【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第39話 なんというか色々。
晋陽城玉座の間にて、張燕は討伐軍総大将張温から遣わされた使者の携えていた降伏勧告文書を読んでいた。
内容は「愚かな戦いを始めた反乱軍首魁張燕と、高順一党の首を差し出せ」というものだった。
それ以外のことには何も触れられていない。ただ「首を出せ」とだけ。使者は内容を知っているはずもなく、ただ玉座の前で畏まっている。
これが仮にも討伐軍を任せられるほどの男が書く内容なのだろうか。
張温は実際にはもう少し賢しい男なのだが、閻行に恐れを為して、普段の頭脳を発揮できていない。それがこんなところにまで表れているのだから相当重症ではある。
「・・・なるほど。返書を書きますので暫くお待ちを。」とだけ言って、張燕は席を外した。
彼女は、内心で凄まじい怒りを感じていた。
愚かと言われたのもそうだが、自分達の首を差し出したところで兵と民の命が全く保障されないよ、と言っているも同然の勧告文書。何より罪を問うなら、前の晋陽太守こそ告発されて然るべきだろう。そして、そんな男を太守に据えた十常侍も。
彼らのような存在のせいで罪のない民は追い詰められて、それらに推されて自分は起ち上がったのだから。
そもそも、自分達の武将である華雄の事に言及すらしていない。もう死んだと思っているのか。それともどうでもいい捨て駒だといいたいのか。
そんな怒りを何とか押し留め、張燕は返書を書き始めた。
討伐軍の本陣は、張燕軍と最初に対峙した時よりも南に10里ほど下がっている。
それを往復させられる使者は溜まったものではないだろうが、それでも自分の任務を遂行するために帰還してきた。
そんな使者の苦労をねぎらいもせず、張温は慌てて返書を開いて返事を確認する。
そこには要約するが、流麗な文字でこんな事が書かれていた。
「降伏はありえず。ただ徹底交戦を行う。あまり時間をかけるのも面倒ですし、全ての決着は戦場で決めようではありませんか? 後はそちら次第、いつでも受けてたちましょう。」
と、挑発をしているとしか思えない内容だった。
自分の、高順達の、民の命を覚悟の2文字で背負い込んだ張燕の「やれるものならやってみろ」という、明確な挑戦状ですらある。
これを見た張温は「何がいけなかったんだ・・・。」と更に塞ぎこんでしまうのだが・・・まぁ、自業自得なのだろう。
華雄の安否がわからない徐栄らに教えれば間違いなく張燕軍との決着を望むだろう。戦いたくない張温にとっては頭痛の種でしかなかった。
「な、なんとか洛陽に帰還できんものか・・・?」と考え始めた頃に、洛陽にいる十常侍からの密書を携えた使者が討伐軍本陣に到着した。
この2日後、討伐軍は完全に撤退。徐栄達は納得行かず、対陣を続けるように求めたがこれ以上(怖いから)戦いたくない張温は十常侍から遣わされた手紙とその内容を盾に撤退を強行。
自分達だけでは華雄が無事としてだが救出も、輜重の問題でこれ以上の戦闘続行も不可能だと理解している徐栄達は不満を抱きながらも従うほか無かった。
張燕も討伐軍が撤退するのを黙認した。追撃をするべきだという声も挙がったが、反撃を恐れた張燕はそれに同調はしないのだった。
両軍共に被害はあったし、現状の兵数はそう変わらない。放っておけばいいと言う判断だった。
こうして、一時的に且つおかしな形ではあるが晋陽は官軍に勝利したことになり、またも漢王朝は名声を下げる羽目になった。
この時、南で反乱を起こした区星はあっさりと破られ、西の馬騰はただ官軍と睨みあいをしていただけである。
南(朱儁)に派遣された官軍は帰還中。西(皇甫嵩)もまた、何故十常侍からの命令が?と不審に思いつつも守備兵力を残して帰途に着くのだった。
討伐軍が退き、暫くは戦にならぬと見切った張燕だったが、困った事があった。華雄の処遇である。
ある程度情報を聞き出して、後は傷を治してもらい適当に拘留なり身柄を引き渡すか・・・とは考えていたが、まさか討伐軍が完全に撤退してしまうとは思いもしなかった。
