2010年7月12日 11時21分 更新:7月12日 12時41分
「蒲田行進曲」「熱海殺人事件」など反権力や社会的弱者を題材にした作品を数多く発表、戦後の演劇界を代表する演出家、作家のつかこうへい(本名金峰雄=キム・ボンウン)さんが10日午前10時55分、肺がんのため千葉県鴨川市の病院で死去した。62歳。福岡県出身。葬儀・告別式は近親者で済ませた。
◇
福岡県で在日韓国人2世として生まれた。慶応大在学中から学生劇団で活躍。1974年「熱海殺人事件」で、第18回岸田戯曲賞を、当時、史上最年少の25歳で受賞した。74年に劇団「つかこうへい事務所」を設立、「蒲田行進曲」などヒット作を発表し、70~80年代に、若者の間で「つかブーム」を巻き起こした。「ストリッパー物語」「寝盗られ宗介」など、社会的弱者を主人公に、ユーモアでくるんで人間の本質をえぐった。
舞台での演出は、つかさんが役者にせりふを口伝えする「口立て」という独特の方法。厳しい指導で知られたが、加藤健一さん、風間杜夫さん、平田満さんら実力派の俳優を輩出。近年でも内田有紀さん、小西真奈美さん、黒木メイサさんら若手を育てた。また、東京都北区や大分市と協力して劇団を設立するなど、地方発の演劇人育成にも力を入れた。
自身の戯曲の小説化でも才能を発揮。小説「蒲田行進曲」で81年下半期の第86回直木賞を受賞。「蒲田行進曲」など映画化された作品も多い。
韓国で「ソウル版熱海殺人事件」を公演するなど、日韓の文化交流にも積極的だった。娘の愛原実花さんは宝塚歌劇団雪組の娘役トップ。
つかさんは10年1月、肺がんを公表。2月、東京・新橋演舞場の「飛龍伝 2010ラストプリンセス」は、千葉県内の入院先の病室から演出した。