まさにお笑いバブルといった時代でしたよね。そんな感じで芸人が芸の幅を広めていく中、らっきょさんはスポーツ万能という印象が自然発生的に広まっていきますよね、そのきっかけっていうのはご自身どこにあると思われてますか?
「うーん、ガンバルマンとかでそういう印象が付いていったのもあると思いますけど、多分『ビートたけしのスポーツ大将(テレ朝)』っていう番組があったんですけど、それじゃないかなって思いますね。あれはもう毎日ほとんどロケでやっててですね、例えば月曜日はサッカー2試合、火曜日は野球を2試合、水曜日はバレーボール2試合みたいな感じで、スポーツばっかりやってましたからね。しかも、みんな得手不得手があるんで、種目によっては出ないし、行かないでいい種目もあったんですけど、オレ全部行ってましたし、選手としても全部普通に出てましたし、特に陸上とかだったら絶対呼ばれましたからね」
『ビートたけしのスポーツ大将』では100M走で10秒89という驚愕の記録をたたき出されてますよね!
「オリンピックの日本予選のタイムですよね。自分でも驚きましたよ、しかも短距離走のためにトレーニングをしていたわけじゃないですからね。これで、不摂生もせずに陸上に打ち込んでいたらもしかしたらどうなってたんだろうとは思ったことありますね」
選ばれてたかもですね!
「どうだろうなぁ、34才くらいだったしなぁ」
同番組の企画で、ソウルオリンピック陸上三冠のフローレンス・ジョイナーに、現役引退後とはいえ100M走で勝利するというこれまたミラクルもメイキングされています。
「現役引退後って言っても引退して1年も経ってないわけですからまだまだ現役なわけですよ、そんなジョイナーに勝っちゃったんですよ(苦笑)フローレンス・ジョイナーって女子の世界記録保持者でたしか10秒49でしょ。しかも、フローレンス・ジョイナーといっしょに走った日本人って他にいないんですよ。なぜって日本人は予選で負けてしまいますからね。走った日本人はオレが初めてだし、しかもツーショットで走ってますからね」
これはもうスゴいことだし、もっと語り継がれなきゃいけない話だと思いますよ。
「たしかにあのときは誰もがスゴいって言ってくれましたね(照)」
先ほども「特別なトレーニングなんて一切してない」とのことでしたけど、ポテンシャルだけでここまでやれちゃうってスゴいですよ。
「だからね、オレを落とした日体大は何してたんだと思いましたね。何やってんだ日体大! ヘタしたら日本のIOC委員になってたかもしれない男だぞと、ふざけんなと。……今から入れてくんないかな(笑)」
アハハハハ!チャレンジするべきですよ。あと、これまた同番組で、たけし軍団全員が日本ハム・ファイターズの入団テストにチャレンジするという企画で、らっきょさんは合格ラインに入ったんですよね!
「そうなんですよ。日ハムのプロテスト受けろよってことで、まぁ非公式なんですけども通常のテストとまったく同じ内容と条件で受けて、番組も100人くらい素人集めて、みんなでプロテストを受けに行ったらオレだけ合格って言われて(笑)」
しかも100M走のときと同じで、日ハムのプロテストのためにトレーニングしたわけでもなくですもんね?
「たまに試合をやるくらいです(苦笑)まぁ当時のプロ野球選手からも言われましたし、日ハムのスカウトも『年齢がもう少し若ければ、ホントに採用してたかもしれない』って言ってたみたいですからね」
たけし軍団からプロ野球選手が生まれてたかもしれないわけですね。もはや「それってスゴくないですか!!』しか言葉がないですよ。
「その時は28才くらいだったかな、まぁ合格は合格で、技術的には全部合格なんですけど、やっぱりちょっと年齢的にそうかなっていうのと、身長もちょっと足りないって感じでしたね。技術的には何の問題もなく合格ってことでした」
じゃあもう少し若かったら、ホントに日ハムの選手になってたかもしれない?
「ぶっちゃけ、あったかもしれませんね。だからもしね、そこでほんとに合格させてくれてプロ契約したとしたら、軍団には入ってますけど、一年間の歩合契約でね、しかも盗塁だけで、1盗塁したら10万円とか(笑)100盗塁してやっと1000万か」
盗塁のみするプレイヤーになるわけですか! 敵は確実に警戒して、必ず刺しにきますよ?
