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「早期の制限解除を」 生産者ら種牛処分要望

(2010年7月14日付)

 民間種雄牛問題の解決を目指し、急きょ13日に行われた山田正彦農相と東国原知事との会談。結局は物別れに終わり、16日に予定されていたワクチン接種区域の制限解除も不透明な状況となった。種雄牛の扱いをめぐる国と県との対立は、畜産農家の再建や市民生活、さらには畜産物の輸出入にまで影響を及ぼしかねない事態となっている。

 「殺処分を拒むことによって制限解除が遅れることには納得できない」。児湯・西都地域の牛・豚の生産者部会代表11人が13日、県庁を訪れ、今回問題となっている種雄牛の殺処分を求める要望書を県に提出。その後、会見したJA尾鈴畜産組織連絡協議会の江藤和利会長は、16日の制限解除が遅れかねない事態に不満を述べた。

 各部会の代表も「県外の購買者が安心して買いに来られる状況にしてほしい」「(種雄牛農家の)思い、気持ちは分かるが、口蹄疫は法定伝染病だ」と話した。

 農家以外にも不安が広がる。川南町の商工業男性は「(移動解除は)復興に向けた大きな区切りで、待ち望んでいたこと。解除の日を新たな出発点と決めていた意欲もそがれる。商工業者のことも考慮し、早急に着地点を見いだしてほしい」と要望する。

 また、特例で種雄牛を残すなど一連の県の防疫対策について、農家には「畜産物の輸出入に影響が出るのでは」との懸念も。このことから児湯・西都地域の生産者代表は県に対し、国際獣疫事務局(OIE)が認定する清浄国への復帰の見通しについても回答を求めている。

 農林水産省によると、民間種雄牛はワクチン未接種のため、抗体検査などで感染が確認されなければ、OIE認定の清浄国復帰に問題はないという。ただ、畜産物の輸出入の衛生条件については2国間での協議となるため、「相手国の出方次第になる」(同省)。前例がない上、日本は厳しい衛生条件を他国に求めているだけに「協議してみないと分からない」という。

 一方、山田農相との会談後、知事が目視で種雄牛6頭の清浄性を確認し、県独自の判断で16日に移動制限を解除する可能性を示唆したことについて、専門家から疑問視する声も出ている。大阪府立大の向本雅郁准教授(獣医感染症学)は「目視検査だけでは感染の痕跡まで分からないので、少なくとも抗体検査は必要。認識が甘いと言われても仕方ない」と指摘している。

 民間種雄牛6頭をめぐっては、県市長会が知事の救済方針支持を表明。13日の県議会環境農林水産常任委員会では、県内生産者から県へ助命を求める声が複数あることが報告された。

【写真】県に民間種雄牛の早期処分を要望し、会見する江藤会長(右から2人目)ら=13日午後、県庁