余部鉄橋９８年の歴史に幕…撤去へ

　高さ約４１メートル、東洋一の規模とうたわれたＪＲ山陰線の余部鉄橋（兵庫県香美町）が１６日夜、最終列車の通過で９８年間の歴史に幕を閉じる。

　１９８６年１２月には、突風にあおられた回送列車が橋から転落、カニ加工工場を直撃し、従業員ら計６人が死亡する惨事が起きた。強風でも安全に列車が通れるよう、防風壁を備えたコンクリート製の橋を隣に建設中で、１７日から架け替えのため鉄橋を撤去する工事が始まる。

　鉄橋は鋼鉄製のやぐら形の橋脚１１組で橋げたを支える構造で、１９１２年に完成。長さ約３１０メートル、地上からの高さは約４１メートルで、谷を渡る壮大な景観が観光スポットとしても人気を集めた。

　新しい橋は８月１２日に開通。古い橋は橋脚３本分の区間を保存し、２０１２年度に「空の駅」として日本海が一望できる展望台に生まれ変わる予定。

　橋を通る列車の音を聞いて暮らしてきたという余部地区連合自治会長山本美津男さん（６６）は「橋は地域のシンボルで愛着もある。別れるのは寂しい」と名残を惜しみ、「新しい橋のある風景も素晴らしいので、観光客に立ち寄ってもらえるよう地元の知恵を集めたい」と話している。

[ 2010年07月15日 18:26 ]