美人スパイ事件は米ロ服役囚交換で幕引き

　　ロシアのスパイ団事件で米司法省は８日、「美ぼうの女スパイ」として話題になったアンナ・チャップマン被告（２８）ら男女１０人について、欧米のスパイとしてロシアで服役していた４人と交換することで米ロ両国政府が合意したと発表した。１０人は同日、ニューヨーク連邦地裁で開かれた公判の罪状認否で全員が罪を認め、強制送還処分を言い渡された。

　スパイ交換は１９６０～８０年代の東西冷戦中にしばしば行われたが、今回の交換は冷戦後では最大規模。米ロ両国は大規模なスパイ事件による関係悪化を回避するため、交換に合意したとみられる。

　ＡＰ通信によると、１０人を乗せた米側の飛行機と、交換要員とされるロシア側の４人を乗せたロシアの飛行機が９日午後（日本時間同）、ウィーンに到着、両機は約２時間後に離陸した。

　タス通信は目撃者の話として、空港に並んで駐機した米国とロシアの飛行機の間を黒いミニバンが往復し、身柄の交換が行われたと伝えた。ロシア情報機関筋は９日、起訴されたロシア人男女を乗せ、ウィーンを離陸した飛行機はロシアに向かっていると述べた。

　米政府高官は８日、交換となる４人が極めて劣悪な環境下で服役していたとし「国家の安全保障と人道的見地から決定した」と述べ、交換合意に関し「重要な成功を収めた」と強調した。

　タス通信などによると、ロシアのチマコワ大統領報道官は９日、メドベージェフ大統領が４人を特赦する大統領令に署名したと述べた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、４人は２００４年に懲役刑を言い渡された軍事専門家のスチャーギン氏、０６年に英国のスパイとして有罪判決を受けたロシア軍退役将校スクリパリ氏ら。

　同国のグリズロフ下院議長は９日、ロシア政府の対応を評価し「外務省は、（米で起訴された）ロシア市民の釈放のために全力を尽くした」と話した。（共同）

　［2010年7月10日0時7分］