「でも、パフォーマンス的にはおもしろいじゃないですか、『ピンチヒッター井手らっきょ』ってなって、塁に出たら100%盗塁するっていうね。それだけで少なからず試合はおもしろくなるし、お客さんも呼べると思うなあ」
野球界もそれぐらい柔軟になればもっと盛り上がるかもですね。らっきょさんは同番組で、他にも数々のスポーツをされてましたね。
「いろいろやりましたねぇ。そうそう、10キロマラソンのときの話は今でも忘れませんよ。10キロをみんなで走って、その夜ははいおつかれさんみたいな感じでフリーだったんですよ。で、オレはおネエちゃんをナンパしてですね、一晩しっぽりと遊んで、おネエちゃんとふたりで朝方、陽が昇って6時とか7時くらいだかに岬まで歩こうぜって話になって散歩してたんです。するとパーッとトラックが通って『井手ちゃんおはよう!』って声が聞こえて」
見つかっちゃいましたか!
「いや、そのときはそんな感じじゃなくて、撮影隊はちょうどマラソンの昨日のコースを撮ってたみたいでね。まあ、そんなことはすぐに忘れちゃってたんですよ。で、スタジオで『さあこないだのグァムマラソンを見てみましょう』ってことになって、このコースがどうのこうのって説明が始まったんですけど、そこでね、『オレ、あそこにちっちゃく映ってるかも』って気付いたんですよ。で、『そっか、あんときカメラを回してたんだ……、マジいなぁ』って思ってた瞬間、『カメラちょっと止めてください、はいここをズームで、はいこれは井手とおネエちゃんです』って(笑)」
アハハハハ!
「殿が『ちょっと絵を引き延ばしましょうか』って。もうオレは焦っちゃって焦っちゃって、もちろん事前に何も聞かされてないし、あれにはやられましたね(笑)」
今じゃだまし討ちなんて無理ですからね。でも、こういう番組ってなくなっちゃいましたよね。
「おもしろかったですね、ほぼ全部マジメにスポーツしてましたから。殿もそういうストイックなのも大好きで、もうとことんマジメにやるんですよ。野球にしても絶対に手を抜かないし、真剣にやってましたね。だから、たけしさんがピッチャーやるときに、実は守りたくないってみんな言ってましたね。エラーしたらどうしようって」
そういう不安って逆にエラーを誘ったり?
「そうなんですよ。まぁオレはエラーとかってあまりなかったですし、なぜかエラーしても『野球やってた人間はしょうがねえな』ってあまり怒られなかったですね。ただラッシャーがエラーしようものならむちゃくちゃ怒られてましたけどね(苦笑)」
どんな感じで怒られるんですか?
「『バカじゃねぇのお前! なんで捕らないんだよ』ぐらいなもんですけど、かわいそうだったのが、ラッシャーがセンターを守ってて、スコアは1対1で最終回、相手のサヨナラのランナーがセカンドランナーで、殿が投げててというシーンで」
それはかなりヤバいシュチュエーションですね……。
「で、センター前にヒットが出て、ラッシャー!って思ったら案の定トンネルかましちゃって、ラッシャーはそのときボールを追いかけながら帰っちゃおうって思ったみたいですね。でも、帰れるわけもなく、試合は負けで、殿はラッシャーと口をきかなくなってしまい、かわいそうだったなぁ、あれは」
でも、そういったストイックな部分があるからこそ、お笑いでも針を振り切らせることができるんでしょうね。
「その通りだと思いますね、『お笑いウルトラクイズ』なんて振り切りまくってましたからね(苦笑)」
『お笑いウルトラクイズ』といえば、井手さんの人間性クイズは最高でしたよ!!
