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藤岡真blog

2010-07-13

唐沢俊一「落語」について語る

10:27

文七元結』は知ってるよね?

『トンデモ創世記2000』稲荷の千里寄せと三題噺 P.145

志水●文七元結ってあれが三題噺だったって。

唐沢●文七元結は知らなかったけど、『かちかち山』なんかそうですね。

志水●文七元結の話はね、歌舞伎を見に行ったときに知ったんですよ。プログラムに載っていて、高島嘉右衛門の家で、伊藤博文たちがいる前でやったって話なんですよ。

唐沢●もっとい屋っていうのと、みなげ屋っていうのと。それにしても、高島嘉右衛門ですか。やっぱり志水さんが本を見てると、志水さん守備範囲のものがあちこちに出てきますね。

 全然かみ合っていません。志水一夫面白い薀蓄を披露しようとしています。あの人情噺の名作は実は三題噺だった。落語ファンなら「へえー!」と言いたいネタです。ここで唐沢は、「そうなんですよ、さすがよくご存知で」でも「いやあ、知らなかった、志水さん凄いねえ」でも答えりゃいいと思うんですが、

唐沢●文七元結は知らなかったけど、『かちかち山』なんかそうですね。

 なんだよ、『かちかち山』って。なんとか、自分も言及出来るネタにもっていこうという下心は分かりますが、『文七元結』という大ネタに比べたら、余りにせこいネタ、というか噺でもありません太宰治の『かちかち山』を落語と勘違いしたのかしら)。さすがに、志水は無視して先に進む。ところが、これが大した話じゃなくて、どうやら歌舞伎の『人情噺文七元結』のプログラムに載っていたネタのようです。三遊亭園朝が「高島嘉右衛門の家で、伊藤博文たちがいる前でやった」のが初めらしい。

 それはいいんですが、唐沢の次の言葉が妙におかしい。

唐沢●もっとい屋っていうのと、みなげ屋っていうのと。それにしても、高島嘉右衛門ですか。やっぱり志水さんが本を見てると、志水さん守備範囲のものがあちこちに出てきますね。

 だって、直前に「文七元結は知らなかった」と言っていたのに、なにが「もっとい屋っていうのと、みなげ屋っていうのと」なんでしょうか。知らなかったんでしょう? 必死でもとネタらしき噺を挙げていますが、『身投げ屋』と『文七元結』は、身投げは出てくるものの全然違う噺。他にも『唐茄子屋政談』『星野屋』なんて身投げの話はいくらでもありますしね。もっとい屋に至っては、とっさになんでもいいから口にしたってことでしょうか。志水一夫の話の続きが聞きたかったなあ。それに、「やっぱり志水さんが本を見てると、志水さん守備範囲のものがあちこちに出てきますね」ってねえ、観劇した歌舞伎のプログラムなんだから、守備範囲のものもなにも。

 しかし、『かちかち山』か(苦笑)。

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トンデモブラウトンデモブラウ 2010/07/13 15:42 三題噺から『かちかち山』の繋がりがよく解らないんですが、誰か解説してください。
『かちかち山』って落語の即興だったの?
この人対談も無理じゃん…知ってたけど。

藤岡真藤岡真 2010/07/13 15:52 >トンデモブラウさん

「婆殺し」「放火」「泥舟」とかの三題噺なんでしょうか、ってそもそも落語じゃないって。

岸田裁月岸田裁月 2010/07/13 17:18 「文七元結」が三題噺だというのは初耳です。唐沢さん、そこに喰いつかないと。…まあ、知らなければ喰いつけないのでしょうが。

儒学者儒学者 2010/07/13 17:23 藤岡先生

>『文七元結』は知らなかったけど

……唐沢氏は立川流に出入りしていたようなことを本で書かれていたような記憶が(古書関係の本で小室直樹について触れていた項だったと記憶してます)あるのですが(元立川流のブラックさんとも親交ありますよね)、「文七元結」って談志師匠の持ちネタだったような……。
知らんで済むんでしょうか。

>「かちかち山」

多分太宰でしょうね。柳家一門の落語家の方が、狸が出てくる噺(「狸賽」とかですかね)を勉強する時、師匠から太宰の「かちかち山」を読めと勧められた、インタビューで語っておられたのを読みました。「御伽草子」は全般的に落語の影響があると言われているようですね。
でも、決して落語ではないし、ましてやトンデモブラウさんが書かれておられるように三題噺ではないですよねえ。

それにしても、「文七元結」が三題噺だったとは知りませんでした。お題は何だったんでしょうかね。それが気になります。
(「吉原」「夫婦喧嘩」「身投げ」とかですかね。)

藤岡真藤岡真 2010/07/13 17:39 >岸田裁月さん
「へえ! それは初耳です」
「園朝が、横浜の高島嘉右衛門の家に招かれたときに、客の伊藤博文の前で、演じた三題噺で、お題は――」
 と、なりますわねえ、普通。それが『かちかち山』。

藤岡真藤岡真 2010/07/13 17:42 >儒学者さん
>『文七元結』は知らなかったけど
 これは「『文七元結』が三題噺とは知らなかったけど」という意味だと思います。しかし、で、お題はなんだったのと訊きたくなるはずが、『かちかち山』ですから。『身売り』『身投げ』『身請け』の三題とか。

うさぎ林檎うさぎ林檎 2010/07/13 17:48 >『文七元結』は知らなかった

唖然、愕然、驚愕。

儒学者儒学者 2010/07/13 17:53 藤岡先生

>これは「『文七元結』が三題噺とは知らなかったけど」という意味だと思います。

仰る通りだと思います。ちょっと軽率な読みでした。
唐沢氏の場合、知らないことでも「知ってる」って言いがちであるのを失念しておりました。
この会話でも、「『文七元結』が三題噺であることは知らないけど、別の三題噺は知ってるよ」って感じなんでしょうね。(しかも、それが「かちかち山」じゃあなぁ…。)
知らん話が出てきても素直に尋ねられない人は困ったものですね。このお方には好奇心ってものがないのでしょうか。

>『身売り』『身投げ』『身請け』の三題とか。

お茶を噴いてしまいました。

藤岡真藤岡真 2010/07/13 20:26 >うさぎ林檎さん
>『文七元結』は知らなかった
 これは儒学者さんのコメントにも返しましたが、『文七元結』が三題噺とは知らなかったという意味だと思います。でも、知らなかったなら、それはどんなお題なのと好奇心のアンテナがぴくぴくするはずなのに、「あーだったらおれも知ってるよ『かちかち山』」と見栄をはるのが思い切り情けない。


>儒学者さん

 自分の薀蓄を披露する隙を窺っているだけで、「『文七元結』が三題噺だった」なんてことには、全く興味がないようです。
 こんな言い方は差別になるかも知れませんが、六十年近い人生、出会ってきた知的な皆さんとは、明らかに“空気”が違う人です。

nekoneko 2010/07/14 03:03 お母様と歌舞伎見物に行かれてたし、チケットを手配してくれたブラック師匠も「文七ぶっとい」ってやってるのに失礼な知らなさ加減ですね。

藤岡真藤岡真 2010/07/14 10:02 >nekoさん

 せっかく志水一夫が面白いネタを披露しようとしているのに、そんな手柄が悔しいのか、自分のつまらないネタに引き戻そうとする態度の浅ましさ。

2010-07-12

徹底検証 唐沢俊一番外編 おれが「と学会」を批判する理由

10:27

「坊主憎けりゃ寺まで憎い」は困りもの

twitterでおれが「と学会」を批判し、それに菊池誠がRTを付け、それを見た伊藤剛が反論、その後、菊池vs伊藤という形で議論が進み、世間様の目には、伊藤氏(およびそのシンパ;含むおれ)が菊池氏に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」的な難癖をつけて苛めたという印象だったようだ。一番困るのは何の事情も分からずにイッチョカミする馬鹿なのだが、そもそもおれとか伊藤氏がなにを主張したのかを先に明らかにしておこう。

と学会とは言わずと知れたトンデモ本」を糾弾する論客の集団。その糾弾も、徹底的な科学的検証というよりは、笑いものにするというスタンスだったため、広く受け入れられた一方、唐沢俊一のようなトンデモまで許容してしまったのは皮肉である。

