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菅首相続投 大敗の反省生かせるか '10/7/13

 参院選で大敗した菅直人首相は「選挙結果は真摯(しんし)に受け止め、あらためてスタートラインに立った気持ちで続投したい」と記者会見で述べた。

 辞任論が浮上した民主党の枝野幸男幹事長の留任も早々と決めた。今回落選した千葉景子法相は9月の党代表選まで職にとどめるという。

 自民党やみんなの党は「直近の民意に従って辞任するか、衆院を解散する。それが憲政の常道」と主張する。

 3年前の参院選で民主党が自公政権を過半数割れに追い込んだ時の言い方そのままだ。

 ただ今回、民意は与党に「即刻退陣せよ」とレッドカードを突き付けたわけではあるまい。

 改選第1党こそ自民党に許したものの、比例代表では自民党を上回る議席を占めた。非改選議員を含む参院全体でも民主党は依然、比較第1党である。

 有権者は迷った揚げ句、イエローカードを選んだというところではないだろうか。

 ようやく実現した政権交代。鳩山前政権のつまずきはあっても、「もう少し任せてみるか」といった期待感はまだ残っていたのだろう。菅政権の登場で支持率が急上昇した。しかし、勢いを駆って参院選になだれ込もうとしたそのやり方が強引すぎた。

 首相を代えたにもかかわらず予算委員会さえ開かずに国会を閉じたことも一例だ。

 加えて、公示の間際には唐突に消費税増税の論議を持ち出す。「4年間は消費税を上げない」とした政権公約を変えたのか変えなかったのか、その説明が十分ではなかった。老後の暮らしを保障するビジョンが描けていないのに、消費税をその財源にと言っても有権者は納得するまい。

 支持率が下がると釈明に追われ、発言のぶれがさらに不信を買う。そんな悪循環の中で投票日を迎えた。

 小沢一郎前幹事長に近い議員らからは執行部の責任を問う声も出ている。

 政策の変更について党の中でどれだけ議論があったのか。国民の思いとのずれがなぜ生じたか。1人区で8勝20敗にとどまるなど改選議席を大きく割り込んだ敗因の徹底的な分析は欠かせない。

 その上で、改めるべきは改める。責任の所在も明らかにする。それで初めて続投のスタートラインに立てるのではないか。

 大事なのは党が一体感を持って取り組むことだ。代表選をにらんだ権力争いが先行すれば、国民は今度こそ愛想を尽かすだろう。

 改選議員らを迎えた臨時国会が今月末にも予定される。野党が優勢となった参院で首相や閣僚の問責決議案が可決されるのを恐れ、短期間で終わらせようという思惑もあるという。

 そうした党利党略ばかり優先させる国会対応となるなら、政権の先行きは暗かろう。厳しかった選挙結果の反省を政権運営に生かせるかどうかが試されている。




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