菅首相は参院選苦戦ではや「居座り宣言」

　菅直人首相（６２）が９日、民主党の参院選苦戦が伝えられる中、選挙後の責任論封じ込めへ、早くも「居座り宣言」をした。千葉市の街頭演説で、短期間に日本の首相が代わる弊害を強調し、１１月に来日するオバマ米大統領に「好物の抹茶アイスを贈る約束をしている」と宣言。大統領の来日を総理として迎えると強調した。また苦戦の原因として、自らの消費税発言が影響したことをついに認めた。投開票日を１１日に控え、菅氏は防戦一方だ。

　世論調査で民主党の大苦戦が伝えられる中、菅首相が日米トップの約束を引き合いに責任論に予防線を張った。ＪＲ稲毛海岸駅での街頭演説。６月の先進国首脳会議でオバマ米大統領と会談した際、「１１月に（日本で開かれる）アジア太平洋経済協力会議（ＡＰＥＣ）でお会いしますが、小さなプレゼントを約束した。抹茶アイスを用意します」と述べた。

　子供時代に来日したオバマ氏が、抹茶アイスを気に入った話は知られている。菅氏は１１月にオバマ氏を首相として迎えることを前提に、抹茶アイス外交構想を披露。「個人的な関係をしっかり深めることが必要。この４年間で我が国の総理は私で５人目。そんな国を、他国が本当に信頼してくれますか」。ＡＰＥＣをＯＰＥＣ（石油輸出国機構）と言い間違える場面はあっても、短期間での首相交代を強い調子で否定した。

　背景には、参院選の結果次第で浮上する責任論をけん制する狙いがある。菅氏の目標ラインは５４議席だが、一部で５０議席割れの可能性も指摘され始めた。菅氏に批判的な小沢グループを中心に、責任追及の声が出るのは必至だ。党内情勢を見越し、オバマ氏との個人的な約束を持ち出して予防線を張ったが、民主党は０７年参院選で負けた自民党に、「直近の民意」を理由に解散総選挙を迫っている。

　苦戦の一因が消費税問題。菅氏は「明日にでも引き上げるのかと心配いただいているが、次の選挙までは１円たりとも上げない。超党派での議論が済み、案がまとまれば衆院選でご判断いただく」と説明に追われた。聴衆から「増税は反対だ」と声が飛んだが、菅氏は答えず車に乗り込んだ。

　菅氏はこれに先立つ山形県天童市の遊説後、苦戦の原因を報道陣に問われ「私が消費税に触れたことが、すぐに（税率を）引き上げるのではないかとの心配につながったかもしれない」と、自らの発言が原因と認め「誤解があったとすれば、解消するよう全力を挙げたい」と強調した。敗北ムードが強まる中、攻めが得意な菅氏が防戦一方になり始めた。【中山知子】

　［2010年7月10日7時19分　紙面から］