華雄も討伐軍が完全に撤退した事に「はぁ!?」と驚き、「ああ・・・み、見捨てられた・・・」とガックリと肩を落としていた。
高順達は華雄の助命を願っていたし、敵将とはいえこの状況はあまりに不憫すぎる・・・と同情してしまった張燕は結局、「時機を見て帰還していただく。それまではこの地に留まって貰いましょう」という結論を出した。
そしてもう1つやりたいことがある。烏丸との繋がりを作ることだ。
これは、烏丸の動きを探らせていた影からの報告に「烏丸は現在、晋陽北側に移動して来ている」というものがあった。
長城を北に越えた場所だが、急がせれば数日とかからない。味方には引き込めなくても、少なくとも敵対はしたくないのだ。
高順達の話に寄れば、烏丸は公孫賛と良好な関係であるらしい。つまり、官軍とは言わなくても、官軍に協力をするかもしれない第3勢力と言える。
幸いと言ってもいいかどうか、烏丸と繋がりある高順が手元にいる。彼に仲立ちをしてもらって交渉をしたい。その旨を伝えたところ、高順は気乗りしないようだったが結局はその依頼を受けることにしたようだ。
高順から見ても、烏丸と敵対するかもしれない状況と言うのは好ましくない。
~~~晋陽城~~~
玉座の間に、張燕と高順の姿があった。彼らは今、烏丸との交渉のことについて話し合いをしていた。
「で、どうするつもりなんですか、張燕様。」
「はい、影に命じて手紙を届けさせています。長城付近でお会いしたいと。」
張燕の言葉に高順はやれやれ、と首を振った。
「俺が引き受けるの見越した上で既に使いを出していましたか。人が悪いと言うか何と言うか。」
「あら、酷い言い方ですね。信頼しているからこそだというのに。」
「はいはい。それで、人選はどうなさるおつもりですか。」
張燕は少し考えるような素振りを見せてから、「私と高順様、楽進様と沙摩柯様。残りの方々は留守居をお願いしたいと思います。」
正直に言えば、張燕は自分と高順さえいればなんとかなるような気はしていた。
自分自身が出向く事に意義があるし、高順がそれに従うのも交渉を少しでも有利にしたいだけである。沙摩柯は烏丸の代理責任者である蹋頓と知己だということもある。
楽進はどちらかといえばおまけのような扱いだが・・・。
「はぁ・・・まあ、構いませんけどね。どう動くかは返事が来てからですよね?」
「ええ、その通りです。ですからそれまでは警邏や訓練などをお願いします。」
「・・・非番の日は?」
「ありません(きっぱり)。」
・・・こき使うつもりですね、解ります。
張燕の冷たい一言にがっくりと肩を落とし、退室していく高順であった・・・。
数日後、影が単干「丘力居」の名で書かれた2枚の手紙を携えて帰還した。
1枚を張燕に。もう1枚を高順一党に対して。
張燕への手紙の内容は掻い摘んで言うと「そちらの考えたように、長城付近でお待ちする。」と、部族を抱える立場としての正式な文書である。
一方、高順達に対しての手紙は、彼らの安否を気遣い、また無事を喜んでいるという、友人として送った手紙であった。
手紙を受け取った高順は、自室に当時からの仲間を全員集める事にした。
この時点で彼らは手紙の内容を知らないのだが、蹋頓から丘力居が単干を継承したことに驚きつつも喜んでいた。
「さて、皆・・・手紙の封を開けるぞ。」
「いや、手紙1つにそこまで緊張するのもどうかと・・・。」
趙雲が苦笑しながら言う。事実、高順はなぜか緊張していた。特に意味はないのだが、内心で「丘力居ちゃん立派になったよなぁ」と嬉しかったのである。
「ねぇ、高順おにいちゃん。はやく読んでよ~。」
臧覇が頬を膨らませて文句を口にする。特に丘力居と仲が良いこの娘が一番手紙の内容を気にしているのかもしれない。
よし、と高順は封を開けて、手紙を広げてみる。
「何々・・・「皆様お久しぶりです。元気そうで何よりと言いたいところですけど、張燕殿の影からある程度の事情を聞きました。まさか皆様が朝敵になっているとは思いもしませんでした。蹋頓姉さまも心配しています。あ、私達は元気です。」」