 まあ、お気楽な仲良し集団であって、それを傍からとやかくいうようなことではない。おれ自身、最初の本トンデモ本の世界』を読了した後、山本弘に手紙を送り、それを山本会長がトンデモ本の逆襲』のあとがきで紹介、さらにトンデモ本の世界R』では、わざわざ一項目立てて、おれが紹介した、大藪春彦餓狼の弾痕をとり挙げてくれた(職業、居住地、本名まで書かれたのはちょっと困ったけどさ)。その後、おれは、一般公開された、日本トンデモ本大賞には毎年参加し、山本会長の他に、唐沢俊一とも直接話をしたし、このころは蜜月状態にあったといっていいだろう。

 山本弘とはその後も、何回かメールのやりとりをした。新著が出たときには必ず読んで、感想も送っていた。そんなときに、あの『新・UFO入門』の盗作問題が発覚したのだ。

 この件は、もうあちこちで書かれ検証もされているが、一言でいうと前代未聞の盗作事件だった

 なぜなら、多くの盗作事件の論点は「似ている似ていない」「似ているのは偶然」といったところにあるのに、唐沢はそこでは争わず、あっさりコピペを認め「これは引用であり、著作内にその旨を記さなかったのはケアミス(ケアレスミスのつもりらしい)だった」と言訳したのだ。しかし、もとの文章を切り貼りし、言い回しなども微妙に変え改竄した文章は到底「引用」と呼べる代物ではなく、これまで唐沢俊一にはある意味尊敬に近い想いを抱いていたおれは呆れてしまった。唐沢に連絡しようにも、メアドすら公開しておらず(後に、「この件に関しては誰一人連絡してこなかった」と『創』でせせら笑っていた)、仕方なく山本会長に苦言を呈した。

 これに対する山本弘の返事は「盗作問題は個人の問題だから、『と学会』は関与しない。唐沢氏はこれまで原典は明らかにしてきた人なので、その言葉を信じたい」といったものだった。前段は納得したが後段には呆れた。信じるも信じないもないだろう。

 そこで、おれは唐沢の著作を検証してみた。そうしたら、出るわ出るわのパクリとガセ。それを山本弘に送りつけ、これでも信じるなどと言えるのかと質したが、梨の礫、以来、いくらメールを送っても無視の態度を貫いている。

 そして、ここからが主題だが、まず、唐沢俊一と並ぶ中心メンバーの一人、志水一夫(故人)は、自分のblog(現在はプライベートモードのため閲覧不可)で、こんなことを書いたのだ。

2007/08/18

 アマゾンで品切れになっていて、定価の二倍近くのプレミアが付いている唐沢俊一さんの 『新・UFO入門―日本人は、なぜUFOを見なくなったのか』 ですが、実はまだ楽天ブックスビーケーワンでは、新刊が定価で入手可能です (^^)/。

 でも既に品切れになっていたならごめんなさいです m(_ _;)m。

 実はこの本、ある事情で増刷時には改訂されることになっているので、初刷を手に入れるのは今の内なんです――しかし、悪意ある盗用なら、あんなマンマのコピペするわけがないよねえ (少しはごまかそうとする意図が働くもんです (^^;)。

 つまり、おれは、こうした馬鹿発言が許せない、と言っておるのよ。志水一夫という名前は、オカルト方面ではビッグネーム、唐沢と同じ「と学会」の会員であることは周知の事実である。その人物が、冗談めかしてこんなことを書けば、事情を知らない人間はあっさり信じてしまうだろう。そうした、社会に対する自分の影響力をなんら考慮しない軽口。しかも、初版本は値打ちが出るから今のうちに買っておけと言う態度においては、言うべき言葉も知らないが、いい機会だから死者を冒涜させてもらう。

 結局志水一夫という男は、金に飽かしての古書の買い漁りとセーラームーンコスプレと遅刻しか能のない馬鹿だった。

 さらに、「と学会」中心メンバー、皆神龍太郎朝日新聞社員;久保田裕)は、トンデモ本の世界T』『人はなぜ「占い」や「超能力」に魅かれるのか』(樺旦純 PHP研究所)を取り上げてこんなことを書いている。

 順番が微妙に入れ替えられているものの、誰がみても明らかに内容は同じ。 〜 中略 〜 つまりこの本は、ネタの多くを『トンデモ超常現象99の真相』からパクって、そのまま書き写して造っちゃったというパクリ・トンデモ本なのだ。(P182)

 まあ、よりよってヤバイところからパクリましたねえと苦笑したいところなんだが。後の文章を読んで驚いた、

 大部分がこれまた信州大学の菊池聡助教授らの『不思議現象なぜ信じるのか』(北大路書房)や、テレンス・ハインズの『ハインズ博士「超科学」をきる』(化学同人)などからの書き写しなどである。確かに巻末に参考文献としていずれの本も挙げてはいるものの、この書き写し方は、参考とか引用の範囲を明らかに超えているんじゃないでしょうか?(そもそも引用だったら、なんで微妙に書き換えてあるの?)(P184)

 酷いパクリ本ではあるが、少なくとも、巻末に参考文献としていずれの本も挙げてはいるのだから、唐沢よりははるかにまし。さらに「そもそも引用だったら、なんで微妙に書き換えてあるの?」という言葉をなんで唐沢俊一に投げかけないの。

 つまり、他人の著作を「パクリ・トンデモ本と誹謗して稼いでいる「と学会」の中心メンバーに史上最強の盗作王、「パクリ・トンデモ著作大多数」という唐沢俊一がどーんと構えていていいのかねと、おれは皆神龍太郎朝日新聞社員;久保田裕)に訊きたいわけさ。

 おれが「と学会」を馬鹿と決め付けたのは上のような事情があるからだ。

 菊池誠が脳天気に「と学会」会員を名乗り続けていれば、「あの有名な阪大教授の菊池先生が会員の『と学会』、その中心メンバーである唐沢俊一先生の著作は、まかり間違ってもトンデモ本であるはずがない」という勘違いを引き起こしかねない。いわば、結果として詐欺の片棒を担ぐことになる。そう警告したのだ。

 それに対して、唐沢という人物とは付き合いもないし、よく知らないと返事してくる、菊池誠なる人物のIQも気になるところ。

 ところで、オカルト疑似科学の研究で有名な菊池先生って、菊池誠じゃなくて菊池聡信州大学人文学部准教授じゃないのか。

トンデモ本の世界 (宝島社文庫)

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トンデモ本の逆襲

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トンデモ本の世界R

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トンデモ本の世界T

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餓狼の弾痕 (角川文庫)

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不思議現象 なぜ信じるのか―こころの科学入門

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トンデモ超常現象99の真相

トンデモ超常現象99の真相

ロマンスロマンス 2010/07/12 10:41 >>オカルトや疑似科学の研究で有名な菊池先生って、菊池誠じゃなくて菊池聡信州大学人文学部准教授じゃないのか。

うわっ! 間違えてた。『不思議現象 なぜ信じるのか』もちゃんと持ってるのに。お恥ずかしい……。

それにしても,『トンデモ本の逆襲』に藤岡さんが登場していたとは初めて知りました。
いろいろな本を山本会長に紹介したのですね。

藤岡真藤岡真 2010/07/12 10:53 >ロマンスさん
 わたしも混同しておりまして、twitterのRTのときは「あなたみたいなちゃんとした学者が」といった気持ちで返していたのですが、途中で別人だと気付き、どうでもよくなったような(酷えなあ)気分でした。

トンデモブラウトンデモブラウ 2010/07/12 11:09 菊池誠先生も天羽優子先生も、ニセ科学批判の最前線にいる科学者でしょう。
どちらもかんとした学者でしょう。(菊池先生は神。)
で、私はどっちかっていうとそこのウォッチャーだったので、「唐沢?誰?」「と学会?まだ食べたことない。」という程度の認識でしたが、町山氏のwebでトンデモ物件として紹介されてて、その余りのアホっぷりに愕然とした口です。
「と学会」の唐沢盗作事件でのみっともなくも情けない反応を見て、ニセ科学批判の瑕疵を少なくしたい一心で告げ口してたんですけどね。
私の文章力の欠如のせいか、一向に好転せずグッチョグチョのまま退場させられた感じ。
まぁ色々あるんでしょう。

藤岡真藤岡真 2010/07/12 11:14 >トンデモブラウさん

 一部の人からは「と学会」というのは凄まじいスティタスのようです。著作名にトンデモを冠した本が、純正、亜流多々あることからも、大した利権のだと推測できます。ちゃんとした科学者までが、そんなものに憧れる。いや、B級指向みたいな詰まらないポーズなのかなあ。

ertitertit 2010/07/12 17:47 > オカルトや疑似科学の研究で有名な菊池先生って、菊池誠じゃなくて菊池聡信州大学人文学部准教授じゃないのか。

