LOVE JAPAN
プロフィール
正彦のウィークリープログ
基本主張
お知らせ
活動報告
スタッフ日記
事務所案内
リンク
メルマガ登録・解除
ご意見・お便り
ホーム
検索
ブログ月別過去ログ

2010年6月8日(火曜日)

雨上がり。悲しい現実を前に

雨上がり。日向市の山の奥は、林の木漏れ日の間には鮮やかに草木が濡れて輝いている。
どこからともなく小鳥のさえずりも聞こえてくる。
そのようなのどかな山里に、時ならぬざわめきが始まっている。
白い防護服をすっぽりと被り、目はゴーグルで覆って3,40人の人が数台の重機を操作しながら忙しく立ち働いている。
ブルーシートに囲まれた中央部には、牛が繋ぎこまれている。
牛は、目を白くむいて恐怖に震えている。生まれてさほど経たない子牛も落ち着かない風情でその側に離れようとしない。その周りにはすでに、鎮静剤を打たれて、薬殺された牛数頭がコロリと横たわっている。
音もなく殺処分は続けられていく。
まだ暖かいであろう遺骸は一体ずつ手を紐で縛られて、重機で丁寧に、すでに掘られている土中に、置かれていく。
思わず手を合わせる。
日向市で始まったワクチン接種牛の共同埋却が、いよいよ始まったのだ。
私が農林水産副大臣として、ワクチン接種に反対する市町村長さんたちを説得してワクチンによる口蹄疫ウイルスを封じ込める責任者だ。
13万頭を超えるワクチン接種牛豚の殺処分の責任者なのだ。
しっかりとこの現実を見据えておかなければならない。
荷台付の軽トラが上がってきた。親子の牛が繋がれている。
その場の雰囲気に押されたのか、子牛は小便を垂れ流し始めた。
たまらない。昨日木城町の田口町長が「私を殺してから埋めてくれ」と言われるのだと話していたのを思い出す。
・・・・・・やむを得ない決断だった。
私が宮崎の現地に赴いたとき、埋却地がないために、川南町で感染のクラッシュが起こり、そのまま放置された口蹄疫患畜、擬似患畜だけで8万頭(一頭の豚で半日で1万頭の豚に感染する強い感染力のウイルスを発散し続ける)に及んでいた。
600人からの作業員で一日に殺処分、埋却できるのは、せいぜい2,3千頭、新たな発生数にはるかに及ばない。
英国ではついに650万頭の牛豚羊を殺処分して1兆2千億円の損害を与えたと言われている。
このままでは、次第にウイルスは南下して新富町でも発生、このまま都城、鹿児島とその感染の勢いは激しくなっていくのでは。
現実は道路の消毒すら本気でなされているとは思えなかった。
恐ろしい状況下でのワクチン接種、殺処分の決断だった。
東国原知事、各市町村長さんたちは当初反対したが、小川総理補佐官と一緒になって押し切った。
それから3週間、私は東京に衆議院農水委員会で東京に行くことはあってもトンボ返りで、宮崎で陣頭指揮を取りながら今日に至った。
「本日の患畜、擬似患畜の発生数は1例、26頭です・・・・・」
ようやく、ワクチンの接種効果が現れてきたのだろうか。埋却も少しずつ軌道に乗ってきたが依然として3万頭からの牛豚が患畜、擬似患畜として、今もウイルスを発散し続けている。恐ろしいことだ。
急がねばならない。
一方、埋却地も2,3日でガスが噴出し匂いが充満してくる。環境対策、そして何よりも生産農家の心理的なケア、また殺処分に当たる人達のやりどころのない心情に対するケア・・・・・・など。
現地では解決しなければならない問題が山積している。

午後、再び細かい雨は降り始めた。のどかな田園風景は何事もなかったかのように薄靄に包まれていく。
今日で、私の農林水産副大臣としての現地口蹄疫対策本部長の任務は終わった。


宮崎から東京にトンボ帰りして間もなく、菅総理から電話をいただいた。

 


12 queries. 0.010 sec.
Powered by WordPress Module based on WordPress ME & WordPress