「あれはやられましたよねぇ……(苦笑)元アイドルの、オナッターズのなんとかちゃんって、ちょっとセクシーギャル系の子が出てたんですけど、ドッキリが仕掛けられてるなんて何も知らずに宴会場に行って飯でも食おうかって思って座ったらとなりにそのオナッターズの女の子がきてね『はじめまして』ってオレに話しかけてきて『わたし、昔から、デビューのころから井手さんが好きだったんですよ』って。しかも『水谷豊のものまねの大ファンです』って」
やけによく知ってるなと(笑)
「そうそう『この子、よくそんなの知ってるな』と思って。そしてそこからいろいろ話してですね『今度、もしよかったら遊んでください』って話になって『ちょっとこの女、オレのことマジで好きなんじゃないか』って『こいつすっげえオレのこと知ってるし、絶対好きだって。これはイケるな』と思ったんですよ。そんでね、その子がトイレに立って離れたスキに、ヤツらがなにげなく話しかけてくるんですよ『あの子あれだろ、オナッターズのなんとかちゃんだろ』って自然に。オレも調子に乗って『あいつ、ヤレるかも。今晩イケっかも』って(笑)。そしたらまたいいタイミングで殿が『またスケベな話してんじゃねえのか?』って入ってきたりね、で、『いやいやいやいや』とか言って。すると別のやつが『らっきょちゃんがね、あの子イケるって』、『イケるわけないだろ』『いやイケそうなんすよ』『絶対無理だよ。よし、もしイケたら10万やるよ』って盛り上り始めて」
それはもういやがおうにも信じちゃいますよね(苦笑)
「ホントですよ『うわー、おいしいなあ。オレどうしよう』って舞い上がってましたから。で、その宴会が無事に終わり、部屋に戻ったらその女の子から『いっしょに飲みません?』って電話がきてね『キタキタ!』って思って『オッケー、すぐ行くから。何号室?』って言ってその子の部屋に行ったんですよ。そしたらね、その子は浴衣に着替えてて、向こうの部屋には布団も敷いてあるんですよ。しかも目に見えるところに下着が干してあったりもするんですよ。もうオレ我慢できなくなっちゃって、部屋に付くなり『風呂借りていい?』って『いっしょに入る? いっしょに入ろうよぉ』とか言いまくってね。で、結局ひとりで入って、出てくるときはもうすっぽんぽんで出てきたんですよ」
すっぽんぽんで出てきちゃいましたか!
「でね『もう寝よう!』って電気消して布団に飛び込んだところで殿が部屋に入ってきたわけですけど、そんときはもう何が何だかわからないわけですよ『やっべー!』っと思って布団被って隠れたんですけど、『何やってんだバカ!』ってハリセンでペチっとやられて。『え!? なんでハリセンなんだろう』って。殿に『お前さ、あそこにカメラがあんだよ』って言われて初めてそこで気付きましたね。隠しカメラの映像を見て宴会場でゲラゲラ笑われてたんですよねぇ(苦笑)」
いやぁ、素晴らしいですね! あとストリップのやつも最高でしたよ。
「偽字読みストリップのことですよね。ストリッパーがふとももとかに問題を隠していて、それを読んで手を挙げて答えるっていうのがフリなんですけど、実はそれがドッキリのフリで『誰かが裸になったら、あいつは負けず嫌いだから絶対脱ぐから』ってのがドッキリのフックで、案の定クイズが実際始まったらオレは2番目くらいでもう脱ぎだしたんですよ。ただねちょっとおかしいなって思ったのが、裸になるだけでその日のドッカーンがいつもより大きくてウケるんですよ。オレが脱いだだけで、みんなゲラゲラ笑ってるんですよ。お! 『今日のオレはすっげーんだ』なと思って、ガンガンに脱いでストリッパーのおネエちゃんとガンガンに腰を振りまくって踊ってたら、後ろの暗幕がバーンと降りて、なんとオレの奥さんから子ども、祖父母までがが全員、家族が正座してオレを見てるんですよ『え!? なんでここに家族がいるの?』って(笑)」
一瞬、何が何だかわからない状態になった?
「だって、ストリッパーとすっぽんぽんで腰振って踊りまくってるオレの前に父さん母さんおじさんおばさん姉ちゃん、そんでもって子どもがふたり正座して見てるんですよ。で、母ちゃんが出てきてパチン!ってやられて『何やってんのあんたは!』って(笑)」
アハハハハ!
「お袋は泣きながらオレの股間を隠そうとするんですよ、30過ぎの息子の股間を(苦笑)子どもなんて『パパじゃない』って平気で言うし、親父は『恥ずかしい』ってコメントするし、もうこうなったら笑い取らなきゃしょうがないって感じですよ。しかも、そんな最悪な日の翌日はこれまたヘリコプターですよ」
ヘリコプター!?
「スカイダイビングクイズなんですけど、問題を出されて答えた答えが正解だったら飛ばなくてもいいんですけど、でもそんなもん絶対ボケなきゃいけないでしょ(笑)で、お約束で不正解して飛ばされるんですけど、その日の天候とかね、とにかく空の条件が最悪だったんですよ。でも落ちなきゃ始まらないんでとにかく落ちろってことで落ちたんですけど、いっしょに飛んだカメラマンなんて予定着地地点から7キロ先くらいに落ちちゃってケガしてね」
へたしたら死んじゃう可能性も?