これは、「どっちも有名」が正しいと思います。

藤岡真藤岡真 2010/07/12 18:15 >ertitさん

 さっき調べたら、菊池誠の著作を菊池聡の著作だと思い込んで読んでいました。『不思議現象 なぜ信じるのか』の印象が強かったのと、同ジャンル、菊池苗字の一文字名前。
 迂闊でした。

猫遊軒猫八猫遊軒猫八 2010/07/12 20:27 「餓狼の弾痕」は山本弘が二度紹介しましたが要領を得ず実際に買って読みショックを受けました。
藤岡さんがウェブサイトとmixiで紹介された「空手の物理学」もすごい本ですね、真面目な内容なんですけど。

と学会にはもう期待しません。

ポぷリポぷリ 2010/07/12 20:41 >唐沢氏はこれまで原典は明らかにしてきた人なので、その言葉を信じたい
何で疑似科学を批判してきた山本弘がこういう時に限って「信じたい」などと言い出すのか。
自分が不利になると事実関係を検証するより情実を優先させたりするから「キング・オブ・ダブルスタンダード」と揶揄されるんだよ。
>結局志水一夫という男は、金に飽かしての古書の買い漁りとセーラームーンのコスプレと
40過ぎのおっさんのセーラームーンのコスプレなんて醜悪の極みだと思うんですが。
そんなモノを見てしまった藤岡さんにはご愁傷様と言うほかはありません。
私の知人でコスプレイヤーをやっている人も数人いますがみんな見苦しいモノは他人に見せないようにと気遣っています。

藤岡真藤岡真 2010/07/12 21:24 >猫遊軒猫八さん
 正確に言うと『逆襲』のあとがきでは、山本会長はビビッてたんですよね。つまり、大藪春彦はビッグネームで、自分も角川から本を出していると。で、『トンデモ本の世界R』のときは、大藪氏が故人だからいいんじゃないかと。

>ポぷりさん
 40過ぎでなにを趣味にしようが勝手ですが、少なくとも、「盗作」なんて社会問題のフィールドに出てきたときは、そんな趣味を地盤に議論して欲しくありません。顔文字書いて苦笑で、そんな問題に関わろうなんて、そこらへんが社会人でない方には理解できないのかと。

KAGEKAGE 2010/07/12 21:58 ああ、なんか自分の恥が思い出されて少し読むのが辛いw
私も「と学会」の本をある時期まで好んで買ってましたし、唐沢俊一の著作も一時期までよく読んでました。
当然私も漫棚通信さんの件で、おかしいと思い始めたのですが。
それでもマトモな唐沢への批判や、唐沢本人のきちんとした謝罪があれば、まだ付き合っていたかもしれません。都合の悪い事はスルーして、人の揚げ足だけは取る連中だと気付いた今では、本当になんでこんな連中の本を好き好んで読んでいたのかと・・・。
「唐沢に言えよそれ」って事は他人には平気で言ってるのに、身内には突然甘くなるんですもの、付き合う気はなくなりました私も。
しかし山本会長はわかりやすい人ですねえ。一方的に悪口言うのは好きだけど、ケンカや論争はしたくないって態度が。スネ夫か。

藤岡真藤岡真 2010/07/12 22:04 >KAGEさん
>スネ夫か。
 まさにそうですね。唐沢ごとき追い出せない。思い切りなめられてます。この先、なめられ続けでしょう。唐沢は少なくとも破滅の日まで、と学会中心メンバーと名乗り続けると思います。

topiesotopieso 2010/07/13 11:56 >藤岡真さん
>唐沢は少なくとも破滅の日まで、と学会中心メンバーと名乗り続けると思います。
 まるで横山光輝描くところの「三国志」他で、悪宦官が国を滅ぼすパターンそのままですね。

yonocoyonoco 2010/07/13 12:18 本題とは関係ないんですが、「餓狼の弾痕」紹介した方藤岡さんだったのですね…

外部の人は笑えても、仲間内は笑えないのがと学会の限界なんでしょうね、月並みな感想ですが

藤岡真藤岡真 2010/07/13 13:16 >topiesoさん
 妻とは事実上離婚状態。屈託なく話せる友は減る一方。残るは愚かな取り巻きのみとあっては、もはや失うものはないもないという状況。滅びまで一直線です。

>yonocoさん

 少なくともあの時点で『餓狼の弾痕』のオカシサに共感してくれたのは、山本弘だけでした。自然に友好関係が生まれ、楽しくやってきて……。洒落とマジの区別がつかない餓鬼だったと分かったときのショックたるや。

2010-07-11

徹底検証 唐沢俊一追討日記 その23 ロナルド・ニーム

10:27

船をひっくり返した男【訃報 ロナルド・ニーム

 映画監督ロナルド・ニーム、6月16日に死去。99歳。

 かのポセイドン・アドベンチャーで一躍名を上げた監督であるが、それまではこの人の名は主にテレビの洋画劇場でときおりかかる、小じゃれたユーモア・アクションで覚えたものである。ジャームズ・ガーナーがとぼけたヒーローを演じるダイヤモンド作戦』とか、マイケル・ケインとハーバート・ロムの演技対決が面白かった『泥棒貴族』など、どちらもテーマ曲が素晴らしかったこともあって印象的で、イギリス出身の監督らしいユーモアが随所に光るところがお気に入りだった。

 そういう作風の監督がどうしてまたパニック映画に抜擢されたのかわからないが、ニームヒッチコックのもとでアシスタントカメラマンとして映画界にデビュー、さらにマイケル・パウエルエメリック・プレスバーガーのコンビの映画『One of Our Aircraft Is Missing』では特殊撮影でアカデミー賞候補にまでなっている。上下逆転した豪華客船の中の彷徨、というカメラアングルの難しいサスペンス、ということで、撮影に詳しい監督を、とプロデューサーのアーウィン・アレンが抜擢したのかもしれない。ともかく、これで世界的大ヒットを飛ばした(公開年の興業成績をコッポラの『ゴッドファーザー』と分けた)あと、パニック・サスペンスの大御所みたいに扱われるようになり、パニックでSF大作メテオ』、サスペンスでフレデリック・フォーサイス原作の『オデッサ・ファイル』を監督したが、正直な話、両者ともどうにも……な出来であった。

 あくまでもこの人は小粋なアイデアで観客をニヤニヤさせながらひっぱっていくのが得意な監督。『ポセイドン・アドベンチャー』も、思ってみれば船がひっくり返るパニックよりも、神を信じられなくなった神父が神を憎むことで神の存在を再認識する、とか、警察署長と元売春婦の奥さんの凸凹コンビ夫婦とか、そういう人間ドラマの描写の方が印象的だったのであった。まあ、晩年がちと残念ではあったが(小粋なアクションを撮る監督というのはジャック・スマイトにしろジョゼフ・サージェントにしろ、何故か途中で大作を手がけて失敗、才能が鈍化してしまうことが多い)、それでもサーの位を貰ったり、81歳で離婚して82歳で再婚したり艶福家としても名を馳せ、幸せな一生ではなかったかと思う。追悼の意味を込めてDVDで鑑賞を……と思っても、パニック大作以外、作品の評価での代表作である『ミス・ブロディの青春』を含め、まるでDVD化されてないのだな。……再評価の待たれるところである。

 オリジナルは改行が滅茶苦茶で読みにくいので、レイアウトは変更してあります。

 具体的な検証を始める前に、今回の唐沢のやり口をちょっと想像してみようか。

 まず、ネットor新聞で、ロナルド・ニームの訃報を発見。『ポセイドン・アドベンチャー』の監督と知って、ああこりゃネタに使えると考えた。早速、ネットで検索、『ダイヤモンド作戦』『泥棒貴族』『ミス・ブロディの青春』『オデッサ・ファイル』『メテオ』という、聞き覚えのある作品名を見つける。で、でっち上げたストーリーはイギリス出身の監督らしいユーモアが随所に光る作品を監督してきたが、なぜか『ポセイドン・アドベンチャー』に起用される。映画はヒットしたが、その後は『オデッサ・ファイル』『メテオ』といった駄作しか作っていない。『ミス・ブロディの青春』で賞を取ったらしいが、ネットのストーリー紹介もよく分からないので、受賞作ってことで。合掌」というところかしら。

