2010-07-13 格差問題@一票の価値

今回の参議院選では、121の議席が改選されました。73名が選挙区、48名が比例区です。参院選の選挙区は一票の格差が衆院選より更に大きく、今回も鳥取県民は神奈川県民の5倍の権利を与えられました。
実際に、神奈川県では70万票近くを獲得しながら落選した候補者がいる一方で、鳥取、徳島、高知県では16万票以下でも当選です。そこで今日は、「もしも、得票数の多い順に当選していたらどうなっていたのか」をみてみましょう。
下記は、選挙区の候補者を獲得した票の多い順に並べたものです。全国の有権者の票が同じ重みであれば、この表の上から73名が当選するはずでした。
白の欄の人は順当に当選した人です。青色の人は、「本来この得票数なら当選するはずなのに、一票の軽さのために落選した人」です。
皮肉なのは、このあからさまな格差選挙を有効であると強弁する最高裁のお仲間、現職法務大臣の千葉景子氏が「最も多くの票を獲得しながら落選した人」であることです。さっさと格差を是正しておけばこんな恥ずかしことにはならなかったのにね。
また、表の下部にはピンクの欄の人がいますが、彼らは本来なら落選だったはずなのに、ひとりが何票も与えられている“権利富裕層エリア”で立候補したために当選できた人達です。この20名の政党名や都道府県名も、よーくご覧になってみてください。
一票の価値格差のために落選した20名の候補者(青色の人)が集めた票は、なんと計860万票です。今回落選した青色の人に投票した860万人は、有権者ヒエラルキーの最底辺に暮らす人達なのです。この数がどれほど大きいか、上記の一人当たり得票数と比べて頂ければわかるでしょう。
ワーキングプアならぬ“ボーティング・プア”(voting poor)として、有権者社会の底辺に暮らす860万人。彼らは法律にも行政にも顧みられることなく、もう何十年もずっと社会の底辺に放置されています。
一方で、ひとりで何票もの票を与えられた“権利富裕層”達は、これからも悠々と“所得保障”や“オラが村の郵便局への税金投入”など様々な権利を勝ち取っていくことでしょう。
★★★
ところで、もしも票の多い順に当選していたら、各政党の獲得議席はどうなっていたでしょう?
下記の表、最初の行には各政党の今回の当選者数が、次の行には上記の表での当選者数、すなわち、もしもちゃんと獲得票数順に当選していたらこうなったはず、という当選者数が記載されています。最後の行はその差です。
一目瞭然ですよね。今回の選挙で自民党がなぜゾンビのように復活してきたのか。権利富裕層の多く住む地方の“一人区”(定員一名のみの選挙区)で、今回、自民党は29戦21勝と圧勝しました。“一人が何票も持っている田舎を根こそぎ抑えたこと”、これが自民党勝利の大きな、そして唯一の理由です。
(この表に比例区での当選者数、非改選議席を加えたものが各政党の議員数です)
民主党もみんなの党も、まず今、何をやるべきか、何をやらねばならぬのか、よーーーーーーーく考えてほしいものです。
そんじゃーね。
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追記) 関連エントリ「国民の代表の選び方」 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090809
47の都道府県があるのだから、その地域の代表を選ぶことは当然だと思う
都会にいるから、インフラや仕事の恩恵にあずかってるんだから、そんなのよりも、権利富裕層になりたきゃそのエリアいけばいいじゃん
地方出身の私としては、自分の田舎にはやっぱり新幹線欲しいよ。
うちの両親はそこで働いてるんだから、そこに金ばらいまいて欲しいし。
特急と新幹線じゃ全然違うしね、早く帰れたらそりゃいいよ。
生まれが、地方じゃない人には分からないんでしょうね。
そもそも比例のドント方式だって、大政党に有利になってるし、これって平等なの?
