当時電車に乗務していた元女学生たちを招いた被爆電車の中で、迫真の劇が披露された=4日午前、広島市中区、高橋正徳撮影
原爆投下前後の広島で、路面電車の運転士や車掌をした女学生をモデルにした演劇「桃の実」が4日、広島市内を走る広島電鉄の「被爆電車」を貸し切って上演された。電車には当時乗務した元女学生6人も招かれ、劇中の軍歌や唱歌をともに口ずさみ、時折涙をぬぐいながら約1時間の熱演に見入った。
「桃の実」は演劇集団モケレンベンベ・プロジェクトの作品。戦時下の人手不足を補うため、1943年に開校した広島電鉄家政女学校の生徒たちが主人公だ。原爆で多くの仲間を失った少女たちが、被爆3日後に運転を再開した電車に乗務し、復興に尽くす姿を描いている。
同女学校1期生の秦直子さん(81)=広島県呉市=は「懐かしくて涙が出た。若い方々が私たちのことを伝えてくれてうれしい」。1期生の中村モリノさん(81)=同=は「苦労もしたけど、運転士をやったのは誇り。あの頃を忘れることはありません」と話した。(加戸靖史)