 おれは、ダイヤモンド作戦』(1966年)も『泥棒貴族』(1967年)もリアルタイムで見ているが、「テレビの洋画劇場でときおりかかる」映画だったのかなあ。

「テーマ曲が素晴らしかった」とだけ書いてスルーしてるけど、『ダイヤモンド作戦』の主題歌は、あのフランク・シナトラの“Strangers In The Night”だぜ。映画よりはるかに有名になっちまった曲なんだけどね。

マイケル・ケインとハーバート・ロムの演技対決が面白かった『泥棒貴族』

 この映画はなんと言っても踊り子を演じた、シャーリー・マクレーンと詐欺師のマイケル・ケインの演技上手さを称えたいんだが、まあ感想は見た人それぞれ、ってことで。

で、主題歌というなら、『ポセイドン・アドベンチャー』の主題歌、“The Morning After”は、モーリン・マクガヴァンが唄って大ヒット、'72のアカデミー主題歌賞も受賞しているんだが、まあ、そんな誰でも知っていることもスルーってことで。

 神を信じられなくなった神父が神を憎むことで神の存在を再認識する、とか、警察署長と元売春婦の奥さんの凸凹コンビ夫婦とか、そういう人間ドラマの描写の方が印象的だった

 ほう、人間ドラマかね。誰の目からも足手まといとしか見えなかった、肥満体の小母さん(シェリー・ウィンタース)が、水泳の名選手という過去の持ち主だったという意外な展開、そして、水底から脱出できなくなった人を救った後に――いけねえ、涙が出てきちまった。見てりゃあ絶対にスルー出来ない人間ドラマだぞ(アカデミー助演女優賞にノミネートされた)。恐らく、唐沢が書いてる「警察署長と元売春婦の奥さんの凸凹コンビ夫婦」なんてのはwikipediaのキャスティング欄の「リンダ・ロゴ(ロゴ刑事の妻・元売春婦):ステラ・スティーヴンス」なんて所から類推したんだろう。直ぐ下の「ベル・ローゼン(中年婦人・元水泳選手):シェリー・ウィンタース」には気がつかなかったのね。それと、ロゴ刑事は警察署長ではなかったはず。ついでに書けば、船長を演じたレスリー・ニールセンは、これが最後のシリアスな演技ではなかったのか。この後『フライングハイ』でコメディアンとして大ブレークする。

 お馴染みの不幸な晩年ということで、「『オデッサ・ファイル』も『メテオ』も正直な話、両者ともどうにも……な出来であった」と総括する。

 燃料が切れた核ミサイル、"ピョートル大帝"が、突如宇宙空間で停止するというトンデモSFパニック『メテオ』はともかく、(理不尽な話ではあったが)ジョン・ボイトとマキシミリアン・シェルの二大名優が対決する『オデッサ・ファイル』は充分に面白かった。

 で、唐沢は、

 小粋なアクションを撮る監督というのはジャック・スマイトにしろジョゼフ・サージェントにしろ、何故か途中で大作を手がけて失敗、才能が鈍化してしまう

 と決め付ける。『動く標的』などの監督ジャック・スマイトは『エアポート'75』を監督したが、これは低予算映画で「大作」とは言えまい。TV出身のジャック・スマイトが起用されたのも低予算のためだろうし、別段「失敗」したわけでもない。「才能が鈍化」って、もともと寡作な監督なんだけどね。ジョゼフ・サージェントに至っては、『サブウェイ・パニック』『ジョーズ'87/復讐篇 』なんて映画も監督したが、こちらも、もともとはTVの人間(『ナポレオン・ソロ』シリーズ)で、今も現役でTVドラマのディレクターを続けている。

作品の評価での代表作である『ミス・ブロディの青春

 見ていないのだから仕方ないんだろうけど、本来語られる作品はこれじゃないかな。

メテオ<完全版> (2枚組) [DVD]

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ポぷリポぷリ 2010/07/11 13:37 >作品の評価での代表作である『ミス・ブロディの青春』
原作はミュリエル・スパークの代表作ですね。
見つからないので未読なのが残念。

トンデモブラウトンデモブラウ 2010/07/11 13:57 追討とはいえ、え〜加減な履歴はいりませんなぁ。
作品の感想は主観バリバリで構わないけど(というかそれが普通)、その人のパーソナリティに関しては勝手に妄想しちゃダメだよね。
そんな簡単なことも解らないから、追討の度に総バッシングなんでしょう。

というかみなさん、映画詳しいねぇ。
私なんか好きな映画でさえ、「そんな人出てたっけ?」状態ですけど。
なので、観た記憶はあるけど、ここで挙がった映画はスルー。

藤岡真藤岡真 2010/07/11 14:22 >ポぷりさん
>『ミス・ブロディの青春』
 第二次大戦前、イギリスでファシズムを指示することが一般的なことだったことが分かります。映画はマギー・スミス(ハリー・ポッター!)の代表作。

>トンデモブラウさん
 作品に対する思い入れもない。見たことさえない。そんな人物を無理矢理同人誌のネタ用に追討するとこうなるという見本でしょう。
 主観が全くないというのは、ある意味凄い。

蘭月新十郎蘭月新十郎 2010/07/11 16:35 正直言いまして、私は『ポセイドン・アドベンチャー』くらいしかこの方を知りません。
それでも読んでいて故人への想いとかが伝わらない文章にげんなりしました。「小粋」って書けば外国映画をおしゃれに紹介できると信じているみたいですね。wikipediaからコピペしたのに映画の紹介文にすらなっていない。
ここまでして追討しなければいけない理由を知りたいです。こうなるとP&Gももちろん問題ですが「唐沢俊一の追討をやめさす会」でも作って本人にやめてもらうしかないです。

藤岡さんが検証した文章の中年婦人のくだりの方が、ちゃんと読んでいるほうに映画の雰囲気が伝わりましたよ。

藤岡真藤岡真 2010/07/11 17:05 >蘭月新十郎さん

 まあ、無料で公開している自分のサイトに、なにを書こうが勝手なので、やめさすわけにはいかないでしょうが。その代わり検証して叩くのも自由だということで、思い切りやらせてもらってます。

うさぎ林檎うさぎ林檎 2010/07/11 17:36 『ポセイドン・アドベンチャー』はパニック映画なのに最後の最後のジーン・ハックマンの運命に驚愕したのを覚えています。

>肥満体の小母さん(シェリー・ウィンタース)が、水泳の名選手という過去の持ち主だったという意外な展開

あのシーンは思い出すだけでウルウルします、ご夫婦の静かなやり取りがとても胸を打ちました。

藤岡真藤岡真 2010/07/11 17:53 >うさぎ林檎さん

 水が溜まっていて、この先は潜っていかねばならない。小母さんがはっとした表情になるので、客は笑います。もう無理だよ、小母さん。ところが、そうじゃなかった。わたしはかつて水泳の選手だった(確かメダルを持っていたんでしたっけ)。今までは足手まといだったけど、これからは皆さんのお役に立てると――いかん、また涙が……。

ポぷリポぷリ 2010/07/11 20:21 「ポセイドン・アドベンチャー」(子供の頃に見たっきりですが)の原作者が「スノーグース」(英国のロックバンド、キャメルのアルバム「スノーグース」の元ネタ)
だったんで驚愕しました。
ちなみにギャリコの「Manxmouse」の邦題「トンデモネズミ大活躍」を、と学会藤倉がパクって頭に「トンデモ」を付けるようにするようになったなんて…
藤倉は故ポール・ギャリコ氏及び故矢川澄子氏に土下座して謝罪しろ!

ポぷリポぷリ 2010/07/11 20:24 訂正
ポセイドン・アドベンチャー」(子供の頃に見たっきりですが)の原作者が「スノーグース」(英国のロックバンド、キャメルのアルバム「スノーグース」の元ネタ)
の作者であるポール・ギャリコだったんで驚愕しました。
ちなみにギャリコの「Manxmouse」の邦題「トンデモネズミ大活躍」を、と学会藤倉がパクって頭に「トンデモ」を付けるようにするようになったなんて…
藤倉は故ポール・ギャリコ氏及び故矢川澄子氏に土下座して謝罪しろ!