まぁ、5倍は是正すべきだと思うけど。
当人からしたらやってられないですね(わたしは千葉さんは応援してませんでしたが)
得票数2位の小泉事務所では、投票終了1分後の20時1分には
当確通知が入ったそうです。
あの当確判断ってのもどういう計算でやってるんでしょうね。不思議です。。。
神奈川県て甲子園も超激戦で、トーナメントにおける
1勝の重みが他県とは全然違ったりしますが
あれもなんかうまいこと是正できたらいいのになあ、なんて思いますね。
って思う反面、政治が地方無視の流れになれば、地方の自律が促されそうなので、支持しちゃいそう・・・
ただ、日本にはなじまない考えなので、ここでの予想とはナナメ上にいく展開が日本の将来でしょうね
地方はまとめて道州制で1人区かな?いや参院廃止が一番かな。
それに、5人区の東京都では民主党がトップ当選を果たしていますが、
3人区の選挙区では5ヵ所のうち3ヵ所で、
2人区の選挙区では12ヵ所のうち9ヵ所で自民党がトップ当選してます。
1人区に関しては29ヵ所のうち21ヵ所です。
この結果の原因を単に「1票の格差」として断じるのはあまりにも雑だと思います。
選挙区外の人は選挙区立候補者に入れられないのだから、鳥取から立候補した人が数が少ないの当然のこと。
人気アルChikirinさんだけにがっかりですよ。
民主党もみんなの党も、まず今、何をやるべきか、何をやらねばならぬのか、よーーーーーーーく、わかってますよねー。
あこがれの中国、北朝鮮の盤石の権力構造を目指して、がんばれーー。
選挙対策ありがとうございます。これからは地方票を獲得できるように一層頑張ります と痛すぎる勘違い政党が出てくるに100kanを賭けます。
voting poorの地区の立候補者数を増やせば解決するけど議員を減らす方向と逆行するし、票の分裂を起こして党の支持率と当選者数が逆行する。かと言って鳥取島根から一人、四国から二人とかにすると反発招きそうだし。(でもこれが一番現実的?)
なんで民主のほうが比例で得票できたかはchikirinのでよくわかった。まだまだ支持率的には民主>自民なのね。ありがとー
おざーさんがやった事ですけどねw
たとえば千葉さんの場合「神奈川というトップクラスの人口集中地で立候補して」「かつ地元出の現職大臣」という(明らかに党の政策などによらない)補正があったから80万集まったんであって全国を選挙区にして個人名指名だったら70万も集まらなかっただろう、ともいえるわけです。(同じ民主党の人にすら破れているのだから)
逆に全国区で比例代表のように党名だけ書かせるんだったらそれこそ蓮舫とか千葉さんとか小泉ジュニアたちテレビスターの効果は消えて党首勝負になたかもしれません
大手メディアなどは選挙制度の歪みについてはあまり触れようとしませんよね。
抽象的に指摘することはあっても。
そして、民意のバランス感覚とかあいまいなことで、選挙結果を解釈する。困ったものです。
地方は弱者だから。地方の窮状をより正しく中央に知らしめる為
には地方により多くの議員を配分することは間違ってはいまい。
常に平等であるべきだが、平等が常に正しい訳でもない。
一票の格差について、今まであまり深く考えていませんでした。ただ、chikirinさん作成の表を見て、自分が投票した人が、得票数ではかなり上位にいたことが発覚…。これは確かにどうにかしてもらわねばならないですね!!