「ありありでしたよ。けっきょく最悪なスカイダイビングになってしまって、パラシュートもギリギリまで開かなくて、ものスゴいスピードでゴォーーーッってなってたもんだから、ほとんど墜落みたいな感じで地面に滑り込んじゃって、あれはかなりヤバかったですね。でもなんだろうなぁ、やっぱりオレは芸人なんですかね。そういう状況下でも、着地したときはしっかりフルチンでしたから」
アハハハハ! 空中で瀕死状態だったにも関わらず、裸になることは忘れなかった(笑)
「それでもオレはチ●コを出してましたね、上空で。上にいた他のヤツらもその状況を知ってるから、オレのチ●コを見て感激して泣いてるんですよ、伴内とかと『やったぞ!』って感動し合ってね、下はチ●コ丸出しで。何やってんだって(笑)」
アハハハハ!(爆笑)
「ケガは普通でしたね、やった後に死を感じるものもいくつかありました。自分が出ていないクイズでも『あぁ、オレこの中にいなくてよかった』って『メンバーに選ばれなくてホントによかった』って思うものはありましたね。まぁ、いろんなクイズがあるんですけども、これやりたくないあれやりたくないってやっぱり各自いっぱいあるんですよ。で、当番表を見ると、軍団とダチョウ倶楽部はほっとんど全部に○がついてるんですよねぇ(笑)」
たけし軍団とダチョウ倶楽部は頭から出なきゃいけないって決まりなんですね(笑)
「スケジュール帳を見て3ヶ月後に『ウルトラクイズ』とか書いてあるとすっごい憂鬱になるんですけど、行ったらね、楽しいんですよねぇこれが。辛いんですけどね、例えばあのネバネバとか、。あれはねゴキブリホイホイの原液なんですよ。 だからオレはないからいいけど、髪の毛とかついたらもう絶対取れないですよ、落とすのにもう2時間か3時間かかりますから。シリコンのこれまた原液を塗って、そこにタオルを貼り付けてタオルごとベリベリと剥がすんですけど、全身内出血ですよ。ホント、なんでそこまでって思いますけどね、やっちゃうんですよね、お笑いアドレナリンが出ちゃって」
『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』でも、そんなお笑いアドレナリンが爆発してましたね!
「裸族ね。伊豆の山奥に裸族が出たってやつ。チ●コに葉っぱ一枚付けてさ、松方弘樹さん率いる探検隊に『いた!裸族がいたぞ!』って見つかったら逃げ回るという、もうよくわからないやつ(苦笑)たしか番組で裸族募集ってしたら100人くらい集まっちゃって、裸族集会だって言って、生のさんまを口にくわえて、チ●コに葉っぱ一枚で伊豆を走り回りましたね」
話だけで聞いてるとまったくさっぱりわからないですよね(笑)
「ちゃんとしたプランってあったのかなぁ、オレが裸になってこう、裸族になって踊ってるってだけなんじゃないかって(苦笑)そもそも裸族集会ってなんだかわかんないですもんね。スゴイいきあたりばったり感」
今じゃ企画段階ではねられそうですけど、とにかく素晴らしいですよ! 『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』でも、らっきょさんは全開でしたね。ヘビメタ運動会は神でしたよ。
「あぁ、あのXのYOSHIKIとかね。今ではあんな感じですけど、当時はヘビメタとか言われてバカにされていじられてましたもんね。オレね、ヘビメタ運動会でYOSHIKIとムカデ競争したんですけど、YOSHIKIのとんがった頭が前にいるオレに刺さって痛いんですよ。当時のオレはヘビメタなんて知らないし『誰だこいつら?』って感じで。でも、Xとはよく絡んだなぁ、早朝ヘビメタとかいろいろやりましたね、まさかあんな存在になるとは当時思ってませんでしたけど」
他にも印象的なエピソードってありますか?
