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所長
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日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。(1999年11月)

2010.07.13

 ワシントンで15日、16日 普天間協議を再開 米紙「合意実現は困難」 

カテゴリ沖縄問題 出典 琉球新報 7月13日 朝刊 
記事の概要
米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり、日米両政府の実務者協議が15日、16日の両日、米ワシントンで再開することが分かった。

代替施設の位置や工法のほか、今後の日程について話し合うとみられる。

日本政府は8月末までに、辺野古移設の詳細を決める予定だが、参議院選で民主党が大敗し、協議を実質的に進展させることは困難だ。

米主要紙も選挙結果を受け、「普天間移設の実現は厳しくなった」などと報じた。

菅政権で実務者協議は6月21日に続き2回目。日本政府は滑走路を2本から1本に変更する案を検討している。

しかし沖縄の強い反対に加え、菅政権の勢いが弱まり、残り1ヶ月で詳細を決定するのは難しい状況だ。

民主党の大敗を受け、ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は、「弱体化した菅首相が日米合意を実行するのは難しい」と指摘。「地元の強い指導力が必要なこの問題で、菅首相の政治力は失われた」と、実行は不可能との見方を示した。

ニューヨーク・タイムスは、菅首相が普天間問題を避けて来たことに触れ、「民主党は有権者を失望させた」と報じた。
コメント
今の政治状況や沖縄の反対を見て、8月末までに普天間飛行場の代替施設で、辺野古にどの場所(位置)にどのようなやり方(工法)で新基地を造るかを、日米両政府で論じる方が無理だと誰でもわかる。

これから民主党内で内紛が起き、民主党が分裂する可能性が高くなってくる。そのような政治状況で辺野古新基地の位置や工法の決定など不可能だ。

アメリカ政府も、沖縄の強い反対で普天間基地の代替施設を沖縄に建設することを変更する可能性が高いと思う。

すなわ普天間の航空部隊を含むすべての戦闘部隊がグアムに移転し、沖縄には海兵隊の司令部だけ置くという案のほうが現実的だからだ。

この案は年内にアメリカ政府が発表すると思うが、沖縄に海兵隊の司令部だけを置く理由は、日米安保の維持・強化のためである。

陸軍司令部は座間基地、空軍司令部は横田基地、海軍司令部は横須賀基地、海兵隊司令部は沖縄で、横須賀の第7艦隊だけは周辺に世界でトップレベルの艦船修理施設があるので実動部隊を置くが、あとはすべて司令部のみである。

米軍の緊急展開能力で司令部があれば作戦の指揮がとれ、政治的な存在感を示すことが可能なのである。

もはや沖縄に海兵隊の戦闘部隊を置く理由はない。海兵隊の抑止力を期待するなら司令部だけを置くことでも十分である。海兵隊の出撃基地はグアムであっても十分にアジア戦略は立てられる。

これなら普天間飛行場の代替施設どころか、海兵隊の訓練場や駐留スペースも必要がない。

すなわち沖縄に新しい海兵隊の基地は必要がない。キャンプ・ハンセンに陸自の第15旅団が移駐するから、その一角に、海兵隊の司令部を設置すればよいのだ。

嘉手納以南の米軍施設のほか、北部のキャンプ・シュワブ、辺野古弾薬庫、北部訓練所を沖縄に返還することが可能になる。

すなわち嘉手納飛行場、嘉手納弾薬庫、キャンプ・ハンセンだけを残して、大規模な第1次・米軍基地整理削減が可能である。さらに東アジア情勢(特に対中国)を見て、第2次の米軍基地整理削減交渉が可能になる。

ほぼこの案でアメリカ政府が動くと思う。間違っていけないのは、この案は日本の都合に合わせた案ではなく、あくまでアメリカ軍の都合による再編の一環なので、日本がアメリカに諂(へつら)う必要はない。

諂いたいのは外務官僚だけで、グアム基地利権や沖縄の基地利権を手放したくないからである。岡田外務相が今までの外務次官経験者を外務省顧問から追放したことは正しかった。

いま、私が沖縄問題で一番考えていることは、普天間代替施設のことではなく、海自の専用施設(港湾)をどこに置けるかである。できるだけ嘉手納基地に近い場所が有利になるが、辺野古(キャンプ・シュワブ)沿岸である必要はない。
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