藤岡真藤岡真 2010/07/11 20:41 >ポぷりさん

当時の「トンデモ」の知名度を考えたら、パクリとは言えないでしょうね。ポール・ギャリコには『ハイラム氏の大冒険』という傑作があり、1960年代にTV番組「ハイラムくん乾杯」というタイトルで(たしか、スポンサーがアサヒビール)オンエアされていました。わたしが後年フェンシングの選手になったのは、この番組の影響大です。蝙蝠傘によるフェンシングがかっこよかった。なお、宝田明 → 石坂浩二主演のTVドラマ「平四郎危機一髪」はこのドラマのパクリで、まんま蝙蝠傘によるフェンシングをやっていました。

えびすえびす 2010/07/11 23:10 「演劇人」唐沢俊一が「演技」を語ると、ひたすら分かりにくく、ウスい内容になってしまう原因の一つに、様々な形態と規模がある舞台、テレビ、映画がすべて他人には理解不能な唐沢基準があるからではないでしょうか。自己判断によるいい、悪いだけが殴り書きされ、演技の意味や質、キャラクターが無視される。
ケインとオリビエの「探偵スルース」なら「演技対決」で語ってもおかしかありませんが、「泥棒貴族」ねえ…。唐沢俊一には、ケインが書いた「映画の演技」(構想社)を読んでもらいたい。演じるという行為をステロタイプでくくる愚を知ってほしいものです。
「オデッサ・ファイル」は結構面白かったのですが、「スクリーン」誌での双葉先生は思った以上に厳しい評価で、あれーっと声を出した記憶があります。唐沢俊一(たぶん見ていない)は、双葉評に引きずられて駄作扱いをしたのではないかと。些末な事ですが、カナ表記は「ジョン・ボイト」が正しいと思います。
「ポセイドン・アドベンチャー」をロードショーで見た時、私は小学生でしたけれど、その時からテレビ放映で見る度に思う事。私にとって、あの映画はハックマンの映画でもボーグナインの作品でもない。ニームでも、もちろんアレンでもなく、シェリー・ウィンタースの映画なんです。若かりし頃のウィンタースの映画は1本も見ていませんが、新聞に彼女の訃報が載った晩は、「ポセイドン」での最期の独白を思い出してほろりとしたのを思い出します。個人の思い出の落書きが長くなって申し訳ありません。追悼は、思い入れがないと追討になってしまうのだな。

猫遊軒猫八猫遊軒猫八 2010/07/12 05:56 早くもTwitterでつぶやかれていますがつかこうへいさんの追討を書くのではないかと警戒しています。

藤岡真藤岡真 2010/07/12 07:56 >えびすさん
 日記の追悼なんだから、なにも、映画評を書かなくたっていいわけでね。どんな思い入れがあるか。それに尽きると思います。ラッシャー木村なら唯一「巨大な塊、と形容したくなるような体格を駅のレストランの小さな椅子に押し込めた」姿という目撃譚のみが、格別面白くはないけど、ネットからのコピペ記事から突出していました。
>カナ表記は「ジョン・ボイト」が正しい
 ねえ、そうですよねえ? 確認のためにGoogleで検索したらいきなり「もしかしてジョンボイド」って出たんで、よく確認もしないで、いけねえいけねえと「ボイド」にしちまいました。よく見りゃあ、直ぐ下に"JON VOIGHT"と書いてあるのに。

>猫遊軒猫八さん
 書くでしょうねえ。だって癌だと分かった時点で、早めに追討したくらいですから。

SY1698SY1698 2010/07/12 23:57 もし、つかこうへい氏に「追討」かますようなら、総攻撃。
当方はその内容を晒し上げる覚悟です。どうせ下劣な内容にするのかと思うと腹が立つ。。。

藤岡真藤岡真 2010/07/13 08:59 >SY1698さん

まあ、読まずとも内容は想像できます。

早稲田の小さな劇場で初めて見て衝撃を受けた。追っかけた。同じ演劇人として影響された。しかし、一般受けするようになってからは俗に堕した。広末涼子、あ、ほれたなと分かった。黒木メイサ〜略、石原さとみ〜略。最近の芝居は見ていて辛かった。死んだと聞いてほっとした。天国で昭和の香りのする芝居を続けてほしい。合唱。

 ねえ……。

2010-07-10

徹底検証 唐沢俊一追討日記 その22 デニス・ホッパー

10:27

 映画(『地獄の黙示録』)でも私生活でも泥沼だった男

 5月29日死去。74歳。

 前立腺ガンが骨にまで転移し、余命いくばくもないことは本人も認識していたようだ。最近はそういう場合は無理に延命をせず、痛みだけを除去する加療を行なうので、苦しみはなかったものと信じるモルヒネ投与だろうか。一時はハリウッドのドラッグ使用者と言えばホッパーが代名詞みたいなものだった。そこから彼は自力で立ち直ったわけだが、人生の最期にまたドラッグのお世話になるというのは皮肉なことだ、と苦笑していたかもしれない。

 3月にはハリウッドの星(ハリウッド大通に名前つきのプレートが埋め込まれる栄誉)が与えられ、ジャック・ニコルソンデビッド・リンチがかけつけてお祝いを述べた、という“いい話”が伝えられ、よかったと思いながらも“この反逆児には似合わねえな、年取って善人になってしまったかな“と思っていたら、死の床で5人目の妻に離婚訴訟を起し、泥沼の係争が行われていたと聞いて、

「うん、それでこそホッパーらしい」

とうなづいてしまった。彼の5人の妻の中には歌手のミシェル・フィリップスもいるが、彼女との結婚期間は8日間だった。

イージー・ライダー』(69)は残念ながらリアルタイムでは見ておらず、反逆児の名前だけが一人歩きしており、やっと公開時にリアルで見たのは『地獄の黙示録』(79)。神話的構造を持ったこの映画の中でホッパーはもっとも現実的・世俗的な戦場カメラマンを演じており、何か彼が出てくるとホッとしたのを覚えている。パンフレットには”かつての問題児もおとなしくなってしまった“と書かれていた。ドラッグでこの撮影の時はセリフもろくに覚えられない状態だったらしい。

 このまま身を持ち崩して終わりかな、と思っていたところで大逆転ヒットを放ったのがデビッド・リンチの『ブルー・ベルベット』(86)だった。それまでのヒッピー風イメージを一新し、一応きれいな格好をしながらも、酸素吸入器をスーハー言わせながらイザベラ・ロッセリーニを犯すその演技はまさに怪演と言ってよく、『砂の惑星』でミソをつけたリンチと共に、ホッパーもこの映画で見事復活を果たした。それも、怪優として。

 それ以降の活躍はご承知の通り。以前のようにインデペンデント系映画にも出演する他、金のために『ウォーターワールド』『スーパーマリオ』といった娯楽作品(大抵はひどい映画)にも出演したが、しかしホッパーの出演シーンのみは面白く、まあ彼を見られたから入場料のモトはとったか、と思わせるのだから大したものだった。

 そして、そんな作品の中でも『スピード』(94)のような、後の悪役俳優たちがこれにハリ合うことを要求されるくらい、悪役演技のハードルを上げてしまった超テンションの傑作があるのだから凄い。

 日本ではツムラの入浴剤の”アヒルちゃ〜ん“が有名だが、あれもかなりギャラが高かったそうだ。彼はそうやって稼いだ金で趣味の現代アートを買いまくり、そっちの分野でも一家言持つ人物になった。人間、ドラッグでキャリアの15年を無駄にしてもちゃんと取り戻すことが出来るという好例である。

 冥福はたぶんすまいと思われる人間ではあるが、ともかくもまだ数年は頑張れる年齢だっただけに残念。

 黙祷。

 オリジナルは改行が滅茶苦茶で読みにくいので、レイアウトは変更してあります。

苦しみはなかったものと信じる

 どういう意味なのか。苦しんで死んだとしたら、余りにも痛々しいので、苦しまずに死んだと思いたいといいたいことは分かる。しかし、そんなことは、故人と生前に親交があり、故人の人柄を知るものが感じる想いであり、発する言葉のはずだ。「信じる」なんてカッコつけたつもりなのかも知れないが、場違いで、一言で言って「馬鹿みたい」な言葉である。

“この反逆児には似合わねえな、年取って善人になってしまったかな“と思っていた

 ハリウッドのスターが、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに名を刻まれたからって、なんでこんなひねくれた感想を述べるのかね。大体、唐沢俊一「ウォーク・オブ・フェーム」を語るでも言及したように、唐沢はゴジラに関してこんなことを言っているのだ。

「いいか、ハリウッドには大通り沿いに、映画やテレビで活躍したスターの名前が刻まれた星型のプレードが歩道に埋め込まれた一角がある…」

「ああ、ウォーク・オブ・フェームってやつですね」

「そう、そこには2,000人以上のスターや監督の名前が刻まれているが…(以下略)」

(黒文字:唐沢、青文字:少年探偵すばる

 こう書いておきながら、今回は、

ハリウッドの星(ハリウッド大通に名前つきのプレートが埋め込まれる栄誉)が与えられ

 としか、書いていないのは、この栄誉がウォーク・オブ・フェームだと気がつかなかったのかしら。

 それから、反逆児と一言で決め付けているが、デニス・ホッパーのどこが反逆児と言いたいのだろうか。麻薬をやっていた前科があるから? いや、というのも、この文章を読む限り、唐沢はデニス・ホッパーのこと、全然知らないのでは? とも思えてくるのだ。

