相澤 徹(健康・スポーツ科学科 教授)
1963年生まれ。1989年徳島大学医学部医学科卒業、2000年徳島大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。徳島、富山、高知、兵庫の病院での勤務、徳島大学医学部非常勤講師を経て2001年より本学へ。日本整形外科学会認定専門医、日本体育協会公認スポーツドクター。スポーツ医として幅広く活動。また、全日本女子バレーボールチームチームドクターほか多数の職務でも活躍中。
整形外科とスポーツ医学が専門です。「成長期のスポーツ傷害の予防」や「思春期女性の適切な体組成の解明」などをテーマに研究しています。成長期のスポーツ傷害では例えば、野球におけるひじの障害(野球ひじ)。少年野球でひじを痛めてしまう子どもがいますよね。早く見つけて治療すれば、成長期ですからきれいに治すことができるのです。ほおっておくと、ひじや肩が変形してしまって野球を続けることができなくなってしまう、ひどい場合は日常生活にも著しい支障をきたし、ずっと苦しむこともあるのです。
健康な身体でスポーツを続けられるようにすること。またスポーツ傷害に関する知識を持った人材を育成して、次の世代にその知識を繋いでいくことを目指しています。
幼稚園のころは「ウルトラマン」の科学特捜隊に入りたかった。その次がお医者さん。祖父が名古屋女子医専の小児科の教授だった関係で、まわりにお医者さんが多かったから自然にそうなったみたいです。スポーツ医学を志したのは、小学生のころからずっとスポーツ好きで、水泳、スキー、サッカーをやっていたからでしょうね。高校生の時は水泳部で、1日1万メートルぐらい泳ぐのだけど「楽して記録が出たらいいなぁ。身体をこわしてもつまらんし」と思いながら、効率のいい練習をいつも考えていました。そのあたりから既に、スポーツ医学への道が意識下に芽生えていたのかなあ…。
スポーツドクターが診察するのは、アスリートです。一般に治療のゴールは、患者さんが日常生活を不自由なく送ることができるようになること、と考えられますが、アスリートの治療のゴールは、それ以上に“競技で勝つ”ことなのです。そのために、ケガや病気の早期発見、早期治療、競技復帰までのサポートを指導者やトレーナーなどと協力して行います。
ケガしたらすぐ治療をすること。さっき少年野球の話をしましたが、時期を逸すると大きな手術が必要となる場合もありますし、手術しても完治しないこともあるのです。だから、傷害の早期発見のために専門医による定期的なメディカルチェックが必要と考えています。
「健康・スポーツクリニック」は、2002年の5月にキャンパス内に開院しました。診察はもちろん、外科治療や、レントゲン撮影、点滴などができる環境が整っています。診療時間以外でも、私が学内にいる間は、学生の皆さんがケガをした時はすぐ診察しますよ。例えばクラブ中にケガをした時、そのまま練習できるのか、治療が必要なのかをすぐ判断できるので、不安なく活動できると思います。
クリニックのもう一つの役割は、スポーツをする人の健康を医科学的にサポートする人材の養成です。選手がスポーツ傷害を負った時、病院での検査、治療、リハビリ、トレーニング、現場復帰、というサポートの実際を学生たちが学び、将来スポーツ指導者として、本学で行われている清く正しいスポーツサポートを実践してほしいと期待しています。
今、ゼミで研究している学生は、さっきお話ししたスポーツ傷害の予防に関するテーマの他、例えば「思春期の女性の骨密度を効率的に上げる生活習慣」や「生活習慣病にならなくてすむ運動習慣の解明」などに関して研究しています。生活習慣病は、最近注目されていますよね。どんな生活の習慣づけをすれば、病気予防につながるのか、学生たちは積極的に調査や分析を進めています。
新聞社と共同で企画し、子どものためのスポーツ教室を各地で開いています。そこでは、スポーツ傷害にならないためにはどうしたらいいのか、などを考える講習会をしています。また、夏休みには徳島県の少年野球大会などスポーツ大会の会場で、参加する選手たちのメディカルチェックを行っています。ひじや肩、ひざなどを検診します。治療が必要な場合は、ご家族や必要であればチームの監督さんにきちんとお伝えし、病院への紹介もしています。学生たちはサポートスタッフとして参加していますよ。
そのほか、本学の附属幼稚園の園児を対象としたスポーツ教室を昨年から継続して行っています。この教室のテーマは「子どもをスポーツ好きにする」。幼稚園ぐらいのころは、男の子も女の子もみんな身体を動かすことが大好きなんです。このころに運動する機会をいっぱい与えてあげれば、その子はスポーツ好きになるだろうし、運動能力も高まります。そういう子供たちは大人になっても、気軽にスポーツを楽しむことができるはず。そんな夢を描いて、学生のクラブ活動である「健康科学研究会」が「キッズ・スポーツ・アカデミー」というスポーツ教室を企画・運営しています。サッカー教室から始めましたが、子供たちは大喜びでした。保護者の方にも好評です。
人々が笑顔でスポーツを続けることができるように、環境を整えることができる人や指導を行うことのできる人に育ってほしいですね。そのために、健康やスポーツに関する医科学的な知識をしっかり学ぶことが大切と思います。
子供たちにスポーツを教える時は、「あー楽しかった!」と、みんなが笑顔で終われるような練習と指導を心がけるようにと伝えたいですね。子どもが対象のスポーツ指導では、幼児教育や子どもの栄養といった分野も研究対象になります。子どもの成長にとって栄養管理はとても大切。栄養管理やしつけといったことも勉強してほしい。スポーツ指導者を目指す学生が多いのですが、もし指導者にならなくても、お母さんとして子どもにとって一番のトレーナーになれると思いますよ。
気分転換は料理、独身時代からです。同じ食べるならおいしいほうがいいから、自分で作るようになりましたね。和・洋・中なんでもできますよ。得意料理はロールキャベツとタンシチュー。私が作って、妻が後片付け。家事は夫婦分担しないと…。それから子育て、2人の子どもと遊ぶことです。もうすぐ3人目が生まれるのでもっとにぎやかになりそうです。
私は生まれも育ちも名古屋なのですが、本籍地は長野県の小谷村。今も家と田んぼがあり、私が(実際には私の妻が)管理しています。田植えや稲刈り、畑もご近所の方々にお手伝いいただき、なんとかやっています。熊も出てくる超田舎ですが、そんなアドベンチャーワールドが6歳と2歳になる息子たちは大好きなようです。
冬は屋根の雪降ろしなど、住むのはさらに大変なのですが、私がスキーの指導員、妻は準指導員(“準”が付くのに妻はいつも私の滑りにダメ出しをします…トホホ)というほどスキー好き。家族で年間20日ぐらいスキーに行きますよ。ホームゲレンデは長野の家の近くの栂池高原スキー場。6歳の長男は、スキー好きのお父さん、お母さんに背負子に乗せられ1歳の時からスキー場に行っています。2歳になるとスキーを履かされ、幼稚園の年中さんのころからアルペンスキーの競技会に出場しています。きっと子どもにとってはいい迷惑なのかもしれませんが、「将来オリンピックに行くかもしれない!」と真剣に思っている“お父さん”をしています。
水泳は、小学校の時から水泳部、スイミングクラブに所属していましたのでプールでも海でも苦になりません。高知の病院勤務の時は、スキューバダイビングをしてましたので、潜るのも大好きです。
スポーツは楽しくないと意味がありません。スポーツを楽しむため、スポーツの楽しさを伝えるために一緒にいろいろ学んでいきましょう。