2010年7月13日0時7分
サッカーW杯南アフリカ大会は、改めて各国の独自性の大切さを教えてくれた。
優勝候補と目されたフランスやイタリアが1次リーグで姿を消し、トーナメントでも、優勝候補筆頭のブラジルが早い段階で姿を消した。逆に、1勝すら危ぶまれた日本を含めて、国民性を生かしたゲームを展開した国が勝ち進み、人々に勇気を与えた。
全員サッカーでパスとランを繰り返すオランダ、きめ細かくパスをつなぐスペイン、上位チームにはその国ならではの独特の試合運びがある。
日本が強かったのは、全員で守備をして、一気に攻撃した試合だ。パスの速さやシュートの精度、トラップの能力は欧州や南米の選手に及ばないが、愚直に距離を走り、相手が得意とする攻撃の芽を摘む戦術は、上位国にも通用した。
極東に位置する日本は、世界のトップを争う欧州や南米からすると辺境にある。世界トップに学ぶことは多いが、出来ないことを望んでも仕方ない。日本だからできる戦術が見えた気がする。
自動車産業にも同じことがいえる。今でこそ、日本は品質や製品、部品の分野で世界最高水準にある。だが、数十年前まで、日本は欧米の技術や販売・マーケティングのノウハウを学びながら、日本流を極めてきた。
欧米の自動車先進国から遠く離れた日本だからこそ、失敗を経ながら、人知れず、誰にも負けない世界標準を獲得できた。その背景には、和を重視するチームワークや「匠(たくみ)」の技術など、日本独自の精神文化やものづくり文化があった。
世界最高を意識しながら、自らの独自性を理解し生かすことが、世界標準への一歩だ。(窯)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。