!?」
「えええ!?じゃあ僕達が神社で見た物は一体……!?」
「ふふふ……予想通りの反応ね……。」
そう言ってその少女はオーナーの隣にチョコンと座る。
「アナタ……もしかして梨花ちゃんじゃないの?」
「何言っているんやレナ!どこをどう見たってこの子は梨花やないか!?」
「さすがは竜宮礼奈、鋭いわね……アナタの言うとおり、私は古手梨花であって古手梨花ではない、いわば彼女から分離した存在……フレデリカ・ベルンカステル。」
「フレデリカ……。」
「ベルンカステル……?」
「お前まさかイマジンなのか?」
「ふふふ……私は次元を超える魔女、まあ役割はイマジンと似ているようで似ていないわね……。」
「??????」
そしてフレデリカと名乗った少女は車両の片隅で落ち込んでいる良太郎に近付いた。
「ねえ良太郎……アナタ、梨花を救いたい?」
「そ、そんなこと出来るわけないじゃないか!そんなことをしたら時の運行が……!」
「問題ないわ……だってこの世界は何者かによって重大な“ロジックエラー”が起こっているのだから、あなた達“電王の世界”の住人をこの“ひぐらしの世界”に導いた何者かによってね……。」
「ロジックエラー……?世界……?君は一体何を言って……。」
その時フレデリカは何もない空間に向かって指を指した。
「もういいでしょう?そろそろ実体化して出てきなさい、あなたも真実を知りたいんでしょう?今回の件はあなた達だけじゃどうしようもない事なのだから……。」
「……?」
一同は一斉にフレデリカが指を指した方向を見る、するとそこに巫女服を着た紫色の髪に黒い角を生やした少女が現れた。
「アナタ……どうしてボクの事を……!」
「うわ!?女の子が出てきた!!?」
「ど、どうなっているの魅ぃちゃん!?」
「私に聞かないでよ~!」

「おめえ……その匂い嗅いだ事があるぞ!確か梨花のまわりで嗅いだのと同じ奴だ!」
「え!?じゃあこのお嬢さんイマジンってわけ!?」
するとモモタロス達のリアクションに対し、その巫女服の少女は戸惑った様子で口を開いた。
「ぼ、ボクはイマジンではありません、あの……その……。」
すると口ごもる少女の代わりにフレデリカが皆に説明する。
「この子は古手羽入……あなた達が言うオヤシロ様よ。」
「「「「「「「「「「「オヤシロ様!!!?」」」」」」」」」」」














さあ謎はばら撒き終えたわ……後は答え合わせをするだけ、何故鷹野達は古手神社で死んでいたのか、雛見沢の人々は一体どこへいったのか、そして良太郎達は何故昭和58年の雛見沢にやってきたのか、クスクス……もう答えに大分近づいている人がいるみたいね、やっぱり簡単すぎたかしら?

それじゃこれから答え合わせをするわ、時間を巻き戻して、視点を良太郎達からある傍観者に変えてね……。






はい、今回はここまで、次回は第一章の解を投下する予定です。視点も良太郎達からある人物に変更してお送りいたします。



[19763] 第1章 解「真実」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:94eaebd0
Date: 2010/07/05 10:03

~Side:梨花~

それは良太郎達が雛見沢に到着したばかりの頃の話、梨花は圭一達部活メンバーと共に山道を散歩していた。
「いやー、たまにはこうやってのんびりするのもいいねー。」
「だねー、今度は詩ぃちゃんも呼んでみようよ。」
「やめてくださいまし!それだとまたかぼちゃ弁当を食べさせられてしまいます!」
「おいおい、お前まだかぼちゃ食べられないのかよ~。」
そう言って和気藹々と会話する圭一達の後ろを、梨花は一歩下がる形で歩きながら守護霊のような存在の羽入に心の声を掛ける。
(羽入……もうすぐ綿流しのお祭りね。)
(あうあう、今回も何も出来ずにここまで来てしまったのです……今回は誰が発症してしまうのでしょうか?)

解説すると実は梨花は昭和58年6月中に何者かに殺されてしまい、彼女はその真実を見付ける為に羽入の力を使って昭和50年代を何度もやり直しているのだ。

(もう百年近くになるのね……いい加減似たようなことばっかりで疲れてきたわ。)
(あうあうあう……梨花は体は子供、心はおばあちゃんですからねー。)
(るっさい!はーあ……この世界じゃ赤坂は死んじゃっているみたいだし……希望も何もあったもんじゃないわ。いいかげん成長して恋の一つでもしてみたいもんね。)
(梨花がそんな事言うなんて珍しいのです、でも雛見沢には碌な男が居ないのです、老人や変態、暗黒四天王とでまともなのは赤坂だけなのです。)
(はあ……ホントにつまらないわ……。)
100年近い時間移動を繰り返した梨花の心は完全に疲れ切っており、彼女は歩きながら天に浮かぶ雲を見つめた。
(どっかに面白い事ないかしらねー……。)
(あ!梨花前!)
(あん?)
その時梨花は自分が山道から逸れている事に気付かず、そのまま足を滑らせて下の方へ落ちて行った。
「み、みぃ~!!?」
「うわ!梨花ちゃんが落ちた!」
「な、何しておりますの梨花―!!?」

(あうあうあうあう!梨花―!)
羽入は圭一達より一足早く転がっていった梨花の元に飛んで行った。
(あう!?)
そして彼女は梨花が知らない若者をクッションにして気を失っている現場に出くわした。
「良太郎!!?」
「あかん!大丈夫か!」
「いたたた……僕はなんとか……君、大丈夫かい?」
(なんですかこの人達は……特にこのクソ熱い中ゾウのキグルミ着るなんて正気じゃないのです!)
そして羽入はその若者達の様子を探る為、少し離れた位置で彼等の様子を見守ることにした……。

数十分後、気絶していた梨花は入江診療所にあるベッドの上で目を覚ました。
「う……ううん……?」
「あ!梨花が目を覚ましましたわ!」
重くなった瞼を必死に開けようとする梨花、その時彼女は何者かに頭を撫でられている事に気付いた。
「あ……起きたんだね、えっと……梨花ちゃんだっけ?」
「ううん……?え!?アナタは誰ですか!?」
梨花は良太郎の姿を見るや否や、目を見開いて驚く。
「梨花ちゃ~ん?命の恩人にそんな態度をとっちゃ駄目だよ、この良太郎さんとハナさん、それにキンタロスさんは梨花ちゃんが山道で足を滑らせたところを体張って助けてくれたんだから。」
「良太郎……!?」
梨花はこれまでの世界で一度も出会ったことのない良太郎達の出現に激しく動揺していた、するとそこに皆の様子を見に来た入江がやって来る。
「おや?梨花ちゃん目が覚めたようですね。もう体の具合は大丈夫なのですか?」
「だ、大丈夫なのです、にぱ~☆」
そして入江がコハナに狙いを定めているのを皆でツッコんでいるスキに、梨花は羽入に話しかける。
(羽入、この人達は一体……?)
(あうあう、ボクにも解らないのです……こんな事始めてなのです。)
(冴えない優男にキグルミ着た大男に幼女……どこかのサーカス団かしら?)
そして暴走する入江をレナが黙らせたのを見て、良太郎達は旅館(本当はデンライナー)に帰ろうとした。
「あ、あははは……面白い人だね……それじゃ僕達そろそろ行くよ。」
「すみません良太郎さん……もしよかったら明日、村を案内しますよ……梨花ちゃんを助けてくれたし……。」
「ありがとう圭一君、それじゃ。」
「ま……待って!」
梨花はふと彼等を呼び止める、良太郎達に訳を話せばこの惨劇のループを抜け出す力になってくれるかもしれないと考えたからだ、しかし彼女の脳裏にある光景が浮かび上がる。

暗い森の中、圭一達部活メンバーが何者かによって次々と射殺されて行く、それを見た梨花は心の中で首を何回も横に振った。
(駄目だ……!無関係の人を巻き込んだらまたあの時みたいに……!。)

「ん?どうしたの梨花ちゃん?」
「え、ええっと……その……。」
梨花は何か言いたそうに口をもごもごさせる、そして数秒黙った後に、にっこり笑って口を開いた。
「た、助けてくれてありがとうなのです、にぱー☆」
「うん、どういたしまして。」
そう言って良太郎も微笑み返し、圭一達に一礼した後に病室から出て行った。

(梨花……?何故彼に何も言わなかったのです?助けを求めれば道が開けたかもしれないのに!)
(だ、駄目よ……!あの時みたいに不用意に話して死ななくていい人まで死なせる訳には……!)
(え?何を言っているのですか梨花?)
羽入は梨花が自分の記憶にない記憶を持っている事に気付き、大いにうろたえる。
(ど……どうなっているのです!?梨花やこの世界に何かが起こっているのです!)


次の日、梨花は気持ちが乗らないながらも昨日のお礼にと圭一達と共に良太郎一行を雛見沢に案内していた。そしてお昼の時間になり皆の小腹がすいてきたので皆で興宮のエンジェルモートにやって来た。
「やっほー詩音、遊びに来たよー。」
「あ、お姉……。」
店に入って早々、魅音は双子の妹でこのエンジェルモートでアルバイトをしている詩音に声を掛ける。
「あら?後ろにいるのがもしかして梨花ちゃまを助けてくれたっていう……?」
「は、はい、野上良太郎っていいます……。」
すると良太郎は詩音を見たとたん、オロオロしながら彼女から視線を逸らす。
「あん?何やっているんだ良太郎?」
「だ、だってあの人の服……。」
そう言って良太郎は顔を赤くし眼を逸らしながら詩音に指をさす、実は彼女はエンジェルモート特有の露出の多い制服(水着にミニスカートを付けたようなもの)を着ており、そういうのにあまり耐性のない良太郎は直視できなかったのだ。
「みい、良太郎はウブなのです~。」
「駄目だよ良太郎、こんな美しいお嬢さんの美貌から目を逸らすなんて、勿体ないにも程があるよ。」
「うふふ、お上手ですねそこのペンギンの人。」
「そんなことはどうでもいいからさー、早く空いている席に案内してよ!おじさん達疲れているんだからさー。」
「うーん……そうしたいのは山々なんですけど……。」
そう言って詩音は柄の悪い不良風の学生達が座っている席を見る。

「ぎゃははははは!!!!それ傑作じゃねえか!!!」
「だろう!?うひゃひゃひゃひゃ!!!」

「あいつら……もしかしてこの前俺に突っかかって来た奴等じゃ……。」
「ええ、あそこで何時間もたむろしていて他のお客さんも逃げてしまうんですよ、追い出そうにも今葛西は手が離せないしどうしたらいいか……。」
「これじゃ落ち着いてお食事できませんわねー。」
するとその時。狼のキグルミを着たままのモモタロスが一歩前に出てきた。
「野郎……!俺のおやつタイムを邪魔するとはいい度胸じゃねえか。」
そしてモモタロスに続くようにウラタロス、キンタロス、リュウタロスも前に出てきた。
「こんなかわいい子を困らせるなんてお仕置きが必要だね~。」
「ふんっ!(ゴキッ)久しぶりに暴れてやろうやないか!」
「あいつらちょっとムカつくよね……懲らしめてもいいよね?答えは聞いてない!」
「ちょ、ちょっとみんなー!」
このままモモタロス達が怒りのまま暴れると店の中が破壊される、そう直感した良太郎が彼らを止めようとした時……。

「兄ちゃん達、いい加減にしとけよ。」
突如不良グループがたむろしている席に、山伏のような格好をした大男がやって来た。
「ああん?なんだてめえ?」
「兄ちゃん達が大声出すからみんな怯えているじゃねえか、騒ぎてえなら外で騒げ。」
「んだとう……!!?」
すると激昂した男不良の一人が隠し持っていたナイフを男に突き刺そうとする、しかし……。
「おっと、そんなもん振り回したらあぶねえだろ、こりゃちょっとお仕置きだな。」
その攻撃を簡単によけた男は不良が着ていた制服の襟をムンズと掴み、たまたま空いていた窓からそれを放り出してしまった。
「う、うわああああ!!!」
「て!てめええええ!!!」
仲間をやられて怒り狂う不良たちは一斉にその男に襲いかかる、しかし男はそれに臆することなく、不良たちを次々と投げ飛ばしていった。
「ぎゃ!」
「ぐえ!」
「んだあ?もう終わりかよだらしねえ……そんな中途半端なことしてるといつか死ぬぜ。」
そして男は昏倒している不良達を窓から放ると、唖然としていた詩音に一万円札を渡す。
「すまないな姉ちゃん騒がせちまってよ……釣りはいらねえ。」
「え!?ちょっと!?」
詩音は男を呼びとめようとしたが、彼はさっさと店の外に出て行ってしまった。
「すっげー強いなあの人……柔道家か何かか?」
「んだよ折角暴れられると思ったのによ!あの野郎のせいでとんだ肩すかしだぜ!」
「まあまあ、喧嘩はしないほうが一番いいんだよ……それじゃ詩音さんだっけ?席に案内してください。」
「あ、はいはーい!今日はサービスしちゃいますよー。」

