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18期増収増益!九州の「ユニーク陳列」スーパー

プレジデント7月12日(月) 10時 1分配信 / 経済 - 経済総合
倒産寸前だった同社に入社し、業績回復を達成した加治敬通社長(左)。九州ならではの馬刺し食べ比べセット(右上)と母の日用のフルーツタワー(右下)。
■半径500メートルの店を視察して回った

 小売業にとって厳しい状況が続くなか、18期連続で増収増益を達成しているスーパーがある。九州北部に41店舗を展開する食品スーパー「ハローデイ」がそれだ。2010年3月期の売り上げは584億円。従業員は4300人(パート含む)の中堅企業である。

 店頭へ行くと、目につくのは店内と商品のディスプレーに工夫が凝らしてあること。福岡の姪浜店では天井にクジラが泳ぎ、コスタ行橋店では陳列棚の上に巨大なキノコ、くまやリスのぬいぐるみが飾られている。
 商品ディスプレーも一般のスーパーとは違う。果物、野菜はみずみずしさをアピールするために、半分にカットしたものが置いてある。
 ハローデイの商品は、大手GMSや地元のスーパーと比べて決して安いわけではない。たとえば小倉にある足原店には、東京・銀座の百貨店にもテナントを出すオリーブオイルやビネガーの量り売りのコーナーがあり、100ミリリットルあたり800円程度だ。しかし、売り場にいると楽しい気分になり、ついつい買い物をしたくなる。

 家業を継ぎ、08年から社長となった加治敬通氏は次のように語る。
「規模を大きくするつもりはありません。私たちは、日本でいちばん働きたくなるスーパーをめざしています」
 今でこそ業界から注目され、「日本一視察の多いスーパー」になったハローデイだが、加治が父親から店長に抜擢された19年前は、「地域でいちばん遅れていたスーパー」だった。特に生鮮食品の売れ行きが悪く、加治は窮余の一策として半径500メートル以内にある他店をつぶさに見て歩いた。わかったことは自社の商品ディスプレーが拙劣だったこと。
 売れ行きのいいスーパーは刺し身でも、立体的に食欲をそそるように盛り付けてあったのに対して、ハローデイでは切り身がトレイにへばりついているような状態だった。以後、加治は「見栄えよく陳列する」ことを心がけた。

 あるとき、菓子売り場で困った顔をしているおばあちゃんを見つけた。「チョコパイが大好きだが、ひとり暮らしなので10個入り全部は食べきれない」という。翌日、加治は10個入りパックをバラした。そしてさまざまな菓子を5個程度にまとめ、ひと山200円で売り出したのである。菓子のバラ売りは客にウケ、おばあちゃんも大喜び。ハローデイが展開する「イチゴ食べ比べ」「ふぐ食べつくし」といったバラエティ商品のひな型は菓子のバラ売りセットだった。加治は好調の理由を冷静に分析している。
「店内と商品のディスプレーに凝るのは、従業員が楽しい気分になるから。今まで小売業は価格競争と効率化に邁進したため、従業員は疲弊し、売り場から笑顔がなくなりました。うちは価格競争はやりません。従業員に元気になってもらい、お客さまに楽しんでいただく。これはどこでもやろうと思えばできることです。ただ、効率を考えてやろうとしない」 (文中敬称略)


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野地秩嘉=文
松隈直樹=撮影

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  • 最終更新:7月12日(月) 10時 1分
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