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配偶者からの暴力

配偶者からの暴力(DV:ドメスティック・バイオレンス)とは、夫婦や恋人といった親密なパートナー間で生じる身体的、性的、精神的虐待をいいます。配偶者からの暴力はあらゆる文化、民族、職業、所得水準、年齢層の人々の間で起きています。米国では夫婦の30%で身体的な攻撃が生じていると考えられています。

配偶者からの暴力では、男性よりも女性の方が被害者になりやすい傾向があります。配偶者からの暴力を受けて医療機関を受診する人の約95%は女性であり、救急治療のため来院する女性の30〜40%は配偶者からの暴力に関連したけがが受診理由となっています。女性に対する重度の暴力または殺害の加害者で最も多いのは、パートナーの男性です。米国では毎年約200万人の女性がパートナーから殴る、けるといった激しい暴行を受けています。

身体的虐待は、配偶者からの暴力の最も明白な形態です。殴打、平手打ち、足でける、こぶしで殴る、骨を折る、髪を引っぱる、突き飛ばす、腕をねじるなど、さまざまな行為が行われます。食事や睡眠を奪われることもあります。銃やナイフなどの武器で脅したり傷つける場合もあります。

性的虐待もよくみられます。パートナーから身体的虐待を受けている女性の33〜50%は性的にも虐待されています。性的虐待には、本人が望まない性的接触を、脅しや暴力によって強制されることも含まれます。

精神的虐待は身体的虐待より多く起こっている可能性があり、また、身体的虐待より先に起きている場合もあります。精神的虐待とは、身体的な行動なしに被害者を攻撃したり、おとしめたり、あるいは加害者の思うままに支配する行為をいいます。加害者は虐待的な言葉を使ったり、被害者を社会から孤立させたり、金銭的な自由を奪うことがあります。加害者は被害者を傷つけ、おとしめ、はずかしめ、威嚇し、脅迫するような言葉を、家庭内で、あるいは公衆の面前で使います。被害者に自分には分別がないと思わせたり、罪悪感をもたせたり、責任感を抱かせることで、虐待が生じたのは被害者の落ち度だと責めるケースもあります。性的能力や身体的な容姿、あるいはその両方に関して被害者を侮辱することもあります。

加害者は、被害者が友人や親戚など、他の人々に近づくことを制限して、被害者をある程度、あるいは完全に孤立させることがあります。たとえば、他の人と直接会うことや手紙、電話、電子メールのやり取りを禁止するといった方法が取られます。加害者はこうした行為を嫉妬心として正当化することがあります。

多くの場合、加害者は被害者を支配するため金銭を取り上げます。被害者はほとんど、または全面的に、加害者に金銭的に依存することになります。加害者は、被害者が仕事に就こうとするのを妨害したり、家計に関する情報を知らせない、金銭を取り上げるなどの方法で、支配を続けます。

暴力による影響

配偶者からの暴力により、被害者はけがをすることがあります。打撲傷、眼の回りのあざ、切り傷、ひっかき傷、骨折、歯が折れる、やけどなど、さまざまな身体的損傷がみられます。被害者はけがのため仕事に行くことができなくなり、失業することもあります。けがや虐待関係にあることを恥ずかしいと被害者が感じ、自ら家族や友人を遠ざけるケースもあります。加害者から逃れるために転居を繰り返して、経済的負担に苦しむこともあります。ときには加害者が被害者を殺害することもあります。

配偶者からの暴力の結果、被害者の多くは精神的な問題を抱えることになります。たとえば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、薬物やアルコールの乱用、不安、うつなどがみられます。虐待を受けている女性の約60%がうつ状態にあります。暴行が激しいほど精神的な問題を生じやすくなります。身体的虐待が減っても精神的虐待は続くことが多く、いつまた身体的虐待を受けるかもしれないという思いから解放されません。身体的虐待よりも精神的虐待によるダメージが大きいと感じる女性もいます。精神的虐待を受けることで、うつ病や、薬物やアルコールを乱用するリスクが高くなります。

配偶者からの暴力と子供たち

米国では年間に約330万人以上の子供が、身体的な虐待や言葉による虐待といった配偶者からの暴力を目撃しているとみられています。こうした体験をもつ子供には過度の不安感、泣き叫び、おびえ、睡眠障害、うつ、引きこもり、学校にうまく適応できないなど、さまざまな問題がみられます。虐待が起こるのは自分のせいだと考える子供もいます。年長の子供では家出をすることもあります。父親が母親を虐待するのを見て育った男児は将来、人を虐待するようになる傾向があるといいます。また、同様の環境で育った女児は、虐待を受け入れてしまうようになる傾向があるといいます。虐待の加害者が、子供にもけがをさせることがあります。配偶者からの暴力がある家庭では、子供の扱いにも問題があるケースが非常に多くみられます。

暴力への対処方法

配偶者からの暴力への対処で何よりも重要なことは、安全の確保です。暴力行為が起きたときには、追いつめられそうな場所や、加害者が使える武器のありそうな場所(たとえば台所など)から離れるよう努めるべきです。できればただちに救急通報をするか警察に電話をかけ、自宅を離れるようにします。けがをしていれば治療を受け、写真と記録を残します。

安全対策を立案し実行することが大切です。助けを求める場合の行き先や避難方法、金銭を得る方法を確保する必要があります。また、公的書類(子供の出生証明書、社会保障証などの身分証明証、保険証、銀行の通帳など)のコピーを取って隠しておきます。緊急に避難する場合に備えて、必要な身の回り品をそろえて小型のバッグに詰めておきます。

ときには虐待関係を永久に絶つことが唯一の解決策となります。配偶者からの暴力は継続する傾向があり、極端に攻撃的な男性では特にその傾向が強いためです。また、たとえ身体的虐待が減っても精神的虐待は続くおそれがあります。関係を絶つと決め、それを実施するのは容易ではありません。別れようと決めたことを加害者に知られてしまうと、被害者がさらに激しい虐待を受けるリスクが非常に高くなります。この段階で、被害者自身や子供を守るための手続き(接近禁止命令や保護命令を得るなど)を取るべきです。虐待被害者向けのシェルター(避難所)や支援団体、裁判所を通じて援助が得られます。

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