そして良太郎や圭一達はエンジェルモートで不良達以上に大騒ぎし、(周りの客も楽しんでいたが)のちに詩音にこってり絞られるのだった。

その日の夜……梨花は沙都子がぐっすりと眠っているのを確認し、隠し持っていたブドウ酒を出しそれにオレンジジュースを混ぜて飲んだ。
(あうあうあう……お酒はいやなのです~!)
「うっさいわね……ところで羽入、あの男たちの事をどう思う?」
(あの良太郎とモモタロスって人たちの事なのですか?僕にもよく……というかキグルミを着ていたあの四人はどうもおかしいのです……人の気配が全くしないのです、まるで……。)
「アンタと同族かも……って言いたいわけ?」
(まだ確証はとれていないのです、とにかくもうちょっと調査する必要があるのです。)
「そうね……あんなイレギュラーを放っておく訳にもいかないからね……。」
ふと、梨花は夜空に浮かぶ月を見て憂鬱そうに溜息をついた。
「はあ……こんな生活いつまで続くのかしら、狂っていく仲間達を目の当たりにして、いずれ自分も死んでいく……もし願いが叶うのなら電車に乗ってどこか遠くに行ってしまいたい……。」
(あうあう……。)


それから一週間後、梨花の通う学校ではあることで大騒ぎになっていた。
「くそっ!沙都子が虐待を受けているのは明らかだってのに……!どうして児童相談所は取り入ってくれないんだ!」
数日前に帰って来た鉄平に連れて行かれた沙都子を助ける為、圭一達は児童相談所に相談しに行ったのだが取り入ってくれなかったのだ。
「本人が虐待じゃないと言っている以上何も出来ないですって……!?何も知らないくせによくもヌケヌケと!おねえ!園崎家は協力してくれないのですか!!?」
「む、無理だよ……私もばっちゃに相談したけど沙都子は北条家だからって……!」
「あの鬼婆……!悟史君の時もそうやって……!」
詩音は憤りを感じながら近くの机に自分の拳を叩き付けた。

その様子を、梨花は少し離れた場所で冷めた目で見つめていた。
(成程……今回は鉄平の帰って来る世界なのね、ついてないわ……。)
(あうあう……今回の世界も駄目なのでしょうか?)
(……。)

「こうなったら皆で鉄平を追い出そうぜ!」
「うん、そうしなきゃ沙都子ちゃんは助けられないかな……。」
「ま、待ってよみんな!私がもうちょっと本家に掛けあって……!」
「うるさい!役立たずが……悟史君の時も何もしなかった癖に!」

「はぁ……。」
梨花は言い争う圭一達を尻目に、諦めが入り混じった溜め息をつきながら学校を後にした……。


そして数十分後、古手神社に戻ってきた梨花は羽入と共に今後の事を話し合っていた。
「それで羽入、良太郎達が何者か調べはついたの?」
(あうあう、ボクも調べているのですが彼らがどこを拠点にしているのかも解らないのです……。)
「解らないじゃないわよ、このままじゃ無関係の人を巻き添えにするかもしれないし……早急に帰ってもらうしかないわね、」
(そうですね……下手したら彼等が暴走するかもです。)
「この世界に赤坂はいないし……さっさと次の世界に行った方がいかもね。」
(あう!?ちょっと梨花!良太郎達がこっちに来るのです!)
「え?」
梨花は羽入が指さす方向を見る、そこにはモモタロス達を連れた良太郎がやって来ていた。
「あ、良太郎……それにモモタロス達なのです。」
「どうしたんだい梨花ちゃん?そういえば沙都子ちゃんの姿が見えないけど?」
「……。」

梨花は良太郎達に沙都子の事を話していいのか思い悩む。
(どうしたものか……でも物は試しと言うし……。)
その様子を見て良太郎は心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
「……なにかあったの?よかったら僕達に話してくれないかい?」
「みい……。(こうなったら可能性に賭けてみようかしら?この優男になんとかできるとは思えないけど……。)」
そして梨花は意を決して良太郎に悩みを打ち明けた。
「実は……沙都子が意地悪な叔父に連れてかれてしまったのです。」
「叔父さん?誰なんだいソレ?」
「北条鉄平……沙都子の叔父でとんでもない悪党なのです、かつて両親のいない沙都子を引き取った際、彼女に酷い暴力をふるって……一年前に妻が祟りに巻き込まれてそれを恐れて興宮で暮らしていたそうなのですが、先日一緒に暮らしていた恋人が殺されたらしく雛見沢に戻ってきたのです。」
「殺された……?もしかしてそれ、間宮リナって人じゃないの?」
梨花はウラタロスが自分達しか知らない事を知っている事に目を丸くして驚く。
「そ、その通りなのです、よく知っていますね……。」
「ついさっき大石さんっていう警察官から聞いたの、それで沙都子ちゃんは今どこに?」
「沙都子が前に住んでいた北条の家にいるのです、叔父とその仲間達と一緒に……。」
「なんやそいつ!今まで沙都子の事ほったらかしにしとった癖に今更帰ってきたんかいな!」
「ねえまずいんじゃない?そんな虐待していた奴がまた戻ってきたら沙都子ちゃんの身が危ないんじゃ……。」
「児童相談所とかに相談しなかったの?」
梨花は自分達がもう実行している当たり前のような手段を提示してくる良太郎に、少なからず落胆していた。
(やっぱり無理か……期待するだけ無駄ってわけね。)
「さっき皆で行ってみたのですが証拠がなくて話を聞いてくれませんでした、お陰で圭一達は怒りで殺気だっているのです、村の大人達も助けてくれないし何より沙都子がある理由で自分から助けを求めないし、このままじゃまた……。」
「そうだったんだ、うーん……。」
そう言って良太郎は梨花と共に腕を組んで考え込む、するとモモタロスが良太郎の肩を叩いて自信満々に答えた。
「簡単じゃねえか、俺達がその鉄平って奴をブッ飛ばしてやるよ!」
「だよねー!そんな奴等僕に掛かればチョチョイのチョイだ!」
「だ、駄目だよ!イマジン相手ならとにかく君達が普通の人間を傷つけたりしたら……!」
「最悪オーナーに乗車拒否されてまうかもな。」
「まったく、単細胞なんだから……。」
「んだとう!?」
カチンと来たモモタロスはそのままウラタロスといつものような取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。
「やめなさいよアンタ達!……でもどうしよう、このままじゃ沙都子ちゃんが大変な事に……。」
そう言って心配するコハナをよそに、梨花はもう何もかもめんどくさくなって彼等をこれから起こるであろう惨劇に巻き込まれないよう村から出るように警告する。
「みい……ハナ達は関わらない方がいいのです、だから早くこの村から……。」
「あ!そーだ!」
その時、良太郎は何か思い付いたのか手をポンと叩いた。
「良太郎……?何か思い付いたの?」
「うん!梨花ちゃん……沙都子ちゃんの家を教えてくれる?僕達が彼女を助けてあげるよ!」
(はあ?)
良太郎の突然の言葉に、梨花は訳が解らず首を傾げた。
「みい……言っておきますけど暴力は駄目なのです、警察も児童相談所もアテにならないし……。」
「大丈夫だよ梨花ちゃん!僕達に任せて!行くよ皆!」
「うん、じゃあね梨花ちゃん。」
そして良太郎はモモタロス達と共にその場を去って行った。
(いい考え……?どういう事なのでしょう?)
「さあ?私には解らないわ……どうせ何をしようったって無駄な訳だし……。」


そして数時間後、梨花は自宅で晩御飯の準備をしていた。
「はあ……今夜は一人分で十分ね、後どれぐらいこの世界でご飯を作れるのかしら……。」
(あ、あうあう……梨花がネガティブになっているのです、もう限界なのでしょうか。)
その時、家の玄関の戸がトントンと叩かれる音が鳴り響き、梨花は玄関の方を見る。
「あら?誰かしらこんな時間に……。」
(もしや良太郎でしょうか?)
「え!?まさか……。」
梨花は慌ててエプロンを脱ぎ捨て玄関に駆けつける、するとそこには良太郎とキンタロスにおんぶされている沙都子の姿があった。
「ただいまですわ梨花!」
「約束通り、連れて帰ってきたでえ!」
「さ……沙都子!?どうしてここに……!?」
「う、うん……なんか鉄平さん、警察の人に捕まっちゃって……危ない粉を持っていたみたいなんだ。」
そしてキンタロスは沙都子を降ろし、梨花の元に向かわせる。
「心配かけてごめんなさい、梨花……。」
「ど、どうして……こんな事今までなかったのに……!」
(どんなマジックを使ったですかこの人達は!?)
「そんなことは今はいいわ、とにかく……!」
梨花は溢れる嬉しさを必死に抑えながら沙都子に抱き付いた。
「おかえりなのです、沙都子……!」
「り、梨花……痛いですわ……。」
「どうやらワシらはお邪魔のようやな。」
「うん、それじゃ僕達は帰るね。」
「あ、はい……今度お礼をしますわ。」
「みい……本当にありがとうなのです良太郎!」
そして羽入は帰って行く良太郎の後ろ姿を見送りながら思案する。
(すごい……僕達が悠久の時を使っても打ち破れなかった鉄平の帰還を、良太郎はたやすく跳ねのけた……彼なら梨花を助け出せるかも……!)


梨花と羽入の心にはわずかに希望が芽生えていた。もっとも、その希望もすぐさま打ち砕かれてしまうのだが……。




~Side:高畑ジェニファー~

綿流しの祭りの当日、ジェニファーは古手神社の周りに出店されている出店を手当たり次第に回っていた。
「ニッポンノマツリハタノシイネ!キンギョタクサンモラッタヨ!」
「おい外人さん!うちのチョコバナナも食べて行ってくれよ!」
「オウ!サンキューネオジサン!デモワタシモウイカナキャ!」

そんなジェニファーの様子を雛見沢の住人達は物珍しそうに彼女の様子を観察していた。
「珍しいねえ、アメリカ人かのう?瞳蒼いし。」
「いやいや、あの黒髪はハーフかもしれんぞ。」
「ぬほほほほ、それにしても若くてよい体しとるの……。」
「その辺にしとけ、カミさんが睨んでおるぞ。」

そしてジェニファーは人気のない森の中に入って行く、すると彼女の目の前にオーロラのような光の壁が現われ、ジェニファーはそのまま入って行く。
「おかえりなさいませ、マリバロン様。」
オーロラの先には広い研究室のような場所が広がっており、ジェニファーを白いSFチックな装甲に身を包んだ兵隊達が出迎えた。
「はあー……カタコト喋りも疲れるわね。」
そう言ってジェニファーは着ていた服を脱ぎ捨てる、すると彼女の姿は黒いリングコスチュームのような露出の多い服に黒いマントを羽織っている姿に変化し、瞳の色が青から赤に変色していた。
「まったく、なんでこのクライシス帝国の幹部である私がこんな辺境の世界に来なきゃいけないの?ボスガンやガテゾーンにでもやらせればいいのよ。」
彼女の本当の名前は高畑ジェニファーではなくマリバロン、違う世界で地球を侵略しているクライシス帝国の四大隊長であり、ある指令を受けてこの世界にやって来ているのだ。
「それで?アイツ等の様子はどうなの?」
「は!我が兵が大分やられてしまいましたが鹵獲には成功しております。こちらへ……。」
マリバロンはクライシス帝国の一般兵士、チャップに連れられて地下室に向かう。
そして辿り着いた地下室には、様々な世界の怪人が水槽のようなものに入れられていた。
「龍騎の世界のバズスティンガー、555の世界のクロコダイルオルフェノク、キバの世界のゼブラファンガイア……うん、注文通りね。」
「洗脳も完了しております、しかし先に仲間にした魔化魍共といいクライシス皇帝は何を考えているのでしょうか?違う世界の怪人を攫って戦力にするなどと……。」
「恐らく最近になって勢力を拡大してきた大ショッカーの存在を危惧したのね、奴等他の世界の組織を吸収しているそうじゃない、私達もそうしないと取りこまれてしまうから……。」
「だからってなんでこんなライダーもいないような世界に我々が出向かなければならないのですか?」
「アナタ、計画書を読んでいないの?この世界にはね……雛見沢症候群という人に幻覚を見せて狂戦士を創り出すというウイルスがあるのよ。」
「ウイルスですか……。」
そう言ってチャップの一人が近くに置いてあった書類に目を通す、そこにはクライシス帝国が調べあげた雛見沢症候群に関する説明文が載っていた。
「大ショッカーに対抗する手段を集める為、怪魔界の古い文献の情報を集めていた際……我々は偶然にも異世界に住むリューンの民と呼ばれる者達の存在を知った。」
「この報告書によれば肉体を失って精神体になって暴走したリューンは人間に取り付いて暴れるとあります、電王の世界のイマジンに近い存在なのでしょうか?」
「そのリューンの民の生き残りがこの雛見沢にいると掴んだ我々は早速情報を集め……雛見沢症候群の存在を知ったのよ。」
「クライシス皇帝はその雛見沢症候群をどうするつもりなのですか?」
「そうね……一つはあるサンプルを回収してライダー共に対抗する兵器ができるか否かの研究、もう一つは先程捕まえた怪人達にこの村の人間を食べさせたらどうなるかの実験よ、特に魔化魍達は鬼の肉が大好物らしいからね。」
「サンプルですか……。」
そう言ってチャップは雛見沢症候群に関する資料に目を通していく、そして最後のページに少女の写真と一緒にこんな事が記されていた。



“最優先確保対象:古手梨花、リューンの民(必ず生け捕る事。)




その日の夜、マリバロンは再び変装してある仲間と共に村の中に潜入し、古手梨花との接触を図っていた。
(まったく、古手梨花の周辺を監視している奴等は何者なの?お陰で彼女に近付けないじゃない。)
そして彼女は古手神社の高台に向かう、そこで梨花を発見した。
(ようやく見つけたわ、奉納演舞の時は近付けなかったけど……ん?)
その時マリバロンは梨花のそばに先日免許証を拾ってくれた青年が居る事に気付いた。
(あいつは先日の……古手梨花の友人か?)

