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ガザ地区:封鎖緩和されたが…ものづくりによる復興課題に

 イスラエルによる封鎖措置が緩和されたパレスチナ自治区ガザ地区を6~8日に訪れた。搬入される生活物資などの量は以前より約3割増加し、食料品が値下がりするなど一定の効果が見られるものの、「ガザの経済復興につながらない」との不満が渦巻いていた。【ガザで花岡洋二】

 ガザ市内最大のスーパー「サッカ」では、コーンフレークやジャムなど食料品の小売価格が2~4割下がった。今後も搬入量が増える期待から、仕入れ価格が下がっており、共同経営者のサッカさん(25)は「1日ごとに仕入れて、在庫を抱えないようにしている」と話した。

 ガザへの物資搬入をイスラエルと調整する自治政府の担当者によると、これまで搬入できるのは食料や医薬品に限られていたが、新たに家具や電化製品、文具なども対象となり、品目は約10倍に増えた。物価が下がったことに加え、商業分野の雇用が増加しており、今回の緩和を「前進」と評価する声が聞かれた。

     ×    ×

 一方、「ガザに入ってくるのは消費財のみ。結局はイスラエル企業がもうかるだけだ」と怒りをぶちまけるのは、パレスチナ工業会のエルハイク会長だ。原材料を入れて生産活動を立て直さない限り、現金流出が続き、地域経済は崩壊する。実際、エジプト国境のトンネル密輸品などで細々と衣料、家具、炭酸飲料を製造していた工場が、イスラエル製品の流入で廃業に追い込まれたという。

 07年6月の完全封鎖の影響で休業しているベイトラヒヤ市の縫製工場。経営者のシャアバンさん(35)は「家族を食べさせるためミシン20台のうち7台を売り払った」と嘆く。

 98年創業。イスラエルの衣料メーカーの下請けで、生地を輸入し、完成品を輸出していた。当初は従業員25人を雇い、年間約10万ドル(約880万円)の売り上げを誇った。しかし、00年9月の第2次インティファーダ(民衆蜂起)で輸出入の締め付けが始まると、売り上げは3分の1に激減し、12人を解雇した。

 シャアバンさんは「工場が再開できれば、30人を雇用し、その家族を養える。しかし、生地が入らなければ意味がない」と話す。ガザには以前、衣料・家具製造や食品加工など約3000の工場があったが、封鎖で多くが休廃業したままだ。

 イスラエル政府は、イスラム原理主義組織ハマスが武器庫などの建築に使うとして民間事業用の建築資材搬入を認めていない。自ら建築資材会社を経営するエルハイク会長は、「イスラエルが主張する『ハマス』には根拠がなく、ガザの経済破壊が狙いだ。実際、登録業者が国際機関の事業のために輸入した資材の最終使途は、きちんと管理・報告している」と主張する。失業率がほぼ5割にのぼるガザでの雇用確保には、民間住宅の再建事業が不可欠だという。

毎日新聞 2010年7月11日 9時36分

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