2010.7.13 05:00
「いきますよー。YES WE 菅!」
熊本市内の公園で1日に行われた菅直人首相の街頭演説。地元選出の衆院議員が呼びかけると、集まった聴衆は事前に配られたプラカードを掲げて連呼した。これを聞いた首相は「『YES WE 菅』というスローガンで私を歓迎していただいたことを心からお礼を申し上げます」と満足そうな表情を浮かべていた。
「YES WE 菅」の唱和は自然発生的なものではない。首相到着前には、民主党議員が聴衆に練習を求めていた。本来、街頭演説は特定の支持者だけではなく、行楽客や買い物客など一般聴衆も対象にするはずだ。その街頭演説で、聴衆をあたかも身内のように扱う光景は、民主党では決して珍しくない。6月19日にさいたま市のJR大宮駅前で行われた首相の街頭演説では、地元衆院議員が拍手の予行演習を取り仕切っただけではなく、首相の演説終了後には「民主党ガンバロー」三唱の音頭をとった。30日のJR山形駅前では民主党議員が「同志のみなさん、こんにちはー」と聴衆に呼びかけていた。
平日昼間の街頭演説は人も集まりにくく、労働組合の動員で聴衆を集めたとしても不思議ではない。そういえば、小泉純一郎元首相や麻生太郎元首相の選挙と比べると、主婦や若者よりもサラリーマン風の中年男性が目立っていた気もする。
ある民主党議員の秘書は「野党時代の癖が抜けていない。首相の街頭演説だったら幅広く周知徹底すれば人も集まるのに、まずは組合関係者や支持者の人間を集めようとする」と解説する。組織選挙を重視した小沢一郎前幹事長と距離を置く首相だが、民主党の組織選挙体質はなかなか変わらないというわけだ。参院選が終わってもなお、組織選挙の“伝統”は受け継がれていくのだろう。(杉本康士)