「これもうホントにくっだらない話なんだですど、相模湖かなんかに取材で行って、『控え室はこっちです』ってボートハウスみたいなとこに案内されたんですよ。で、じゃあそろそろ着替えてくださいって言われて、すっぽんぽんになってるじゃないですか、その瞬間ボートハウスの壁がバーンって倒れて『えー!?』って思ったら、なんとその部屋が船に繋がれてて、そのまま船に引かれてブァーって(笑)」
いい感じですねぇ、裸のまま船に行かれていくと(笑)
「ものスゴいスピードでね、すっぽんぽんで『助けてー!』って紐みたいなものにしがみついて、まぁ瞬時にこれはドッキリだってわかるわけじゃないですか、だからその瞬間からオレの芸が始まるわけですよ。で、勝村(政信)が『らっきょさーん元気ですかー?』って『宮尾すすむやってくださーい』って言って、オレが『ハイッ!(宮尾すすむのものまね)』って宮尾ポーズをやった瞬間にバシャーン!って(笑)」
アハハハハ!紐離しちゃダメだろって。でも、最近そういったお笑いの元素のようなものが年々なくなっていっちゃってる気がして残念ですよ。
「ちょっとサラリーマン化してますよね。やっぱもっとなんかねぇ『あいつ危ねえな』っていうくらいの人材が育ってほしいんですけど、若手とかにはやっぱお笑いの勉強というより、先人の背中を見てほしいなって思うんですよ。オレも殿の背中を見てやってきたし、お笑いなんてそんな教えてくれるもんじゃないじゃないです、盗むもんだから。だから盗むためには無茶しなきゃいけないし、やんちゃじゃないとといけない」
もっと豪快なエピソードが今の若手には欲しいところですよね。
「遊んだネタとかね。芸人は遊ばないとネタができないですよね。女房が待ってるから家に帰ってご飯食べてって、それじゃおもしろいネタなんかできないんじゃないかなって。でも、いまはそっちのほうが多いじゃないですか、オレは違うんじゃないかなって思うんですけどね」
大きなお笑いサークルみたいな世界観になってますよね。ひとつの番組で束になって、そこで3分ネタやって、あとはロケ行ってレポートしてって。そういうのがただサイクルで回っているような気が。
「頭おかしいんじゃないかってのがいないですよね、絶対いていいと思うんですけど。その点、うちの軍団はホント、言葉悪いけど、普段から●●●●じゃないのってのばかリですからね。とにかく、そこにお金が発生しないのに笑いを発生させますから。例えばね、うちらは入院したら負けって価値観なんですよ。オレがぜんそくで入院したときなんてんてね、寝てて、なんか心臓がドキドキすんなと思ったら、点滴の速度がマックスに速めてあって、もう点滴じゃなくてシャーって落ちてんですよ」
アハハハハ!死にますよ(笑)
「一時は酸素マスクを付けてたんですけど、なんか苦しいなあと思ったら、酸素マスクの管の先っちょが外してあって、その先には火のついた煙草があって、煙を管に入れてたりとかね、いろんなことやるわけですよ。だからこっちも誰かが入院するのが楽しみでしょうがない。あとはね、お葬式とか。冠婚葬祭はもう大イベントですよ」
たしかに大イベントではありますけど(笑)
「例えば結婚式とかだと、招待状に『みなさんコスプレでお願いします』って書いてあるんですよ。気合いはいりましょね、オレなんかだったら部族のチ●コ隠しでコテカっていう尖った角みたいなのを付けて行くわけじゃないですか。で、入場した瞬間ドッカーンとウケるじゃないですか。で、案内状の席順を見たら、当然軍団は同じテーブルなんだって思ってるんですけど、全然知らない人の席に、へたしたら親族席に自分の名前があったりね」
それはかなり気まずいですね。ただ、結婚式という目出たい席なんで100歩譲ってそれも許されますけど、葬式はまずくないですか?
「葬式は葬式でまたメチャクチャなんですよね。ダンカンなんて棺桶の小窓をあけて『これもいっしょに焼いてくれ』ってアルミホイルに包んだサツマイモを入れたりとか」
アハハハハ!(爆笑)
「オレも義太夫のお父さんの葬式のときに、お坊さんがいなくなったときにお坊さんに扮して適当なお経を読んだことがありますね。ダンカンのお父さんが亡くなったときは、お通夜で、みんなが帰った後さみしいから何人か残ってくれよってことになって、じゃあダンカンが記念撮影したいってことで『じゃあお父さんもいっしょに』っつって、お父さんの遺体を棺桶から出して記念撮影しましたね」
えぇーーー!っ (苦笑)
「そしたらね、お父さんを棺桶から出すときに魔除けの刀がバーンとどっか行っちゃったんですよ。あれどこだどこだって探したんですけどなくてね、代わりにそのへんにあった棒だったかなにかを入れときましたけど。冠婚葬祭はホントハンパない話ばかりですよ。でも、オレはそういうのって絶対に必要だと思いますけどね。ラッシャーなんて酷いですから」
ラッシャーさんもやるんですか?