ああ、蹋頓さんも丘力居ちゃんも元気にやってるって事だな。心配させているみたいだがそれは何より。と安心して高順は続きを読む。
内容は、単干を正式に継承したこと、丘力居の両脇を抱える立場の烏延と難楼にこってりと絞られていること、貰った木剣を大事にしていること・・・近況などが事細かに記してあった。
「蹋頓姉さまなんか、高順お兄さんが大怪我をして生死の境を彷徨ったというお話を聞いて「ちょっと行って来ます。」っていきなり晋陽に向かおうとしていました。」・・・何してるんですかあの人。」
黙って話を聞いていた皆が、特に沙摩柯が苦笑していた。大人しい性格ではあるが、たまに熱くなる子供っぽい所は変わってないな、と思わず笑みを浮かべてしまう。
どうも丘力居は影に高順達の現状をある程度、どころか細かく聞いたようだ。影も知っている範囲でならば高順達のことを隠さずに話したと見える。ただ、張燕の事に関してはほとんど喋らなかったらしく、張燕がどういう人かが解らないので少し不安です、とも書いてあった。
「「皆様が交渉の場に来るかどうかは解りませんけど、できればお会いしたいと思っています。臧覇ちゃんは来れないと思うけど、一帯が静かになったら幾らでも会えるよね。それでは皆様、お会い出来る事を楽しみにしております。」・・・だってさ。」
「丘力居ちゃんが単干・・・。なんだか想像できませんね。」
「蹋頓さんがそこまで早く譲るとは思ってなかったの。」
「まぁ、元気そうで何よりやん?」
半ば感心したように、3人娘がうんうん、と頷く。
「して? 交渉には誰が赴くのですかな、高順殿?」
「んー、張燕様が言うには、俺と沙摩柯さんと楽進を連れて行きたいって言ってたな。」
「なんと。私は連れて行って貰えぬのですか。」
趙雲はあからさまに不満げな表情で言って見せた。
「俺に言われてもなぁ・・・。どうしても行きたいのなら俺から聞いてみるけど、皆には留守居を頼みたいと言ってたんだよな。」
「ふーむ。」
高順にせよ趙雲にせよ、討伐軍がこのまま何時までも黙っているとは思っていない。張燕もそれを理解しているからこそ留守居のほうに武将を多く残したいのだろう。
張燕も交渉の場に赴くので臨時の総大将は誰になるやら、と考えた高順だったが・・・思い浮かんだのが張楊だったので深く考えないようにした。(現実逃避
~~~4日後、長城北部にて~~~
張燕は自身の言った通りに高順、沙摩柯、楽進と、1000ほどの兵とそこそこの数の荷馬車を伴って丘力居の指定した場所へと向かう。
そこには既に、数千の軍勢と「丘」と書かれた旗、そして立派な穹廬(きゅうろ。烏丸の使用するテントのようなもの)があった。
張燕は兵士達を待機させ、高順達のみを伴って穹廬へと向かう。
その穹廬の脇に立っていた2人の女性が進み出てくる。烏延と難楼であった。
「張燕殿とお見受けする。中で単干がお待ちだ、武器を兵に預けてから入られよ。」
少々高圧的な言い方であったが、話をしたいと申し出たのは張燕の方であり、出向く形になったのだ。仕方がないとは言える。
「解りました。皆様、武器を・・・。」
張燕の言葉に、沙摩柯と楽進は自分の武器を烏丸兵らに預けた。敵意が無いと言うことを証明するためでもあるのだが・・・高順は三刃槍を思い切り地面に突き立てた。
周りにいた烏丸兵は思わず得物を高順に向けるが、それを烏延と難楼が押し留めた。
さすがに彼女達は歴戦の勇士であり、高順の行いに些かも動じる事もない。
「お前達、これくらいのことで驚くな。すまぬな、高順殿。部下の非礼を許していただきたい。」
「解っている。・・・さ、入りましょ?」
「え、はい。」
張燕は高順に促されて穹廬の中へ。そこに楽進、沙摩柯と続き最後に高順も入っていく。
高順の真意は「この槍は重いから無理して持たせる必要は無い」というものだったが、その中には「あまり舐めるなよ」という物も含まれている。
その後、丘力居と張燕の会談の最中に悪戯心を出した何人かの若い兵士が三刃槍を地面から引き抜こうとしたのだが、誰1人としてそれを成し遂げられる者はいなかった。
穹廬の中には数人の兵士、そしてゴザのようなものに座っている丘力居と蹋頓の姿があった。
