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ソフトバンク株式会社

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経営陣ファイル 2007年

ネットワーク強化に向けた取り組みすべてはお客様へのより良いサービスのために

ソフトバンクモバイル株式会社 取締役専務執行役 技術統括本部長(CTO)
ソフトバンクBB株式会社 常務取締役
ソフトバンクテレコム株式会社 取締役専務執行役
宮川 潤一(みやかわ じゅんいち)

ソフトバンクの携帯電話事業では、お客様により良いサービスを提供するため、2007年3月末までに46,000局の基地局を建設することが最も重要なコミットメントの一つ。「どこでもつながる」携帯電話のネットワーク増強に向けて、通信3社(ソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム)の取締役を兼任する宮川の率いるチームが、目標達成に向けて全力で取り組んでいます。これまで、ソフトバンクの通信事業のインフラ構築の要となって、数多くの実績を積んできた宮川がその展望について語りました。

略歴:
名古屋でインターネット接続サービス会社を起業、60億円の売上規模の企業グループに育て上げる。2000年、孫社長との出会いによりソフトバンクBBに参加。2003年ソフトバンクBB(株)取締役。2004年ソフトバンクBB(株)常務取締役。2005年日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)(株)取締役専務執行役。2006年4月ボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)(株)取締役専務執行役 技術統括本部長(CTO)就任。
インタビュアー:
山内 貴久美(やまうち きくみ) ソフトバンク(株)広報室顧問・フリーアナウンサー

ネットワークの強化は命題

山内:
「ネットワークの強化」は携帯電話事業の重要なコミットメントの一つですが、基地局増設の進捗状況はいかがですか?
宮川:
携帯電話事業の根幹は「どこでもつながる」がキーワードですから、目標に掲げた基地局建設は必ずや達成します。ソフトバンクグループが掲げる「デジタル情報革命」を実現するためのメイン事業ですから。雪のシーズンに入り、安全確保のため、北国での工事は特に慎重に進めなければならないという事情などもあって、工事のペースはやや緩やかですが、数週間から数ヶ月のズレが生じる可能性はあるとしても、コミットメントは必ず守ります。そのために従来の工法に比べ、より効率の良い「必殺法」をあみ出しました。年明けからこの機材を導入して一気にスピードアップする予定です。
ソフトバンクのユーザー数はドコモの約3分の1。つまり3分の1しか収入がないわけですから、工事のコストも3分の1にしないと対等に戦えません。費用をかければそれだけ工事も早く進みます。でもそれをせずに知恵を出して効率よくインフラを構築したいわけです。いかにアイデアを出すか。世の中になければ自分たちの手で作ればいいわけですから、この新しい「必殺法」の機材は、我々が従来の3分の1のさらに半分、6分の1のコストで作りました。
山内:
基地局増設に関しては、孫社長から権限移譲されているとか。宮川さんへの信頼の厚さがうかがえますね。
宮川:
Yahoo! BBもおとくラインも最終的に、サービスインを目標に間に合わせることができました。特におとくラインは、NTTが100年近い歳月を費やして築いたものを、わずか半年で作り上げたのですから、我々が集中すれば必ずやりとげられることが証明されたわけです。ただ今回はスケールが違いますからね。ハードルは高いですが、お客様にとって携帯電話が「つながりやすい」というのは当たり前のことですから、他社を追い越すくらいにならなければこの業界に参入した意義がありません。

料金定額制への挑戦

山内:
MNP(携帯電話番号ポータビリティ制度)開始の前後から、次々と新しい料金プランや端末・サービスが導入されていますが、これまでの成果をどう評価していらっしゃいますか?
宮川:
まず、料金定額制の導入は大きな決断でした。定額制といっても金額が高ければ魅力は半減しますから、できるだけ低料金で提供したいという孫社長の意向があり、これまでの「LOVE定額」によるお客様の動向などのデータを参考にしながら、毎晩遅くまで慎重な議論を重ねました。そして生まれたのが、昨年秋に発表した「ゴールドプラン」です。社長の構想では、時間制限(午後9時から翌日午前1時までは月 200分までソフトバンク同士の通話・メールが無料)もなくしたいということでしたが、これだけはどうしても譲れませんでした。既存の1,500万人のお客様ももちろん大切に考えなくてはなりません。新しいお客様が加入された分、既設のネットワークトラフィックに負荷がかかり、それが元で夜間に電話がつながらなくなってご迷惑をおかけするわけにはいきませんから。社長は「ゴールドプラン」発表の翌日からも「どうにかならんか」とこだわり続けていましたが、私もこれだけは譲れませんでした。
定額制導入の次のステップとしては、どこまで料金を下げられるのかに挑戦しました。それが年初に発表した、月額980円の「ホワイトプラン」(午前1時から午後9時までソフトバンク同士の通話・メールが無料)です。いずれにしても、24時間定額料金で好きなだけ話せるという孫社長の構想を、いつかは実現したいと考えていますので、基地局の整備が落ち着いたら検討するつもりです。
山内:
技術本部を統括する立場としてのご苦労は?
宮川:
旧日本テレコム、旧ボーダフォンと、それぞれのカルチャーが融合しました。今までの会社の歴史や事業展開スピードが違いますので、ソフトバンクの企業理念、経営方針が浸透するプロセスにおいて、難しい局面もありましたが、様々な状況を経て、今は通信3社の社員が気持ちを一つにして頑張ってくれています。本当に良いサービスをリーズナブルに提供するという孫社長の思いを現場に伝え、いかにモチベーションの向上につなげていくか、それが私の重要な役割のひとつでもありますから、時には私がフィルターとなり、スピーカーとなって統括しています。この重要な局面では、メッセージが弱いと戦い抜けません。限られた人生の中で縁があって出会ったメンバー達ですから、大きな目標に向かって必ずやり遂げるという信念で団結していきたいですね。

モバイルにおける今後の展開と可能性

山内:
モバイルの今後の可能性についてはどのようにお考えですか?
宮川:
5年後のモバイルがどうなっているのか誰にも分からない。こうなるべきだという構想は自分の中にありますけれどね。今はコンクリートと鉄骨が私の恋人(笑)。まずは基地局を増やして「つながりやすさ」を最優先させる。その次はコストパフォーマンス。BBフォンの事業展開等で積んだ実績を活かして、携帯電話サービスでも革命を起こしていくことこそが、ソフトバンクが携帯電話事業に参入した意義であると考えています。
山内:
これから取り組みたい課題はありますか?
宮川:
モバイルの世界でブロードバンドを実現することが「技術屋」としての私の最終的な目標です。固定とモバイルのブロードバンドをシームレスにすることで、自分が追い求めてきたFMC(Fixed Mobile Convergence)*1の完成形に近づく。でもそれはソフトバンクがやろうとしていることの入り口にすぎません。最終的には屋内にどんな家電製品を置いたら人々の生活が本当に便利になるのか、そこまで作り上げたい。もっとも、その一番オイシイところは次の世代がやるのでしょうが(笑)。孫社長はこの会社を300年続く企業にしたいと言っています。私の理論は100年ですが(笑)。仮に100年としてもまだ2割しか走ってきていません。あと8割の道程にはバトンの交代が3〜4回は必要でしょう。次の世代にどんなバトンを渡すのか、中長期でビジネスを考える舵取りが重要です。ソフトバンクにとってここが踏ん張りどころだと思います。自分の人生をかけ、最後まで共に戦い抜く覚悟です。

(掲載日:2007年1月31日)

[注]
  • *1FMC:(Fixed Mobile Convergence)移動体通信と有線通信を融合した通信サービスの形態。
  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。