イージー・ライダー』(69)は残念ながらリアルタイムでは見ておらず反逆児の名前だけが一人歩きしており

 多くの日本人がデニス・ホッパーの名を知ったのは『イージー・ライダー』のヒットがきっかけだと思う。『理由なき反抗』『ジャイアンツ』『OK牧場の決斗』『 暴力脱獄』と名作に出演はしていたが、顔と名前は一致しなかった(少なくともおれには)。そんな状況で、『イージー・ライダー』をリアル・タイムで見ていない唐沢は、ではデニス・ホッパーの何を知っていたのだろう。反逆児と馬鹿の一つ覚えみたいに書いているが、その『イージー・ライダー』だって、ステッペンウルフ、バーズ、ジミ・ヘンドリックスの音楽は素晴らしかったが(おれは以前、アマチュアバンドのボーカルをやっていて、“Born To Be Wild”を高円寺のスタジオで録音したことだってあるのだ ← ボーカルのせいで一日で解散)、映画はそんな反逆児云々といったギラギラしたものではなく、はっきり言ってつまらなかった。

やっと公開時にリアルで見たのは『地獄の黙示録』(79)。神話的構造を持ったこの映画の中でホッパーはもっとも現実的・世俗的な戦場カメラマンを演じており、何か彼が出てくるとホッとしたのを覚えている

 これまた、具体的なことはなにも書かれていない。『地獄の黙示録』も見ちゃいないだろう。まあ、『地獄の黙示録』も退屈な映画で(誰かが言及しているかもしれないが、明らかに『キングソロモン』のリメイクである)、ベトナムの、戦争の狂気の、神話的構造のといった映画ではなかった。デニス・ホッパーも退屈な映画で退屈な演技をしていたといった記憶しかない。

大逆転ヒットを放ったのがデビッド・リンチブルー・ベルベット(86)だった。それまでのヒッピー風イメージを一新し、一応きれいな格好をしながらも、酸素吸入器をスーハー言わせながらイザベラ・ロッセリーニを犯すその演技はまさに怪演

 映画評論を仕事の一部としている人間が書く文章とは、到底思えない。「一応きれいな格好をしながら」とか「酸素吸入器をスーハー言わせながら」って、餓鬼の作文じゃないんだから。ブルー・ベルベットデニス・ホッパーと言ったら“fuck”“fuck”“fuck”“fuck”“fuck”“fuck”“fuck”“fuck”“fuck”が、まず書かれるはずなんだが、本当に見たのかね。

『ウォーターワールド』『スーパーマリオ』といった娯楽作品(大抵はひどい映画)にも出演したが、しかしホッパーの出演シーンのみは面白く、まあ彼を見られたから入場料のモトはとったか、と思わせるのだから大したものだった。

 見ていないな(笑)。本当に見ていたら、こんな文章書くはずがない。いや、デニス・ホッパーの狂信的なファンで、デニス・ホッパーが出てくるだけで大喜びってのなら別だが。

『スピード』(94)のような、後の悪役俳優たちがこれにハリ合うことを要求されるくらい、悪役演技のハードルを上げてしまった超テンションの傑作がある

 『スピード』では、なんでデニス・ホッパー? と思ったくらいの役。ああ、悪党面が買われたんだなと思ったもんだ。

 冥福はたぶんすまいと思われる人間ではあるが、ともかくもまだ数年は頑張れる年齢だっただけに残念

 え? デニス・ホッパーは地獄に墜ちるってこと? それじゃあ、反逆児どころか稀代の大悪人ってことになるのだが、それらしいことを前段で全く書いていないってのも凄いなあ。でもって、「まだ数年は頑張れる年齢だっただけに残念」って、だから、なんでてめえの都合で他人の寿命を語るんだよ。

 知らん人間の追討はするなと、かれこれ一年。

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暴力脱獄 特別版 [DVD]

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地獄の黙示録 特別完全版 [DVD]

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儒学者儒学者 2010/07/10 09:56 藤岡先生

>人生の最期にまたドラッグのお世話になるというのは皮肉なことだ、と苦笑していたかもしれない。

薬学を大学で勉強し(あ、ろくにしてないのか)、薬についての著書のあるお方が、鎮痛用のモルヒネとドラッグを同一視するような文を書くのはいかがなものかと。
現代では、鎮痛用のモルヒネは中毒にならない量で疼痛の大半を除去できるようになっているのに、日本ではやはり「麻薬」のイメージが強くて先進諸国の中では普及率が低いとのことで。そういうイメージを打破していかねばならない状況なのに、こういう発言(本人は洒落のつもりなのでしょうが)を読むと腹が立ちます。

藤岡真藤岡真 2010/07/10 10:08 >儒学者さん

 唐沢は阿片に含まれるチロシンから鎮痛剤モルヒネが精製され、そこからさらに麻薬であるヘロインが作られるという根本的なことすら知らないと思います。
 それに、70年代のアメリカ文化におけるドラッグとは、マリファナ、LSD、メスカリンなどという幻覚剤が中心だったと思います。映画『イージーライダー』の中で吸っているマリファナは本物だった、とも言われています。

ポぷリポぷリ 2010/07/10 12:42 >誰かが言及しているかもしれないが、明らかに『キングソロモン』のリメイクである
コンラッドの「闇の奥」の翻案だと思ってました。元ネタより面白くなく感じましたけど。

トンデモブラウトンデモブラウ 2010/07/10 13:20 『暴力脱獄』にデニス・ホッパーなんて出てましたっけ?
ポール・ニューマンとジョージ・ケネディしか役者名は覚えてないけど。
レーザーディスクしか持ってないから見直すのから遠ざかってるなぁ。
DVD買うか…

トンデモブラウトンデモブラウ 2010/07/10 13:23 リンチの『DUNE』は大好きなんだけど、コケてたのか。
非常に巧い事原作を映像にしてたけどなぁ。(オーニソプターはちょっと…でしたけど。)
DVD化されないはずだ。

yonocoyonoco 2010/07/10 13:43 今の若い人だと「24シーズン1で悪役やった人」というのがすんなりわかるのでしょうかね?>デニス・ホッパー

個人的にはトゥルー・ロマンスの演技が印象に残ってます(90年代で数少ないデニス・ホッパーの凄さを映した映画)

地獄の黙示録は「ワルキューレ&ヘリコプターのシーン以外は駄目だ」という評価がありましたね(あれだけで映画史に残っているという(ーー;))

薄い映画好きの戯言でした

ハスミ虫ハスミ虫 2010/07/10 15:51 通りすがりに失礼します。
いつも楽しく読ませていただいてます。
自分も薄い映画好きではありますが、デニス・ホッパーについて語るのに、映画監督としての彼を全く語らないのはいかがなものかと。
カルト云々、ひねくれてる映画好きを自認している割には、「ラスト・ムービー」とか「アウト・オブ・ブルー」とか語るべき監督作があるというのに。

藤岡真藤岡真 2010/07/10 16:23 >ポぷリさん

>コンラッドの「闇の奥」の翻案
 はい。その通りです。『キングソロモン』というのは、1950年のアメリカ映画、スチュワート・グレンジャーとデボラ・カーが出演しておりました。未開地のジャングルの奥地に、行方不明の白人を求めて分け入っていく。途中、猛獣や蛮族に襲われる、そして、たどり着いた先には……という紋切り方のストーリーは、『地獄の黙示録』に継承されていて、ああ、これは戦争映画ではなく、昔の秘境探検なんなのだと納得したものでした。

藤岡真藤岡真 2010/07/10 16:29 >トンデモブラウさん

>『暴力脱獄』にデニス・ホッパーなんて出てましたっけ?

