きょうの社説 2010年7月13日

◎減少する新設法人 成長戦略に欠かせぬ支援策
 民間調査機関によると、2009年に北陸で新たに設立された法人(新設法人)は14 25社で、前年より7%減少した。4・4%減の全国平均より高い率で新設法人数が減る一方、08年度の北陸の倒産発生率の高さは全国2番目という憂うべき状況にある。起業や新分野進出による新設法人は地域の経済活力、雇用拡大の原動力であり、政府、自治体のさらなる支援を望みたい。

 昨年1年間の新設法人数は、石川県が630社で2・8%減にとどまったものの、富山 県は14・4%減の441社に落ち込み、減少率は全国最大となった。08年のリーマンショックに端を発した世界同時不況で、起業意欲が低下したことが大きな理由と見られる。

 08年度の北陸の倒産件数は全国最少だが、倒産発生率は0・62%で北海道に次いで 高い。石川県は0・66%で全国8位という。

 政府、自治体は長年、ベンチャー企業などの育成に力を入れている。開業率を高めるこ とは各地域の課題であり、石川県は県産業創出支援機構、富山県は県新世紀産業機構が中心となり、起業家のための講座や経営支援事業を行っているが、今年度に入り、政府事業で気掛かりな動きもある。

 たとえば、経済産業省は無駄な事業を洗い出す「行政事業レビュー」で、同省補助で商 工会議所が実施している「創業塾」の廃止方針を打ち出した。レビューは経産省版事業仕分けで、2011年度予算概算要求に反映される。

 創業塾については、仕分け委員から、講座の効果を問い直す声が出されたという。省庁 が所管事業を見直し、歳出を削減することは重要であるが、起業支援は成長戦略として不可欠であり、来年度予算で、より実効性のあるバックアップ策を考えてもらいたい。

 政府は先月、中小企業政策の指針となる「中小企業憲章」を閣議決定した。中小企業を 経済活力の源泉、社会の主役と位置づけ、基本原則の一つとして「起業促進策を抜本的に充実する」ことを掲げている。来年度予算は中小企業憲章具現化の第一歩であり、実際に効果のある起業促進策で憲章に魂を入れてほしい。

◎自治体の豪雨対策 ゲリラに応じた避難指示を
 ゲリラ豪雨による浸水被害や土砂災害が全国に広がっている。1時間雨量や1日雨量が 観測史上最多を記録する地域が相次ぎ、今年の梅雨はいつ、どこで起きてもおかしくない。ゲリラ豪雨は、もはや異常気象ではなく、梅雨の代名詞になってきた。

 県の雨量計で1時間112ミリが観測された七尾市では、戸外へ出るのは危険として、 避難勧告や指示を見送った。全国では避難時に濁流の犠牲になるケースが増えているだけに、自治体が判断に迷う場面はこれからも続くだろう。

 大雨などの警報、注意報を市町村単位に細分化して発表する気象システムが5月から始 まった。ゲリラ豪雨情報でも、国土交通省がレーダー監視システムを導入し、降雨の範囲や雨量の変化がホームページを通してリアルタイムで把握できる仕組みが整ってきた。観測データが多様化し、その内容も高度化してきたが、大事なのはそれらを最大限に活用し、実際の危険回避に生かすことである。

 災害では「自助」も重視されているが、住民の多くは自治体の避難指示を参考にしてい るのが現実である。予想を超える猛烈な雨であれば、浸水状況や時間帯、地域の特性などを考慮し、戸外に避難させない方が安全な場合もある。あるいは、夜間に豪雨が想定されれば、空振りを恐れず、昼間から余裕をもって指示を出す選択肢も考えられる。ゲリラ豪雨は被害予測が極めて難しく、画一的な避難基準では対応できないだろう。

 状況に応じた迅速な判断が下せるよう、自治体はゲリラ豪雨が起きれば、どの地域で危 険性が高まるのか、警戒区域をきめ細かく設定してほしい。地域の事情に即した行動指針を住民に示すことも大事である。刻々と変化する気象情報を正確に分析し、活用できる職員の養成も求められている。

 ゲリラ豪雨では、夜間の見通しが利かない状況で外に出て濁流に流されたり、道路が冠 水しているにもかかわらず、車で避難して水没したケースがある。豪雨時に自宅周辺がどのように変化するのか、土地の高低差や排水の状況なども含め、把握しておきたい。