北朝鮮の医療の現状について、国際的な人権団体が報告書を発表し、薬や医療器具が不足しているうえ、栄養状態の悪い人々に結核が広がるなど、危機的な状況に陥っているとして、国際社会に対して、いっそうの人道支援を求めました。
この報告書は、ロンドンに本部を置く人権団体「アムネスティ・インターナショナル」が、北朝鮮国外に逃れた市民40人余りや、北朝鮮での医療支援を行っている団体などから聞き取り調査を行った結果だとして、15日、発表したものです。それによりますと、北朝鮮政府が「国民に無料で医療を提供する」と定めているにもかかわらず、実際には、90年代以降、診察や手術を受けるために現金やたばこなどを渡さなければならなくなっているということです。また、薬品や医療器具の不足から、医療機関が注射針を消毒せずに使い回したり、麻酔薬無しで手術をしたりしている実態があるとしています。さらに、年間およそ1万5000人が死亡しているとされる結核についても、深刻な食糧危機で十分な栄養をとれない人々に爆発的に広がっていると指摘しています。アムネスティ・インターナショナルは「北朝鮮政府は国民の命を守る最低限の医療すら提供できていない。国際社会は、援助を政治的な駆け引きの道具にしてはならない」として、国際社会に対して、いっそうの人道支援を求めました。