「良太郎、私は……!」
(とにかく接触したほうがいいわね。)
そう考えたマリバロンは空気を読まずに2人に話しかけた。
「オウ!エクスキューズミー!」
「あ、アナタはこの前免許証を落とした……。」
「オウ!アナタハセンジツノシンセツナヒト!チョウドヨカッタデス!コノチカクニビョウインハナイデショウカ?ツレガヨイツブレテシマイマシテ!」
「病院?それなら……。」
「良太郎は先に帰っているのです、ここは僕に任せるのですよ、にぱ~☆」
「え……?で、でも女の子を一人にする訳には……。」
「もーまんたいなのです、このお姉さんとお連れさんと一緒ですし……。」
「モシカシテワタシオジャマムシ?デモロリコンハハンザイ!」
「えええ!?そう言う訳じゃ……。」
「みい、ボクは子供扱いなのです、しくしく……。」
そして梨花は変装したマリバロンを連れて入江診療所がある方角に向かって行った。
「それじゃ良太郎、お休みなのです。」
「うん、お休み梨花ちゃん……。」


「――――――。」
その時マリバロンは、梨花が小さな声で何かつぶやいている事に気付いた。
「オウ?ナニカイイマシタ?」
「みい、なんでもないのです、それでお友達はどこにいるのですか?」
「エット……オウアソコデス!」
マリバロンはそう言って電柱の下を指さす、そこには先日エンジェルモートにいた山伏風の男が寝転がっていた。
「ぐう~……もう飲めねえよ……。」
「この人は確かエンジェルモートの……。」
「モウカブキサン!コンナトコロデネテイタラカゼヒクヨ!」
「ああん?何だよマリ……(ドゴッ!)きゅ!!?」
次の瞬間、マリバロンはカブキと呼ばれた男の横っ腹を思いっきり殴り、彼を昏倒させた。
「みい?今すごい音がしたのです。」
「キノセイキノセイ!ソレジャビョウインマデアンナイシテクダサイ!」
(なんなのこいつら……やっぱりこの世界は何かがおかしい……。)
梨花は変装したマリバロン達に警戒心を抱きながら、彼女達を診療所まで案内した。


~Side:羽入~

祭りの次の日、梨花は連日の奉納演舞の練習によって出た疲れから38度程の熱を出し、学校を休んで自宅で療養していた。
「あ゛ー、油断したわ……何年振りかしらねコレ……。」
(あうあう、もうすぐ入江が診察しに来るのです、それまでの辛抱なのですよ梨花。)
すると梨花の家の戸が叩かれる音が響き、彼女は気だるい体に鞭打って玄関に向かう、するとそこには普段着に身を包んだ鷹野の姿があった。
「梨花ちゃん大丈夫?迎えに来たわよー。」
「みい……鷹野ですか、入江はどうしたのですか?」
「彼ちょっと手が離せなくて代わりに私が来たわ、それじゃ車に乗って。」
そして梨花は鷹野に促されるまま彼女の車に乗り込んだ。
「わざわざありがとうなのです、でも診療所で見てもらう程熱は……。」
「気にしなくていいの、ただアナタは少し眠っていてもらうわ。」
「え……!!?」
その時、背後から何者かに抱きつかれ、梨花はその者が持っていた布の匂いを嗅がされ気を失ってしまった。
「よくやったわ、とにかく診療所まで運びましょう。」
「そう言えば入江局長はどうするのです?今回の作戦には反対だったのでは……?」
「問題ないわ、今頃彼はお茶に仕込んだ毒でこの世にいないだろうから……。」

そして梨花を乗せた鷹野の車が去って行った後、その場に残っていた羽入は大いに慌てていた。
(も……もしかして今までの世界で梨花を襲っていた犯人って鷹野だったのですか!?とにかく誰か呼んで助けてもらわないと……!)
すると鷹野達と入れ替わりで今度は変装したマリバロン達がやって来た。
(あう?昨日の観光客……なんでここに?)
「リカチャーン!キノウノオレイニキマシター……ッテアラ?」
そしてマリバロンは家に梨花がいない事に気付き、辺りを見回した後急に態度を豹変させた。
「しまった……!何者かに先を越された!?監視している者もいなくなっている……!」
(な、なんですかこの人、急に態度が……!?)
「とにかく本部に戻って対策を立てなければ!」
そう言ってマリバロンは背後に現れたオーロラの中に入ってその場から消え去って行った。
(消えた!?どういう事なのですか……!?)
羽入はどうしていいかわからず、その場でぐるぐると飛び回っていた。

数時間後、空もすっかり暗くなっていたが羽入は梨花を探しに学校にやって来ていた。
(あうあう……すっかり真っ暗なのです、早く梨花と鷹野を見付けないと……。)
そして校舎に入った羽入はそこで知恵と小此木造園の作業員達を発見する。
(あう、知恵先生なのです、残業でしょうか……?)


「あら皆さん……こんな時間にどうしたんですか?」
「いえいえ、実は裏の方に白アリの巣が見つかったようで……それの排除に来ました。」
「え?そんな話聞いていませんけど……。」
不思議がる知恵をよそに、作業員達は何かのガスが入ったボンベを校舎の中に入れて行った。

キイイイイイン……。

その時、この場にいた全員の耳にガラスを引っ掻いたような音が入って来た。
「ん?なんだこの耳鳴り?」
「お前にも聞こえたのか?」
その時、作業員の一人が近くにあった窓ガラスに得体のしれない化け物の姿が映り込んだのを目撃した。
「お、おい!今窓に変な生き物が……!」
「はあ?何言っているんだお前?」
その時、怪物を目撃した作業員は窓から現れた得体のしれない怪物に首を捕まれ、そのまま窓の中に引きずり込まれてしまった。
「うっ……うわああああああ!!!!!」
「な、なんだコレは!?雲雀5がやられた!!」
「ぜ、全員銃を持て!次がくるぞ!」
そしてリーダー格の男の指示に従い、作業服を着た男達は全員隠し持っていた銃を構えた。
「ええ!!?アナタ達何を……!!?」
「うるさい!黙っていろ!」
銃に驚く知恵を黙らせ男たちは謎の怪物の奇襲に備える、その時……。

ガバッ!

「ぎゃあああ!!!」
「わああああ!!!」
窓際にいた2人が瞬く間にガラスの中に引きずり込まれた。
「ど、どうなっているんだ!!?窓は開いてないぞ!まるで引き摺りこまれたみたいに……!」
「ば、バカ言うな!そんな事ある訳……うっ!?」
その時、作業員の一人の首筋に何か牙のような物が刺さり、男はそのまま床に倒れてしまった。
「お、おいどうし……ひい!!?」
倒れた男に話しかけようとした作業員は思わず尻もちをついた、男は体をガラスのように変質させて絶命していたのだ。
「な、なんなんだよこれええええ!!!?」
「い、いやだ!こんな所で死にたくない!」
「きっとオヤシロ様が俺達に天罰を加えに来たんだ!うわああああ!!!!」
心を恐怖に支配された男たちは知恵をその場に置いてちりじりに逃げ出してしまった。
「ま、まって……!」
知恵は慌てて男たちを追おうとしたが……。
「ぎゃああああああ!!!!」
「うわああああああ!!!!」
男たちの悲鳴を聞いてその場にへたりこんでしまった。
「い、一体なにが……。」

ギシッ……ギシッ……

その時知恵は、何者かがこちらに近付いてきているのに気付いた。
「だ、だれ!?造園の方!?」
知恵は足音が聞こえた方角を見る、そこにはチワワを抱いた黒人の大男が知恵の方を向いて佇んでいた。
「だ、誰ですかアナタ!?ここは危ないですよ!」
「……。」
大男は何も言わずに知恵に向かって右の掌をかざす、するとその掌から触手のような物が生えてきた。
「ひっ!!?」
そして触手は知恵の口に入りこみ、そのまま彼女の心臓を蒼い炎で消滅させてしまった。
「あぐっ……!」
知恵はその場で倒れ、黒人は何も言わずにその場から立ち去って行った。

数分後、警備員風の男が作業員の一人の首根っこを掴んで知恵が倒れている場所にやって来た。
「ひいいいいい!!何なんだよお前ら!?」
「俺?三条。」
するとそこに変装を解いたマリバロンが現われ、怯える作業員を問い詰めた。
「貴様……確か古手梨花の自宅を監視していた者だな、言え……彼女は今どこにいる?」
「な、なんだよお前ら!?そんな事聞いてどうすんだよ!?」
「質問しているのはこちらだ!」
そう言ってマリバロンは光の鞭を床に振り降ろした。
「ひ、ひいいい!俺達はただ鷹野三佐に指示されただけだ!古手梨花は神社にいる!」
「神社……?どういう事だ?」
そしてマリバロンはその作業員から鷹野や小此木造園の作業員達が山狗という政府の秘密組織が派遣した部隊だという事を聞き出した、彼の話によると鷹野は自分の死を偽装し口封じのため入江と富竹を殺し、さらに雛見沢症候群の女王感染者である梨花を殺して感染している村人達を発症させようと目論んでいるのだ。
「何故彼女はそのような事を?」
「さ、さあ……?なんだかおじいちゃんだとか神になるだとか口走っているから何を考えているか解らないんだよ!R(梨花の事)が死んだら村人を治安の為に全員毒ガスで殺さなきゃいけないのに……。」
「ほほう、人間のくせに残酷だな貴様の上官は……これは急いだ方がいいな。」


(まさか鷹野がそんな事を企んでいたなんて……それにしてもこの人達は何故梨花を狙って……?)
一部始終を見ていた羽入はマリバロンの目的を探る為、古手神社に向かう彼女達の後を追いかけて行った。

そして一時間後、古手神社にやって来たマリバロン達はそこで黒い軍服に身を包んだ鷹野と山狗の別働隊に出くわした。
「あら……!?誰なのアナタ達!?見張りの兵達は何をしていたの!?」
するとマリバロンの背後から苦しそうにしている山狗の隊員二人が現われた。
「さ、三佐……逃げ……!」
「ぐあああああ……!」
そして二人は全身が砂になって崩れていった……。
「な、なんなの今のは……!」
「貴様……古手梨花をどこにやった?こちらに引き渡しさえすれば命は取らないでやる。」
「梨花ちゃん?うふふ……彼女ならほら?」
そう言って鷹野は自分の足もとを見るように促す、そこには内臓を散乱させて絶命している梨花の姿があった。
「き、貴様なんて事を!これでは我々の計画が……!」
「ふふん!アナタが何者か知らないけど生かしては帰せないわね……小此木!」
鷹野は傍にいた山狗の隊長……小此木にマリバロンを射殺するよう命じる。その様子に気付いたマリバロンは可笑しそうに高笑いをした。
「ふ……はははははは!!!地球人のくせにこの私に逆らうのか!?コレは傑作だ……!」
(なんだあ?この女もウチの姫様同様イカレているのか?)
「な、何を言っているのアナタ……!?」
すると突如、マリバロンの頭上から浴衣を着た男女が降りてきた。
「マリバロン、どうするのだ?」
「こいつら全部、食わせていいのかえ?」
(なんだこいつら……声が……!?)
小此木はその時、突如現れた男が女の声を、女の方は男の声を出している事に気味の悪さを感じていた。
「そうね……こいつらは我々の計画の邪魔をした……なら遠慮しなくていい。」

ゴゴゴゴゴ……!

すると突如地響きが鳴り響き、山狗達は何事かと銃口を色んな方向に向けていた、その時……。

「グルアアアア!!!」

突如地面から大きな大蛇のような化け物が出現し、山狗の一人に襲いかかった。
「な、なんだコイツ!?うわああああ!!!」
「お、鳳3がやられた!応戦しろ!」
「な、何なんだよこいつら!?まさか雲雀との連絡がとれなくなったのは……!!」
突然の出現し仲間を襲った怪物に山狗の隊員達は持っていた銃で反撃する、しかし銃弾が効いている様子はなく、隊員達は怪物に次々と食べられていった。
「う、うわああああ!!!!」
ふと、隊員の一人が逃げ出そうとマリバロンを横切る、すると着物を着た男女は鋭く鋭利な自分の爪を使って隊員を斬り殺してしまった。
「逃げるな……貴様達はオロチ様の大事な餌なのだから。」
「ふふふ……流石は血狂魔党の魔化魍ね、手際がいいわ。」

「な、何なのよこいつら……!私が神になるのを邪魔するの!?」
「こんなの聞いてねえぞ!何だってんだよ!」
山狗達が次々とオロチと呼ばれた怪物に食べられていく中、鷹野は小此木に守られながら隅の方で震えていた。
「おら!こいつを喰らえ!」
小此木は腰に付けていた手榴弾のピンを抜きそれをオロチに向かって投げる、そしてパンッ!という破裂音と共に手榴弾は爆発したが、オロチに効いている様子はなかった。
「どんだけ頑丈なんだよあの化け物は!うわああああ!!!」
そして目を付けられた小此木はそのままオロチに丸呑みにされてしまった。
「あ……あああ……!」
そしてその場で生きているのは鷹野だけになっていた。
「さあ、残りは貴様だけになったな。」
「い……いやよ!私は死にたくない!私は……神になって……!」
「神?あはははは!何を言い出すのかと思えば……人間が神になれる訳なかろう!この愚か者が!」
そう言ってマリバロンは鷹野に向かって光の鞭をぶつける。
「ああ!?」
「まったく、このままではジャーク将軍に失望されてしまうではないか、この罪は大きい……やれ!」
「グルアアアア!!!!」
マリバロンの号令に応じてオロチは鷹野に噛みき、空中で彼女をブンブンと振り回した。
「ぎゃああああああ!!!!」
そして鷹野の体は食いちぎられ、彼女の上半身は石畳に叩きつけられた。その光景を見届けたマリバロンは魔化魍達に次の指示を出す。
「まったく……ハタ迷惑な女だ、とにかく貴様等はリューンの捜索に向かえ、この村のどこかにいる筈だ。私は怪人達と共にこの村の人間達を回収する。」
「了解だ……。」
そう言って浴衣の男女はオロチを地中に潜らせ、マリバロンと共にオーロラの中に入ってその場を去って行った。

(リューンの民……!?どうしてあの人達ボクの事を……!?)
自身の危機を感じた羽入は梨花の遺体を何度も見ながらその場を去っていた。
(待っていてください梨花……後でちゃんと生き返らせるのです……!)