丘力居は高順達を見て一瞬だけ嬉しそうな表情を見せるが、すぐに真面目な表情になる。蹋頓は変わらずニコニコと笑っている。
高順から見ても丘力居は随分成長したように感じた。座っているのだが、別れた頃よりも背が伸びて女らしくなった。
蹋頓は変わっていないが、前に比べれば烏丸の事を考えて張り詰めていたような物がなくなったかようにも感じる。
張燕は促されて、丘力居の前に座った。
「ようこそお越しいただきました、張燕殿。」
「お初にお目にかかります、丘力居様。此度はこちらからの呼びかけに応えて下さり感謝しております。」
「いえ。さて、早速ですがそちらのご用件をお聞きしましょうか。」
内容は「烏丸と晋陽の同盟ないし不戦条約」「互いの特産物の売買」等である。
張燕側からの頼み事であるし、足元を見られることを覚悟しての話し合いだった。少なくとも、不利は承知である。
だが、案に相違して丘力居はあっさりと「いいですよ。」とだけ言った。そのあっさり具合は張燕だけでなく、高順達も驚くほどだった。
「あの・・・そんなにあっさり?」
「ええ。こちらは何を失うというほどのものでもありませんし。我々は公孫賛様と盟を結んでいますが、漢王朝に忠誠を誓っている訳ではないのです。」
公孫賛様から要請が来ない限りは漢人同士の争いに手を貸す理由もありませんし。と丘力居は肩をすくめた。
「では、確認を。烏丸と晋陽の軍事同盟。これは、公孫賛様からの要請があった場合でも張燕殿を攻めないということでもあります。そして物資食料等の取引。我々烏丸に何かあった時、晋陽で民の保護をして頂けると言う事。その逆も然り・・・。こんなところですか。」
まだまだ細かいところの調整をするべきだろうが、張燕側にとっては願ってもない話であった。少なくとも敵対はしないということは確定したのだから。
ただ、これは晋陽だけではなく高順達に対しての話でもある。丘力居は暗に「何かあったら高順達を受け入れる」事を仄めかしているのだ。
張燕も高順達も安堵した。これで南北から挟み撃ちされる心配はないし、何よりこの交渉が向こうの(多分)善意で上手く纏まろうとしているのだから。
丘力居は、些かなりともこれで恩返しが出来るのならば安いものだと考えている。甘い判断かもしれないが、丘力居は誰に意見を聞くでもなく己の意思でこの会談を纏めようとしていた。
だが、ちょっとした条件をつけようと思っている。
「ただし、2つだけ条件があります。」
「条件、ですか?」
張燕の言葉に丘力居は頷く。
「聞けば、張燕殿は漢王朝と敵対しているとか?」
「はい。ですが、それが何か・・・。」
この時点で、高順は何か凄く嫌な予感を感じていた。楽進も同じだったらしく、複雑そうな表情である。基本的に、この交渉では高順は口を出さず黙っていた。よほど変な方向に行けば口出しもしただろうが上手く纏まりかかっている状況を変にこじらせる必要は無い。
そこで高順は意識した訳ではないのだが不意に、自分と同じように黙って話し合いを見守っていた蹋頓と目があった。
彼女はにっこりと笑うのだが、なんというか妖艶なものを感じて高順は顔が真っ赤になった。
そんな周りの人々の変化など気にも留めず、張燕と丘力居は話を進めていく。
「友好の証としてそちらに援軍を派遣したいのです。」
「え、援軍!? しかし、それではそちらのお立場が不味くなってしまうのでは。」
「構いません。我々は漢王朝に屈している訳ではありませんし、公孫賛様には係わりのない事ですから。」
「それは・・・ありがたい事はありがたいのですが。」
「では、宜しいですね。烏丸騎兵700と、私の後ろに控えている蹋頓様を派遣。昔、高順殿は烏丸兵を指揮していたこともありますからその下に配属、ということで如何でしょうか。」
『!!?』
丘力居の言葉に高順・楽進が凍りついた。
「つまり、高順様の私兵と言った感じに・・・?」
「はい、そう思ってくださって結構です。」
(え、なにこの流れ。軽くヤバイ?つうか何で蹋頓さん・・・いや、手紙に蹋頓さんが晋陽に向かおうとしたとか・・・この笑顔と言い・・・伏線だったのかアレ!?)