170万票で当選した議員さんと13万票で当選した議員さんとが当選後は同じ1議席っていうのも
考えたらすごい話しですよね
今後の注目は、政党間の個別の法案審議で、共闘体制を取るか取らないかだと思います。
蓮舫大臣はテレビで、「他の政党と組む可能性は無い」「個別の法案については個々に対応」的な事を言ってました。
正論です。綺麗事と言う人も居ます。
心配なのは「みんなの党」です。存在感と国民の気持ちは全国に示せましたが、国会内での力が無い。
しかも、何処の政党とも組む事が出来ない様な気配がします。
つまり、応援しても、実りが無い政党なのですが、なんとかして3大政党制時代を造る事を期待します。
すくなくとも「格差があっても良い理由さがし」はしてない。
という民主国家における諸外国の常識を知ってから読んでいる人と、あくまで自分の出身母体や環境の利害関係だけで考えて読んでいる人で多くの差が生まれるエントリー。
chikirinさんはいつものとこながら、釣り針うめぇ。
それぞれの候補者は、それぞれの選挙区の中では平等の立場の中で選挙活動しています。
比例と異なり、選挙区は地域での代表者を選ぶのが目的なので、地域間の一票の格差は何も問題ないかと思います。
人口が多くて、候補者が少なければ、候補者一人当たりの得票数が増えるのは当然かと思います。
議席数を決める段階からその重みを考慮しないと。
得票数に差があること自体をおかしいとするならわかりますが、
少ない得票数で当選した人を否定するような書き方は違うでしょう。
少ない得票数で当選した人だって都市部に来れば、
都市部で当選した人と同じように大量に票を獲得するかもしれません。
逆に都市部で落ちた人は、他のところに行っても落ちると考えられるのではないでしょうか。
権利富裕層というネーミングも素晴らしいし、表の作り方もいつも分りやすいです。
定数不均衡是正に反対する人は、地方の人は苦しんでいるので有利に扱って欲しいと考えています。
しかし都市でも苦しい生活を送っている人は大勢います。今の制度は、低所得者に多くの投票をさせているのではなく、たまたま住んでいる地域によってランダムに投票価値が変わっているのです。決して県民所得が低い地域に多く議席が配分されているわけではありません。
地域代表という考えもとれません。地域代表の考えをとっている国は連邦国家です。連邦国家では連邦議会の権限が制約され、市民生活に関わることは州議会の専権となっています。日本の国会は万能で、全てのことを決められます。ですので地域によって代表される議員数が異なると、自分たちの生活のことについて、一人一人の意見の反映のされ方が地域によって異なり、不平等な取り扱いになるのです。
コメントにコメントは微妙なところだけど、本質的なところなので、承認して欲しいです。
>47の都道府県があるのだから、その地域の代表を選ぶことは当然だと思う。
何で当然なの?
>うちの両親はそこで働いてるんだから、そこに金ばらいまいて欲しいし。
それはみんな思うことだろうけど、私は都会で働いてるので都会に金ばらまいて欲しい。そういった、それぞれの意見を選挙で決めるのが民主主義であって、そこに票ごとの格差を認めるのはフェアではない。
また、票の格差をインフラとか仕事と比較すること自体がよくわからない。けど、一票の格差=10万円とか定義できたら、それはそれでおもしろいけど。
バーチャルに50選挙区を作り、1〜50のどの選挙区に立候補しても、投票しても個人の自由とする。
公務員は#1選挙区で、サラリーマンは#2〜#5で、農業は#6で、...ワーキングプアは#30で、
野球ファンは#43で、,,,と言うように自然と棲み分けができるでしょう。
おちゃらけは#51で投票してください。
同じ「地方」なのに、北海道は冷遇されている?!
http://twitter.com/ainsophyao/status/18279094560
我が意を得たりと感じるのですが、データ解析の方法に改善の余地があるのではないでしょうか。
都市部での格差が5倍以上あるならば、平均5人は候補が通らないといけないのですが、立候補者数が少ないために都市部の票がまだまだ無駄になっています。
今回の件、議員数を減らす方向で考えると道州制導入含めた選挙区の見直しが必要になると思います。
それと同時に…
年齢による一票の格差を無くしてもらいたい!
今の人口構成で行くと若い世代の声は政策に反映されにくい。
若い世代の投票率を上げる努力も必要ですが、100%投票に行ったとしても年金受給世代の「数の力」にはとてもかないません→福祉中心の高コスト国家へ。
10歳ごとの年齢でグループ分けをして(80歳以上はひとつのグループ)、選挙区内の人口構成比によって一票の重さを調整するというのはどうでしょう?
今の制度のまま今後数十年、年老いて行く団塊世代中心に世の中が動いていく(停滞する?)かと思うとゾッとします。
個人的には、得票数で並べて当選者を見るよりも、当落に関しては選挙結果を尊重した上で、有権者数に応じた議決権の再配分(神奈川での当選者は5票、鳥取の当選者は1票というように)を行い、政党ごとの勢力を見てみる、というのも面白い気がします。大勢は変わらないかもしれませんが。
何はともあれ既存国会議員の権益を廃した徹底的な格差是正を望みます。