そして羽入はマリバロン達の行方を追って森の中にやって来ていた。
(あうあうあう……どうやらこの辺にはいないみたいなのです……あれ?)
その時羽入は、森の中を疾走するコハナ、ウラタロス、キンタロスを発見する。
(あれはコハナ達なのです、どうしたのでしょうか?)


「ハナさん!今何時!」
「えっと……20時19分!」
「あかん!もう時間が無い!この次の機会を逃したらもう逃げ切れへんで!」
「どこかに扉……ん!?」
するとコハナ達は広大なゴミ収集所に辿り着いた。
「なんやココ……雛見沢にこんな所があったんかいな?」
「あ!みんなアレ見て!」
皆は一斉にコハナが指をさす方向を見る、そこにはスクラップになりかけた小型バスが廃棄されていた。
「しめた!あそこからデンライナーに乗り込むで!」
(デンライナー?何なんでしょう……?)
デンライナーという単語に興味を持った羽入はバスの元に向かう彼等の背後にぴったりついていった。

ぺたぺたぺた

「ん?なんか変な足音聞こえない?」
「私には聞こえないけど……。」
そしてコハナ達はバスの元に辿り着き、20時20分20秒になったのを確認してスライド式の扉を開け放ち、デンライナーが停まっている異空間に入って行った。


「ほう、逃げおおせたか……。」
その様子を、先日エンジェルモートに現れた山伏風の男が見ていた。
「ま、この世界での目的は達成されたんじゃ、俺は戻るかのう。」
そして男は背後に現れたオーロラの中に入りその場から去って行った。


それから数時間後、コハナ達に付いてデンライナーに乗り込んだ羽入は良太郎達や圭一達のこれまでの経緯を洗いざらい説明した。
「それでテメエはそのままデンライナーに乗り込んじまった訳か。」
「そーなのです、それで降りられなくなって途方に暮れていた所、梨花そっくりな子に発見され仕方なく出てきたという訳です。」
「羽入ちゃーん、パフェ食べる?」
「あ、頂くですー。」
羽入は嬉しそうにナオミが運んできたパフェをガツガツ食べだした。
「おいナオミ、俺の分は?」
「ごめ~ん!材料がもう無くてそれで終わりです~!」
「んだとう!?おい角女!そいつを俺によこせ!」
そう言ってモモタロスは羽入が食べていたパフェを奪った。
「あー!?何をするのですか!ボクが食べていたのにー!!」
「うっせー!お前の物は俺の物!俺の物は俺の物だ!」
「なんですかその理屈は!?神であるボクに何たる無礼をー!」
そしてモモタロスと羽入はパフェの奪い合いで喧嘩を起こす、その光景を他のイマジンや圭一達部活メンバーは呆れた様子で見つめていた。
「あの子すごいね、センパイと食い意地で張り合っている……。」
「同レベルって訳だね!」
「あんなの……あんなのレナが信じていたオヤシロ様じゃ……。」
すると皆がいる車両にある準備を終えたフレデリカがやって来た。
「皆……待たせたわね、それじゃこっちに来てくれるかしら?」
「ワタクシ達に見せたい物ってなんですの梨花……じゃなかったベルンさん?」
「なんか紛らわしいな……とりあえず君の呼び方はベルンちゃんでいいか?」
「ふふふ……好きにするといいわ。」

そしてフレデリカは良太郎達を隣の車両に案内する、するとそこは宝石の欠片のような物が浮遊した宇宙のような空間が広がっていた。
「うわー!!何これすごい!ねえどうやったの!!?」
「簡単な事よ、デンライナーとこの上位世界を繋げたの。」
「えっと……つまりここは異空間って訳なんやな。」
「へえ、綺麗な石ですねー。」
そう言って詩音が近くにあった欠片を手にする、すると欠片に雛見沢での詩音自身の姿が映し出されていた。
「な、なんですかコレは……!?」
「それは“綿流し編”のカケラね、皆もその辺にある欠片を触ってみなさい、面白い物が見られるわよ。」
圭一達はフレデリカの言葉に頷くと、それぞれ近くにあった欠片を手にした。その間にコハナはフレデリカに質問する。
「ベルンさん……その欠片って一体何なんですか?」
「そうね……平行世界の出来事を映し出すモニターみたいなものかしら、アナタ達ライダー達の物もあるわよ。」
そう言ってフレデリカはある欠片を良太郎達に見せる、そこには変身した良太郎の他に、コウモリのような仮面を付けたライダーが映し出されていた。
「何これ……?僕達こんな人知らないよ?」
「これはアナタ達の現在から分離した“クライマックス刑事”の欠片、他にも沢山あるわよ……桜井侑斗が野上愛理の元を離れなかったカケラ、良太郎がデンライナーと出会わなかったカケラ、牙王やカイによって時間が破壊されてしまったカケラ……。」
「はあ!?なんだそりゃ!?そんな事ある訳ねえだろ!牙王やカイの野望は俺達がちゃんと……!」
その時、ウラタロスが何かに気付いたのか手をポンと叩いた。
「成程……このカケラっていうのは平行世界を映し出しているんだね。」
「ふふふ……その通りよ。」
「じゃあ今羽入ちゃん達が見ているのも……?」
そう言ってリュウタロスはカケラを覗いている圭一達を見る。

「お……俺がレナと魅音を……!!?」
「レナがリナさんと鉄平を……そして皆を人質にして立てこもって……。」
「何これ!?村の人達がガス災害で……!?」
「ワタクシが圭一さんを橋から突き落としていますわ……。」
「そうか……この中の私は皆を疑って……。」

「なんか神妙な面持ちだね……。」
「あまり詮索しない方がいいわよ、人には親しい仲の人間にだって言いたくない事があるのよ、そうよね魅音?」
「う、うん……。」

「フレデリカ!」
その時、羽入が欠片を三つ持ってフレデリカに詰め寄った。
「うん?どうしたの羽入?」
「どうしたもこうしたもないのです!このカケラは一体何なのですか!?」
そう言って羽入は三つのカケラをフレデリカ達に見せる、そこには……。
「なんだこりゃ?村の奴らが沙都子の家に集まっているな……。」
「こっちは梨花ちゃんが沙都子ちゃんを殴り倒しているね、喧嘩でもしているの?」
「あれ?このカケラには羽入ちゃんも映っているね、制服姿もかわいいねえ~♪」
「このカケラがどうかしたんか羽入?」
「どうもこうもないのです!ボクはこんなカケラ知らないのです!一体これは何なのですか!?」
「これは皆殺しのカケラ……罪滅ぼしで一つの施錠を打ち破った梨花が、雛見沢大災害を引き起こす黒幕の正体に迫るけど、結局は仲間と共に殺されてしまう世界、こっちは祭囃しのカケラ、皆殺し編で皆と共に運命に立ち向かうと決めた羽入が、人間として黒幕の鷹野に挑み、そして勝利して昭和58年6月を超える世界、そして賽殺しのカケラ……昭和58年6月を超えた梨花が交通事故に遭い、誰にも罪が無い世界に飛ばされる世界……。」
「昭和58年を超えたって……そんな筈ないのです!現にボク達は今だに越えられずに……!」
「でも……明らかにこのカケラでしか体験してない事柄を梨花が口走っていたのを、アナタは聞いている筈よ。」
「あ……!」
その時羽入はフレデリカに言われて、梨花が皆殺し編で秘密を打ち明けて協力してもらったばかりに仲間や死ななくていい人間が全員鷹野に殺されたのを覚えているような発言をしていた事を思い出した。
「ど、どうして……僕達はこんなこと覚えていないですよ、というか何故超えた筈の昭和58年の6月をまた体験しているのですか!!?」
「多分……こいつとアナタ自身が原因ね。」
そう言ってフレデリカはあるカケラを良太郎達に見せる、そこには頭に何枚もの黒いプレートを刺し緑色の瞳をしたライダーが映っていた。
「数多の世界のライダーを滅ぼそうとする悪の大組織大ショッカーや怪魔界のクライシス帝国……こいつらが数多なる世界に侵略行為を行ったせいで世界の境界線のバランスが不安定になっているの、そしてそこにアナタ達が行った100年にも及ぶ時空移動が相乗してライダー達の世界だけじゃなく、世界と世界の境界線があやふやになってしまったよ。そのせいであなた達は昭和58年の世界に再び囚われてしまったの、無意識のうちにね。」
「では……デンライナーは時間を移動したのではなく、ひぐらしの世界に迷い込んだ……というわけですね?」
オーナーの質問に、フレデリカはコクンと頷く、そして良太郎がすがるように彼女に質問した。
「教えてベルンちゃん、どうやったらボクは梨花ちゃんを救えるの?過去を大幅に変えるのはいけない事だし……。」
「そうですね……今までの小規模なものならともかく人の生き死にが関係してくると許容できないですね~!」
「それなら……デンライナーで時間を移動するのではなく、羽入の力を使ってまだ梨花死んでいない頃の平行世界に移動するというのはどう?そしてもう一度このひぐらしの世界のカケラを集めてイシにするの、そうすればもう梨花は昭和58年6月に囚われる事はないわ。」
「どうする良太郎?正直このチビが言っている事は半分も解らねえが……。」
モモタロスの質問に、良太郎は力強く頷いた。
「やるよ……!僕は今度こそ梨花ちゃんを助けるんだ……!」
「待ってくれ!」
その時、それぞれカケラの中を覗いていた圭一達が良太郎達に話しかける。
「もしよかったら俺達にも手伝わせてくれ……!」
「私達、梨花ちゃんがこんなにも苦しんでいるなんて気付いてあげられなかった……。」
「それどころか迷惑までかけて……これじゃ仲間として申し訳ないよ!」
「決して皆さんの足手まといにはなりませんわ!」
「これのお陰で悟史君が今なにをしているか解りましたしね……借りは返しますよ。」
圭一達の願いに、良太郎はコクンと頷いた。
「そうだね……圭一君達にも協力してもらった方がいいかも、雛見沢で戦闘になったら地形に詳しい人が居た方がいいし……。」
「戦闘……?良太郎さんって何か格闘技でも習っていますの?」
良太郎の変身能力の事を知らない沙都子達は首を傾げる、それを見ていたモモタロス達はにやりと笑い、オーナーにある提案をする。
「なあオーナー、幽霊列車の時の人数分のベルトとチケット……こいつらに渡しておいた方がいいんじゃねえか?いざとなったら……。」
「致し方ありません、ただし沙都子さんは小さすぎるので~……。」
そう言ってオーナーはどこから出したか解らないトランクを取り出し、その中に入っていたベルトとチケット4セット分を、圭一、レナ、魅音、詩音にそれぞれ渡す。
「何すかコレ?ズボンのベルトにしては何かゴテゴテしてるような……。」
「もしピンチになった時、ベルトを腰に捲いてチケットを中心に翳してください、銃弾ぐらいなら防げますから~。」
「ふーん、でもこんな大きいベルト持ち歩くのはきついねえ、確実にかさばるよ。」
魅音の質問に、ナオミが満面の笑みで答えた。
「大丈夫ですよ~!別に持ち歩かなくても戦闘になったらいつの間にか手に収まっていますから。」
「なんだそりゃ。」

「それで良太郎?鷹野さんとクライシスって奴等から梨花ちゃんを守るプラン、何か思い付いた?」
ウラタロスの質問に、良太郎はあるカケラを手に持ちながら答える。
「うん、デンライナーに匿うって手もあるけど、そのうちクライシス帝国に見付かっちゃうだろうから……やっぱり叩いておいたほうがいいよね……。」
「まあそうなるわな、でも一気に二つの勢力と戦うのはキツイでえ?」
「うん、それで僕考えたんだ……コレを見て。」
そう言って良太郎は皆に手に持っていたカケラを見せる、そこには幼き日の鷹野が祖父の研究を手伝っている様子が映し出されていた。
「羽入ちゃん……君の力でどれだけの時間を遡れるの?」
「あう、最近力が落ちているのでせいぜい5、6年でしょうか……。」
「そっか、それじゃしょうがない……五年前に戻ろう。」
「へえ?何かプランでもあるの良太郎?」
ウラタロスの質問に、良太郎は自身満々と言った様子で答える。

「うん……僕達で祟りを未然に防ぐんだ、1年目から……5年目までね。」






今回はここまでです。
次回からは新シリーズ、皆が梨花を救うために惨劇に挑みます、オリジナルライダーも出るかも?