何だか良くわからない事を考えていた高順だったが、これは晋陽側としては悪い話ではない。
晋陽を漢王朝から守りきり、諦めさせる・・・支配権を認めさせる、という段階で烏丸の影響が入るのは悪影響ではあるが、精強な騎馬隊と言うのは魅力的である。
高順は武力では趙雲・沙摩柯に多少劣るが、指揮能力だけで言えば決して負けていない。張燕は今まで知らなかったが、高順が公孫賛に仕えた時期に精強だが性格の荒い烏丸兵を手懐けていた。指揮する将として考えれば適任と言えそうだ。
高順としては断りたいし、というか実際に断ろうとしたのだが、張燕は機先を制して「解りました。責任を持って預からせていただきます!」と言ってしまい・・・高順の意思など全く関係のないところで話は纏まったのであった。
・・・や ら れ た。by高順。
~~~晋陽へ帰還する道中にて~~~
現在張燕軍は晋陽への帰還最中だ。丘力居は「このまま一泊していただいても。」と申し出てくれたが、もし討伐軍が再度侵攻してきたら・・・と言うことを考えればゆっくりしている余裕などない。
虹黒の背に乗った高順はなぜかどんよりとした表情を浮かべて肩を落としていた。
「いやね、解ってるんです。解っているんですよ?俺の意思なんて尊重されないでしょうし、同盟を結ぶ条件なんですからこっちが呑まないといけないって言うのはね。でもさ・・・。」
なんで蹋頓さんまで派遣するかな!? と叫びたかった。心から。
別に彼女の事を嫌っているわけではない。好意を向けてもらえるのは男として嬉しい事ではあるが、その行為が露骨過ぎるときが多々あり、少々困る。
それによって趙雲からは嫌味をネチネチ言われるし、楽進は機嫌が悪くなるし。閻行と出会えば嫌な方向で意気投合するのは目に見えている。
沙摩柯は友人と肩を並べて戦える状況を喜んでいる(高順の不幸には目をつぶってる)が、楽進としてはやはり微妙なようだ。
高順同様に、彼女を嫌っているわけではない。自分にないものを持っている大人の女性で、ちょっとした憧れもある。ただ・・・楽進も高順に好意のようなものを抱いているし、趙雲も同じようなものだ。
そこに蹋頓が加わるというのは戦力としては置いても、歓迎したくない話である。
その蹋頓は徐州で高順一党の女性陣に見立ててもらった服を着て、柔和な微笑を浮かべて高順の直ぐ横にぴったりと寄り添っている。(彼女も馬に騎乗している
(ううっ・・・あ、あそこは私の定位置のはずなのに・・・!)と、嫉妬の炎を燃え上がらせている楽進であった。
「あのー・・・蹋頓さん。」
「はい、なんですか?」
高順の問いに蹋頓は笑顔で応える。
「宜しかったのですか、丘力居ちゃんから離れて?」
「ええ、問題はありません。烏延と難楼がきっちりと補佐をしてくれますし、私は時折横から意見をするだけの立場でした。あの子はまだ一人前とはいえなくても・・・立派にやっていけますよ。」
そういって笑う蹋頓だったが、高順達と別れてからの彼女には離散した人々を集め、劉虞の横槍で分裂しかけた烏丸の建直し。やるべき事が多くあった。
蹋頓はそれらを終えたときに、休憩をさせてもらおうと考えていた。
丘力居に単干を継承させることも出来た。仇討ちから始まった自分の悲願は何とか達成できた。
女性として何よりも大切な部分を失い、それでも痛みに耐えて走り続けてきた。少しくらい休んでも罰は当たらないだろう。そんな蹋頓の心情を理解したからこそ丘力居は高順に姉同然の蹋頓を預けるつもりになったのだ。
「それでですね、蹋頓さん。」
「まだ何か?」
「何と言うか・・・それ以上近づかれると困るのですが。」
「あら、高順さんはもう私のことをお嫌いに?」
「ちがーう!違いますっ!虹黒が警戒するし、馬同士近づけすぎだって言ってるんですよっ!」
「ぶるるっ?」
え、何が?ってな感じに虹黒が顔を上げた。虹黒は全く警戒していないようだ。
それ以外に困っている事もある。彼女、徐州にいた頃に見立ててもらった服と言うのは深いスリットの入った艶っぽいチャイナドレスだ。その上に蹋頓は高順の仲間の中で最高のプロポーションを誇る。