 知的障害者の役でした。

>非常に巧い事原作を映像にしてた

 ハルコネン男爵なんか良かったけどなあ。

藤岡真藤岡真 2010/07/10 16:34 >yonocoさん

>トゥルー・ロマンス

 デニス・ホッパー、クリストファー・ウォーケン、千葉真一が最高でした。

藤岡真藤岡真 2010/07/10 16:39 >ハスミ虫さん

 そもそも『イージーライダー』のカンヌの評価が、新人監督賞でしたもんね。

 ウィリアム モールですか?

pippipippi 2010/07/10 18:02 唐沢氏の追討文!余りに内容が薄いですね。
列挙した映画を本当にちゃんと見ているのでしょうか?
D・リンチに関しては名前を覚えていることすら奇跡に感じます。

藤岡真藤岡真 2010/07/10 18:13 >pippiさん

 デニス・ホッパーに関しては、『イージー・ライダー』に出ていて、ワルでドラッグなんかやっていた、くらいの知識しかなく、後はネットで拾い集めたネタを張り合わせただけだと思います。こう指摘すると、なんでそういい切れるのかといったようなメールを送ってくる人がいますが、例えそうでないにしろ、そう読めてしまうくらいウスイことしか書けないのが問題だと思います。

ポぷリポぷリ 2010/07/10 19:01 >藤岡真
>ああ、これは戦争映画ではなく、昔の秘境探検なんなのだと納得したものでした。
河を遡上して探索行をするあたりコナン・ドイルの「失われた世界」もそうですね。
人は川上に何かがあると思いがちなのでしょうか?この掲示板の趣旨には関係ありませんが。

ポぷリポぷリ 2010/07/10 19:03 訂正
>藤岡真さん
です、失礼。

藤岡真藤岡真 2010/07/10 20:43 >ポぷりさん

 子供の頃見たチェコ(?)かどこかのSF映画(教育映画?)で、ボートに乗って川を遡っていくと、それがタイムマシンみたいにどんどん過去にいくというのがありました。川上にはルーツがあるという考えでしょうか。

nekoneko 2010/07/10 22:54 死者が語れたら…死人に口無しの無念を毎度毎度…これからテレビ版クラッシュ見るというのに!
カラサーセンセーは全員に祟られたら如何でしょうかね。

BernieBernie 2010/07/11 00:18 ホッパーは復活したけど唐沢テンテーには復活の目はなさそうですな。


「雑学王」ならジェームス・ディーンとの関係にでも結び付けそうなものですが、リアルタイムで見た(上映された)作品にしか触れなかったのは突っ込まれるのを恐れているからなのでしょうか?

おたくを標榜するならyonocoさんが挙げた「トゥルー・ロマンス」に触れないのは不思議な気がします。

altnkaltnk 2010/07/11 00:23 >『イージー・ライダー』(69)は残念ながらリアルタイムでは見ておらず、
これは意外だ(失礼)、正直じゃないか。
>反逆児の名前だけが一人歩きしており
ああ(失笑)、唐沢脳で、ですね。文章はちゃんと書きましょう。

sandayuusandayuu 2010/07/11 00:29 私も『スピード』の悪役ってそれほど強い印象は受けませんでしたねえ。映画自体は面白かったんですが。
むしろyonocoさんが仰ってるように『トゥルーロマンス』の方が存在感があったように記憶しています。出番はほんの少しでしたが、クリストファー・ウォーケンと対峙してるシーンはものすごい緊張感がありました。
鬼畜をウリにしてる唐沢さんには『ランド・オブ・ザ・デッド』の資産家役についても触れて欲しかったですね。
というか、そちらでは支配者として君臨し、ラストにはその座から引きずり下ろされるというキャラクターですから、「ハリウッドの反逆児」の晩年の出演作として取り上げればいいのにと思うんですが。
いやまあ、どうせ観てないんでしょうけど。

>リンチの『DUNE』

かなり長いのをそうとうに切りつめて公開されたんですよね。
たしか、スターウォーズ以降のSF映画ブームに便乗して企画されたように記憶しています。美術や特撮のセンスはリンチらしくて良かったんですが、当時の観客にはいまいち受け入れられなかったようで。今ならもう少し当たってたかも知れませんね。

藤岡真藤岡真 2010/07/11 07:13 >nekoさん
 デニス・ホッパーを少しでも知っている人にとっては、「ナニコレ」という追討です。問題は、そんなものに需要があるらしいこと(同人誌として売れる)なんですよねえ。


>Bernieさん
 “反逆児”の芽生えはジェームズ・ディーンからの影響でしょうね。その突然の死がその後のホッパーを大きく変えたと思います。


>altnkさん
『イージー・ライダー』リアルタイムで見ていないということは、それ以前の作品を見ている可能性もほぼゼロ。そんな人間が聞き齧った知識で「反逆児」ですから。


>sandayuuさん
>支配者として君臨し、ラストにはその座から引きずり下ろされる
 ゾンビがなんのメタファーなのか、つい勘ぐりたくなります。
『DUNE』は恥ずかしながら、石森章太郎のイラストに魅かれて、早川SFで読んだから遅れたファンでしたが、映画化もその当時と記憶しています。海賊版ビデオを手に入れた人がいて、某メーカーの宣伝部の試写室でわいわい言いながら見た記憶があります。映画の内容より、翻訳スーパーのいい加減さに突っ込み続けていたような。