「ラッシャーはですね、ラッシャーと東がゴルフに行ったんですよ。で、高速走ってる最中に東がお腹が痛くなっちゃったというか、単純にウンコがしたくなって『ちょっとトイレに行ってくれ』ってラッシャーに言ったんですけど、結局パーキングまでがまんできなくて『ちょっと、そこ止めて止めて!』ってね、高速の脇に無理矢理止めさせて、車に隠れて高速道路上でウンコをしだしたんですよ」
バカだなぁ、県知事ですよ、今(苦笑)
「でね、ラッシャーに『紙くれ』って言ったんですけど、ラッシャーはティッシュがあるんだからそれをわたせばいいのに、高速の領収書とかをわたすんですよ」
アハハハハ!くだらねぇ(笑)
「そういうくだらないことをするんですよね。で、東が『ラッシャー、紙だよ紙!』って怒るんですけど、するとラッシャーは車を10メートルくらい動かすんですよ。すると東は尻を出したままの姿があわらになっちゃうわけで、ウンコ座りをしながら『ラッシャー、てめぇ走るなよ!』って車のほうにくるんですけど、ラッシャーは東が車んとこにくる寸前にまた10メートルくらい動かすっていうね」
ホント、バカですね(笑)
「もういい大人なんだですけど、そういった中学生みたいな遊びをオレらは真剣にやりますからね。今の若手にもそういうのをもっとやってほしいなと思いますよね」
ただ、最近はテレビの番組の規制とかもあっていろいろできないことが多くなりましたよね。今だったらガンバルマンなんて放送禁止じゃないですかね?
「多分そうでしょうね。今女性にしても、乳首とか出せないでしょ。男でも上半身裸になるのもダメっていう場合もありますし、オレも一度だけですけどクレームが原因で警視庁に呼ばれたことあるんですよ」
えぇ! 裸ってことでしょっぴかれたんですか?
「『番組とはいえども、会場にもお客さんがいるわけだから、井手らっきょはわいせつ罪じゃないの』っていうテレビ局にクレームがあったそうなんですけど『テレビ局には何度もクレームをつけたんだけど相手にされなかった』ってことで、直接警視庁に言ったらしいんですよ。で、事情聴取ですよ(苦笑)」
始末書書かされちゃいましたか。
「書きましたね、警察の方に『毎回こういうことやってるの?』って聞かれて『はい、毎週脱いでます』って」
アハハハハ!シュールなシーンだなぁ(笑)
「『井手さん全部脱いじゃダメですよー』って『そういう時は肌色のパンツかなんか履いて、どうせカメラでモザイクかかるんですから』とか言われちゃって(苦笑)とりあえず『わかりました』って謝りましたけどね。『気持ちはわかりますけどねぇ』って鼻で笑われながら。腹ん中じゃ『絶対やるか!』ってね」
鼻で笑いながら「気持ちはわかる」って、そりゃ失礼ですよね。
「ホントそうですよね。で、『平成何年何月何日、東京都どこどこのスタジオで、私、井手博士は陰部を露出してしまいました、二度とこのようなことはしないと誓います』って一筆書いて、捺印して(苦笑)」
ただただ素晴らしいですね。そんな陰部露出大好きな井手さんなわけですが、プロフェッショナルベースボールアカデミー(以下、PBA)の校長という意外な一面もお持ちです。このPBAというのは?
「子どもたちに野球を教えたいなってところから始まって、教えるのは元プロ野球選手だったらいいねってことで進んでいった話ですね。野球連盟の方でアマチュア規定っていうのがあって、高校生は教えちゃいけないんで、PBAは小学校中学校までなんですけどね」
プロを育成していこうと?