因みにマリバロンが変装した姿の時の名前であるジェニファー高畑は、仮面ライダーブラックRXの日本版とアメリカリメイク版でマリバロンを演じた女優さんの名前から取りました。

羽入の設定はDS四巻に収録されている言祝し編を参考にさせていただきました。結構イマジンっぽかったんですね羽入って……まあ言祝し編は公式かどうかあやふやらしいですが。



[19763] 第2章 第1話「約束」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:94eaebd0
Date: 2010/07/08 00:28
昭和54年6月……雛見沢ダム建設現場、そこでは今地元住民がダム建設を進める政府に対して激しい反対運動を行っていた。
「出てこいやこら政府の犬があ!!」
「ワシらから税金しぼりとっといてこの仕打ちか!おうなんとか言わんか!」
殺気立つ住民達を、警備にあたっていた警官達は怯えながらも必死に警護にあたっていた。

そしてその光景を、木陰から良太郎とモモタロスが観察していた。
「うえ~!なんだアイツ等?めちゃくちゃ怒っているじゃねえか。」
「自分達の故郷が無くなっちゃうかもしれないからね……必死になるのもわかるよ、とにかく僕達は目的の場所に移動しよう。」
そう言って良太郎とモモタロスは人目につかないよう身を隠しながらある場所に移動した……。


その日の夜、ダム建設の作業員達が寝泊まりしている小屋にやってきた。
「じゃあみんな、僕が言った通りにお願いね。」
「おっけー!任せてよ!」
そう言ってモモタロス達イマジンは小屋の中に入って行った、そして数十分後……。
「うわああああ!!!オヤシロ様だー!」
「に!逃げろー!」
数人の作業員達が何かに怯えた様子で小屋の中から飛び出してどこかに行ってしまった。
その様子を物陰で覗う良太郎、するとそこに一仕事を終えたモモタロス達が戻ってきた。
「へっへっへ!作戦は大成功だぜ!」
「あの人達僕等の姿を見て逃げ出しちゃったよ!でも本当によかったの?あの人達を追い出して……?」
「うん、あの人達を追い出せば現場監督さんは殺されない筈だから……とにかくデンライナーに戻ろう。」
そう言って良太郎はイマジン達と共にデンライナーへ戻って行った……。

「あ、お帰りなさい良太郎―。」
良太郎がデンライナーに戻ると、そこではコハナが部活メンバーや羽入達と混じってババ抜きをしていた。
「こ、コハナちゃんと羽入ちゃん……以外と強いね……。」
「はう~!このままじゃレナが最下位だよー!」
「ふっふっふ……伊達に100年間後ろから観察していないのです!皆の癖は一目了然なのです!」
「何何!?僕も混ぜてー!」
その時、オーナーと一緒にチャーハンで棒倒しに興じていたフレデリカが良太郎に質問してきた。
「それで……?作戦のほうは上手くいったの?」
「うん、事件を起こす筈だった作業員の人達はモモタロス達が脅かして追い出してくれた……これなら現場監督のおじさんは殺されずに済む筈だよ。」
「つまり……一年目の祟りは起きねえって訳だ!」
モモタロスはそう言って威張る様に胸を張る、良太郎達は一番初めの祟りである昭和54年に起こる建設現場の監督の殺人事件を、主犯格達である建設作業員達を一時的に追い出すことでそれを未然に防いだのだ、それを見てフレデリカは愉快そうにほほ笑む。
「でも考えたわね、4年分の祟りを未然に防いで鷹野の野望の根底を削除しようとするなんて……これなら祟りによる疑心暗鬼を起こす者が現われる確率はずっと低くなる。」
「それに五年目の祟りの必要性と価値をグンと減らす事ができますねえ~。」
その時、フレデリカがチャーハンにスプーンを差し込んだ時、チャーハンに刺さっていた旗がパタンと倒れた。
「むっふっふ~!これで私の7連勝ですね~!」
「くっ!次こそは……!」
そう言ってフレデリカは悔しそうに地団駄を踏んだ、そんな彼女を尻目に羽入が良太郎に質問する。
「でも良太郎、どうして鷹野の悪事を止めようとするのですか?正直言ってボクはあの人が嫌いです、あの人のせいで梨花が……。」
「……僕も彼女が梨花ちゃん達にしてきた事は許せないよ、でも彼女も結局は東京って組織の権力争いに利用されているんだ、それなら何もさせないほうが僕はいいと思う。」
「彼女に罪を犯させないというのですかアナタは……。」
「その方が皆幸せになれるだろうしね、それじゃオーナー、次は一年後の6月に行きましょうか。」
「了解しました~。」


昭和55年6月の綿流しのお祭りの前日の夜、良太郎とリュウタロスは展望台がある白川公園という場所にやって来た。
「ここで沙都子ちゃんの両親が……。」
良太郎は昭和55年の祟りが詳細に記されていたカケラを握りしめる。二年目の祟りではここにドライブに出かけた沙都子の両親が展望台から落下し二人ともこの世を去ってしまう……良太郎はそれを未然に防ごうとしたのだ。
「それじゃリュウタロス、お願いね。」
「うん!任せてよ……それ!」
そう言ってリュウタロスは展望台にある柵に“立ち入り禁止”と書かれたテープをゴールテープのように張り付けて行く。
「これなら柵に近付く人はいないね……。」
「あとはカメちゃんたちが“保険”を掛け終わるのを待つだけだね!」


同時刻、モモタロスとウラタロスとキンタロスは昭和55年の沙都子の自宅にやって来ていた。
「それじゃ先輩、キンちゃん、見張りのほうお願いね。」
「ちゃっちゃと終わらせろよ~?」
「なんか悪い事しているみたいやのう。」
そしてウラタロスは沙都子の義父が所有しているマイカーに近付き、それに装着しているタイヤに愛用の槍の刃で傷を入れてパンクさせる。
「よし、これなら明日ドライブに行けないね。とっととズラかるよ!」
「よっしゃ!」
「静かにな……!」
ミッションを終えたモモタロス達は家にいる北条一家に気付かれないようにデンライナーに戻って行った。
「これで沙都子の両親が死ぬ事はなくなるんやな。」
「それだけじゃない、四年目の沙都子ちゃんのお兄ちゃんが叔母さんを殺して失踪することもなくなる筈だよ、両親が生きているからあの鉄平とその妻に引き取られて苛められることがないからね。」
「そんじゃ後は……梨花の両親だな。」


数時間後、デンライナーの居残り組は昭和56年の世界に出かけた良太郎やイマジン達を待ちながらリュウタロスが持ちこんでいた輪投げセットで部活をしていた、因みにレナは先程のババ抜きで最下位になり、罰ゲームとしてナオミと同じデンライナーの乗務員の制服を着てウエイトレスをしていた。
「わー♪レナちゃん似合いますねー!」
「えへへ……そうですか?」
「今度店長にエンジェルモートの新しい制服のデザインとして提出してみよっかな?」
「おーい詩音!次アンタの番だよー!」
するとそこに目的を達成した良太郎とキンタロスを除くイマジン達が帰って来た。
「みんなー、ただいまー。」
「あ、おかえり良太郎、どうだった昭和56年は?」
「うーん……それがちょっと妙な事になっちゃって……。」
すると良太郎達の後ろから、ロープでグルグル巻きにされた大人を2人肩に担いだキンタロスがやって来た。
「むぐー!むぐー!むぐー!」
「ふぐぐぐぐぐー!!!」
「キンタロス?その人達誰?」
その時、魅音だけがその二人の正体に気付き慌ててキンタロスの元に駆け寄る。
「ちょっ!?ちょっと!?梨花ちゃんのお父さんとお母さんじゃない!」
「あら本当ですわ!なんで連れて来てしまいましたの!!?」
彼等と会った事がある魅音と沙都子は目を丸くして良太郎に詰め寄った。
「だ、だってこの人達、梨花ちゃんが風邪をひいたときに鷹野さんに詰め寄って殺されそうになっていたから……こうでもしなかったら守れなかったんだよ。」
「と、とりあえず縄解いてあげよう、このままじゃかわいそうだよ。」
そう言ってレナは古手夫婦を縛るロープを解く。
「ぷはぁ!だ、誰なのですかアナタ達は!!?人をこんな所に連れて来て……!」
「あれ!?そこにいるのは園崎さんと北条さん!?なんでここに!?」
「あ、あの……。」
どう答えていいか解らず口篭る魅音、そんな彼女に対し羽入が肩をポンと叩く。
「魅音……ここは私に任せてください。」
「わかった、お願いね羽入。」

そして羽入は古手夫妻にこれまでの経緯や自分の正体、そして梨花のこれから襲い掛かるかもしれない運命について説明した。
「そんな……梨花が殺されるなんて……!」
「ほ、本当に君がオヤシロ様だというのか!?」
「信じられぬと言うのなら証拠を見せましょうか……?」
そう言って羽入は右手からなんでも切り裂けそうな鋭利な爪を一瞬の内に生やした。
「うおっ!?おめえそんな特技も持っていたのか!?」
「先輩驚きすぎ……。」
「た、確かに古い伝承にあるオヤシロ様と同じ力を持っているな君は……しかし……。」
梨花の父はいまいち納得できていない様子だったが、母の方は何か縋るような目で良太郎を見てきた。
「あ、あの!梨花が殺されるって本当なんですか……!?」
「恐らく……でも安心してください、僕達が絶対彼女を助け出してみせますから!」
良太郎の真剣な眼差しを見て、梨花の母は不安そうにしながらも彼の目をしっかりと見据えた。
「ウソは……言っているようには見えませんね、わかりました……アナタ達を信じます。」
「そうだな……モモタロス君達を見たら信じるなという方が無理だ……。」
「あ、ありがとうございます!」

そして梨花の両親を別の車両に移した後、良太郎達は今後の事を話し合っていた。
「とにかく梨花ちゃんの両親は鷹野さんとクライシスの件が片付くまでデンライナーで匿おう、人質にされたらいけないもんね。」
「そうしたほうがよろしいでしょう~、私とナオミ君が責任もって保護させていただきます~。」
「それじゃボクは梨花の元に行くのです、また後で会おうなのです。」
羽入はそう言い残し圭一達と共にスーッとその場から霧のように消えてしまった。
「よし、僕たちも行こう……!昭和58年の6月に!」


昭和58年6月12日、綿流しの祭りの一週間前、梨花は布団の中で目を覚ました。
「梨花、目を覚ましたのですか?」
「羽入……ということは前回もダメだったのね。」
そう言って梨花は前世での記憶を必死で思い出す。
「確かあの時は良太郎って奴が来て、鉄平から沙都子を救い出したのよね……?」
「はい、でもそのあと梨花は殺されてしまったのです、あう……。」
「そう……でも少し希望が見えてきたわ、次こそは……!」
梨花はふと、羽入の格好を見て違和感を持ち彼女に質問する。
「羽入……?どうしたのその格好?いつもの巫女服は?」
羽入の格好はいつのも腋全開の巫女服ではなく、紫色のベストの下にワイシャツ、そして制服のズボンといった感じの格好になっていた。
「あうあう!実は今回もボクは実体化して梨花をサポートするのです、あう♪」
「は?今回“も”って……?」
「梨花ー!朝ですわよー!」
するとそこに梨花を起こしに来た沙都子がやって来た。
「あ、沙都子おはようなのです……ん?」
その時梨花は、自身が暮らしていた家ではなく沙都子の実家の北条家にいる事に気がついた。
「みい?どうしてボクは沙都子の家に暮らしているのですか?」
「なに寝ぼけたこと言っておりますの?早く下に降りて朝ごはん食べてしまいましょう。」

そして梨花は沙都子と羽入と共に下に降り、そこで信じられないものを目にする。
「あ……梨花ちゃん、羽入ちゃんおはよう。」
「おおう、昨日はよく眠れたか?」
「はい、今日の朝ごはんは目玉焼きよー。」
居間にはなんと沙都子の兄の悟史、そして彼らの両親がちゃぶ台を囲って座っていた。

(は、羽入!?これは一体どういうことなの!?)
普通なら昭和58年の世界にはいないはずの人間が何食わぬ顔で存在している事に疑問をもった梨花は、隣にいた羽入に小声で問い詰めた。
(あうあう……この世界は一年目から四年目の祟りが起きなかった世界なのです、だから悟史も沙都子の両親も、ダム建設現場の監督も生きているのですよ、でも梨花の両親は行方不明なので梨花は沙都子のご両親に引き取られたのです。)
羽入は梨花が両親(とくに母親)とあまり仲が良くないのを知っていたので、事態が落ち着くまでは梨花の両親が生きている事実を伏せておこうと考えていた。
(う、嘘……!?)
梨花は信じられないといった様子で悟史の顔を見る、するとその様子を見ていた沙都子が梨花に話しかける。
「梨花、羽入さん、早く朝ごはんを食べてしまいましょう?今日は部活メンバーの皆で興宮のおもちゃ屋に行く約束がありましてよ。」
「沙都子は友達が沢山いるのう、ワシのせいで村の中で友達ができないかもと心配しとったんじゃが……ワシはうれしいぞ!」
「車には気をつけるのよ?最近小学生が交通事故にあう事件が多いみたいだから……。」
「大丈夫だよ、僕も一緒について行くからさ。」
「そういうわけなのです、梨花……早く朝食を済ませてしまいましょう。」
「う、うん……。」
梨花はまだ納得できていなかったが、とりあえず食事をとるためちゃぶ台の前に座るのだった……。

それから二時間後、梨花、沙都子、羽入、そして悟史は自転車に乗って圭一達の待つ興宮のおもちゃ屋にやって来た。そしてそこで梨花は……驚くべき光景を目にする。
「くらえ!俺の必殺技!昭和58年バージョン!」

ドコーン!!