彼女の身体の線を無駄に強調する服である上に・・・騎乗している蹋頓だが、馬の動く振動にあわせて彼女の豊満な胸g(以下省略)。
困る。眼福かもしれないが、男と言う存在はそういうものに果てしなく弱い。男の兵士は何人かが真っ赤になって俯いてるし女性兵士は敵意とか羨むような視線が・・・。
「嫌いでは無いと言うことは・・・愛の告白?」
「なんでそう両極端な発想になるかなっ!?」
こういった発言に、苦笑する兵士や沙摩柯。機嫌が一層悪くなる楽進。
様々な反応だが・・・蹋頓本人は久々の子供じみたやり取りを心底楽しんでいた。
張燕隊は何の妨害もなく無事に晋陽に到着。高順にくっついて来た蹋頓を、趙雲達は驚きながらも暖かく迎え入れた。
その後、蹋頓が閻行に挨拶に行った時に高順の予想通りおかしな方向で大いに意気投合したり、数日後高順に対して夜這いを(中略)男(中略)その時の叫び第一位は「もうやめて(中略)」、真っ白になって燃え(中略)であった。(何があったのだろう?
~~~前回に引き続いておまけ~~~
「んー・・・。」
ある日の夜。
自室の机に向かっている高順は、竹簡に書かれた内容を読みつつ悩んでいた。
竹簡の内容自体は影の諜報活動の結果得られたものだが、過去の物でありはさほど重要ではない。何より何度も読んできたものである。
この諜報能力は大したものだなぁ、と考えていた。活動範囲は狭いもののなかなか有用な情報を拾ってくる。それなりに影の人数も多く、1人1人が優秀でもあるのだろう。
情報が大事と曹操に言っておきながら、高順にはそういった技能も、人材もいない。
もしも、は禁句だが徐州なり陳留なり北平なりで、諜報活動の出来そうな人間を迎えておけば丁原達が死なないように手を打つ事だって出来たかもしれないのだ。
何事においても後手に回ってしまっている。高順はそれを痛感する。
そこで、「高順さん?」と誰かが後ろから腕を回して抱きついてきた。蹋頓である。
「・・・なんで貴女が俺の部屋に。何時入ったんですかって、ちょっと胸が当たって・・・!」
「んっふふ♪ 当ててるんですから当たるのは当然ですよぉ~? ・・・うっぷす。」
全然気配を感じなかったが、酒の匂いがする。酔っ払っているのだろうか・・・。いや待てこの会話には何かデジャヴ・・・どうでもいいか。
ひっついてくる蹋頓を苦労して剥がした高順だったが、蹋頓は酔いつぶれたのか眠りかかっている。
はぁ、と溜息1つついて、高順は蹋頓を自分の寝台に寝かしつけた。
「悩んでる暇があったら行動したほうがいいですよぅ・・・くぅ。」
寝台に潜り込んだ蹋頓は、わざとなのか寝ぼけているのか解らないような言い草でそれだけを言って寝息を立て始めた。
「やれやれ・・・。」
それを言うために酔っ払って来たということでもなかろうが。
「悩んでる暇があったら、か・・・。」
~~~張燕の執務室~~~
「というわけで、影ください。」
「何が「というわけで」か全く解らないのですけど・・・?」
言われたから即行動、ではないが高順は張燕の執務室に入るなりそう言った。
いきなりそんなことを言われたから張燕も困っている。
「ええと、どうして影が欲しいのですか? 理由を教えていただきたいのですけど。」
「理由・・・情報収集源が欲しいのですよ。何とか都合できません?」
「何とかと言われましても・・・困りましたね。」
張燕は腕組みをして考えた。
いきなりすぎるが、言い分は解らないではない。それに高順に対しては大きな借りばかりができている。
自分の戦いに、両者共に思惑があるとはいえ巻き込んだ事実がある。投石機作成・兵の訓練・資金援助(復興支援)等・・・。
数え上げただけでもこれだけの借りがある。お金を返す当ても現状では見つかっていないし、彼らには給料を払っている訳でもない。張燕軍の幹部級の扱いのはずなのに、それらしく扱ったことも無い。
しかし、彼に扱える影は・・・。
ふと、ある2人が思い浮かんだ。自分では上手く扱えないが、高順なら何とかなりそうな2人が。
「2人・・・心当たりが無いではありませんけど。」
「本当ですか!?」
「ええ、多分高順様であれば何とかなるかと・・・。」
「・・・え、何とかって。」