「そこまでだいそれた目標はね、ないっちゃ嘘になりますけど。でも、すでにプロ1号は生まれてるんですよ、ソフトバンクに育成選手として入った子がいますよ」
スゴいじゃないですか! 横峯さくらの親父さんのゴルフ塾みたいですね。
「まぁ、そんなにストイックなものではないんですけど、とにかくプロ野球の選手になる子って一握りですけど、野球をやっている子にプロになりたいかって聞いたらみんな手を挙げるわけじゃないですか。そういうね、夢のあることをね、結果はどうであれ育んであげることができればなって。だからね、もちろん月謝とかいただいてますから商売になっちゃうんですけど、赤字さえ出なけりゃトントンでいいと思って、純粋な気持ちでやってますね」
PBA出身の子が10年後20年後,プロで何人も活躍してるなんてなったら嬉しいですよね。
「嬉しいですね、そしてね、彼等が現役を上がったらPBAに戻ってきてね、コーチとして他の子供たちを教えてくれれば最高だなって、そういう円になっていけばいいですよね。夢の点が線になって、その線が円になりって」
これって、いろんな会社の社長たちが夢に投資するっていう『マネーの虎』から始まったんですよね。
「そうですね。ただ、簡単じゃなかったですね。社長が5人いてですね、その中にはソフトオンデマンドの社長の高橋がなりさんがいてですね『今日の挑戦者はこの方です』ってオレが出た瞬間にお金出そうとするんですよ。もういくらでもいいからってことで。そこは単純に嬉しかったんですけど、でもやっぱりそういうのに拒絶反応を起こすというか、おもしろくないなって思う人がいるんですよ。『じゃあ、その野球塾をやりたいんだったら、やれるならタレントをやめる?』とか突いてきて『いえ、タレントはやめません』って答えたら『じゃ本気じゃないよね』とかね(苦笑)」
ぶっちゃけ、タレントをやってるから広告塔になれるわけで、やめたら両方で損するだけですからね。
「そう、その通りなんですよ。で、そういう説明をしたんですけど、オレって交渉とかスゴくヘタなもんですからダメだったんですね。でね、そんときは元プロ野球選手の秦真司を連れて行ってて『彼もいっしょにこの会社の一員としてやりたいんですよ』と紹介したら『プロとアマチュアの違いってなんですか』ってまた突いてくるから、もうしょうがねぇなって思って『じゃあスイングを見てもらえますか、プロのスイングを見たことはありますか?』って聞いたら『いやない』って言うから、秦真司に一振りしてもらったんですよ『ブン!』って。そしたら社長たちは『おぉ!』ってなって、結局投資はしてくれなかった社長もいましたけど、総額2270万円っていう番組史上最高学の融資をしていただいて」
スゴい! しかも素振り一振りで。
「一振りで2270万円ですからね、しかもオレの熱意みたいなものも伝えることができて、嬉しかったですね」
現在、校長というお立場ですけど、思い返してみると形は違えど“先生”という夢も叶ってるわけですよね。
「そうなんです! 一応ですけど先生ですからね。だからやっぱり生徒の前で『じゃあ校長一言お願いします』とか言われたら、もう井手らっきょとしてじゃなく校長として話してるわけですよ。『野球とは〜』みたいなマジメな話を。まぁ、ボクは立場上野球を直接教えるわけではないですけど、この世知辛い世の中で、子どもたちが少しでも夢をみることができる場所を提供できたらと思ってやってますね」
芸人・井手らっきょとしての展望は?
「オレはね、死ぬまで裸芸人でいたいと思ってるんです」
死ぬまで裸芸人! しびれますね。
「軍団は違うよねって言われるぐらいとことんやりたいですね。今のバラエティとかではちょっと路線が違うかもしれませんけど、そこは守り続けたい、それが軍団であって、それがたけしイズムですから。バカでくだらねぇなみてえな、そんな笑いをずっと追っていきたいですね。願望としては、そんなオレらの背中を見て育ってくれる若手がいてたらなって。殿もね、映画監督としてとか、別の顔を持ってらしてるんですけど、絶対にお笑いを捨てないじゃないですか。今でも笑いの目標として現役バリバリで君臨されてるし。オレも野球のことは真剣にやるけど、でもやっぱお笑いは絶対忘れないんで」
死ぬまで裸芸人、そして野球の求道者であり超個性派俳優などなど、らっきょさんにもいろんな顔があるわけじゃないですか。けどやっぱり基本はお笑いであり、そのお笑いの基本は中学生レベルのバカにあると?
「その通りです。もうね、死ぬまでそれですよ。引退するときは死ぬときです。だからね、こないだ取材も兼ねてたんですけど、自分の遺影を撮影したんですよ。素っ裸で天狗のお面を股間に付けて仁王立ちみたいな遺影」
アハハハハ!(爆笑)
「自分のお葬式でも笑ってもらえれば、芸人としてオレは一流だと思うし、そうなりたいですね」