「のわあああ!なんちゅう技使うんだおまえはー!?」
「わーい!次は僕の番ー!」
キグルミを着たイマジンたちが圭一達と共に店先でメンコ遊びに興じていたのだ。
「この世界にもいたのね、あいつら……。」
「あ、梨花ちゃん沙都子ちゃん、おはよー。」
すると梨花達の元に良太郎とコハナ、そして詩音がやってくる。
「もう悟史君、ワイシャツの襟が曲がっていますよ。」
「あ……ありがとう詩音。」
そう言って詩音は悟史のワイシャツの襟を正し、悟史のほうは照れ臭そうに笑った。
その様子を見ていたコハナは、隣にいた沙都子に小声で話しかける。
(なんだか詩音さん、とっても嬉しそうだね……。)
(当然ですわ、詩音さんはにーにーの事がとっても好きなのですもの、おかげでいつぞやの世界ではエライ目に遭いましたが……。)
沙都子は綿流しや目明しの世界で詩音から拷問を受けて殺された事を思い出して溜息をつく、それでも仲のよさそうな悟史と詩音を見て嬉しそうにほほ笑んだ。
(でもワタクシも嬉しいですわ、大好きなお二人がああやって仲良くしているんですもの……妹として祝福してあげませんと。)
(そうだね……。)
ふと、良太郎は何か考え事をしている梨花の肩をポンと叩く。
「梨花ちゃん……羽入ちゃんと一緒にこっちに来てくれないかい?話しておきたいことがあるんだ。」
「みい?わかったのです……。」
「あうあうー。」

そして三人は店の中に入り、人気のない商品棚の奥のほうである話をしていた。
「ボクが狙われている……!?どういうことなのですか!?」
梨花は良太郎から突拍子もない話を聞かされ、目を大きく見開いた。
「梨花ちゃん……君って雛見沢症候群の女王感染者なんだってね?羽入ちゃんから聞いたよ。」
「あ、あなたまさか羽入の正体を……!?」
「あうあう、良太郎はボクの事は知っているのです、彼もボク達と同じで特殊な人間ですから……。」
「な、何!?それってどういうこと!!?」
訳のわからない様子の梨花に、良太郎と羽入はこれまでの経緯を丁寧に説明し、彼女に納得させる。
「じゃ、じゃあ良太郎って別の世界からやって来たっていうの……?」
「モモタロス達も実は人間じゃなくてイマジンっていう怪人なんだ、今度見せてあげるよ。」
「とにかく今は今後の事を考えるべきなのです!このままじゃ梨花は鷹野に殺されるかクライシスに怪人にされてしまうかもなのです!」
そう言って羽入は前回の世界の様子が映し出されたカケラを握りながら梨花に訴えかける。
「はあ……まさか一度昭和58年を抜け出せていたなんてね、通りで知らない筈の事まで覚えていた筈だわ。わかった、私も協力すればいいのね……それでまずはどうすればいいの?」
「うん、まず梨花ちゃんには富竹さんと入江さんを説得してほしいんだ。」


次の日、梨花と良太郎は鷹野には内緒で富竹と入江を古手神社に呼び出し、彼に鷹野や彼女を操っている黒幕達の陰謀を洗いざらい喋った。
「た、鷹野さんが梨花ちゃんを殺そうとしている!?本当なのですかそれは!!?」
「梨花ちゃん……いくらなんでも今まで良くしてくれた鷹野さんに対して失礼なんじゃないか?」
鷹野と親しい間柄である富竹は明らかに不快感を示していたが、梨花はそれに構うことなく話を続ける。
「昨日入江から聞きました、鷹野は雛見沢症候群の研究に生涯を掛けていると、その研究が後三年で打ち切られるということも……。」
「大切なものを奪われて自暴自棄になっている彼女を、もし誰かが利用しようと考えたら……。」
「…………。」
すると富竹は何か思い当たる節があるのか、顎を右手に添えて考え込む。その様子を見て入江が声を掛けてきた。
「な、何か思い当たる節があるんですか富竹さん?」
「ええ……実は最近、“東京”の大物の一人が亡くなりまして、その後釜をめぐって激しい後継者争いが起こっているのです、もしその後継者を狙っている連中が梨花ちゃんが死んだ時に発動される緊急マニュアルを利用して、入江機関の統括者やクライアントを蹴落とそうと考えていたら……。」
「なんだか梨花ちゃんって爆弾みたいですね。(魅音ちゃんの受け売りだけど。)引火したら色んなものが吹き飛んじゃう……もちろん隠れている人にだって被害が及ぶかもしれない。」
「みい、その呼び方はひどいのです……でも良太郎の言う事は大体あっているかもね。」
「むむむむ……。」
「これはちょっと深刻な事態かもしれませんね、山狗の小此木さんに連絡して東京の動向を探ってもらったほうが……。」
その入江の提案を梨花は頭から否定する。
「それはやめた方がいいです、山狗は恐らく鷹野を懐柔した者によって買収されています。」
「成程、あり得ない話じゃないですね。」
「ならどうすれば……。」
そして富竹と入江は腕を組んで悩み始める、すると良太郎が意見を言いたそうに手を小さく上げた。
「あの……実は事態は雛見沢だけの問題じゃないかもしれないんです。」
「ん?それはどういうことだい野上君?」
「それが……。」


数十分後、富竹と入江は深刻な面持ちで良太郎の話を聞いていた。
「そ、それは本当なのかい!?雛見沢症候群を利用しようとしている組織がいるって……!?」
「はい、僕達はその人達を止める為に来たんです、もし彼らが雛見沢症候群を使って細菌兵器なんかを作ったら……。」
良太郎は話に信憑性を持たせる為、とりあえずクライシス帝国や自分の本当の正体などの普通なら非現実的な事実を伏せながら2人に説明した。
「確かに考えられるかもしれません、下手をしたら蘆溝橋事件の時のように戦争に発展しかねない。」
実は良太郎はデンライナーでフレデリカから雛見沢症候群に関するカケラを見せてもらい、かつて雛見沢の出身者が日中戦争に発展した蘆溝橋事件を引き起こしたかもしれないという情報を掴んでいた、そして羽入からの情報も照らし合わせてクライシス帝国が梨花や雛見沢の住人を使って怪人か何かを作ろうとしていると気付いたのだ。そして良太郎の説明に梨花が大人びた声で補足する。
「もしどこかの国で感染者や病原菌を放ったら……大惨事になるでしょうね。下手をした冷戦中のあの国同士が戦争を始めるかも、大事に作っておいた核弾頭とかを使ってね……。」
「「…………!」」
梨花の話を聞き富竹と入江は全身から血が抜けて行くような感覚に襲われる、もしその組織がテロリストなどに雛見沢症候群のデータやサンプルを渡してしまえばそれが原因で世界大戦に発展する可能性もあるからだ。
「とにかく……富竹さんの上司にその事を伝えておいて貰えませんか?事態は想像以上に深刻になるかもしれないんです。後釜争いなんてしている場合じゃないんですよ。」
「……わかった、そのように言っておくよ。でも信じてもらえるかな?話があまりにも飛躍しているからなー。」
「それは安心してください、僕達が彼等に関する情報や存在の物的証拠を集めますんで……。」
「わ、わかりました……しかし鷹野さんはどうするのですか?彼女だってこのままじゃ梨花ちゃんを殺そうとするだろうし……。」
「富竹さん……入江機関は梨花ちゃんに死んでほしくないんですよね?なら富竹さんの権限でさっき僕が言った件を名目にして援軍を呼んだりとかできないんですか、たとえば山狗より強い部隊とか……彼等に梨花ちゃんを警護してもらったり鷹野さん達の動きを監視して貰う事はできないんですか?」
「確かに可能かもしれない……よし!それなら僕に任せてくれ、なんとかして数日中に呼び出してみるよ。」
「気を付けてください……2人はもしかしたら鷹野に命を狙われているかもです。」


そして富竹と入江と別れた後、良太郎と梨花は神社の賽銭箱の下に腰掛け雑談していた。
「それにしても驚きです……良太郎って未来から来たんですね。」
「“別の世界の”っていうのが付くけどね、でもこの世界も僕の世界とあまり変わらないかな?起きている事件とかは同じみたいだし……。」
「良太郎……アナタが過ごしている2009年の時代ってどんなものなのですか?ボクは知りたいです。」
「僕の時代?そうだね……まず年号が昭和から平成に変わっていることかな?後皆携帯電話を持っているんだ。」
「けいたいでんわ?何ですかそれは?」
良太郎はポケットから携帯電話型の変身ツールであるケータロスを梨花に見せる。
「これが携帯電話だよ。2009年を過ごす人達は殆ど持っているんだ。」
「みい!小さい電話なのです!科学の進歩はすごいのです!他には?」
梨花は子供のように(見た目は子供なのだから当たり前っちゃ当たり前)良太郎に未来の事を話すようにせがむ。
「そうだね……色んな建物が建っているかな?お台場とか……あとは色んな会社からゲーム機が出ていたり、消費税が5%になったり、2000円札が発行されたり……。」
「ふふ……未来はそんな事になっているのですか……。」
ふと、梨花は少し落ち込んだ様子で俯いてしまい、その様子に気付いた良太郎は彼女に話しかける。
「どうしたの梨花ちゃん?何か僕悪い事言った?」
「……良太郎が羨ましいのです、アナタは常に新しい未来が待っている……でも私はこの百年間ずっと成長することなく変わり映えのしない生活を送っている、本当なら今頃皺くちゃの老婆の筈なのに……圭一達と過ごす時間は確かに楽しい、だから尚更皆と一緒に未来へ行きたいのです。」
「梨花ちゃん……。」

次の瞬間、良太郎は梨花の頭を優しく撫で、それに驚いた梨花は良太郎の方を見た。

「みい?」
「大丈夫……僕達がきっと君を助け出してみせるよ、もう君をあんな目には遭わせない、それでもしこの件が無事に解決したら圭一君達も誘って僕の時代に来てみないかい?僕の姉さんは喫茶店を経営していてコーヒーがすごくおいしいんだ、たまにひじき料理とかも出すけど……。」
「……いいの?」
「うん、オーナーに連れて行ってもらえるよう頼んでみるよ、だから楽しみに待っていてね?」

その良太郎の言葉を聞き、梨花は嬉しそうに微笑みながらその場から立ちあがり彼に自分の右手の小指を向けた。
「なら……指きりしましょう、この約束は絶対に守ってもらいたいから……。」
「うん、わかったよ。」
そう言って良太郎も自分の右手の小指を出し、梨花の小指と絡ませる。
「ゆーびきーりげんまん」
「うーそついたら」
「はりせんぼんのーます。」
「「ゆーびきった。」」

「ふふふ……こういうことするのって何十年振りかしら?そろそろおじさんとおばさんも心配するだろうし帰るわ。」
「もう帰るの?それじゃ送っていくよ。」
そして二人は北条家に向かって歩き出すのだった……。


すると古手神社の近くの木陰から、先程の良太郎と梨花のやり取りを覗き見していたイマジン達と羽入が出てきた。
「へっへっへ……いきなり出て脅かしてやろうと思ったが……。」
「良太郎も女の子の扱いが大分上手くなったねえ、こりゃもう僕が教えられることはないかな?」
「梨花ちゃん達もミルクディッパーに来るの!?すごく楽しみ!」
「そうやなあ。」
(梨花……貴女にも特別な人ができたのですね。)
羽入はふと、遠い昔にこの地で共に暮らしていた自分の大切な人の顔を思い出し、古手神社から見える雛見沢村の風景を見渡す。
「ボクも頑張らなければ……もう二度と誰にも悲しい思いはさせないのです!」
そう言って羽入はモモタロス達と共に決意に満ちた表情で良太郎と梨花の後姿を見守っていた……。










今日はここまで、自分はよくリリカルなのは系のクロスSSとか読むんですが、その中でもアリシアやリインフォースが原作と違って生きている話が好きなんですよね、だからひぐらしでも同じことができないかなと思って梨花や沙都子の両親、ダム建設現場の監督が生きている展開にしてみました。でも圭一達は一応以前の世界の記憶はあるので賽殺し編のように性格が大きく変更されているということはありません。


次回はいよいよバトル開始、良太郎も変身しクライシス帝国と死闘を繰り広げます。部活メンバーも大活躍!さらに第一章で出番が無かったあの男が駆け付けるかも?