「大丈夫です! 高順様ならばきっと大丈夫ですから!(視線逸らし」
「え、無理を承知でお願いしてるのは俺なのに、なんで張燕様のほうから説得にかかって・・・!」
「楊醜(ようしゅう)! 眭固(すいこ)!」
混乱する高順を尻目に、張燕はその2人の名を呼ぶ。
そして、何処から現れたのか。その2人とやらがいつの間にか張燕の後ろに立っていた。
_ -───- _
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! ハ!| ー─ ' i ! `' '' " ||ヽ l |
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ヽ.( ij ∠ィ リ ←眭固
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| ゝ'゚ ≦ 三 ゚。 ゚ ←高順(イメージです
\ 。≧ 三 ==-
-ァ, ≧=- 。
イレ,、 >三 。゚ ・ ゚
≦`Vヾ ヾ ≧
。゚ /。・イハ 、、 `ミ 。 ゚ 。
「え、ちょ、何これどーなってるの!?」
むっさ引きまくる高順。このどこかで見た2人は何と言うかすっげぇマズイ気がする。
「ちょちょちょty(噛)、張燕様っ! 何ですかこの2人は!?」
「ええと、この2人は私の言う事を中々聞いてくれなくて、よく私に「張燕様が男だったらな・・・」とか。だから男性の高順様なら大丈夫です、大丈夫ですから!(まだ視線逸らし」
「な、何ぃぃぃぃ!?」
不毛な言い争いをする2人だったが、そこに楊醜と眭固が割り込んでくる。
「張燕様、こいつに仕えれば良いのかい?」
「ええ、そうです!」
「!?」
「中々いいツラしてるじゃないの。気合入れてかないと・・・なっ!(やる気満々」by楊醜
「僕達を引き入れたいなんて・・・なんて事を考える人なのだろう。」by眭固
「・・・。」
「そういわけで2人とも。これからは高順さんの影として誠心誠意お仕えしてください!(あさっての方向見つめつつ」
「ちょ、謀ったな張燕様!?」
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, '´ `ヽ
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' 「 ´ {ハi′ } l
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| |/ノ二__‐──ァ ヽニニ二二二ヾ } ,'⌒ヽ
/⌒!| =彳o。ト ̄ヽ '´ !o_シ`ヾ | i/ ヽ ! 「ああ、次は高順だ・・・(主君変更的意味で」
! ハ!| ー─ ' i ! `' '' " ||ヽ l |
| | /ヽ! | |ヽ i !
ヽ { | ! |ノ /
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| ノ リ ル' レ' リ リj ヾ リ
レヽ| '"^二´ `ニ^h′
{ ^r ゙⌒////(⌒ { |
ヽ.( ij ∠ィ リ 「僕・・・こんな事初めてだけど良いんです・・・。(主君を変える的意味合いで」
. ド、 r ⌒`ー--‐1 ,'
l ト、ヽ. l /
. リ \` -─- , '
─- ..⊥. ` ー- イ-‐''" ̄
` ー- 、 /
「ところで、俺の真名は高和だ。」
「僕は、正樹です・・・。」
「だから誰も聞いてないよ!? 張燕さん、この2人はちょっと無理! 変更を要請します!」
「無理と言うか不可! 無理言わないでください、あまり我侭言うとお金返しませんから!(ヤケ」
「な、何ぃぃぃぃぃ!?」
結局、高順は押し切られてしまうのだった。
・・・蹋頓さんと言い張楊さんと言い、この2人と言い・・・なんでしょうか、俺は呪われてるんでしょうか。
神様、助けてプリーズヘルプミー・・・orz
これまで生きてきた中で、初めてと思えるくらい凄まじい脱力感に負けてその場で崩れ落ちる高順であった・・・。
