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【飛び出し坊や】湖国では団体様疾走中

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写真たくさんの飛び出し坊やたちが子どもを見守っていた=滋賀県守山市、小玉重隆撮影写真飛び出し坊やと飛び出し女の子写真飛び出しイチロー(?)と飛び出しパンダ写真飛び出し坊やと飛び出しザビエル写真飛び出しペリー(?)と飛び出しメイドイラスト絵・グレゴリ青山写真みうらじゅんさん

 琵琶湖、近江牛、鮒寿司(ふなずし)。滋賀県の名物って、それくらいだと思っていた。「彼」の存在に気付くまでは――。道端の柱の影から顔をのぞかせる、あいつのことだ。

 誰が呼んだか、飛び出し坊や。飛び出し小僧、飛び出し注意君などの名もある、全国各地に存在する交通安全を呼びかける看板。でも、なぜか滋賀が日本一多いらしい。滋賀から来た上司が、携帯で撮りためたコレクションを見せつけてきた。7枚の写真。「ふらっと辺りを歩いただけよ」。ルンルンな子、ややブサイク君、無表情な坊や――。凄(すご)すぎるっ!

   ◇

 気がつけばハンドルを握って湖国へ。大津、草津、栗東、守山……。多い、多い。運転中も思わず気を取られそうになる。ペンキが剥(は)げかけた古いベニヤの坊やを守山市役所近くで発見。「吉身(よしみ)西町自治会」の字。「30年以上前から作ってる。これは初代です」と、小井(こい)稔自治会長(64)は誇らしげだ。最新の3代目まで地区に計10体。人口も交通量も増えだした1970年代後半以降、安全啓発のため市内70自治会が競って作ったとか。「この辺で大事故がないのは、坊やのおかげです」

   ◇

 湖が大きく、道路がクモの巣状に広がらない。関西と東海・北陸を結ぶ交通の要衝で、主要道路に生活道路が直接交差する――。「小さい県の割に昔から事故が多い。『何かせな』という思いがあるんやね」と滋賀県警交通企画課の村井昭二総括管理官。坊やの多さが安全祈願の切実さを物語る。

 でも、どうしてあのデザイン? 「走ってるっちゅうのがミソ。飛び出してきそうやろ」と東近江市の看板業丸橋猛士さん(60)。あらかじめ型どりしたものを、子ども自身に色づけしてもらうと交通安全の意識付けにもなるという。子どもによる、子どものための、子ども。だから形は同じでも、服の色や表情が違うのか。

 ホームセンターには既製品もあった。長岡産業(大津市)の「飛び出し人形」は、表はボーイ、裏はガールという欲張りなデザインが人気で年700体ほど売れる。ネットで全国から注文も来る。

 なんと「飛び出し坊やの歌」なるプロモーションビデオも今年できた。映像制作集団「藤井組」(守山市)が、びわ湖放送とともに作った歌。スピード感のあるリズムに、こんな歌詞だ。

 ♪こどものために/身をていして/朝も夜も/自分のからだをはって/危ないことを伝えてる

 テレビゲームが流行(はや)る、少子化の時代。元気な飛び出し坊やがあふれる街には、不思議な懐かしさが漂う。通学の子どもたちを見守る坊やが、何だかお地蔵さんのように思えてきた。(宮崎園子)

■推薦

イラストレーター みうらじゅんさん

信仰心のようなもの漂う

 京都の中学時代に坊やに興味を抱き、各地で写真に収めてきました。アルバムは5〜6冊。間違いなく、滋賀県が日本一です。4年前、テレビの企画で坊やのデザインを全国公募しました。面白がる人が出てくれば、と。小中学生がデザインした30点は、守山市播磨田地区で活躍中です。坊やは、もはや現代の道祖神のような存在。なんとなく信仰心のようなものが漂うのも、滋賀県ならではですよね。

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