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[朝日社説] 首相の続投―国民はあぜんとしている
[朝日社説] 首相の続投―国民はあぜんとしている
参院選挙から一夜が明けて、安倍首相が続投を正式に表明した。自民党の役員会、次いで公明党の太田代表との党首会談で、政権の座にとどまることに了承をとりつけた。
あれだけ明確な有権者の「ノー」の意思表示を、どう受け止めたのか。記者会見でただされた首相は、こう述べた。
「国民の厳しい審判を厳格に、真摯(しん・し)に受け止め、反省すべきは反省しながら、そして謙虚に、改革、国づくりに向かって責任を果たしていく」
要するに、厳しい選挙結果は首相に対する不信任ではなく、国民のおしかりと受け止めるということなのだろうか。だとすると、首相はこの歴史的大敗の重さを見誤っていると言うよりない。
自民37、民主60という獲得議席の差だけではない。朝日新聞の出口調査では、有権者の56%が「他の人に代わってほしい」と首相に辞任を求めた。自民党支持層まで4人に1人が、比例区で民主党に投票したのだ。
そもそも、首相自身が「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民に聞きたい」として、この選挙を信任争いと位置づけたはずである。
記者会見でそのことを聞かれた首相は、まともに答えようとはしなかった。逆に「人心を一新せよというのが国民の声だと思う」と言い、自らを除く党役員や閣僚を入れ替える考えを示したのはあまりに都合が良すぎないか。
政治は結果責任だ。政治家は進退によって責任を明らかにする。今回、結果に対して潔く責任を負おうとしない指導者に国民は失望するだろう。「なぜ続投なのか」という疑問と不信は、長くくすぶり続けるに違いない。
自民党有力者たちの反応にも驚かされた。派閥全盛期の自民党を懐かしむわけではないが、かつての自民党なら責任を問う声が噴き上がったことだろう。
実際、36議席だった89年の参院選では宇野首相が、44議席だった98年には橋本首相がそれぞれ退陣した。個性の違う別の有力者がそのあとを襲った。
それが半世紀にわたって政権を担ってきた党の緊張感であり、活力の源でもあった。なのに、いまの有力者から聞こえてくるのは「代わる人材がいない」「本人が決めること」「とりあえず」などの中途半端な声ばかりだ。
公明党があっさり首相の続投を認めたのも解せない。自民党への逆風のあおりで大敗した面があるのに、連立のあり方も含めて責任問題を総括すべきだ。
首相は、成長重視の経済政策や格差の是正、「政治とカネ」での新たな対応策など、今後取り組んでいく課題を語った。だが、そうした政策を展開するために欠かせない国民の信任を、首相はまだ一度も得ていない。
続投するというなら、できるだけ早く衆院の解散・総選挙で有権者の審判を受けるのが筋だ。
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