2010年5月14日 2時34分 更新:5月14日 2時39分
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を巡り、鳩山由紀夫首相は13日、「沖縄の負担を全国で分かち合う」との理想を掲げて6月以降も関係自治体や米政府との交渉を継続する姿勢を鮮明にした。自ら設定した5月末決着の断念により「退陣論」も取りざたされる中、全国民に責任の共有を問いかけることで首相への批判を抑える狙いもうかがえる。対象となる自治体は踏み絵を迫られる形になりかねず、「続投」への理解を得られるか、大きな賭けに出たといえそうだ。【上野央絵】
「沖縄の基地負担を少しでも軽くしたい。全国の知事の皆さんに協力を求めたい」。13日昼過ぎ、首相官邸。鳩山首相は全国知事会長の麻生渡福岡県知事にこう要請し、急きょ27日に東京都内で知事会が開かれる見通しとなった。
首相は13日、6月以降の交渉継続を表明したものの、ただ先送りしただけでは「職を賭す」とまで言ってきた首相の責任論は免れない。嘉手納基地も含む沖縄県内の米軍訓練を全国に分散させる「負担軽減パッケージ」の提示を目指すことで事態の打開を図ることにした。
自民党などは普天間問題の迷走を招いた責任を問い退陣を求めているが、首相は13日夜、「普天間に全国民が関心を持っていただくことによって、安全保障問題の重要性が浮上した」と釈明。同日配信の鳩山内閣メールマガジンでは「基地問題は国民全員で考えていかなければならない。負担を分かち合う気持ちを持っていただければ」と投げ掛けた。
知事会で一定の理解を得たうえで5月末までに政府方針を決めて「決着」の体裁を整える思惑もあり、平野博文官房長官は13日の記者会見で「閣議了解」を模索する考えを示した。しかし、社民党の重野安正、国民新党の自見庄三郎両幹事長が同日、平野氏を訪ね、与党3党の党首級による基本政策閣僚委員会を「当面開くべきではない」と申し入れた。社民党は普天間移設先を「名護市辺野古周辺」とする政府原案に反発しており、与党の足並みはそろわない。
負担を分かち合う「覚悟」を求められた知事側の反応は複雑だ。北海道の高橋はるみ知事は「実弾射撃訓練(の受け入れ)など沖縄の負担軽減に努力している」と強調。東京都の石原慎太郎知事は「地政学的な条件は当然ある。だからアメリカは沖縄を選んだ」と否定的な見解を示した。石川県の谷本正憲知事は「基地のある地元自治体がどう考えるかが重要。知事を集めても解決にならない」と知事会開催の動きをけん制した。
平野氏は12日夜に鹿児島市内で会った徳之島町議5人に対し普天間から500人規模のヘリ部隊の訓練を九州の自衛隊基地にローテーション方式で分散移転する案を示しており、九州の警戒感は強い。長崎県の中村法道知事は「(すでに)米軍基地を抱え重要な機能の一部を担っている」。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は「『総論賛成、各論反対』だ」と徳之島移転に改めて反対を明言。麻生氏も福岡県内の米軍訓練拡大については「仮定のことは言えない」と慎重だ。
こうした中、昨年11月に関西国際空港で受け入れる可能性に言及していた大阪府の橋下徹知事は13日夕、記者団に「政府からの要請はうれしい。やっと本気で国全体が動いてくる」と歓迎の意向を表明。米軍基地のない地域が新たな負担を受け入れるべきだとして「優先順位が一番高いのは関西」と断言し、「おねだり集団から分権時代の知事会になれるかの試金石。回答を出さないなら知事会は解散」と強調した。