いったいこれからどうなるのだろうか。米軍普天間飛行場の問題は参院選で焦点とならず、政権与党は地元民意を確かめようともしなかった。
菅内閣は8月末までに移設先の位置や工法を決めることを米政府に約束している。沖縄の民意など聞いている暇はない、ということなのか。
昨夏の衆院選で実現した政権交代に有権者は政治との一体感を味わった。ところがわずか10カ月後のこの停滞ムードはなんだろうか。また裏切られるだろうという思いが先に立つ。
沖縄選挙区の投票率52・44%は過去最低で、全国でも最低だった。前回より7・88ポイントも下回ったのは、普天間問題で振り回された揚げ句に「辺野古回帰」という悪夢のような結末に政治不信が深まったためだろう。
民主党は全選挙区で唯一、沖縄で公認・推薦を擁立しなかった。
「国政に関与しないでいいということだろうか」。12日付本紙社会面にあるコメントから有権者のやるせない気持ちが伝わる。
「最低でも県外」を断念した理由がいまだ判然としない上、選挙で民意すら問わないまま押し切ろうというのか。そんな虫のいい話がうまくいくわけがない。
移設先を名護市辺野古周辺とした日米合意は「いかなる場合でも8月末」までに移設計画を決めることにした。11月にはオバマ大統領がアジア太平洋経済協力会議(APEC)のため来日する。
菅内閣は「普天間」で抜き差しならない状態になる。
8月末から秋にかけて政治日程がめじろ押しだ。
9月に民主党の党首選と名護市議選があり、11月には県知事選と日米首脳会談が控える。民意と対米交渉のはざまで菅直人首相も身動きが取れなくなれば、進退問題に及ぶ可能性すらある。
あるいは解決を先延ばしにするかだが、無責任はなはだしい。いずれにせよ外国軍基地問題で首相がすげ替えられることの異様さに政治は早く気付いてもらいたい。
衆院選、参院選のいずれも辺野古移転に反対した候補者が当選。県議会は2度全会一致で反対決議した。日米合意は破綻(はたん)している。
民主党内にも「県外・国外」を主張する議員は少なからずいる。それが勢いづけば党首選で菅首相の足元を揺るがすかもしれない。
再び「抑止力」のため、という空虚な考えが党内に広がるようでは解決の糸口をつぶしてしまう。
秋までの日程をさまざま想定してみるが、基本的には何も決まっていない。前政権同様、振興策をちらつかせ地元説得がしばらく続くだろう。
自民党本部の方針に反して「県内移設反対」を訴え選挙区で当選した島尻安伊子氏は党内で孤立しかねないが、中央で理解を広げることが任期中の使命だ。
県選出議員は再度党派を超えて県外・国外で手を組んではどうか。対案を提示できるよう深く動いてほしい。
そうすれば存在感と影響力が増すはずだ。