2010-07-09

徹底検証 唐沢俊一追討日記 その21 ラッシャー木村

10:27

 居場所を見つけた男

5月24日、死去。腎不全による誤飲性肺炎

ミクシィニュースでの訃報記事へのコメントの多さに驚いた。

愛されていたんだなあ、と思う。

人間の運命というものはわからない。

もし、木村があのまま国際プロレスのエースのままだったとしたら、

プロレスファン、それも“通”を気取るひねたマイナープロレスファンの

賛辞を受けるくらいで終っていたのではあるまいかと思われる。

その国際プロレスが倒産し、新日本プロレスに拾われ、

猪木のかませ犬として、似合わぬ悪役稼業。

どう考えたってアングルだろ、としか思えない国際軍団の

殴り込み、三対一デスマッチなどの“作られたストーリィ”にも、

当時の猪木についていたカルト信者的なファンは反応し、

木村の家には石が投げられたりし、愛犬家だった木村は犬にまで

被害が及ばないかとかなり心痛したらしい(実際、愛犬は

ストレスで死んだらしい)。

一度、東京駅のレストランで食事をしていたら、目の前に

木村が座ったことがあった。はぐれ国際軍団新日に殴り込んで

いたころである。巨大な塊、と形容したくなるような体格を駅のレストランの

小さい椅子に押し込め、黙々と定食を食べるその姿の強烈な印象は

いまだに脳裏に明瞭に残っている。

私が立ったあと、その席に座った学生の二人連れは、前の席の木村を

確認したとたん、思わず

「ラッシャーだあ〜」

と口に出して叫んだが、木村は彼らに(もちろん私にも)一瞥も

くれなかった。悪役はファンに媚を売ってはいけない、と

自らを律していたのだろう。

「男は三年に片頬」

というのがモットーだ、と後に雑誌で読んだが、いや、しかし

プロのレスラーとしてそれはどうか、と、その行き方の不器用さに

いささか心配になった。猪木戦を振り返った当時のスポーツ新聞

記事にも、“不器用な木村を猪木は徹底していたぶった”と書かれていた。

ところがどうして。

その後の木村は不器用どころか、行く先々で個性を発揮し、

存在感を(自分の希望のそれだったかどうかは別に)印象づけていく。

ひょっとして、プロレスラーの生き方としては最も器用だったとさえ

言えるのではあるまいか。

そのきっかけはやはり、親日に殴り込んだときの、リング上での

「こんばんは」

の挨拶だろう。あれくらいアタリマエで、かつあの場において異様な

一言はなかった。普通なら“使えないヒール”として抹殺されてしまったろう。

それが、当時の日本における新感覚ギャグの勃興にぶちあたった。

つまり、お笑いの世界が、それまでの“プロによる作られた笑い”から、

“素人のかもしだすたくまざるユーモア”にトレンドが移行していった

時代だったのだ。『欽ちゃんのドンといってみよう』や『オレたち

ひょうきん族!』などで、コメディアンたちは素人いじりに日々、

精を出していた。そのムーブメントに、木村の“こんばんは”は見事に

ハマったのである。彼もまた、あきらかな“時代の子”だったのだ。

マイク・パフォーマンス・タレントとして有名になったその自分の

アクシデントによる人気を木村は驚いたことにきちんとキャッチし、

イカ天』のレギュラー審査員の座を得たり、全日に移籍してからは

彼のパフォーマンスがその日の一番の受け、などというときもあった。

「こんばんは」などという、日本人なら誰もが口にする一言で

運命が変わってしまった人間も、木村くらいだろうと思うが、しかし

そのチャンスを逃さなかったのは、流れ者としての悲哀を徹底して

味わった彼が、“印象に残ったものが勝ち”という、ついにリング上で

つかめなかった秘訣を(金網デスマッチはその試合形式が印象に

残ったので、木村自身が印象に残ったのではない)、そこでつかんだ

からだと思うのである。

プロレスの実力は強さだけではない。木村はあのアンドレ・ザ・

ジャイアントを、新人の頃だったとはいえギブ・アップさせた力を持つ。

しかし、しょせんはマイナーなレスラーだった。

力道山時代にわずかに遅れてプロレス入りした(日本プロレスに入った

のが力道山の死去の翌年だった)彼は、すでにスターだった馬場や猪木

の靴を揃えさせられるところからスタートした。彼ら二人は生涯、木村を

格下扱いしたし、木村もそれを当然と思い、その上に行こうとは

思わなかったようだ。上下関係の厳しい角界からプロレス入りした

者の哀しい宿命かもしれない(最初からトップに立った力道山は例外)。

プロレス界で当時ブレイクしたのは長州力の“下克上”だったのだ。

そっちに見事乗ったのは、同じ国際出身のアニマル浜口だった。

人間、どこに居場所を見つけるか、誰にもわからない。

私の知り合いが監督した映画に出演した木村(私もガヤで出演しているので

私と木村は映画で共演したことになる)は、素人っぽさを残しながら

よどみのない見事なセリフ回しで、試写を見た私を感心させた。

すでにタレントとして、馬場や猪木と並ぶ人気者になっていた頃だ。

あの素人っぽさはひょっとして、木村の演出だったのかもしれない

と思う。やっと自分がハマる場所を見つけた木村は、その位置を

努力してたもとうと、真剣に向き合っていたのではないか。

馬場の死去の後、NOAHに移籍し、そこで引退したが、社長の

三沢は“木村さんは終身、NOAHの所属”と言っていた。

居場所がプロレス人生の最後に見つかって、本当によかったと思う。

享年68。早い、とは思うが兄貴の馬場が61歳、鶴田49歳、

国際で一緒だった剛竜馬は51歳、最後に所属したNOAHの社長

三沢も46歳で逝っている。

あの時代のレスラーとしてはまずまず、生きられた方ではあるまいか。

天国で熱い“昭和のプロレス”をくり広げてもらいたい。

黙祷。

 プロレス見てないよねえ。

 木村の死因は、「誤嚥性肺炎」。ささいな誤字脱字ではない。唐沢はどうやら嚥下(えんげ)」という言葉を知らないようだ。「ごえん」を如何に変換ミスをしても「誤飲」にはならない。「書律」と同じだね(書肆;しょしという言葉を知らなかった)。

 木村は唐沢が語るような「いぶし銀のようなレスラー)ではなかった。グレート草津豊登サンダー杉山といったレスラーに代わる、国際プロレス次代のエースとして、ストロング小林(金剛)ともに期待された存在だったが、実はアメリカ遠征から凱旋帰国したときが、ピークだったのではあるまいか。

 アメリカ遠征時には、ドリー・ファンク・ジュニアのNWAタイトルにも挑戦したし、時代を担うのは、ニック・ボックウィンクルだと予想していた(後に、IWAAWAのダブル世界戦を行い、反則勝ち)。帰国第一戦でアメリカ仕込の“回転四の字固め”という必殺技を披露するはずだったのだが、明らかに段取りを忘れてしまったようで、不首尾に終わり、いきなり封印してしまう。この出来事が木村のその後を象徴しているような気がする。

 早くも一年後は行き詰って、金網デスマッチ専門という色物レスラーに転じてしまった。このときの、木村の好敵手ドクター・デス(昨年亡くなったスティーブ・ウィリアムスとは別人)は、それ以前にスタン・ザ・ムースリングネームで国際参戦していたレスラー(ムース・モロウスキー)だったので、そこからも国際プロレスのじり貧ぶりが窺えた。

 つまり、木村は「“通”を気取るひねたマイナープロレスファンの賛辞を受ける」ような存在では、全くなくて、金網に転じていなければ、とっくに消えていただろう。

 もう一人のエースだったストロング小林は、国プロ脱退後アントニオ猪木に挑戦し、プロレス史上に残る名勝負を展開した。一方木村もマッドドッグ・バションを破りIWAの世界チャンピオンになり、アレックススミルノフ、モンゴリアン・ストンパーらとも戦った。しかし、国プロ解散の後に、小林同様にアントニオ猪木に挑戦するが、アニマル浜口寺西勇と組んだハンディキャップマッチ(1対3)。この事実からも、木村の当時のプロレス界での地位が分かろうというもの。

 しかし、この試合は「デスマッチ」ではなく、あくまでもタッグマッチカットプレイは厳重に禁じられていた(当たり前だ)。

「こんばんは」事件は、あまりにも有名だが、これとて失笑をかっただけで、これで売れたわけではない。この後、唐沢は全く触れていないが、前田日明らと第一次UWFを立ち上げるのだ。まさに、マイクパフォーマンスとは正反対の世界(剛竜馬が参加していたのは凄いが)。

 木村の全日本移籍は1984年いかすバンド天国」の審査員は1989〜1990年

プロレスの実力は強さだけではない。木村はあのアンドレ・ザ・

ジャイアントを、新人の頃だったとはいえギブ・アップさせた力を持つ。

 不覚にもこの事実は知らない。アンドレは、新人のころは、モンスター・ロシモフというリングネームだった。唐沢は「強さ」「力」を区別しているようだが、木村がそうした意味で「怪力」レスラーとして評価されたことはない(怪力はストロング小林であった)。

あの時代のレスラーとしてはまずまず、生きられた方ではあるまいか。

天国で熱い“昭和のプロレス”をくり広げてもらいたい。

黙祷。

 偶然、7月7日のエントリでレスラーの寿命に関する唐沢の言葉を取り上げたが、あの時代のレスラーは、皆長生きだったのではないのかね。

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トンデモブラウトンデモブラウ 2010/07/09 09:36 >親日に殴り込んだときの、リング上

唐沢「新日」だよ、って書くと、来訪者さんに怒られちゃうかな。
俊ちゃん読み方あっててよかったね。

KAGEKAGE 2010/07/09 09:42 カール・ゴッチの追討も確かに酷かったですが、これも酷いですねえ。私は全日本でのマイクパフォーマンス時代が馴染みがあって、国際プロレス時代などは本等で得た知識のみなので当事を見ていた方々は羨ましいです。
ゴッチの時もUWF勢を(結果として)輩出した件には触れてませんでしたね。

細かい事ではありますが、『欽ちゃんのドンとやってみよう!』←「やってみよう」で感嘆符が付くのが正式タイトル、『欽ちゃんのドンと「い」ってみよう!』はテレビになる前のラジオ番組タイトル。
『オレたちひょうきん族』←感嘆符は付かないのが正式タイトル。
あと『欽ドン』はともかく、『ひょうきん族』ってそんなに素人いじりしてましたっけ?
プロレスどころかきちんと観てたテレビ番組があるのかとさえ。

O.L.H.O.L.H. 2010/07/09 11:24  高橋本が出た直後の唐沢は、プロレス・ファンはこんなことも知らなかったのか?、いいのかそんなに素直で?という態度じゃなかったでしたっけ?
 カール・ゴッチのときもそうですが、「プロレスの実力は強さだけではない」などと強さ、実力を強調するのには違和感を覚えます。

>前田日明らと第一次UWFを立ち上げるのだ。

 唐沢のプロレスに関する元ネタ『ミック博士の昭和プロレス研究室』(http://www.showapuroresu.com/)には、Uに関する記述が少なく、触れようがないのではないでしょうか。
「1999(平成11)年の馬場の死まで、お互いを強く意識し、時に互いのスタイルを罵倒しながら、プロレス2大団体時代(実際には全日・新日に先駆けて日本プロレスから別れた国際プロレスというマイナー団体も存在したが、1981年に解散している)を築いていった。」
と平気で書いてしまうぐらい、実際にはプロレスをろくに見ていないようですから。(http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20090517)

藤岡真藤岡真 2010/07/09 12:08 >トンデモブラウさん

>親日
 一瞬、おれの変換ミスかとドッキリしました。

>KAGEさん

 いつ書いた文章なのか知りませんが、アップまでには充分に時間があったはずなんですがねえ。

>O.L.Hさん

 UWFには居場所はないだろうなあと、最初から思いました。唐沢は木村の試合を見たことがなかったのではと思います。一言で言えば、非常に下手なレスラーでした(色んな意味で)。