本編を後2話ぐらいで終わらせてレナと圭一に関する短編を書いたら次のクロス作品に手をつけようと思っています、内容は別サイトで同じ作者名で投下していた作品の大幅リメイクか、はたまたまったく別の作品同士のクロス作品にするかはまだ考え中です。ではまた。



[19763] 第2章 第2話「Double-Action」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:94eaebd0
Date: 2010/07/15 22:43
綿流しの祭りまであと三日……良太郎達は梨花を守るため、学校の授業が終わるまで校庭で暇をつぶしていた。
「わーい!魅音お姉ちゃんから水鉄砲もらった~!」ピョロピョロ~
「うお!?リュウタやめい!」
「センパイ、気付いている?」
「おう、この校舎……誰かに監視されているな。」
そう言ってキグルミを着たモモタロスは辺りを見回す、森の中には作業服を着た男たちがモモタロス達の方をチラチラと見ていた。
「あいつら……確か神社でバラバラになっていた人達だよね?」
「成程……彼等が鷹野さんの部下って訳だね、どうする?今の内にやっつけておく?」
ウラタロスの質問に、良太郎は首を振って否定する。
「駄目だよ、今富竹さんと入江さんが鷹野さんを説得しているんだから……今は梨花ちゃんを守る事に専念しよう。」
「つまんねえな~!最近変身してねえしよ(ピョロピョロ)ぶわっぷ!!?」
「わーいモモタロスに命中した~!」
「てんめえ~!!待ちやがれ!」
そう言ってモモタロスは水鉄砲を持ったリュウタロスと追いかけっこを始める。
「アンタ達!こんな所にまで来て喧嘩すんな!」
「まあまあハナさん、今は暇なんだし好きにさせておこうよ。」
「ほんじゃワシは腕立て伏せでもしよか、1……2……。」

一方教室では圭一達が校庭にいる良太郎達を見ながら授業を受けていた。
「相変わらずですわねあの方たちは……。」
「それにしてもオーナーさんがくれたこのベルト、どうやって使うんだろ?」
「園崎さん!先生の授業を聞きなさい!」
「は、はい!!!」
知恵に注意されて慌てて彼女の方を向く魅音、その光景を見て圭一とレナは小声で話しあっていた。
(圭一君……もしこのままだったら知恵先生は砂に……。)
(だな……。)
2人は前の世界で体験した知恵の死を思い出しながら、これから訪れるであろう戦いに向けて決意を固めていた。
(とにかく……クライシスなんて訳の解らない奴等にこの雛見沢を好きにさせてたまるか、頑張ろうなレナ。)
(うん……。)
「前原さん竜宮さん!アナタ達もちゃんと聞きなさい!」
「は、はいい!!」
「はう~……すみません……。」


一方その頃入江診療所では……富竹と入江が鷹野とある事を話し合っていた。
「ば、番犬部隊を呼ぶ……!?何故なのジロウさん!!?」
「うん、実はここ最近雛見沢で妙な動きをしている集団が居るんだ、そいつらが雛見沢症候群を利用しようとするテロリストだという情報が入ってね……上に頼んで梨花ちゃんの警備の強化をしてもらう事になったんだ。」
「そうした方が無難ですね……万が一梨花ちゃんが捕えられたりしたら何が起こるか解りませんからね。」
「で、でも……!」
その時、三人の元に山狗の隊員がやって来た。
「鷹野三佐……お電話です、東京の野村様から……。」
「……!わかったわ、お二人とも少々お待ちを……。」
そう言って鷹野は隊員と共に富竹と入江のいる部屋から出て行った。
「……どうやら作戦変更の通達かもしれませんね、いや……中止かもしれない。」
「さすがに番犬部隊が監視している状態じゃ小此木君達といえど何もできないだろう、これで鷹野さん達の動きを封じることができる筈だ、でも……。」
富竹は鷹野の雛見沢症候群に対する情熱が大きい事を知っていた、そして研究打ちきりにより彼女が大いに傷ついて投げやりになり、終末作戦を最後の心のよりどころにしているのも知っていた。
「もっと早く鷹野さんの気持ちに気付いてあげられれば彼女をあそこまで追い詰める事はなかったのに……!」
「ええ……でも今更後悔しても何も始まりません、僕らができるのはこれぐらいです……後は野上君達に任せましょう。」


その日の夜、鷹野はとある場所に停めていた指揮車の中で小此木を始めとした数人の山狗隊員と共にあることを話し合っていた。
「作戦中止ですって……!!?何を言っているのかしら野村は!?もうすぐ……もうすぐ高野一二三の偉大なる功績が世に知らしめる事ができるというのに……!」
「そうはいいますけどねえ……?その研究事態あまり進んでいないじゃないですか、サンプルにしようとしたRの母親も夫と共に行方不明……こりゃあもう無理ですわ、東京のお偉いさん達だって態々危ない橋を渡ろうなんて思わんでしょう?」
「何を言っているの!!?アナタ達には高い金を払っているのよ!?それをいまさら……!」
すると鷹野と小此木の会話に、ある山狗隊員の一人が口を挟んできた。
「俺は元々嫌だったんだ、罪のない人を殺すなんて……金は返します。」
「お、俺も……。」
「俺も……。」
「な、何を言っているのアナタ達は!!?」
「こいつらはアンタの酔狂に関わりたくないそうですよ、無論俺もそうですが……。」
「お、小此木ぃ……!!」


次の日の朝、鷹野は失意のまま富竹と共に野鳥観測に赴いていた。
「いやあ、今日はいい天気だね鷹野さん。」
「そうね……。」
富竹は元気のない鷹野を気遣って声を掛ける、しかし彼女の反応は著しくなかった。
(うーん参ったな……気分転換に連れだしたのはいいけど掛ける言葉が見付からない……。)
富竹は鷹野を心配しながらカメラを構え、野鳥がいないか辺りを探し回る、すると……。

テレテンテンテレテンテンテンテーン

「ん?」
富竹はカメラの中に真白い何かが映り込んでいる事に気付いた。
「あれ?なんだ今の?」
「どうしたのジロウさん?」
「いや、今カメラに変な物が……。」
その時、富竹と鷹野の目の前にその真っ白い何かが鳥の羽根をばら撒きながら降り立った。
「降臨!満を持して!」
「「…………?」」
2人の目の前には真っ白い怪人のような男がくるくると舞うように体を回していた。そして呆気に取られている2人に対し、その真っ白い怪人はある質問をする。
「そこのカメラマン!この辺に野上良太郎と言う名の男がいないか?」
「ぼ、僕の事?野上君なら多分雛見沢分校の方にいると思うけど……。」
「そうか!礼を言うぞカメラマン!では!」
白い怪人は2人にそう言い残すとその場を去っていった。
「な、なんだったのかしらあの人……?」
「この近くでヒーローショーでもするのかな?」
どうやら2人は白い怪人をキグルミか何かと思ったようである。

それから数分後、白い怪人は良太郎に会いに雛見沢分校にやって来た。
「ここが良太郎達のいる学校か……さてと、どこにいるのだ~?」
そう言って怪人は良太郎を探しに辺りを歩き回る、するとそこに……。
「うわっ!?なんだろあの人、あんなキグルミを着て……。」
とある用事で学校に残っていた悟史がやって来た。
「む……そこの茶坊主、野上良太郎という男がどこにいるか知らないか?」
「良太郎さん……?確か沙都子達と一緒に梨花ちゃんの家に行きましたよ?」
「梨花?一体それは何者だ?」
「うーん、解らないですよね……しょうがない、僕が案内しますよ。」
「おお!気が効くな……頼んだぞ茶坊主。」
「茶坊主って……フフフ、変な人ですね……人?」


その頃誰も暮らしていない古手神社の梨花の家では、良太郎達デンライナー一行や圭一達部活メンバーが今後の事について話し合っていた。
「それじゃ……鷹野はもう梨花ちゃんに危害を加える事はないの?」
「うん、富竹さんに頼んで監視を強化してもらったんだ、これならもう梨花ちゃんが襲われる事はなくなる筈だよ。」
「そうですか……!」
良太郎の話を聞いて心底ホッとする羽入、それを見てコハナが補足を加える。
「それじゃ後はクライシスって奴等だけね……圭一達の話じゃ奴等イマジンじゃない怪人を使っているのよね?」
「うん、鏡から出てきたり人間をガラスや砂に変えたり……。」
「羽入が言っていた魔化魍って奴等もいるんだよな?どうする?そいつらに対抗する手段とかあるのか?」
「うーん、今オーナーさんがベルンちゃんと一緒にカケラを使って調べてくれているみたいだけど……。」
すると彼等のいる梨花の家の戸がどんどんと叩かれる音が鳴り響いた。
「あら?お客さんでしょうか?」
「ボクと沙都子が見に行くのですよ、にぱ~☆」
そう言って梨花と沙都子は玄関に向かう、するとそこには……。
「沙都子、梨花ちゃん……やっぱりまだここにいたんだね。」
「あら?にーにー……何故ここに?家には時間になったら帰るとちゃんと言いましたのに……。」
沙都子は悟史を巻き込まないように彼にクライシスや良太郎達の正体は話していなかった。
「ごめんね、でもこの人が良太郎さんを探していたんみたいで……。」
「「この人?」」

テレテンテンテレテンテンテンテーン

「降臨!満を持して!」
すると悟史の背後から真っ白な怪人がくるくると舞いながら梨花と沙都子の前に現れた。
「な、なんですのこの羽っぽい方は!?」
「おお、そこの可憐な少女たちよ!良太郎という男がここにいないか?」
「この姿……まさかアンタモモタロスと同じ……?」
するとそこに、玄関の様子を見に来た良太郎とモモタロス、そしてコハナがやって来た。
「おいおい、一体何の騒ぎ……って手羽野郎!?」
「ジーク!?なんでここに……?」
「おお良太郎!そして姫……!相変わらずお美しい!」
そう言って白い怪人……ジークはコハナに一輪の花を差し出す。
「なんでアンタがここにいるのよ!?デンライナーは動かないんじゃなかったの!?」
「うむ、実はオーナーが駅長と連絡を取る事に成功してな……どうしてもと言われ伝言を伝えに私がここに態々やって来たのだ!」
「伝言……?まさかクライシスの事がわかったの?」


それから数分後、悟史を先に帰した良太郎達はジークからクライシスや彼等が使役する怪人についての情報を聞いていた。
「じゃあクライシスと一緒にいた怪人って……やっぱり別の世界の怪人だったの?」
「うむ、ミラーモンスターにオルフェノク、ファンガイア……どれも人の生命エネルギーを食する怪人だそうだ。」
「じゃあ知恵先生が砂になったのも生命エネルギーを吸われたからなんだね……。」
そう言って良太郎とジークの話を横から聞いていた魅音は納得したように頷いていた。
「うーん……となると変身できる僕達ならともかく、生身のレナちゃんや魅音ちゃんじゃ危なすぎるね。」
「まあ奴等が動き出すのは綿流しの後やし……それまでに対策を立てておいたほうがええやろ。」
「おいそこのメイド!私は喉が渇いた!紅茶を持ってこい!」
「代わりにスタンガンをお見舞いしてやろうか……!?」
「詩音ちゃん落ちついて!スタンガンしまって!ジークはこういう人なの!」
「あんた初対面の人になんで偉そうなのよ!」
コハナはそう言ってジークに向かってローキックを決める。
「ごふっ!?あ、相変わらず姫の蹴りは効く……!」
「あれ痛えよなー。」
「それじゃもう遅くなったし今日はこれで解散しよう。ジークも伝言ありがとう。」
「気にするな!それではデンライナーに戻ろうではないか!」
「げっ!?お前居付くつもりか!?」
「それじゃまた明日~。」
そして良太郎達は圭一達部活メンバーと一旦別れ、デンライナーに向かうのだった……。


それから二日後の綿流しの祭りの前日、梨花は羽入と共に学校に残って校庭で明日の奉納演舞の練習をしていた。ちなみに圭一達は先に家に帰っていた。
「はっ……!ほっ……!」
「あうあう、梨花も随分と上手くなったのです。」
「そりゃまあ100年近くも練習を繰り返したら体が勝手に覚えるわよ、できればこれで最後にしたいわね……。」
「あうあう……その雄姿、梨花の両親にも見せてあげたいのです。」
「……?何よ急に、変な事言いだすのね……。」
するとそんな彼女達の元に、旅行者風の格好をした外国人の女性がやって来た。
「ヘイ!ソコノオジョウサンタチ!フルデジンジャニハドウイッタライイノデスカ?」
「みい?外国人の方ですか……?」
その時羽入はその女性の顔を見てある事を思い出し、梨花を思いっきり付き飛ばした。
「いけない!梨花逃げて!」
「え!?」
その瞬間羽入の体に女性……変装したマリバロンが出した光の鞭が巻き付き、彼女は捕らわれてしまった。
「羽入!」
「おや?勘のいい女だ……私の攻撃を事前に察知するとは。」
「に、逃げて羽入!この人クライシスなのです!」
「で、でも……!」
捕らわれている羽入を気遣って逃げる事をためらう梨花、その時どこからともなくクライシス帝国の戦闘員……チャップが現われた。
「くっくっく……偶然お前達だけの所に出くわすとは私も運がいい、さあ早くお前も来い……!」
「く……!」
梨花は迷いを振り払い、奉納演舞の練習の為に使っていたクワを持ったまま校舎の方に駆け込んで行った。
「しまった!追えお前達!」
「「「はっ!」」」
マリバロンの指示を受けたチャップ達は梨花を追って校舎の中に入って行った。


「はぁっ!はぁっ……!」
息を切らして校舎の中の廊下を駆けまわる梨花、するとそこに掃除をしていた悟史が現われた。
「あれ?どうしたの梨花ちゃんそんなに慌てて?」
「助けてくださいなのです悟史!追われているのです!」
すると梨花の後ろから数人のチャップが彼女を追いかけてきた。
「うわっ!?何あの人達!?」
「と、とにかくここにいると悟史も危ないのです!一緒に逃げるのです!」
「え!?ちょっと!?」
そう言って梨花は近くにあった沙都子の仕掛けたトラップを発動する為の紐を引っ張った。すると次の瞬間、チャップ達の頭上から盥が雨のように降り注いだ。
「うわ!?なんだこりゃー!!?」
「ぎゃん!」
「今の内に……!」
「い、一体何がどうなってるのー!!?」


それから一時間後、梨花と悟史は沙都子のトラップが仕掛けてある裏山の方までやって来ていた。
「ねえ悟史!圭一達は今どこにいるか解るのですか!?」
「み、皆なら多分工事現場の方だと思うよ!レナと一緒に宝物探しとかで……!」
「工事現場……!ここからじゃ少し遠いですね……!」
すると背後からチャップ達の怒号が響き渡った。
「いたぞ!こっちだ!」
「くそっ……!なんだこの森は!?トラップまみれだぞ!?」

