2010年07月13日

飲酒と暴力の関係、怒りを抑圧している人で強い。

ノルウェーの青少年から無作為に抽出した2,697人に5年間隔で2回調査したところ、多量飲酒の頻度が増えると暴力的行動の頻度も増えたが、この関係は怒りの感情を抑圧する傾向が高い人で強かった。論文はAddiction電子版に2010年6月21日掲載された。

対象者の平均年齢は、1回目の調査時が16.5歳、2回目が21.6歳だった。多量飲酒は、「過去12ヶ月間に、明らかに酔っていると感じるほど多量に飲酒したことがありますか?」という質問でたずねた。暴力的行動は、「過去12ヶ月間に、(武器なしの)喧嘩をしたことがありますか?」という質問でたずねた。二つの質問は1回目と2回目の調査時にたずねた。

怒りの感情を抑圧する傾向は4項目の質問でたずね、傾向が低い(対象者の32.3%)、中等度(32.0%)、高い(35.7%)の3グループに分けた。この質問は2回目の調査時にのみたずねた。

その結果、年間の多量飲酒の平均頻度は、1回目の調査の7.23回から、2回目の調査の16.77回に増えた。一方、暴力的行動の平均頻度は、1回目の調査の0.83回から、2回目の調査の0.39回に減った。

対象者全体では、多量飲酒の頻度が10%増えると、暴力的行動の頻度が3.3%増えた。ところが、多量飲酒の頻度が10%増えた場合の暴力的行動の頻度は、怒りの感情を抑圧する傾向が弱いグループでは0.4%増と誤差範囲の結果だったのに対して、中等度のグループでは3.9%、高度のグループでは5.3%に増加した。つまり、多量飲酒による暴力的行動の増加は、怒りの感情を強く抑圧する人ほど大きいことをうかがわせる結果だった。

著者らによると、限定された集団ではなく、全国から無作為に抽出した集団で、飲酒・暴力・怒りの抑圧の相互関係を調べたのは、今回が初めてという。

⇒ふだん怒りの感情を押さえつけている人が、飲酒により抑制がはずれて、暴力的行動に出るというのは、ありそうな話だ。

第1回目の調査時の対象者の平均年齢は16.5歳と未成年だ。ノルウェーの飲酒可能年齢は18歳以上のようだが、それ以前の未成年に、全国の無作為標本で飲酒と暴力について調査を行なっている点には驚く。未成年(20歳未満)の飲酒は法律で禁じられているから、未成年の飲酒率を0%にするという非現実的な政策?目標を掲げる国とは違うようだ。

ytsubono at 06:00論文解説  この記事をクリップ!
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