~~~数日前~~~
「くそ、何で袁紹殿が宮中を攻撃してくるのだ!?」
「ひ、逃げ、逃げろーーー」
洛陽、宮中は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
何進を殺された報復として、孫策に焚き付けられる形で決起した袁紹・袁術が十常侍を攻撃。宮中にいた十常侍もろとも宦官2千人ほどが抹殺される事態に陥っていたのだ。
宦官と見れば区別無く抹殺していく袁家の兵士達。
この時、十常侍筆頭の張譲という男は側近と共に自身が擁立した皇帝「劉協」と、呂布を動かすための人質である董卓、賈詡という少女2人を連れて呂布の元へ逃げようとしていた。
だが、それは叶わなかった。このときを狙っていた呂布と陳宮が、張遼と張済・張繍兄弟に数百の兵をつけて宮中に送り込んでおり、この混乱に乗じて張譲とその供回りを悉く抹殺、董卓と賈詡の両名を奪還したのである。
張遼達は官軍であるため、攻撃はされなかったが相当危ない橋を渡ったようだ。途中で何度も袁家の武将に見つかり交戦も止むなしと言う状況だったが、賈詡が皇帝の名を利用する事で切り抜けたらしい。
その張遼達が何とか呂布が布陣している場所まで帰還。皇帝を拾ってきた事は大誤算であったが。
こうして、呂布を繋ぐ楔も、呂布を利用しようとしていた連中も一斉に消えた。残るは袁家の軍勢をどうするかだ。
賈詡と陳宮の「皇帝の名の下、官軍として袁家の軍勢を滅ぼすべし」という献策を受けた呂布は、十常侍を抹殺したと思って浮かれている袁家を撃滅するために静かに動き始めた。
~~~楽屋裏~~~
もーいくつねーるーとー和尚がー2-(謎 あいつです。
何とか平成21年が終わるまでにもう1話投稿できました。年末に何をしているのかといわざるを得ない。
復帰してーと言われてた蹋頓さんが復帰しました。もう皆エロいんだから(特にあいつが
丘さんも成長しました。作中では(めんどくさいから)書かれていませんが、臧覇も発奮したのかこの後趙雲とかに武術の稽古をお願いしていたり・・・。
この娘も後々立派になるのかもしれませんね。
そして洛陽。ちょっと複雑ですが、蹋頓さんが高順と合流する前くらいの話になります。
派遣された官軍が還ってこない内に、という思惑が2つの袁と孫策、呂布にもあったのですな。
で、何故孫策が袁紹と袁術を焚き付けたのかと言うと・・・なんででしょう。(おい
脳内設定では地図とか奪って戸籍帳を回収し損ねた、みたいな流れが出来てます・・・美味しいとこ取りするために。
この戦いでは孫策は実利を取るために行動をしたんですね、名はこの際と思って捨てたのかもしれません。何やったとこで袁にとられちゃいますし。
董卓奪還の流れも書きたかったのですがややこしくなりそうなのでやめました。ご都合主義で上手くいったよ、とw
これで董卓政権の掴み位はできてきました。
呂布、というか董卓が帝を奉じて官軍となったなら、それに相対する袁家軍は賊軍となってしまいますからねぇ・・・頭に血が上って「帝をお救いするのですわー!」とかになりそうです・・
いや、あの愛すべきお馬鹿さんじゃ無理なんだろうな(ああ
原作の「真・恋姫」では何進と十常侍が共倒れした後に、董卓が政権樹立できた理由を何も書かれてなかったので無理やりに理由をでっち上げてしまいましたが・・・
これで張燕軍も史実のような流れになるでしょうか。
で、おまけは気にしちゃ駄目です。気にしたら負けです。意味が解らない人は くそみそ で検索すれば不幸になれるよ!
もう1つ。高順君に何が起こったのかは想像にお任せします。
この後も少しその描写を書こうとしたんですが・・・絶対にXXXになるんですよねぇ・・・。要望があれば書くのかもしれませんけど。
ふと思ったのですが魏ってえろす担当の大人な女性がいません。
呉では黄蓋、蜀では黄忠・厳顔という人がいるのに。差別だ(え
さて、高順君たちは以降どんな流れに巻き込まれてしまうのでしょうかね。
来年が皆様にとって良き年でありますように。私?HAHAHAこやつめ(誰だ
それでは皆様。また来年お会いいたしましょう!(・×・)ノシ