「お、追いつかれる……!」
「どうしよう!このままじゃ……あら?」
その時、梨花達の行く手にたまたま雛見沢の森を散歩していたジークが現われた。
「おや姫……そして若者よ、そんなに急いで一体どうしたというのだ?」
「ジークさん……!なんか梨花ちゃんが変な人達に追われているんだ!」
「羽入も捕まっちゃったし……!」
すると梨花達を追って来たチャップ達が追いつき、彼女達を大人数で包囲した。
「そこのイマジン……!大人しくその少女を渡せ!」
「ふむ……銃を突きつけて脅してくるとは、いささか無礼な者共だ、致し方ない……。」
そう言ってジークは今だ状況が解っていない悟史の方を見る。
「若者よ、少し体を借りるぞ。」
「え!?」
次の瞬間、ジークはからだを光に変換させて悟史の体に入っていき、悟史の髪型が白いメッシュの入ったコーンロウに変化し、瞳の色が黒から白に変化した。そして腰の周りにデンオウベルトが巻かれ、右手にはジークの持っていたライダーパスが握られていた。
「悟史!?その格好は……!?」
「変身。」
ジークが憑依した悟史……W悟史はターミナルバックルにライダーパスをセタッチする。
『ウィングフォーム』
次の瞬間W悟史の体は全身黒い装甲のような物に包まれ、その上から鳥を思わせるようなパーツが次々と装着されていった。
「降臨!満を持して!」
そしてジークは仮面ライダー電王・ウィングフォームに変身した。
「こ、これって一体……!?」
『どうなってるの!?ねえどうなってるの!!?』
「うろたえるでない、さて……いたいけな少女を追いかけまわすような輩には少しオシオキが必要だな……。」
一方電王の姿を目の当たりにしたチャップ達は大いに動揺していた。
「う、ウソだろ!なんでこんな所に仮面ライダーが……!?」
「どうする!?マリバロン様を呼ぶか?」
「いや……アイツは一人だ、おまけに目標を守りながらなら動きが制限される筈だ。」
「よし!それなら……!」
覚悟を決めたチャップ達はジークに一斉に襲いかかった。
「数が多いか……では。」
だがジークはそれに臆することなく、専用武器であるデンガッシャーハンドアクスモードとブーメランモードを握り、襲い掛かるチャップ達を次々切り払っていった。
「ぐおおお!」
「クソッ!お前達は回りこんで古手梨花の確保を……!!」
「させるか!」
そう言ってジークは背後から梨花を捕らえようとしたチャップ達をブーメランモードを投げつけて撃破して行った。そのジークの戦い振りを見ていた梨花はポカンと口を開けていた。
(すごい……イマジンってこんな力があったの?もしかしてモモタロス達も……?)
そして数分後、ジークは襲い掛かって来たチャップをすべて片付けてしまった。
「まあこんなものか、姫……怪我は?」
「え、ええ……大丈夫よ。」
するとその時、ジークに取り憑かれたままの悟史がぎゃんぎゃんとわめきだした。
『あの……話が全然見えてこないんだけど!?訳を話してよ梨花ちゃん!』
「もう耳元でわめくな!それでは立派な紳士にはなれんぞ!」
「私じゃこの現状を説明できないわね、とにかく皆と合流して……。」

「ガァー!!!」
その時、どこからともなく巨大な黒い烏のような物体がジークに体当たりし、彼は吹き飛ばされ近くの大木に激突してしまった。
「ぐお!?」
「ジーク!!!」
「よくやったケシズミガラス、へえ……チャップ達を倒すなんて流石は電王だな。」
すると彼女達の目の前に、山伏のような格好をした大男が現われ、巨大なカラスはその男の背後に降り立った。
「だが……少しばかり油断しすぎたようだな。」
「あ、アナタもまさかクライシスの……!?」
「ま、そんなもんだ……それじゃ早速俺と一緒に来てもらおうか、あの女のヒステリックに付き合うのはごめんだからな。」
そう言って大男は梨花にじりじりと近付く、するとその時、彼の足もとに数発のエネルギー弾が撃ち込まれる。
「うおっと!?」
「今のは……!?」
そしてそこに紫色の装甲を纏った電王ガンフォームが現われた。
「梨花ちゃん!鳥さん!無事かい!?」
「その声……リュウタロスなのですか!?」
『僕もいるよ梨花ちゃん。』
「おお茶坊主!我を助けに来てくれたか!」
そしてリュウタロスとジークは梨花を守るように大男の前に立ちふさがった。
「あちゃー……こりゃ分が悪いな、まあいい、“ハイ・リューン・ジェダ”は俺達の手元にあるんだ、こうなったら取引をしよう。」
『取引だって……!?』
(ハイ・リューン・ジェダ……!?それって羽入の事……!?)
「今夜12時……俺達はダム工事現場にいる、もうジェダは用済みだから古手梨花と交換だ、彼女一人に来させろ……まあ約束破ればどうなるか解っているよな?」
「ひ、卑怯よそんなの!」
「なんとでも言えよ、こっちだって色々抱えているんだから……それじゃ待っているぞ。」
そう言って大男は巨大なカラスに捕まって何処かに去って行った。
「逃げちゃったか……どうする良太郎?」
『とりあえず一度デンライナーに集まって対策を立てよう、ジークも一緒に来て。』
「ふむ、了解した。」
「悟史も来てくれますですか?これ以上隠す事はできそうにないのです。」
『う、うん……。』


それから数分後、良太郎は圭一達も集めて今後の事を話し合っていた。
「そんな……羽入ちゃんが攫われたなんて!」
「くそっ!俺達が付いていればそんな事はさせなかったのに!」
「ダム工事現場ってさっきワタクシ達が宝探ししていた場所ですわよね?たしかにあそこなら人が来ませんし取引するなら最適の場所ですわね。」
「はう……レナの宝の山がめちゃくちゃにされちゃうよ~!」

一方その頃圭一達と少し離れた場所では、詩音が先程の戦闘で擦り傷を負った悟史をこれまでの経緯を説明しながら治療していた。
「そっか……沙都子や君にそんな事があったんだ。」
「ごめんね悟史君、ちゃんと話してあげられなくて……。」
「いやぁいいんだよ、君達は僕の事気遣ってくれたんだよね?なら怒る事なんてできないよ……。」
「悟史君……//////」
悟史に優しい言葉を掛けられ、詩音は思わず鼻から大量の鼻血を流した。

「何やってんだあいつ……。」
「でも本当にどうするの?このままじゃ羽入ちゃんが……。」
「みい、こうなったらあいつらの言うとおりにするしかないのです、あいつらは鷹野と違ってボクを殺そうとはしない筈なのです。」
すると梨花の意見をウラタロスが却下する。
「それよりもひどいことになるかもしれないよ?君は女王感染者だし怪人とかにされてしまうかもねえ。」
「うっ……じゃあ一体どうすれば……。」
そう言って一同は腕を組んで考え込む、すると下でお絵かきをしていたリュウタロスが意見を出した。
「ねえねえ!偽物を渡しちゃえば!?で、敵が混乱しているスキに羽入ちゃんを取り返して……。」
「そううまくいくかしら?あいつらがモモより単純だったらいいんだけど……。」
「そういう作戦に引っかかるのはモモタロスぐらいですもんね。」
「ナオミ!ハナクソ女!そりゃどういう意味だコノヤロー!」
すると話を少し離れた場所で聞いていたオーナーが目をカッと見開いた。
「それ……採用しましょう。」
「「「え?」」」




その日の夜、約束の時間の5分前……マリバロンは部下達と共に梨花の到着を待っていた。
「カブキ……古手梨花は来ると思う?」
「十中八九来るでしょうなぁ、奴はあんた達と違って仲間を見捨てるような奴じゃありませんからね、まあそういう甘いところに俺達は付け入ることができるんですがね。」
するとマリバロン達の足元で、縄でぐるぐる巻きにされ縛られている羽入が彼女達に声を掛ける。
「何者なのですかあなた達は……!?一体何が目的でボクや梨花を捕らえようとしているのですか!?」
するとマリバロンは威張るように鼻をフフンとならして答える。
「知れたことを……この村に伝わる雛見沢症候群の寄生虫を使ってわがクライシスの保有する怪人達を強化するのだ!それさえ達成できればライダー共や大ショッカーなど我々の敵ではない!」
「貴様ら……梨花を兵器にするつもりですか!?そんなことさせないのです!」
「フン!お前に何ができるというのだ!古手梨花が来れば貴様は解放してやるからそこで大人しくしておけ!」
そう言ってマリバロンは羽入をカブキと呼んだ男に任せ、自分は何処かへ行ってしまった。
(とにかく隙を見て脱出しないと……実体化を解除すれば逃げ出せますが、この人たちの目的をもっと聞きださないと……!)
「おい、お穣ちゃん。」
するとその時、羽入を見張っていたカブキが彼女に話しかけてきた。
「……なんでしょうか?言っておきますけどボクはあなたと話すことなんてないのです。」
「お穣ちゃんって人間じゃねえよな?その角……。」
カブキは羽入の角を見ながら話を続け、羽入も黙って彼の話を聞いていた。
「あんたの事は調べさせて貰ったぜ、ハイ・リューン・ジェダ……それがアンタの本当の名前だろう?」
「……あなた達もカケラを……?」
「あんたも可哀そうだよな、愛した男を混血に殺され、村人はあんた達家族を嵌めて、最終的には娘に殺されるなんてな……あんたはその時、人間を憎んだ筈だ、自身の醜い欲望で家族を傷つけた人間達を……!」
カブキは若干興奮気味に羽入にどんどん語り掛けてくる。
「なあジェダよ……俺達の仲間にならないか?マリバロンと違って俺はあんたや古手梨花を虐げたりしない、そして人間達を……!」
(この人もボクのように昔何かあったのでしょうか……?)
羽入は熱弁を振るうカブキを、少し悲しそうな目で見ていた、その時……。
「カブキ!古手梨花が来たぞ!」
マリバロンが彼らのもとに駆け寄って来た。
「ほう……どうやら本当に一人で来たらしいな。」
「そんな……!?梨花!来てはダメです!」
羽入はダム工事現場に一人でやって来た梨花に向って大声で叫ぶ、そんな彼女に対し、梨花は落ち着いた口調で語りかける。
「安心して羽入……アンタを死なせたりはしない、さあ早くその子を解放して!さもないと舌を噛み切って死んでやるわよ!」
「よかろう……。」
梨花の提案を飲んだマリバロンは縛られた羽入を引っ張って彼女の前に立つ。
「さあ早く羽入を……。」
「キシャアアアア!!!」
「!!!?」
その時、梨花の足元にあった水たまりからミラーモンスターのバズスティンガーが飛び出し、彼女を捕らえてしまった。
「よし、良くやった。」
「は、話が違うのです!ちゃんと羽入を解放するって……!」
「すまないな、我々にとってお前達は重要な鹵獲対象なのだ、このまま二人とも連れ帰らせてもらうぞ。」
「くっ……!梨花!どうして来てしまったのです!?貴女なら私が容易に脱出できると解っていた筈なのです!」
「……ふふっ。」
その時、梨花は俯いたままクスクスと笑いだした。
「?何がおかしい……恐怖で頭がおかしくなったか?」
「いや……こうも予想通りに動いてくれるなんてね……。」
そして梨花は開いていた右手を天高く掲げる、そしてあることに気付いたカブキが声を張り上げる。
「しまった……!伏せろ!」
「もう遅い!」
次の瞬間、あたりは強い光に包まれ、近くにいたものは全員目を覆った。

「逃げるわよ。」
「は、ハイなのです!」

その隙をついて梨花は羽入の手をとり森の中に入って行った。
「しまった……!追うのだ!」
「「「はっ!」」」
マリバロンはあわてて部下であるチャップ達に梨花と羽入を追い掛けるよう指示した。
「おのれ!古手梨花にあんな力があったとは……!」
「いや、あれは恐らく……。」


一方その頃森の中に逃げ込んだ梨花と羽入は森の中で待機していた良太郎達とモモタロスと合流する。
「羽入ちゃん無事かい!?」
「良太郎……それにモモタロス……来てくれたのですか。」
「ええ、私達がアンタを見捨てるわけないじゃない。」
するとモモタロスの後ろから、ゴスロリのドレスに身を包んだ梨花が現れる。
「梨花!?もしかしてこっちの梨花は……!?」
「そっちはベルンちゃんだよ、彼女も囮として君の救出に協力してくれたんだ。」
「そ、そうだったのですか……ありがとうなのです。」
「ふふふ……たまにはこういうのもいいわね、でもこれ以上はあなた達で何とかしなさい。」
そう言って梨花に変装したフレデリカは光の粒子になってその場から消えてしまった。
(フレデリカ・ベルンカステル……一体何者なのかしら?後でちゃんと聞いておきましょう。)
すると遠方からチャップ達の怒号が聞こえてきた。
「おっしゃ!おいでなすったな!」
「行くよモモタロス、ここである程度数を減らして魅音ちゃんが言っていたポイントまで後退するよ。」
「分かってるって!そりゃ!」
モモタロスは自分の体を光にしてそのまま良太郎の体の中に入り込む、すると良太郎の瞳が真っ赤に変化し、髪は逆立った状態に変化に変化した。
「行くぜ……変身!」
そう言って良太郎……否、モモタロスが憑依したM良太郎はデンオウベルトを腰に巻きつけ、バックルに付いていた赤いスイッチを押し、ライダーパスをバックルにセタッチする。
『ソードフォーム』
するとM良太郎の体は黒いバトルスーツに包まれ、その上から赤を基調とした部品が次々と装着される。そして……顔の部分に桃を割ったようなデザインの部品が装着されたとき、M良太郎は腰を落として左手を前、右手を横に突き出しておなじみの口上を口にする。


「へっへっへ……!やっと言えるぜこのセリフ……俺!参上!」
その瞬間、仮面ライダー電王・ソードフォームがこの世界に参上した。


今まさにひぐらしの世界や数多の世界の命運を掛けた戦いが始まろうとしていた。




今回はここまでです、次回は本編最終回となっています、といっても短編やエピローグもあるんですけどね。

オリジナルライダーの出番は次回に持ち越しです。


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